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4-10
翌日。帰りのホームルームが終わったあと、俺は3階のトイレにこもった。
無論、時間稼ぎのためである。
みんなが見てる時に準備室に入るわけにはいかないし、川上先生がいつ来るかも、正直分からないから。
[準備室のすぐ横のトイレにいます。職員室出るとき連絡ください]
[もう向かうから、タイミング見て入って。職員会議があるから、16:30には出るけど]
スマホをズボンのポケットにしまい、ドキドキと鳴る心臓を落ち着ける。
そのまま10分。
廊下が静かになったので、トイレから出てみた。
誰もいない。
早足に向かい、ドアをノックした。
「どうぞ」
いつも通りの、抑揚のない声。
頭をちょこっと下げて入ると、白衣姿の川上先生が、言葉数少なにいすをすすめてくれた。
ふたりっきりで、こんな。
意外になことに、萌えとかキュンよりも、普通に緊張でヒヤヒヤしていた。
能天気な俺でも、さすがにこんな状況ではうろたえるらしい。
「ごめんね、来てもらっちゃって。ありがとう」
「いや、それは全然よくて……」
真顔で俺の様子を見ていた川上先生は、向かいに座る……かと思いきや、まさかの、俺の頭をなでた。
そして、流れでキス。
「……!?」
「みい、聞いて」
かすれた小声。
「やっぱり僕、この仕事やめようかなと思う。このままじゃ、君を守りきれない」
「え、でも……」
「だから最後に、ここで思い出作らせて?」
思い出って? と聞く暇もなく、キスされた。
「ん、んぅ……っ」
舌が入ってきて、熱い。
息を弾ませた川上先生、いや、春馬さんが、余裕がなさそうな声で聞いた。
「これ以上はダメ?」
「ん、……ダメじゃないけど、その、準備してない。中洗えないし」
「ここは、理科準備室。新品の精製水とスポイトの在庫がたくさんあります」
何を言おうとしているのかが分かって、顔が真っ赤になってしまった。
「無理はしなくてもいいけど」
「えっと……」
辞める、と言った春馬さんの声、表情を思い浮かべると、答えは自ずと決まった。
「5分で戻る」
ズボンは脱いで、ワイシャツはボタンを全部外して。
机に突っ伏すみたいな格好で、後ろから挿れてもらうのを待った。
正直、興奮でどうにかなりそう。
春馬さんが白衣を着たままなのは、万が一人に見られそうになったときに俺の身を隠すため……と本人は言っていたけど、たぶんこれは、『思い出作り』だ。
彼はちゃんとローションとコンドームを持ってきていて、こんな場所ではあるけれど、傷つけないよう、念入りにほぐしてくれている。
「可愛い。耳赤くなってる」
「……はぁ、ん、……っ」
声を我慢しなきゃいけないのに、春馬さんが、絶対わざとだっていうくらい、キュン発言を繰り返してくる。
「君に、僕の人生全部あげる」
「ん、はるまさん、……ん、」
春馬さんの長い指が、ぐちぐちと中をかき回す音がする。
「も、挿れて、……欲しっ、んん……」
「ここ?」
「…………ッ」
ビクリと体が跳ねて、机がガタッと音を立てた。
気をつけなくちゃいけないのに、全然が余裕ない。
春馬さんは指を引き抜き、自らのベルトに手をかけた。
「可愛い声聞きたいけど、それはこれからずっといっぱい聞けるから……きょうは、我慢してる可愛いところ見せてね」
やばい。そういうこと言うの、マジでやめて。
好きが止まんなくて、たまらない。
机にしがみつく。
春馬さんが体を倒して覆いかぶさって、そのままずぶずぶと入ってきた。
「……っ、……ッ」
声にならない声で、悶絶。
奥まで入ると、春馬さんは、小声でささやいた。
「すごい、中。気持ちいい?」
声も出せずに、こくこくとうなずく。
「前触るね?」
確かめるように、俺のペニスをくにくにとこねる。
声をこらえながらちょっと振り向いたら、真顔の春馬さん……ではなく、めちゃくちゃ艶めかしい目をした川上先生が俺を抱いていた。
「ん、……んっ、ダメ、ゃ、せんせ……」
「そんな風に呼んでくれるの、思い出作り? 優しいね、高野くんは」
「ち、違くて、……ぁ、ぅ」
学校。白衣姿の川上先生。
現実感がなさ過ぎて、興奮しすぎて、もう全部が無理。
川上先生もそう思っているのかは分からないけど、心なしか、いつもよりも飛ばしてる気がする。
ぱちゅぱちゅと音を立てて肌がぶつかるたびに、熱い吐息が首筋に当たる。
「声、がまんできな……はぁ、ゃ、んっ」
「気持ちいい?」
「んっ、……っ、んぁ……っ」
上擦った声を漏らす俺の口を、大きな手のひらがふさぐ。
無理やりされているみたいになって、ますますヤバい。
「んッ、んぅ……っ、ん」
「すごい、ぬるぬる。もうイキたい?」
くぐもった声で「イキたい」と告げると、川上先生は、ぐーっと奥まで入れて、俺の体をぎゅっと抱きしめたまま言った。
「わがまま聞いてくれてありがとう。大好きだよ、みい」
「……、……春馬さんだ」
「何それ? ずっと僕は僕だけど」
「川上先生と春馬さんって、ちょっと違うの。俺の中では」
春馬さんは、ちょっと黙った後、俺の頭を何度もなでた。
「じゃあ、川上先生とはもうお別れだね?」
「うん」
「寂しがってくれる?」
「それは、寂しいよ。でも、俺のこと考えてそうしてくれるって分かったから、優しい気持ちでさよならが言えそう」
春馬さんは、ゆっくりと動き始めた。
くすぶっていた熱がすぐに湧き上がって、限界を告げる。
「ぁ……、も、んぁ、……ぁあッ」
「高野くん、たくさん思い出、ありがとうね」
「あ、イッちゃ……、んッ、ん」
「いいよ。イッて?」
ガンガンと奥を突く彼も、余裕がなさそう。
荒い息遣いが室内に響いて、世界がふたりだけになったような錯覚を覚える。
「声出ちゃうっ、くち、口押さえて……ッ」
哀願すると、春馬さんが全力でふさいでくれた。
「んっ、ん……ッ、ん……ッ!…………ッ、……!…………!……っ……ッ」
ビクビクと震えながら、熱を吐き出す。
「みい、みい……イクね…………っ、ぅあ……ッ」
お腹の中で、春馬さんが脈打った。
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