52 / 55

エピローグ・4

 心に穴が開いているのは、蛍だけではなかった。 「引き留めてくれるかと思ってたんだけどな」  ああ、もう蛍の世話が焼けないと思うと、虚無感に襲われる。  ぱん、と両手で頬を叩き、等は自分に活を入れた。 「さて、次はどんな仕事をしようかな」  オフィスに戻った等は、久しぶりに自分のデスクでサイトを開いた。  蛍のマンションでタブレットを使い、まめにチェックはしていたが、新しい依頼が数件入っているようだ。 「あれ? これは……」 『独りぼっちの小説家を見捨てず、ずっと一緒に居て欲しいのです』  にっこり笑うと、等は迷わずメールを返していた。 『承りました。末永く、よろしくお願いいたします』  そしてバイクにまたがり、颯爽と走り出した。

ともだちにシェアしよう!