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エピローグ・5

 来るかな。  来てくれるかな。  等から素敵な返事をもらった後の蛍は、今すぐにでも会いたい気持ちでいっぱいだった。  等が来たら、お茶に招待しよう。  そう考えて、取って置きの紅茶の缶を開けた。  お茶菓子は、わざわざ出かけて、焼きたてのアップルパイを買ってきた。  人のために買い物に出かける、だなんて、ちょっと前までの蛍では考えられないことだ。  花まで用意して、テーブルに飾った。  そこまで出来たところで、インターホンから声が聞こえて来た。 「粟生先生、矢守ですけど」 「等!」  すぐに玄関を開け、等の胸に飛び込んだ。 「バカ等! 何が『粟生先生、矢守ですけど』だよ!」 「親しき中にも礼儀あり、と思って」  しかし、そんな礼儀は不要のようだった。  蛍のあたたかな温もりを、等は体中で受け取っていた。

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