「ごめんなさい。園長先生、ちょっと電話が来ちゃって。話は聞いてるからこちらへどうぞ」 　そんな風に案内されたのは、様々な年齢の子供たちが遊ぶ部屋だった。 　こういう業界にいあると忘れがちだけど今日は一般的には休日で、しかもちょうどご飯が終わった後だったらしく人が多い。 「悩んだ時は本物に触れるのが一番でしょ」 　朝から真神くんがわざわざ借りた車で連れてきてくれたのは、ロケ地からは少し離れたところにある児童養護施設だった。しかもそこは縁がある、程度の場所ではなく、真神くん曰く「俺の実家」だそうで。 「笑顔いっぱい仕入れてください。皐さん、悩んでる顔全然似合わないんで」 　多くを語らず子供たちの中に入っていく真神くんの慣れ具合からしてどうやら何度も来ているらしい。というかどうも建物がところどころ新しいのは真神くんの寄付によるらしいと案内してくれた先生にこっそり聞いた。本人は言わないけれど、と付け足された辺り、真神くんらしい。 　なにより真神くんを迎え入れる子供たちの笑顔が弾けるほど輝いていて、こっちまでつられて笑顔になる。引っ張って取り合われて、それこそ一人立ちしたお兄ちゃんが久々に帰ってきた感じだ。 　微笑ましいという言葉がよく似合う。 「なんか、こう言っちゃあれだけど……ドラマの登場人物みたいな人だね真神くんって」 「どういうことですか」 　構ってほしくて体にとりつく子供たちを慣れた感じに相手をして、それから俺を引っ張り込もうと戻ってきた真神くんに思ったままの感想を洩らしたら顔をしかめられた。 「結局、かっこいい男だなって」 「結局が引っかかるんですけど」 「気にしないで。それより、大事な場所に連れてきてくれてありがとう」 「……まあ、他にツテないんで」 「ご褒美ご褒美」 　照れ隠しなのかそっぽを向く真神くんの頭を雑に撫でたら、みんなが笑って真似をしたがって、それに文句を言えないでいる真神くんを見て俺も大声で笑った。