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「上野 、お前の本、俺のとこに混ざってた」
佐々木 が持ってきた本を見て、思わずため息がこぼれた。あの日、祐樹からもらってきたものだった。
「なんだよ、持ってきてやったのに」
ぞぞむは不審そうに孝弘を見た。
「いや、ごめん。こっちの話。謝謝 」
「不用謝 。お前、どうかしたの? 最近元気ないじゃん。あの香港人と気が合わないとか?」
ここのところ、孝弘がふさぎ込んでいるのを心配していたらしい。
「いや、それはない。レオン、いい奴だよ。お前に負けず、ものぐさなところが俺と合ってる」
「そうか、なんかあったら言えよ。あ、日本みやげの最新グラビア、貸してやろうか? ほかにもいろいろ仕入れて来たから部屋に来いよ。こないだ帰国した奴からテレビもらったし上映会する?」
「バカ、いらねーわ」
と答えてから、ふと思い直して、やっぱグラビア貸してと言うとぞぞむは我慢すんなよとおかしそうに笑った。
そういうんじゃないんだけど、と思ったが説明できないのでうなずいておく。
「ずっと帰国してないだろ、いろいろたまってんじゃね。前の彼女と別れて3ケ月だっけ? グラビアは今、アレックが使ってるから、あとで持ってくるよう言っとく」
圧倒的に男が多い寮内だから、その手の会話はあけすけだった。
そういう意味でたまっているわけじゃないと思ったが、もしかしたらそうなのかもしれないし、祐樹に向かうこの感情がどういうものか、ちょっと試してみたかった。
借りたグラビアにはそれなりに刺激された。好みの女の子もそそられるポーズも載っていたし、体はちゃんと反応した。
そういえばけっこう久しぶりだったと思い出す。
祐樹を好きになってそれに戸惑っているうちに勢いで告白して振られて、そんな余裕がなかったのだ。
そのあと、かなり後ろめたい気持ちになったが、祐樹のことを想像してみた。
裸は見たことがないから、ビールを飲む横顔や照れたときの目を細める笑い方、ソファで見た寝顔なんかを思い出す。
それだけで体があからさまに反応して、好きなんだから当然だと思いはしても、孝弘は正直すぎる自分の体にすこしへこんだ。
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