235 / 240

Bitter and black trap

さて。 ノープランで学校へ来てしまったわけだが。 でもこれって何にもしなくても、結構上手くいくのでは? って言うのは、百の首にあるキスマーク――制服着ても見える位置に俺がバッチリつけてしまったやつ――の主張が強いから。 瑞々しく張りのある健康的な肌に赤いあの印は目立つ。 俺と千歳にもついてるけど、俺達のは襟からちょっと見えるくらいの位置にあるから分かりづらい。よく見れば分かるけど。 周りが密やかにざわめいているのは気のせい じゃないはず。 百の首筋に集まった視線はそのまま、俺や千歳にも注がれる。1番先に視線を集めてる本人は全然気にも留めずケロッとしてるけど。 「僕も藤くんの首筋舐めたいなぁ〜…」 何か言ってるやつがいるけど無視でいいかな。 とりあえず注目は集めてるみたいだし、これで衛宮くんも釣れるかも…? 「藤棚、その首のはどっちのだ?」 教室に入って浴びる第一声がそれってどうなの。 委員長は俺と千歳を交互に見る。 「委員長のえっち」 にま、って笑う百に、委員長は真顔で親指を立てた。 「…俺も百につけておくべきだったな」 千歳が俺の隣でぼそっと呟いた。妬いてるな、これは。 「今つければいいんじゃない?」 「それもそうか」 言うが早いか、千歳が百の首筋に手を触れる。 「ちょっと千歳さん?」  「右側」 「いやいやいや」 「蜜は良くて俺がダメな理由は?」 「教室でしなくても良くない?」 ふたりの距離がすんごい近くて、見ててちょっとドキドキする。それは多分、ここにいる皆が同じで、色めき立ちながら注目していた。 ってか、千歳が百の首筋をなぞる手つきがえっち。 「なるほど女王様のだったか」 委員長は一人でうんうんってして、俺を見た。 「大胆だな」 「位置考えないでつけちゃったんだよね」 「ヤッたのか?」 「まだだけど。釣れるかな、って」 「確かにな」 ところで、向こうではまだ百と千歳の攻防が続いている。 「千歳もつけさせてくれるならいいけど」 「全然構わないが?」 「言ったな? じゃあ上向いて」 「上?」 素直に上を向くのは、相手が百だから。 千歳の喉が無防備に晒された瞬間、百はそこにがぶりと。 あちこちから興奮したような悲鳴が上がり、俺も思わず叫びかけて慌てて口を両手で覆った。 大胆! 百が満面の笑みで唇を離した後、そのまま千歳に首筋に噛みつかれたのは言うまでもない。

ともだちにシェアしよう!