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第237話
実際そういう経験があるとそれっぽい会話も誘導できるのかな? …ちょっと、ふたりの初めての相手に嫉妬。俺の知らないふたりを知ってると思うと、そりゃあ面白くない。
けど、まぁ、今付き合ってるのは俺だし。好かれてるのも俺だし。…だから、別にいいもん。
衛宮くんを煽る作戦なのに俺が煽られてどうすんだ、って話。
衛宮くんも、昨日俺が『優しくしてね』って言った時点で真っ赤になって怒ってたから、今日のこのキスマでもそこそこ煽れてるよね、多分。そもそも俺、衛宮くんとは頬とか額とかのキスだけで唇にはしたことなかったし、させなかったし。それ以外の身体的接触もハグだけだったし。裸なんて見せたことなかったし。見せる気もなかったけど。
ひとまず百の言う通り、今日何もなくてもそのうち何かやらかしてくれるだろうから、それを待とう。イチャイチャしながら。
「気は長そうじゃないから、そんなに持たずに期待通り動いてくれるんじゃないか?」
千歳が宥めるようにそう言って、俺の髪にキスをする。
「それならいいけどさ」
俺も体を捻って千歳の唇に自分のを押し付けた。
って言うか今日の百はスマホ見過ぎじゃない?
「百、今日は俺よりスマホ見てない?」
「えー? そんなことある?」
「あるから言ってるの」
視線はこっちだけど、手にはスマホ。大事な用事、なのかもだけど…。もし百のお家関係の連絡だったら、俺のつまらないワガママで邪魔するのは良くない。さっきから忙しなく指動いてはいるしな。
「スマホと付き合えばいいとか言われたら困るからな」
そう言ってスマホをポケットにしまうと、百は俺の頬にキスをした。ついでに千歳の頬にも。
なので俺も百の唇にキスをする。
「――藤棚さん、」
その時、控えめに百を呼ぶ声がした。
視線を向ければ、結構イイ体した爽やかな感じの人が控えめにこっちを見ていた。
「あ。ゆーくん、昨日はありがとな」
「いいえ、そんな。俺の役目ですし。あの、今、大丈夫ですか?」
何か声聞いたことあるなー、って思ったら昨日の『ゆーくん』この人かぁ。
「んー、大丈夫」
百は腰を上げた後、「茅ヶ崎、あと頼むな」と一言。そうするとすぐに「はぁ〜い!」って元気な声と共に茅ヶ崎が飛び出してくるんだからすごいよね。
「百って割と茅ヶ崎手懐けてるよね?」
「自分好みのイイ男になら手懐けられたいよね〜」
「欲望に忠実だな」
千歳の声は完全に呆れてた。
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