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21-2
「本当にそう思ってる?」
仕事用の顔をやめた孝弘と目を合わせた瞬間、しまったと内心で舌打ちした。やっぱり部屋に来たのは失敗だった。電話で伝えればよかったと思った瞬間、自分の本心に気づく。
本当に何も期待しなかった?
こうして二人きりになりたいとまったく思っていなかった? ほんの少しも?
「思ってるよ」
平坦な声を出すことには成功した。
でも心臓がドキドキするのは止められない。
「だったら、ごほうびくれます?」
しゃあしゃあと言ってのけた孝弘が肘掛けに両腕をついて身をかがめてきた。両腕と椅子の背もたれに押されるように閉じ込められる。
試すような意志のこもった目と至近距離で目が合って、その強い目線にごまかすこともできず、祐樹は息をとめた。
たった今、自覚した本心と目の前の孝弘の眼差しに、くらりと眩暈を起こしそうになる。
「だめですか」
質問ではなかった。迷ったのは一瞬で、祐樹はかるく目を伏せた。
心のどこかでこうなることがわかっていたような気もするし、期待していたのかもしれない。部屋着姿の懐かしさに心揺れたんだろうか。
いやそんなこと、もうどうでもいいか。
身をかがめた孝弘がそっと口づけてくる。
かるく唇を押しつけられ、すぐに離れると角度を変えて何度も触れる。
その先を迷う祐樹を誘うように舌で唇をつつかれ、逆らわずにうすく開くと遠慮なく舌がもぐりこんできて、すぐに深い口づけになった。
何度も舌をからませて、祐樹の口のなかをくすぐるように愛撫する。すこし離れては、また深く貪るように口づけられた。
肘掛けについていた手が祐樹の髪にさしこまれて、大きな手が髪をかきまぜてくる。
気持ちがいいと素直に思った。背もたれに背中を預けて逃げられないまま首筋にもキスが降りてくる。ぴくりと体が震えた。
孝弘はどこまでするつもりだろう。
これ以上はまずい、気がする。
「上野くん……」
ためらいを含んだ呼びかけに、鎖骨を唇でたどっていた孝弘は顔をあげて祐樹の顔をのぞきこんでくる。
熱っぽくはあるが、思ったより冷静な目をしていた。
自分はどうだろう、熱くなった頬をごまかすように横を向いた。
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