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 翌日。帰りのホームルームが終わったあと、俺は3階のトイレにこもった。  無論、時間稼ぎのためである。  みんなが見てる時に準備室に入るわけにはいかないし、川上先生がいつ来るかも、正直分からないから。 [準備室のすぐ横のトイレにいます。職員室出るとき連絡ください] [もう向かうから、タイミング見て入って。職員会議があるから、16:30には出るけど]  スマホをズボンのポケットにしまい、ドキドキと鳴る心臓を落ち着ける。  そのまま10分。  廊下が静かになったので、トイレから出てみた。  誰もいない。  早足に向かい、ドアをノックした。 「どうぞ」  いつも通りの、抑揚のない声。  頭をちょこっと下げて入ると、白衣姿の川上先生が、言葉数少なにいすをすすめてくれた。  ふたりっきりで、こんな。  意外になことに、萌えとかキュンよりも、普通に緊張でヒヤヒヤしていた。  能天気な俺でも、さすがにこんな状況ではうろたえるらしい。 「ごめんね、来てもらっちゃって。ありがとう」 「いや、それは全然よくて……」  真顔で俺の様子を見ていた川上先生は、向かいに座る……かと思いきや、まさかの、俺の頭をなでた。  そして、流れでキス。 「……!?」 「みい、聞いて」  かすれた小声。 「やっぱり僕、この仕事やめようかなと思う。このままじゃ、君を守りきれない」 「え、でも……」 「だから最後に、ここで思い出作らせて?」  思い出って? と聞く暇もなく、キスされた。 「ん、んぅ……っ」  舌が入ってきて、熱い。  息を弾ませた川上先生、いや、春馬さんが、余裕がなさそうな声で聞いた。 「これ以上はダメ?」 「ん、……ダメじゃないけど、その、準備してない。中洗えないし」 「ここは、理科準備室。新品の精製水とスポイトの在庫がたくさんあります」  何を言おうとしているのかが分かって、顔が真っ赤になってしまった。 「無理はしなくてもいいけど」 「えっと……」  辞める、と言った春馬さんの声、表情を思い浮かべると、答えは自ずと決まった。 「5分で戻る」  ズボンは脱いで、ワイシャツはボタンを全部外して。  机に突っ伏すみたいな格好で、後ろから挿れてもらうのを待った。  正直、興奮でどうにかなりそう。  春馬さんが白衣を着たままなのは、万が一人に見られそうになったときに俺の身を隠すため……と本人は言っていたけど、たぶんこれは、『思い出作り』だ。  彼はちゃんとローションとコンドームを持ってきていて、こんな場所ではあるけれど、傷つけないよう、念入りにほぐしてくれている。 「可愛い。耳赤くなってる」 「……はぁ、ん、……っ」  声を我慢しなきゃいけないのに、春馬さんが、絶対わざとだっていうくらい、キュン発言を繰り返してくる。 「君に、僕の人生全部あげる」 「ん、はるまさん、……ん、」  春馬さんの長い指が、ぐちぐちと中をかき回す音がする。 「も、挿れて、……欲しっ、んん……」 「ここ?」 「…………ッ」  ビクリと体が跳ねて、机がガタッと音を立てた。  気をつけなくちゃいけないのに、全然が余裕ない。  春馬さんは指を引き抜き、自らのベルトに手をかけた。 「可愛い声聞きたいけど、それはこれからずっといっぱい聞けるから……きょうは、我慢してる可愛いところ見せてね」  やばい。そういうこと言うの、マジでやめて。  好きが止まんなくて、たまらない。  机にしがみつく。  春馬さんが体を倒して覆いかぶさって、そのままずぶずぶと入ってきた。 「……っ、……ッ」  声にならない声で、悶絶。  奥まで入ると、春馬さんは、小声でささやいた。 「すごい、中。気持ちいい?」  声も出せずに、こくこくとうなずく。 「前触るね?」  確かめるように、俺のペニスをくにくにとこねる。  声をこらえながらちょっと振り向いたら、真顔の春馬さん……ではなく、めちゃくちゃ艶めかしい目をした川上先生が俺を抱いていた。 「ん、……んっ、ダメ、ゃ、せんせ……」 「そんな風に呼んでくれるの、思い出作り? 優しいね、高野くんは」 「ち、違くて、……ぁ、ぅ」  学校。白衣姿の川上先生。  現実感がなさ過ぎて、興奮しすぎて、もう全部が無理。  川上先生もそう思っているのかは分からないけど、心なしか、いつもよりも飛ばしてる気がする。  ぱちゅぱちゅと音を立てて肌がぶつかるたびに、熱い吐息が首筋に当たる。 「声、がまんできな……はぁ、ゃ、んっ」 「気持ちいい?」 「んっ、……っ、んぁ……っ」  上擦った声を漏らす俺の口を、大きな手のひらがふさぐ。  無理やりされているみたいになって、ますますヤバい。 「んッ、んぅ……っ、ん」 「すごい、ぬるぬる。もうイキたい?」  くぐもった声で「イキたい」と告げると、川上先生は、ぐーっと奥まで入れて、俺の体をぎゅっと抱きしめたまま言った。 「わがまま聞いてくれてありがとう。大好きだよ、みい」 「……、……春馬さんだ」 「何それ? ずっと僕は僕だけど」 「川上先生と春馬さんって、ちょっと違うの。俺の中では」  春馬さんは、ちょっと黙った後、俺の頭を何度もなでた。 「じゃあ、川上先生とはもうお別れだね?」 「うん」 「寂しがってくれる?」 「それは、寂しいよ。でも、俺のこと考えてそうしてくれるって分かったから、優しい気持ちでさよならが言えそう」  春馬さんは、ゆっくりと動き始めた。  くすぶっていた熱がすぐに湧き上がって、限界を告げる。 「ぁ……、も、んぁ、……ぁあッ」 「高野くん、たくさん思い出、ありがとうね」 「あ、イッちゃ……、んッ、ん」 「いいよ。イッて?」  ガンガンと奥を突く彼も、余裕がなさそう。  荒い息遣いが室内に響いて、世界がふたりだけになったような錯覚を覚える。 「声出ちゃうっ、くち、口押さえて……ッ」  哀願すると、春馬さんが全力でふさいでくれた。 「んっ、ん……ッ、ん……ッ!…………ッ、……!…………!……っ……ッ」  ビクビクと震えながら、熱を吐き出す。 「みい、みい……イクね…………っ、ぅあ……ッ」  お腹の中で、春馬さんが脈打った。

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