53 / 55
エピローグ・5
来るかな。
来てくれるかな。
等から素敵な返事をもらった後の蛍は、今すぐにでも会いたい気持ちでいっぱいだった。
等が来たら、お茶に招待しよう。
そう考えて、取って置きの紅茶の缶を開けた。
お茶菓子は、わざわざ出かけて、焼きたてのアップルパイを買ってきた。
人のために買い物に出かける、だなんて、ちょっと前までの蛍では考えられないことだ。
花まで用意して、テーブルに飾った。
そこまで出来たところで、インターホンから声が聞こえて来た。
「粟生先生、矢守ですけど」
「等!」
すぐに玄関を開け、等の胸に飛び込んだ。
「バカ等! 何が『粟生先生、矢守ですけど』だよ!」
「親しき中にも礼儀あり、と思って」
しかし、そんな礼儀は不要のようだった。
蛍のあたたかな温もりを、等は体中で受け取っていた。
ともだちにシェアしよう!