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第二章・4
「お待たせ。席、あるかな」
両手にドリンクを持った等が、何事もなかったかのように話しかけてくる。
さっきはちょっぴり、言い争いをしたというのに。
ドリンクを受け取り、蛍は席を探した。
ちょうど、男性二人連れがテーブルを離れたところだ。
「あそこ、空いてる」
「よし、行こう」
テーブルは少し濡れていたが、スタッフが拭き取りに来る様子はない。
「忙しいんだろうね」
そう言って等は、バッグから除菌ティッシュを取り出した。
「そんなもの、持ち歩いてるの!?」
「ああ、あると便利だよ」
バッグの中に除菌ティッシュを忍ばせている人間なんて、初めて見た!
(あ、何か浮かびそう)
すっかり離れてしまっていた執筆活動の糸口を、蛍はようやく見つけた心地だった。
「さ、冷たいうちにいただこう」
「う、うん」
タピオカアップルジュースは、すりおろしたリンゴまで盛り付けてある蛍の想像を超えた飲み物だった。
「ん~、美味いね~」
「うん、おいしい」
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