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第10話 縄 -4-
翡翠は言行の、先ほど捻じ込まれた指にそのままさらに乱暴にそこを嬲られ、こらえられなくなったのか切なげな声を上げ始めた。
「いやです――あ、あ、止めてください、言行さん、もう、もうやめて――」
たまらず水谷は口を挟んだ。
「止めてやって――どうかやめてやってください。お願いします」
悪かった、水谷は思った。自分がここに泊まらなければ――翡翠を抱いたりしなければ――いや、そうでなくても、彼はここで責められるのかもしれないが。しかし――
言行が指を抜いたので、翡翠は声を上げなくなったが、呼吸は荒く、前の部分は張り詰めて、まだ苦痛は続いているようだった。
「水谷さんが挿れてやれば収まりますよ」
言行は言う。
「どうします。助けてやりますか?」
水谷が青褪めて黙っていると、言行は翡翠の髪を掴み、彼の顔を水谷の方へわずかにねじ向けた。
「翡翠さんもちゃんと自分で頼まなきゃ駄目ですよ。水谷さんだって遠慮しちゃうでしょう?」
翡翠は、鳶色の瞳に涙を滲ませている。水谷が息を飲んでその顔を見つめていると、翡翠は
「水谷さん……どうか……」
と囁いた。動けずその場に凍り付いている水谷を、井衛が促す。
「水谷さん。翡翠が――待っております」
のろのろと腰を浮かせて、転がされている翡翠の側に近付く。悪夢を見ているようだった。
「いきなりじゃ……難しいですかね。じゃあ……」
言行が言う。
「水谷さん、翡翠さんに口で奉仕させますから……顔、跨いで。とりあえず、脱がないでも出せばできるでしょ」
ためらう水谷に向かって翡翠がわずかに口を開く。声は発しなかったが、おねがい、とその唇の形が言った。
言われるまま仰向けの翡翠の顔に水谷が跨がると、ズボンの前を開けさせ、言行がそこに翡翠の首を起こして、彼の顔を無理に押し付けた。ためらって思わず水谷が腰を引くと、今度は翡翠が自分で顔をそこに埋めようと近づける。哀れになって水谷も腰を差し出し、少しでも翡翠の姿勢が楽になるようにしてやった。水谷の男性器に柔らかく翡翠の息がかかり、次いで――温かい舌がそれを絡め取った。ゆっくりと舐り始める。先を咥えられて引き込むように吸われ――中心に熱が集まった。
「……うン……ふ……ウ……」
水谷自身をしゃぶりながら翡翠が漏らす微かな息は、甘い響きを立て、無理矢理させられているはずなのに悦びを覚えているかのように聞こえる。なぜなんだろう、と水谷は思った。翡翠。どうして俺は、きみにこんな酷い仕打ちをしてるんだ。
「そろそろどうです?もう挿れられるんじゃないですか?」
言行が訊ねる。
「翡翠さん、昔から習わされてますからね……口淫もお上手なんですよ」
押さえていた頭を離し、言行は翡翠に囁いた。
「ホラ、水谷さんにお願いしないと」
翡翠が微かな声で囁く。
「お願い、水谷さんが欲しいんです……どうか挿れてください……」
懇願されて水谷は、翡翠の緊縛された下半身を抱え上げ、奥の……水谷を待ち受けている部分にあてがった。しかし相手が無理な姿勢で縛られていると……加減がわからない。
「アグ……う……!」
強く突き過ぎてしまったらしく、喘いでいた翡翠が辛そうに呻き声を上げたので水谷は焦った。
「平気ですよ。この子はそのための道具なんですから、水谷さんの好きに使ってくださっていいんです」
言行が言うが、水谷は必死になって、少しでも翡翠の苦痛を減らそうと調整した。
「この状態の翡翠に挿れちゃうとみなさん我を忘れるんだけどな、水谷さん丁寧ですねえ。もっと乱暴で大丈夫なのに。その方が翡翠さんも、じっくり水谷さんを味わえるんですから……」
翡翠のそこは、昨日と同じく程よく締め付けてくる。だが昨夜と違い、荒縄で緊縛された彼の身体は、自由に動くことが許されない。器のように、その部分でただ打ち込まれる水谷を受け入れるしかない彼の状態は、哀れで見ているのも辛い――。
言行が、目を閉じ頭をわずか仰け反らせて――白い喉笛を晒し、喘いでいる翡翠の耳元で囁く。
「翡翠さん、わかりますか?今あなたのそこに入ってるの――水谷さんのですよ。嬉しいでしょう。どうです、感じますか……いいですか?水谷さんのは――聞かせてあげてください――」
「はい、すごく、感じま……アッ!いい……水谷さん……みず……あ、あっ!あっ!」
不自由な身体を波打たせ、水谷に突かれながら、翡翠は達した。
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