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エピローグ・2

「書けた……」  ふう、と蛍は体から力を抜いた。  一度プリントアウトして、初めから読み返すのが蛍の推敲だ。  ただ今回は、等にもそれをお願いした。 「いいの? 出版される前の作品を、俺が読んでも」 「読み手側として、引っかかる点が見つかったら教えてよ」 「うん」  読み進むにつれて、等は気が付いた。  これは、蛍と俺のラブストーリーだ。  人間嫌いで引きこもりがちだった主人公を、積極的に外の世界へ触れさせる恋人。  契約で、期限付きのその恋人を、次第に本気で愛してしまう主人公。  契約期限が切れる前の晩、二人は最後の愛を交わす。  主人公は、今まで誰にも触れさせなかった素肌を、恋人に許す……。 「良かったよ、蛍」  読了し、等は彼に原稿を返した。 「ただ、最後はハッピーエンドにならないかなぁ。その方が、嬉しい」 「そうかなぁ。切ない終わりが、この作品にはふさわしいと思ったんだけど」  その件は吉村さんと話を詰めるよ、と蛍は括って、話は終わった。

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