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第二章・9

「ちょ、ちょっとだけ……」  蛍は、等に近づいた。  唇を寄せ、吐息がかかるくらいまで接近した。 「唇は柔らかい、って僕は書いてるけど」  果たしてそれは、どのくらい柔らかいものなのか。  自分の指で、自分の唇の柔らかさを感じたことはある。  でも、唇同士で測ったことはない。  眠りこける等の唇に、そぉっと蛍は口を押し当てた。  柔らかい。  想像以上だ。  180㎝越えのゴリラなのに、この唇の柔らかさは一体!? 「ぅん~」 「は、やばい」  起きかけた等から、素早く蛍は離れた。  ドキドキする。  まだ、ドキドキしてる。 「は、初めてキス、しちゃった……」  そう呟いた時、等が本格的に起き出した。 「あ~、ごめん。俺、寝てた」 「う、ううん。別にいいよ」  蛍は靴下のことなどすっかり忘れて、書斎に逃げ込んだ。  胸の高鳴りは、しばらく治まりそうもなかった。

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