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第三章・2

「蛍、友達同士ならこんなことしないよ」 「そ、そうかな?」  等は、数枚のカードを胸ポケットから取り出した。 「カード、変える?」  そういって差し出したカードには『恋人』の文字が。  途端に蛍は赤くなった。  そして、慌てた。 「べ、別にそんなつもりじゃないから! 取材! そう、これは取材だから!」  人の肩にもたれると、どんな感じかを知るための取材。 「今度の作品に使おうと思って」 「そう?」  そこで等は、少し意地悪く笑った。 「寝てる人にそっとキスするのも、取材?」  バレてた!  蛍は、さらに耳まで赤くなった。 「取材! そう、取材取材!」 「そうか~、取材か~」  等は、蛍にカードを握らせた。 「いいから、受け取って。新しい世界、広がるよ」 「あ……」  蛍の手に『恋人』のカードが渡された。  イヤじゃない自分が、ここにいる。 「OK?」  黙って蛍は、うなずいていた。

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