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プロローグ・3
蛍は、ソファでぐんにゃりと横になっていた。
何をするにも、億劫だ。
朝昼夜も、曖昧になって来た。
朝に閃いたアイデアを走り書きしても、夜見ると面白くない。
夜に思いついたストーリーをタイピングしても、昼読むと陳腐だ。
そんな風に、思考が迷宮の中に入り込んでしまった状態。
「だのに、吉村さんったら」
今日、担当の吉村が、会わせたい人がいる、と訪問することになっているのだ。
しかもその人は便利屋さんで、これから住み込みで世話を見てくれるという。
元来、人付き合いは苦手だし、好きでもない。
四六時中他人と一緒に居る、なんて御免だ。
気に入らない人だったら、すぐに辞めてもらおう。
そんなことを考えていると、インターホンから声が聞こえて来た。
「先生、吉村です」
「来ちゃった……」
重い体をどっこいしょと起こし、蛍はリビングから移動した。
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