14 / 69
2-7
ラーメンを食べて、帰ってきた。
さすが有名店なだけあって、おいしかった。
春馬さんはまた遊ぼうと言ってくれた。
よかった。
そして俺はいま、お通夜みたいな気分で自室の机に突っ伏している。
母親には、きょうは夕食はいらないと言った。
――色々傷ついたりもしたし、もういいかなって
春馬さんはそう言って、ちょっと笑っていた。
寂しそうな感じでもないし、ヤケな感じでもなく……本当にそう思ってるんだな、という感想。
「俺相手だったら傷付かないですよー」
意味もなくつぶやく。
超大好きだし絶対嫌なことはしないし、趣味も合うし楽しいことがたくさんできる自信があるけど。
でも、春馬さんが言ってるのはたぶん、そういうことじゃないんだろうな。
恋愛経験なんてないに等しい俺には分かんないけど、恋に傷つくっていうのは、そんな表面的なことではないのだと思う。
たぶん。
それに、そもそも論で、もし春馬さんにそのつもりがあるなら、最初から俺を遊びに誘ってない。
下心ゼロだから、生徒の俺と友達になりたいと言ってくれたのだろう。
そこまで一気に考えてしまったらもう、俺には春馬さんとどうにかなれる可能性なんか1ミリもないことが痛いほど分かって、立ち直れる気もしなかった。
なんとなくツイッターを開く。
すると、春馬さんが買ったグッズを並べて上げていた。
[はるま: 初めての池袋アニマート。「男の戦い」でもぎ取った戦利品です。家宝にします。戦友くんありがとう、また行こうね]
絶望的に可愛い空リプ。思わずうめき声が漏れた。
これ、あの真顔でぽちぽち入力したんでしょ……?
ツイートひとつで立ち直る自分の単純さが、いまは救いだ。
リプがついているので、開いてみる。
[アカリス: 誰と行ったのー?]
[はるま: 内緒です]
[アカリス: え?w 彼女?www]
[はるま: 男友達ですよ。はしゃぎ方がデートみたいで可愛かったですけど]
え……? えっ!?
思わず5度見する。しかし読み間違いではない。
可愛かったって……デートみたいって……。
それは、好意的に受け止められているのだろうか。
それとも、俺の気持ちが透けて見えちゃってて、だからあえて、その気はないと明確に拒否したのか?
手放しではよろこべないでいるから、やっぱりそれなりのダメージはあるらしい。
画面を見ていると、またリプがついていた。
[アカリス: 彼氏だったかwwww]
[はるま: 違います。冗談でも「そうです」とか言えない程度に無垢でした]
[アカリス: ぐはw 溺愛www]
[はるま: 彼にはまっすぐ育ってほしいです]
……これは、どう解釈したらいいんだ?
普通に、恋愛対象ではないということでいいのか?
しかしなんか、なんだろう、言い回しが。
このリプの意味が『可愛かったけど、無垢だったから手が出せなかった』みたいな話だったらとか、都合の良すぎる曲解をしてみる。
というか、アカリスさんは共通のフォロワーだから普通に俺のTLにも流れてくるわけで、春馬さんがそれに気づいていないはずもない。
なんにも思ってなくて、あえて『可愛かった』なんて書く……?
これは、意味を聞いた方がいいのではなかろうか。
スルーしちゃうのは簡単だけど、すごいチャンスをくれている気もする。
そうか、男の戦いはまだ終わっていなかったらしい。
ともだちにシェアしよう!