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第17話
と、改めて気合を入れたところで、実を言うとこの現場で俺がやることはあまりない。
もちろんセリフはあるしいなきゃいけない場面も多いけれど、スタジオセットの中と比べると格段に動きが少ないんだ。
それはそれで、オウジの心をいかに言葉なくして見せるかを考えなきゃいけないから動きの多い時とは別の難しさがある。
それでも最初のうちは順調だった。二人について歩き、アソビバを歩き回り、ヒントを与え、けれど己自身もたびたび出会うものに困惑し、迷って進み。シュウリやハカセに負けないくらい、オウジを演じられている自信があった。
けれど、ロケの終わりが近くなった頃、俺はどうしようもなく躓くことになる。
「それじゃあ『子供の演技』なんだよなぁ。もっともっと子供そのものの顔が欲しいんだよ」
大事なオウジの笑顔が作れない。台本には「オウジ、嬉しそうに笑う」としか書かれていないその顔が、どうしてもうまくできなくて。
子供っぽく笑っても、無邪気に笑っても、これじゃないと自分でわかっているのにぴたりとくるものが出てこない。
子供のとき、どうやって笑っていたっけ? どんな気持ちで笑っていた? この時のオウジの気持ちは? 子供らしい笑い方って?
「綺麗に整いすぎてるんだよなぁ。うーん、もっとこう、なんか違うんだよなぁ」
「すみません……」
監督の言葉に泣きたい気持ちで謝って、その後も何度もやらせてもらったけど結局オーケーは出ないまま時間の関係で持ち越しになってしまった。
明日もう一度ということになり、俺は頭をぐるぐると悩ませながらホテルに戻ったのだった。
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