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第二章・3

 話題が人を呼び、カフェには行列が出来ていた。 「ああもう。だから外に出るのは嫌いなんだ」 「まぁ、そう言うなよ。並んでイライラするのも、取材だよ?」 「取材? これが?」  そう、と等は真面目な顔つきになった。 「蛍の小説、登場人物の心情なんか物凄く丁寧に細やかに描かれてるのに、情景描写はやたら淡白なんだよね」 「いけないかな。バランス取れてていい、って吉村さんは言うけど?」 「悪くはないけど、作家としての引き出しは多い方がいいと思うよ。実際に体験しないと書けないことだって、あるんだから」  蛍は、初めて等にイラついた。  こんな立ち入ったことを、ズケズケと! 「何様のつもりだよ。小説家でもないのに、本職に口出さないでくれる?」 「今の俺は、蛍の友達だぜ? 友達だったら、嫌なことでもそいつの為になるのなら指摘するさ」 「……もういいよ」  ちょうど蛍たちのオーダーの番が来たので、二人は会話を中断した。 「タピオカアップルジュース、二つください」  等が注文をし会計を済ませる間、蛍は周囲を見回してみた。  カップル、女子高生の三人組、スーツ姿の男性、初老の夫婦に、子ども連れのママ友。  いろんな種類の人間が、様々な表情でドリンクを楽しんでいる。  確かにこんな群衆描写は、これまで詳しく書いたことがない。

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