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第4話 「天才」との再会

4月にデビューしたRINGはメディアから引っ張りだこで分刻みのスケジュールになった。 同時に青木はドラマも入り、レイもラジオのレギュラーが入り、バタバタとした日常だった。 音楽番組の収録のために、青木とレイを除くメンバーが楽屋で待機していた。コンコンとノックの音がしてドアを優一が開けるとカチンと固まった。 大河と誠は様子がおかしいとドアを除くと誠と同じくらいの長身に長めの髪をオールバックに結んだ人。堀が深く如何にも芸能人という綺麗な顔で微笑んでいる。 「やぁ、ネコちゃん元気?」 ヘラっと笑った顔と柔らかい声音だが優一はピクリとも動かない。それどころか大河も固まった。 「大河も、元気か?」 大河は誠の服をぎゅうっと握りながら瞳が落ちそうなほど凝視している。 「あれ、レイはいないのか?じゃ、お邪魔しまーす」 固まる優一の肩を抱いて入ってきたこの人は、ブルーウェーブのタカさん。 「あ、初めまして!誠といいます」 「へぇ、君?噂のまこちゃんは。会えて嬉しいよ」 ニコリと人当たりのいい笑顔に安心して、誠も笑顔で返す。すると、タカさんはおっ!という顔をしてなるほど、と呟いた。 「どうした大河?こっちおいで」 先ほどの場所から動かず立ち竦む大河に誠は疑問でいっぱいだった。それに優一まで様子が変だ。 「ネコちゃんも今日は大人しいのな?前は発情期だったかな?」 優一を隣に座らせ手を取った瞬間、優一がパシンと手を打った。 「やめてください」 「ゆ、優くん…?」 「ふふ、ネコちゃんはそうこなくっちゃ〜。まだまだ発情期かもね」 ただならぬ空気に誠はおどおどする。誰も発しない空間に飽きたのかタカさんは席を立った。 「じゃ、今日同じ現場だからよろしくなぁ」 がちゃんと閉まる扉と遠のく足音。 優一を見ると一点を凝視してひどい汗をかいていた。 大河はというと 「大河さん…?大河さん!?」 歯がカチカチなるほど震えている。2人を一箇所に固めて抱きしめる。 (なんだ…?あの人が来てから2人がおかしい) 「おはよーございまーす」 「おはようさ…どうした…?」 レイと青木が入って来てくれて、誠はほっとしてタカさんの話をした。 「入って来たのか?!」 「えっ!うん…ここに座って、優くんを隣にして…。大河さんに元気か?て話してたけど、2人とも話さなくて」 青木は優一の汗を拭きながら深刻そうな顔をしているし、レイは大河をぎゅうっと抱きしめる。 「ねぇ、どういうこと!?何があったの?」 誠が騒ぐとレイは大河と優一にいいか?と確認を取りながら話し始めた。 「大河を襲った先輩はタカさんだ」 「え…?」 レイに隠れる大河はまだ震えが治らない。鼻をすする音が聞こえる。 「そして、マコ。この間の定期公演での事件。その後いろいろあって優一がある先輩たち相手に爆発した。その時、タカさんに殴りかかったのを俺がとめた。」 「タカさんがユウを煽ったから…ごめん、あの時俺もそばにいたのに、何もできなくて。」 静かに語るレイとあの日を思い出して落ち込む青木。 優一がまた自分のために闘ってくれたことを知って誠はひどく悔やんだ。優一はキレると手がつけられないし完全に別人だ。誠でさえ止めることはできないのだ。それを知らないまま、自分は…。 恋人の震える姿、親友の固まる姿、何も知らずにあの空間を作ってしまった。 「まぁ、そういうことだ。ブルーウェーブとは共演NGだったが、この番組は登竜門的なものだから出なきゃアピールはできない。大河も了承したが…まさか楽屋まで入ってくるとは。」 「ごめんなさい」 「いや、マコが謝ることはない。伝えてなかったのもごめんな。」 レイは伊藤に連絡を入れ、大河を椅子に座らせた。レイの腕を離さず握り、嗚咽のような泣き声が聞こえて胸が痛む。 優一は顔面蒼白のまま一点を見つめていた。大河に触れようとするとレイが止めた。 「マコは収録の準備してな。大河のパートいけるか?」 「え…?」 「大河は今日は無理だ。帰宅させる。今から伊藤さんが送ってくれるから大丈夫だ。お前たちには俺がいるから安心しろ。ユウ?ユウはいけるな?」 コクンと頷く優一。複雑そうな顔をした伊藤が着くと、大河にマスクを着けさせ帽子を深く被り、大河はこちらを見ないまま去っていった。 「レイさん、大河さんのパート、俺やるよ」 優一は目が座っていた。負けず嫌いの完璧主義を発揮している。 「優くん、俺にも分けて?こんなことになったのは俺の責任だ。本当にごめんね」 大河のパートを2人で分け、ロングトーンは優一が担当になった。収録現場ではスイッチを切り替える。優一も笑顔で対応している。トークはほとんどレイが話した。 歌のスタンバイをタカが見に来ていた。 「レイ〜!頑張れよー」 「ありがとうございます」 「大河は?」 「体調不良です。」 「仕事を落とすなんてまだまだ甘いな。ネコちゃん見習えよなぁ。なぁ、ネコちゃん?」 聞いているこちらがハラハラするほど優一を煽るタカ。優一はリアクションすることなく、カメラを見続けた。 練習なしのパートだが、優一も誠も全力で取り組むと、大河とはちがう魅力がそこにあった。優一のロングトーンは気持ちを発散するかのような強さと迫力があり、スタッフたちは歓声をあげ、タカも感心した様子だった。 「OKです。お疲れ様でした!」 「お疲れ様でした!」 一発OKをもらい、頭を下げて楽屋へ向かう。たった一曲だが汗だくの優一を見てタカは口笛を鳴らした。 無視して通り過ぎようとすると腕を引かれた。 「やっぱ、イイね。俺のネコちゃん。ますます気に入ったよ」 優一の耳元で低く甘く囁き、優一がビクッと肩を揺らした。強がって睨みつけるもイイねと言われれば太刀打ちできない。 無理矢理腕を解いて無視して楽屋に早足で戻った。 「あ、マコちゃん?おいで?」 「はい」 さっきの話と優一とのやりとりを見て警戒する。 「マコちゃんさぁ、何のためにこの仕事してるの?」 「え?」 「いやさ、特別音楽に命かけてるわけでもないし、この世界にどうしても入りたいわけでもなさそうだから」 ネコちゃんは音楽が好きって伝わるよね〜と、優一を思い出してか舌舐めずりをした。 「どうなんだ?」 「俺は…」 最初は優一の夢を一緒に追いたかった。次は大河さんと同じステージに立ちたかった。でもこれはタカさんの理由になるのだろうか、そう思うと答えられなかった。 「マコちゃんは、顔もいいし、歌も上手い。けどまだ何もない、かな。」 天才が多いこのメンバーの中で、誠は凡人そのものだった。 「しんどくない?凡人がみんなに付いていくの。まぁ才能あってもメンタル弱かったら意味ないよって大河に言っといて?」 言いたいことだけ言って去っていく先輩に、ちょっと、と呼び止めてしまう。 「あの…タカさんが来てから2人が動揺していました。メンバーに絡むの、やめてもらえませんか?さっきの優くんとのやりとりも…」 「ねぇ、もしかして、誰かのためにこの仕事してるの?それってメンバーだったりする?」 遮るように声を強めにしたタカに押し負ける。 「そ、それの何がいけないんですか」 「早いとこ元の場所に戻ったほうがいいよ〜?…君は…優しすぎるし、隙も多い。わざわざ大変な世界にいる必要もない。君はどこにいても嫌わなれないタイプだろうから。前いた場所の方がどんなにイイか、今から分かると思うよ。そして…俺のタイプではないけどいろいろ気をつけなよ?」 つかみどころのない人だ。言いたいことは何も言えないまま楽屋に戻ると優一がひどく荒れていた。青木は誠を見ると、やっと帰ってきたといいながらドラマ現場に去っていった。 「優くん、帰ろ?」 レイも次の現場に行っていて大河を送った伊藤が迎えにきていた。 「まこちゃん」 「ん?」 タカさんに言われたことを窓を見ながら考える。優一は真っ直ぐみたまま話しかけた。 「なんか、言われた?」 「え、なんで…」 「気にしないで。あいつの言うことなんか。俺たちをかき乱したいだけだ。」 大河と優一の部屋に居させてもらうことにしたが優一は部屋に篭ってしまった。優一がこんなにかき乱されるのは珍しかった。 反対側の角部屋にいる恋人にドア越しに声をかけたが反応がない。 「大河さん…おじゃまします」 ベッドが丸くなっている。ベッドサイドに座り頭を撫でると寝返りを打ってこちらを見た。 「まこっ、おれっ」 顔をくしゃりと歪め大粒の涙が溢れた。手を握りながら大丈夫大丈夫と声をかけ続けた。 「伊藤さんお帰りなさい」 「ただいま。大河はどうだ?」 「ずっと泣いてて…さっき寝たところ」 そうか、とジャケットを脱ぐ伊藤さんには疲れの顔が見えた。同じく分刻みのスケジュールとはべつに仕事を取らなきゃいけない。レイの仕事終わりにまた出かけるそうだ。 「しばらくは落ち着いてたんだが…やっぱり心が追いつかないよなぁ。今回、大河が大丈夫だ、メンバーのためにも頑張るって言ったんだ」 断るべきだった…と大きなため息をつく。あの人のした事がこんなにも傷をつけて、なのに飄々としている。 「タカはうちの稼ぎ頭だ。音楽的才能もずば抜けているし、歌唱力はこの芸能界でも注目されている。それに作詞作曲はもちろん、プロデュースもやっている、まさに天才だ。大河はその天才、タカのプロデュースのもと動く予定だったのさ。」 誠は凡人と言われたことを思い出した。 「大河は入所してすぐにタカに選ばれたから、みんな余計大河に近づかなくなったらしい。それは嫉妬だけど…その分、大河はタカに依存するようになったそうだ。俺にはタカさんしかいない、って。」 ひとりぼっちの大河のそばにずっといて、アドバイスをして、育てたのにあんな事件を…?途中までは本当に良い人にしか思えない。 「気に入ったものはじっくり自分色に染めて落とす。タカがよく後輩に言っているらしい。大河はその通り、依存と信頼、尊敬をすべて裏切られた。その絶望感が美しいとさえ話していたらしい。」 天才の考えることは普通じゃないよ…。目を擦りながら呆れたように伊藤は語った。 「どうしよう、まだ大河さんを気にかけていたし、優くんを気に入ったと言ってた」 「らしいな…。ユウも目に見えて動揺してるからそれもタカが喜ぶだろうな。とにかく近づけないようにしないと…。ここは青木とレイとマコ、協力頼むな?」 はい!と大きな声で答えた。いつも誠を助けてくれる2人を今度は自分が守る。そう誓った。 伊藤が出かけたあと、誠は優一の部屋をノックした。 「まこちゃん?どうぞ〜」 落ち着いたのかいつもの様子だったが床にはギターやパソコン、ヘッドフォン、紙が散らばってた。 「曲、久しぶりに作ってみた!聞いてみて」 ヘッドフォンを渡され、目を閉じる。珍しくダンスチューンでステージで披露できそうな曲。 「かっこいい曲…」 「暗闇がテーマなんだ。俺ね、一度過呼吸なったでしょ?その時暗闇でいろいろな夢を見たんだ。なんだかそれを思い出すと今日のことがどうでも良くなって…夢中で作ってた」 えへへ、と笑う優一を誠は抱きしめた。 一瞬驚いた優一だったが腕を背中に回した。 「俺なんかのために爆発したってきいた。ありがとう…ごめんね。」 「ううん。自分がちゃんとまこちゃんを見てなかったから…怖い思いさせたね。」 人のために怒ったり泣いたりする優一。優一のためになにができるだろうか。 「まこちゃん、この曲、少し歌詞書いたから聞いてくれる?」 編曲の分は少しテンポが速いからアコースティックギターバージョンで、と手に持った。誠は昔から優一の弾き語りを聞くのが好きだった。 「久しぶりだぁ!嬉しい!」 目を閉じて曲の世界に浸る優一を見ると本当に幸せだった。気持ち良さそうに、音の中を泳いでるみたい。その瞬間は世界に2人だけの気がして居心地がよかった。 長いまつ毛が震えて、色素の薄い優一の大きな目と目が合う。曲中に目を開けることはないから、いつも食い入るように優一を見ていた誠は、初めてのことで顔が真っ赤になる。そこからお互い視線を外さないまま曲が終わった。 「優く…」 「まこちゃん、ありがとう」 誠の目から涙が溢れた。優一は綺麗に笑っている。気付いた優一の気持ちにボロボロ泣いた。 幼き日、誠が抑えた感情を今優一に伝えられたからだ。 「まこちゃん、大河さん、大切にしなよ?」 コクンと泣きながら頷いて優一に抱きついた。お互いが大切すぎて、近すぎて、線を引いていた気持ち。今頃いい思い出と、打ち明けられた。お互い進むために、お互いが本当に繋がり合うために。 コンコン 「ユウ…いる?」 「大河さん、いるよー!」 優一の部屋に大河が入ってきた。ボロボロ泣く誠に驚いた。 「マコ!?どうした?!大丈夫か!?」 「あはは〜大丈夫だよ。ちょっと昔の話をね、してたんだ」 「そう…か。歌が聞こえた、ユウの歌?」 「そうだよ〜。今日むしゃくしゃしてたから一曲作った。」 俺も聴きたいと誠に並んで座った。大河も落ち着きを取り戻していた。優一は目を閉じアコースティックギターをかかえた。途中で目を開けることは無かった。 優一が言いにくそうに、ごめんだけど、といいながら大河にタカの話をしてほしいと言った。少しビクついていたが、優一が絡まれていることを聞くと決心したように話し始めた。 「君が大河くん?こんにちは、タカです」 テレビで見たことのある、ザ芸能人オーラを放ちながら大河のところへ来た。友人や仲間がいない大河に声をかけたのは、タカや事務所スタッフくらいだった。その日、みんなの前で呼ばれてプロデュースすることを告げられた。 レコーディングスタジオやレッスン室、仮眠室などを案内されながら、柔らかな声で話しやすい雰囲気を作ってくれた。 「いや、ここは半音下がったから気持ちあげようか。感情はそのままで」 一対一のレッスンは分かりやすいく、大河はどんどんレベルがあがった。ご飯にも連れて行ってもらい、いろいろな話を聞いた。 「お前は天才だ。才能がある」 「他なんか気にしなくていい」 「お前の魅力は俺が分かっている」 「1人なんかじゃない、俺がついてる」 貰った言葉はどれも大河を酔わせた。大河は自分の理解者はタカだけだと本気で思っていた。そこへレイが入ってきて少しずつ話すようになるとタカは厳しい言葉を浴びせるようになった。 「凡人と関わることは愚かだ」 「誰もお前を理解しない」 「お前の居場所はステージしかない」 大河には少し迷いが出てきていたが、タカに認められたくて必死だった。定期公演にタカが来ていると連絡があり、今までの全てを出し切った。タカが来ている時は必ず楽屋にいるから終わったその足で向かった。 「タカさん、お疲れ様です」 「大河、お疲れ。鍵しめた?」 「鍵?…うわっ!何…んンっ!」 鍵を確認する為後ろを向いた時、後ろから抱きしめられ顔をだけを後ろに回されキスされた。鍵を閉められ近くのソファに押し倒される。 すぐに下半身を脱がされ唇でなぞられる。 突然のことに理解が追い付かず、そしてタカの様子がいつもとちがい、別人のようで恐怖で涙が滲む。助けて欲しくて大声叫んだ。 「なんでっ…やめてください!!イヤだ!誰か!助けて!!」 カシャ カシャ 大河は目を見開いた。 自分の下半身から携帯電話を持ったタカがニンマリと笑っている。 大きな目からはボロボロと涙が溢れる。 なんで、いつものタカさんはどこに?訳がわからないまま、ひたすら抵抗した。 「大河?お前には俺しかない。忘れた?」 涙で視界が滲む。優しかった人、尊敬して、憧れた人が、自分にはこの人しかいなかったのに。 萎えたままのソレを中途半端に弄りながら、指を孔に突き立てる。 「もう…っ、は、ぐすっ…痛っ…ぃッ…ヤメ…てください」 「泣きすぎ…少しは、興奮してくれないと困るよ」 「怖い…もうヤメてください…」 「いいの?この画像、みんなに見せても」 「なんで…こんなこと…っぐすっ…ふぇっ…ん、ヤダっ!!」 キスをしようとあがってきた体を押し返すとまたニヤリとして両手を抑えられる。するとピアスに歯を立て始めた。 「アッ…やっやだ…」 「大河」 タカは耳が敏感だと気付いていた。低く囁き、思いっきり舌を差し込みこの音しか聞こえないくらい嬲った。 「んンッ…はぁ…嫌だ…ンぁっ、は、は、」 大河はだんだん力が入らなくて思考がぼんやりする。耳から首に降りてくるだけでも腰がビクビクと動いた。トロンとした顔にタカは舌舐めずりをして、耳元で囁いた。 「お前は俺のものだ。誰にも渡さない」 耳が敏感で、タカの声が好きだった大河はゾクゾクと震えた。一気に硬さが出た大河をタカは急に思い切り握って扱きはじめた。 「っ!?あぁあーッ!ヤッ!ぁあっ!うそ…ヤメてっ!んっ!出ちゃ!ヤダぁ!」 首を振って射精感を堪える。タカの手を止めようと必死に引っ掻くが止まらない。 タカは片手にまた携帯電話を構えている。 「ほら、出してごらん。」 「はっぁ…っ録らないで…やだっ!は、は、は、ーッは!!ぁあっ!出るっーーっ!っぁあああーー!」 腰を仰け反りながら着たままだった衣装にぶちまける。もともと淡白な大河だったが溜まっていたのか、人からの強制的な射精にしばらく出し続けた。 「美しいよ大河。世界で一番綺麗だ。」 勝手に跳ねる身体をタカの舌が這う。 息が整わないうちに呼吸が止まるような痛みが走った。 熱いなにかが当てられ、大河は霞がかる頭でも何か分かった。 「やだ…お願い…誰か、誰か助けて…ここから出して…こわいっ」 「大河、お前は俺しかいない」 「俺に…は?」 「そう、お前にはもう俺のほかに」 「タカさんのほかに…」 「誰もいない」 「ぁああーーッ!!!」 内側が切断されたような感じたことない痛みに大河は意識を飛ばした。 レイやスタッフが見つけた時は、大河に意識はなく、涙の跡が残り行為後のそのままだった。下半身にはバスタオルだけかけられて血と精液がそのままにされていた。レイとスタッフは事務所と病院に連絡を取り大河はそのまま入院した。タカは事務所での地位が高く稼ぎ頭だったこともあり今回の件は門外不出で揉み消された。 病院で目を覚ました大河はパニックになり、何度も薬の投与で眠らされていた。タカから本人への謝罪はなく、むしろ「同意のうえ」とか「大河が誘ってきた」などと話していたようだ。 レイだけが事件を知り、大河を支えたいとそばにいてくれていた。事務所はタカと大河の接触をとことん避け、定期公演にもブルーウェーブは出演しないこととなった。 大河は事件後の1週間くらい声が出せなくなったが少し出た時、レイと手を取り合って笑った。 自分の声でこうして喜んでくれる人がいるなら、と大河はボイストレーニングを再開した。 仲間が出来て、定期公演にブルーウェーブが出ると知っても、今回の番組も一緒だとしても大河はやりきるつもりだった。 ただ、自分自身で思っていたよりも傷が深く、また、楽屋に来たということで全てがフラッシュバックしていた。 「カフェでさ、ユウに警戒しろって言ったろ?俺と似てるからさ、もしあの人の目に入ったら…と思ったら怖かったんだ。もう、狙ってるようだなその感じだと。」 困ったように大河は優一を見つめた。優一は不安そうな大河の頭をわしゃわしゃと撫でて元気よく言った。 「あの人なんかに負けないよ!大河さんも、今は俺たちがいる!1人なんかじゃない!大丈夫!ほら、頼もしい恋人もいるし?」 「……えっ!!?」 優一の言葉に感動していた大河だったが、最後の言葉に誠を見て茹で蛸みたいに真っ赤になった。 「え!?マコ、お前っ!ちょっと!」 「痛っ!ちがうよ!だって優くんが気付いたんだもん」 「あははっ!大河さん、まこちゃんは天然の人たらしだから苦労するよ〜」 「分かる、もうちょっと苦労してる」 「え!?なにそれ!優くん、人たらして何?大河さん、俺のこと嫌になった?」 幻の尻尾や耳が垂れてるのが見えて優一と大河は爆笑していた。意味は分かってないが元気になった2人に安心したのと同時にこの繊細な2人を守る、その使命感で気合いを入れ直した。

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