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夜、春馬さんからの電話を待った。
俺はあした以降もテストが続くので、またさくっとした電話になるんだけど……とにかく、何でもいいから話したかった。
「もしもし」
『こんばんは、テストお疲れさ……』
「できた! めっちゃできた!」
食い気味に報告したら、ちょっとの沈黙のあと、あははと笑う声が聞こえた。
『よかったよかった』
「答えの話ってしてもいいの? 返却されるまでダメ?」
『うーん……じゃあ、1問だけなら』
電話の向こうで、いたずらっこみたいな顔をしている春馬さんを想像する。
「最後の文章題、あんな、特定の生徒に有利な問題作っちゃってよかったの?」
『うん、ダメ教師だね。先生失格です』
くすくす笑っている。
「あれさあ、普通の人も困ると思うけど、もし正解に気づいた腐女子がいたら、地獄の苦しみだったと思うんだよね」
『うん、そうかもね』
あの問題は、ただでさえ難題なうえに、消去法で最後に残る3人が、腐女子層にとっては超非道なのだ。
「せいや、りく、あきと。ほんっと、意地が悪い」
『何て書いた?』
「……あきと、りく」
『すごい、BL愛に打ち勝ったね』
「書く手が震えたよ」
明斗は、ヘヴンズヘヴンの中盤で、陸をだまして無理やりヤッちゃうゲス野郎だ。
どんな作品でもマイナーCPを好む人間はいるものだけど、あき×りくだけは、いない。
というか、明斗が好きだなんて言った日には、非国民扱いで袋叩きにあうことだろう。
『ごめんごめん、意地悪しちゃった』
「いや、でもまあ、俺が正解するって分かって作ったってことでしょ?」
『もちろん。みい、頑張ってたもん』
「満点目指したけど、どうかな。ま、どうなってもいいや。全力は出したし」
『あしたも頑張ってね』
めっちゃ元気出た。
最終日まで頑張ろう。
お礼を言って切ろうとしたら、春馬さんが「あっ」と言って、それを止めた。
『みい、待って。誕生日、泊まりに来てくれるんだよね?』
「そのつもりだけど。何かある?」
『18:00以降にしてもらってもいい? それより前だとまだ帰ってないと思うから』
「うん、分かった」
テストは家に持ち帰っちゃいけないらしく、やること2倍で時間がない春馬さんは、休日返上で採点すると言っていた。
『ごはんはうちで食べようね』
「楽しみにしてる」
春馬さんと肩をくっつけて食事をするところを想像したら、やる気が500倍になった。
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