6 / 55

第一章 友達は便利屋さん

 後はよろしく、と吉村が去ってすぐに、等はポケットからカードを数枚取り出した。 「では先生、これを一枚選んでください」 「名刺なら、さっき」  いえいえ、と手を振る等だ。 「名刺じゃありません。今後の二人の関係を、こいつで決定します」 「?」  関係と言ったって、小説家と便利屋以外の何があるのか。  不思議に思いながら蛍が引いたカードには、『恋人』とあった。 「はい! 今から先生と俺は、恋人同士です!」 「ええっ!?」  これからは恋人として接しますからね、と笑顔の等に、蛍は慌てた。 「ちょっと待ってください! 他のカードも見せてくれませんか!?」  開いたカードには、こうあった。  お父さん、幼馴染、兄、下僕、執事、友達……。 「どれか他のカードと交換しますか?」 「友達に変えてください!」  蛍は諦めた。  友達なら、他のカードよりいくらかマシだ。  ましてや、恋人などとは!

ともだちにシェアしよう!