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第238話
ゆーくんに呼ばれてた百は、午後の授業が始まるギリギリに委員長と教室に戻ってきた。2人とも教材持ってたから、途中で委員長見かけた百が手伝ってあげたんだろうな。
「助かった、藤棚。ありがとうな」
やっぱりね。
「お礼はキスでいいか?」
「いらないかなー」
「僕へのお礼は藤くんのキスでいいよぉ〜」
「はいはい」
委員長をあしらって茅ヶ崎もあしらった百はそのまま自分の席へ。何か話したそうにしてたけど、それからすぐに本鈴が鳴って先生が来てしまったのでひとまず授業に集中することにした。
授業の合間の短い休みじゃ足りないだろうから、やっぱり放課後まで待つしかないよね。
いつもより長く感じた授業が終わると、帰り支度をしてさっさと寮に戻った。今日は千歳の部屋。俺の部屋は鍵穴埋められてて入れないからね!
「で、何かあったの?」
荷物を下ろした千歳と百が並んで座った。百は脚を組んでいたので、俺は千歳の膝に対面に座る。
「あー、そうそう。蜜の靴のこと」
「精液かけられてたから処分させた靴のことね」
思い出すだけでまだ腹が立つな。
「あれ、衛宮は特に関係ないっぽい。あの時声上げた3人でイタズラしてああなった感じ」
「動機は?」
「振られた腹いせか?」
「んー…」
百はちょっと考えるように手の中のスマホをもて遊ぶ。
「腹いせって言えばそうなのかも?」
「と言うと?」
「言ったじゃん? 何回か告白してる、って。けどその度に――本人が言うには――あしらわれて、歯牙にもかけないみたいな対応されたから腹が立って、自分がどれくらい嫌なことしたか思い知れ、ってさ」
「逆恨みだな」
「まぁ、そーね。自分が振られた後、彼氏コロコロ――っつっても衛宮と俺らだけど、替えてるのも気に入らなかった。らしい」
「可愛さ余って憎さ百倍ってやつだな」
千歳がため息交じりにそう言って、俺の背中を撫でた。
「…付き合ってる相手いたら、歯牙にもかけないのは当たり前なんじゃないの?」
「まぁ、蜜はあの頃特に他は目に入ってなかったからな」
「今の方が目に入ってませんけど?」
「知ってる」
機嫌良く返した百が俺の目尻にキスを落とす。
「自分の気持ちが報われてほしいって思うのは向こうの勝手だけど、そういうのは誰でも思うもんだしな。結局、諦めつかなかったってことなんだろ」
「ふーん…」
諦めつかない気持ちは、まぁ分かんないでもないよ。俺だって、千歳と百に彼女いた時…多分、同じ気持ちだった、かも。
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