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第25話
「まだ来週のはずなのに」
「俺の発情に反応したんじゃないですか」
両手が使えない俺の代わりに俺の服を脱がす真神くん。
淡々としているようだけど、触れている下半身がずいぶんと硬い。
「初恋の人と再会して、番になるチャンスがあって、そんなもん発情するでしょ」
当然だろと少し拗ねたように言う顔が妙に子供っぽくて、愛しくなって腕を引き付けてそのままこちらからキスをする。
「んっ、ん、……んっ」
唇が触れ合うたび思考が蕩けていく。舌を絡めて、軽く吸われるだけで甘い痺れに支配されて体の力があっさり抜けた。
キスだけでこんなに気持ちいいなんて困る。
「あ、やだ、もう一回して」
唇が離れたことに寂しさを感じてねだると、一度だけちゅっと口が触れ合って、そのままその唇が首に下りた。
その瞬間、ぞくぞくぞくっと背筋を怪しい痺れが駆け上る。
「はあ……あっ、ねえ、まかみくん、早く噛んで」
「まだダメ」
噛まれたわけじゃないのに、ちらちらと歯が当たるたびに痺れるほど感じてしまう。早く噛んでほしい。早く真神くんの番にしてほしい。そんな思いで頭が爆発しそうだ。
初めてした時はこんな風じゃなかった。
それなのに今はもうその歯が首筋に打ち込まれることしか考えられない。
「あっ、はやく、ぅ」
「皐さん、ここトロトロ……」
焦らすつもりなのか俺自身に手を這わせる真神くんに腰が疼く。真神くんに触られると気持ちいい。だけど、だからこそ欲しい刺激はそれじゃない。
「ん、っ、それいらない、あ、ぅ、ねえ、んんっ、いじわる」
触るまでもなく硬くなって勝手に蜜を零す俺自身をゆるゆると扱く真神くんに、ねだる声さえ蕩ける。
自分ではそんなつもりないのに、媚びるような甘い響きが勝手に漏れて、耳から自分を煽る気がした。
「早く入れて。真神くんに早く噛んでほしい。おねがい」
「ああ、くそ、ヒートのフェロモンってこんなすごいのか……っ」
今まで見せたことのないような余裕のない表情が男らしくて可愛い。
それを見たらより一層早くしてほしくて自ら足を開くと、真神くんが乱暴にその足を抱えてより大きく開かせた。
「どうなっても知らないから」
「ああああっ!」
吐き捨てるようなセリフと、遠慮のない突き上げ。ずぷりと一気に奥まで飲み込んだことで、どれだけ俺の体が真神くんを待ち望んでいたのかを知らされる。
そしてその感覚に慣れるより早く、真神くんが律動を開始した。その動きに、目の前がちかちかするほど快感が飛び散って、堪えきれない声が上がる。
「あぁ、んっ! んっ、もっと、まかみくん、もっと」
「舌回ってないのめちゃくちゃエロい」
「ひあっ! あ、あっそこ、あ!」
ぐちゅぐちゅと繋がった場所が卑猥な音を立てる。
思考が溶けて、自分がなにを言っているのかまったくわからない。突き上げられるたび声が漏れて、それを聞いてまた真神くんが深く浅くリズムを変えるように突き上げて。
「皐さん、好きだ、好き、本当に、ずっと好きだった」
突かれるたびに好きと囁かれ、体が好きで満たされていく。それが気持ち良くて気持ち良くて、おかしくなりそうなほど気持ち良くて。
「あっ、あ、まかみく、あっ」
「薫って呼んで。声、聞かせて」
「かおるくんっ、俺も好きっ、つがい、なりたいっ」
もうそれしか考えられなくて、真神くんの体を引き寄せるとすがりつくように抱きついた。
「あんた本当にかわいすぎ……っ」
次の瞬間、真神くんの声が耳元に吹き込まれ、頭をぐいっと横に向けさせられると同時に待ち望んでいた強い楔が打ち込まれた。
「あ、あ、ああああっ!」
強すぎる刺激でイくのと同時に、言葉にできない感覚に支配されて体を震わせる。この前ただうなじを噛んだ時とはまったく違う感覚。まるで遺伝子ごと書き換えられている気分とでも言ったらいいのか。
気持ち良くて、でもそれだけじゃなくて、好意と安心が体中に満たされていく気がした。
「皐さん、皐さん?」
それがあまりに強い刺激だったのか、一瞬意識が飛んでいたようだ。心配そうな真神くんにそっと頬を撫でられ、目を開ける。
「皐さん、大丈夫?」
「も、しんじゃうかと思った……」
あまりにめちゃくちゃで、気持ち良さが振り切れて頭がおかしくなりそうだった。それでもなんとかさっきまでの爆発的な熱が治まっていることに気が付いて、大きく息を吐く。
「皐さん、本当に、大好きです」
噛んだその場所に唇を当て、真神くんは愛しげに俺の名前を呼ぶ。その声が溢れるほどの優しさに満ちていて、今さら恥ずかしくなって真っ赤になる。同時にフェロモンとともに溢れた欲望にあっさり流されて浸った痴態まで蘇ってきて、耳まで熱くなる。
真神くんと、本当に番になってしまった。
「俺を選んでくれたこと、絶対に後悔させないんで、覚悟してください」
激動すぎる時間に思わず呆ける俺をぎゅっと抱きしめて、真神くんは力強い声でそう誓った。と、思う。
残念ながら俺はすっかりと疲れ切り、意識がほとんど夢の中で。
その上すぐにその後眠ってしまったせいで、朝起きて目の前に真神くんの寝顔がドアップで現れた驚きでベッドから転げ落ちたことは、地味で誰にも言えない恥ずかしい話。
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