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……降参だ。
祐樹は唇をかみしめた。
こんなにも孝弘が好きだったのか。
自覚していたけれど、わかっていたつもりだったけど、それよりももっとずっと孝弘が好きだったのだ。
失うかもしれないと思っただけで、泣けてしまうくらいに。
だめだ、と強く思う。
そんな想像で泣くのはだめだ。
大丈夫、すぐに目を覚ます。そしたら、言わなくちゃ。
逃げてばかりいた自分の気持ちを。
祐樹は立ち上がると、洗面所に行って顔を洗った。
右手だけでは思ったようにざぶざぶ洗えなくていらいらした。
悪い想像も一緒に洗い流してしまいたかったのに。
「今夜だけだから、とりあえずこれでいいか?」
戻ってきた青木から半袖シャツとジャージの上下を渡された。
サンダルもあったので、泥だらけの革靴と靴下も脱いでしまう。
予想より早かったと思ったら、あの運転手が来ていた。
昨日、病院に運び込まれたときから付き添って事情を説明してくれたそうだ。
いまも青木を乗せてショッピングセンターに行き、中国語のおぼつかない青木の買い物にも付き合ってくれたらしい。
案外、面倒見がいい。
祐樹と孝弘の具合を心配していたようで、祐樹の顔を見て何度もよかったと繰り返す。
昨日からの礼を言うと、ぶっきらぼうにも見えるしぐさでうなずいた。
孝弘が契約した料金にかなり上乗せして謝礼を支払うと、何かあれば連絡してくれと運転手は帰って行った。
彼が親身になってくれたのも孝弘のおかげだ。
親しく話して色々情報交換していたから、こうして世話を焼いてくれたのだ。
左腕の包帯を濡らさないようにシャワーを浴びるのはなかなか大変だった。
服が脱げないので、青木にはさみで切り裂いてもらい、どうにかシャワーを浴びた。
「片腕が使えないって、案外不便だな」
シャンプーするのも体を洗うのも一苦労だった。
シャワールームに置いてあるバスチェアに腰かけ、バランスを取りながら下着とジャージを履いた。
半袖シャツは大きめのサイズで、包帯をしたままでもそのまま羽織ることができる。
もらったときはへんな取り合わせだと思ったが、着替えやすい服を青木なりに選んでくれたのだと理解した。
清潔な服に着替えたら、さっぱりして気持ちも落ち着いた。
お茶を飲んで、買ってきてくれたバナナと弁当を食べながら今後のことを話し合う。
「高橋は4日後に抜糸と検査があるから、それまではホテルにいるか? そのくらいの怪我なら入院する必要はないだろ」
おせじにもきれいとも落ち着くともいえない病室だ。
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