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第三章・3

 その瞬間から、等は蛍の恋人としてふるまった。  もたれる蛍の肩を抱き、静かに髪を撫でる。 「こ、恋人って、こんなことするのかな」 「する人も、いるよ」  蛍だって、小説で書いてたじゃない。 (そうだっけ……)  でもそれは、実体験を書いたわけじゃない。  恋愛要素のある他作家の小説にあるので、それを自分なりに消化して書いただけなのだ。  映画やドラマで得た知識で、綴っていただけなのだ。  実際にそんな甘い仕草を体験して、蛍はぼうっとのぼせていた。  気持ちいい。  心地いい。  ただ、その事ばかりを考えていた。 「キス、してみる?」 「え!?」  突然の等の提案に、蛍は声を上げていた。 「さっきは、蛍からしてくれたじゃない」 「そ、それは……」  ヤバい。  ドキドキしてきた。 「それとも」 「え?」 「さっきのが、ファーストキスだった、とか」  なんでそこまでバレてるのさー!?

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