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第二章・7

 市街の雑居ビルの3階に、等の事務所はあった。 「何か……、意外」 「もっと小綺麗なビルに、オフィス構えてるって思ってた?」  ドアを開け、入ってみるともっと驚いた。  無人だったのだ。  忙しく働くスタッフの姿を想像していた蛍には、さらに意外だった。 「社員は一人。俺だけ。社長自ら、身を粉にして働いてるのさ」  僕と同じだ。  そう、蛍は感じた。  たった独りで、PCに向かう毎日。  それは、たった一人で便利屋と言うオールマイティーな仕事と向き合う等に通じるものがある。  黙ってしまった蛍に、等は優しく微笑みかけた。 「つまんなかったかな? もう、行こうか」 「ううん。もう少し、ここに居させてくれないかな」  部屋に一つだけあるデスク。  そこに、蛍は掛けた。  ここで等はPCを開いて、サイトに書きこまれる依頼を待っている。  気に入った仕事しかしない、と言う等に、横柄な印象を感じていたが、それはやりたくてもできないのだ。  独りだから。  そんな等に、蛍は強いシンパシーを覚えていた。

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