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 会がお開きになり、春馬さんの家に着いたのが19:00。  代々木上原に着いた時点で連絡していたので、インターホンを押すと、2秒でドアが開いた。  待ち構えていたのだろうか。  何それ、萌える。  キュンとしつつそろっとドアを開けると、すきまから、例の黄色い潰れたもぐらTシャツが見えて、悶絶した。  いや、なんでそれなの!?  羽織ってるパーカーが萌え袖で、さらに超可愛いんですけど……!? 「いらっしゃい。って、ん? どうしたの?」 「いや、いや。まあ、ボクはなんて尊い攻めと付き合ってるんだろうと思っただけです」  不思議そうな顔をする春馬さんをぎゅうぎゅうと押しながら、部屋に入る。  はー、癒し。春馬さんの気配に囲まれた空間で。 「買っておいたよ、お泊まりセット」  春馬さんが指さす方向を見ると、ベッドの横に、白いかごが置いてあった。  すたすたと近寄ってみると、部屋着と下着、歯ブラシ、ついでに枕まで。  毎回服を持って来るのが面倒だとぼやいたら、まさかの買っておいてくれた。  ……いや、これはいわゆる、半同棲というやつでは?  やば。  きっと同じようなことを考えながら、これを抱えてレジに並ぶ春馬さんを想像すると……色々破壊力がやばい。  思わずだらしない顔をしそうになるのを、すんでのところでとどまる。 「ありがと。いくらだった?」  平静を装ってお財布を取り出そうとしたら、春馬さんはふるふると首を横に振り、そのまま俺の手首をつかんで、キスしてきた。 「んっ!?」 「みいはちょっと、しっかりしすぎだね。こういうのは、可愛く甘えてたらいいと思うよ」  違います、余裕のふりをしようとしました。  という心の声は届くはずもなく、そのままじりじりと追い詰められ、そのままベッドにぼふっと押し倒される。 「春馬さん……?」 「みい。会いたかった。早く来ないかなって、朝からずーっと、みいのことばっかり考えてたから」  そして頬を寄せてくる、9こ年上の恋人。  真顔で。  あー可愛いあー尊い。 「俺も会いたかったよ。友達とも遊べて、春馬さんとも会えて、きょうは良い日」 「楽しかった? みんなでごはん」 「うん。色々しゃべったしめっちゃ食べた」  彼は、慈しむような目で見つめながら、俺の頭をそっとなでた。  感触が気持ち良くて、つい目を閉じる。 「春馬さん、あったかくて、落ち着く」 「そうだね。触れ合うと、気持ちも」  目を閉じたままの俺の顔を、何かを確かめるように、するするとなぞっていく。  おでこに口づけられたので目を開けると、ぼやけるくらいの至近距離に、春馬さんの顔があった。  表情ゼロ。  愛しくて、パーカーの横らへんをつかんだ。 「俺ね、奇跡的だと思うんだよね。春馬さんとこうしてるの」 「僕もそう思うよ」  男同士で好きな人とどうこうなれるなんてありえないし、しかも先生なんて、どう考えても手が届かなそうな相手で。  そんな人が、普通に、自分のことを大事にしてくれている。  恭平の顔が思い浮かんだ。  友達の姉だから、なんてクソくだらない理由であきらめようとしてるなんて、もったいない。  姉のことは全くおすすめできないけど、それと恭平がどう思っているかは関係ない。  俺は、もう一歩踏み込んで、後押ししてやった方がいいんじゃないだろうか。 「……? 何か考えてる?」  声を掛けられて、はっと意識を取り戻す。  春馬さんが不思議そうな顔をしているので、ふるふると首を横に振った。 「何でもない。ちょっと、友達の恋バナ思い出してただけ」  春馬さんは、ふっと小さく笑う。 「クラスメイトと遊んで、楽しかったんだね」 「うん。楽しかった」 「みいが年相応にしてるのを見ると、安心するよ」  聞けば、大人のペースに巻き込んでいるのではないかと、申し訳なくなるときがあるらしい。  なんだそれ。  春馬さんは先生で、頭がいいはずだけど、たまに、とんでもなくズレたことを考える。  俺たちの年齢がどうとか、地球上で最も意味ないこと言ってるって、気づいて欲しいんだけど。  どうでもいいよ。  俺が好き好んで、春馬さんが好きなんだから。  そして俺たちは、好き好んで好き合ってる。

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