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第7話 合鍵の行方

いよいよサナのリリースライブの日。 ライブハウスにはマスコミのカメラや記者も入って、もともとサナの動画のファンたちやタカや優一のファンが応援に駆けつけていた。 楽屋挨拶には、事務所の社長をはじめ、ブルーウェーブのメンバーやRING、78の篤さんなど関係者も来ていた。 「サーナ、緊張しすぎ!」 「ユウさーん!だってー!」 「あはは!!大丈夫だって!ほら、ぴしっと」 「はいっ!!…あ〜〜やっぱ無理ですよぉ」 優一はサナの緊張をほぐそうとずっと隣で声をかけている。胸の前で手をぎゅうっと握って落ち着かないのを見て、優一はどこかのメンタルの弱いやつを思い出してクスッと笑った。 「サーナ」 「ユウさん…っ」 握ったてをサナよりは大きな優一の手が包む。 「俺が見つけたとっても大切な歌声。みんなに伝えよう?」 「…っ!!はいっ!!頑張ります!!」 「うん!いい笑顔!」 真っ赤になりながらも元気を取り戻したサナを見て安心するもタカの冷ややかな目を見ないふりする。 「魔性だねぇ〜」 「言うと思いましたっ!仕方ないでしょ!緊張しすぎてるんですから。」 「あ〜吠えるな吠えるな。頭に響く。少し寝かせてくれ。」 タカから言い出したくせにとため息を吐いてじっと睨むとすでに寝息をたてていた。 タカが寝るところを優一は見たことがなかった。キングサイズのベッドは小さな優一が使い、隣に来るわけでもなく作業部屋に籠っているのだ。自分でショートスリーパーだとは言っていたが寝なさすぎる。 「俺がいるから、休めない…ですよね」 泣きながら縋ったのも覚えている。あの時は本当に何もかもを壊してしまいたかった。全部失ってもいいと思っていた。しかし、手を差し伸べてくれたタカの優しさにすぐに甘えてしまった。「壊してください」と言ったが最初以来何もされることはなかった。 「タカさん…?」 「ん?どうした、眠れないか?」 ある日の深夜、目が覚めた優一はなんとなく人肌恋しくなってタカを探した。作業部屋から漏れるあかりに吸い寄せられ、寝起きの声でタカを呼ぶと心配そうにこっちを向いた。 「やっぱ…俺にはそーゆことする気にならない?」 「俺には……?…まさか、今更大河のこと持ち出してくるんじゃないだろうな」 「だって…」 抵抗しても辞められないほど、大河を愛していたタカのことを優一はいつかの夜に聞いた。 ふかしていたタバコを灰皿に押し付けて、タカは優一と向き直った。 「お前もう落ち着いてるだろ。それでもぶっ壊されたいなら他にお願いしてみろ。」 「タカさんじゃないと嫌です」 「なんでだ?」 なんで?と言う言葉に優一は黙り込む。なんで…大河を壊したから?初めはそれしか理由がなかった。けど、青木とも離れた今、落ち着いたメンタルの中なんでタカに壊されたいのか。優一は無意識に壊されるくらいの愛を欲していた。 「それが分かったらあつ〜い誘惑期待してるぞ」 「何言ってるんですか!そんなのしませんよっ!おやすみなさい!」 「ふふ、はいはい、おやすみ〜」 優一は聞いて損したとベッドに戻りすぐに目を閉じた。 「こいつも大概鈍感だね〜だから拗れたんだろうな…。ははっ…思ったよりしんどい」 新しいタバコに火をつけ、タカは作業を再開した。 疲れた様子の、初めて見た寝顔はいつものからかうような表情ではないことが意外で、じいっと見つめる。 改めて見るとアイドル事務所所属もあって整った顔をしている。まつ毛長いことや高く鼻筋通ってること、そしてこの薄い唇はこうみえて柔らかくて… 「っ!?」 (よ…欲求不満なんだ、俺!) 無意識に近づけようとした自分に驚き、真っ赤になった顔を隠すため楽屋からでた。 (……本当に、魔性すぎだろ) タカは寝返りを打ってうなだれた。 「みなさん!今日からよろしくお願いします!」 いよいよ本番のスタンバイ。サナはスタッフに元気に挨拶し、優一とタカにいってきます!とウインクして暗転のステージに向かった。 『こんばんは!サナです!聞いてください、ハロー!』 アップテンポの曲に会場も湧いている。 なによりサナが輝いて、観客も魅了されている。 袖から見ている優一にも自然と笑顔が浮かぶ。すると肩に腕が回され耳元でタカが囁く。 「お前が作ったステージだ。よく頑張ったな。」 優一は目を見開いて、言いようのない溢れる気持ちに処理が追いつかない。 頭をぽんぽんと撫でられ、去っていくタカの背中に体が勝手に吸い寄せられ、お腹に手を回し、ぎゅっとしがみつく。 「タカさんがいたから、できました。ありがとうございます。」 「はいよ〜」 感極まっている優一の言葉をいつものようにサラリと流され、回された腕を外そうとするのが嫌で余計に力を入れる。 「こーら。ネコちゃん…俺らもスタンバイ」 困ったように顔だけ後ろを振り返ったタカに背伸びして唇を奪う。優一はタカを引き止めたくて衝動で動いた。 「…っ。優一、お前のこれは、ただのスキンシップか?それとも興味か?」 「…分からないです。でも体が勝手に」 「ズルいやつ」 (あ、目が変わった) ドンッ 「痛ぁっ…んんっふぅ…っんっ…ん」 廊下の壁に押し付けられ、あの日以来の温かい舌から口内を撫でられ、気持ちよくて力が抜けそうになる。カクカクしはじめた優一の腰を抱きしめ、耳元で囁いた。 「まだ分かんないようだが、あつ〜い誘惑は受け取った。今夜な。」 ぼーっとしたままの優一を放置してタカはスタンバイに行ってしまった。 「こんなキス…ズルいのはどっちだよ…」 しばらく余韻に浸って唇を指でなぞっていた。スタッフに呼ばれてビクッとした後、優一もスタンバイに入った。 「遅いぞ。トイレで出してきたか?」 「んなっ!?何いってるんですか!」 「はぁ〜?本番前トイレ行くのなんか普通だろ?何と勘違いしてんだ?」 「〜〜〜!なんでもありませんよっ!」 サナの公演のラストは、サプライズでタカと優一も一緒にセッションする。この曲はデビューシングルのタイトル曲だ。実際のレコーディングにも参加している。タカはもともとバラードメインのボーカルユニットでピアノやサックスなど楽器もハモりもだいたいできる。優一のギター披露は今回が初めてだ。 暗転したタイミングで、サナの腰掛けと、グランドピアノ、アコースティックギターがステージを埋める。 ライトに照らされた瞬間、大きな大きな歓声が湧いた。静まった頃に3人で息を合わせて曲が始まる。サナの歌声をいかす、邪魔しないタカの下のハモり、優一の高いハモり。音に寄り添って泳ぐように歌う。 大きな拍手の後3人で頭を下げはける。サナはこれから物販に行くので、よかったよ、とだけ伝えて楽屋に戻る。 優一はギターを触っていてもタカの「今夜」に浮かれている自分がいた。長い間準備して、成功して…優一は達成感に酔いしれていた。 コンコン 「はぁい〜。どうぞ〜」 ギターをやめないまま、応えると誠が飛び込んできた。 「わぁあ!まこちゃん!!あははっ!」 ギターを置いて抱きついてくる大型犬をよしよしと撫でる。久しぶりの誠に優一は嬉しくなる。 「優くん!本当に良かった!良いステージだったぁ!」 パーマのふわふわの髪が首でわしゃわしゃしていてくすぐったい。 「ああ!マコ!抜け駆けすんな!ユウ〜!本当良かったぞ!!お疲れー!」 「ちょっと、大河さん!今、優くんと俺の時間!」 「うるせぇ!みんなのユウだ!」 ネコと大型犬のケンカに優一は久しぶりに大笑いした。ふとドアのところでレイと青木が立っている。 「ん?どうしたの2人とも入って?」 「ほら、青木、入れって!」 「あ、うん。ユウ…お疲れさま」 「うん!ありがとー!」 久しぶりに笑いかけられた青木は真っ赤になって目を逸らした。 レイは肘で青木をつつき、青木は優一の大好きなタマゴサンドを差し入れた。 「これ、あげる」 「うはぁー!美味そう!食べていい?」 「うん」 「わーい!いただきます!」 美味しそうに頬張る優一を見て、青木の目が潤む。大河と誠も微笑んでいる。 もぐもぐと食べ終わった優一に、レイが大事なことを切り出した。 「で?タカさんのところは今日までだろ?荷物どうする?伊藤さん確認しよっか?」 「…あ〜…。そう…だったね…」 「ん?荷物まとめてないのか?」 「あ…その、忙しくて…」 歯切れの悪い優一に全員が凍りつく。 「今日…は、タカさんのとこ帰る。片付けもしなきゃだし、反省もしたいし!」 「ユウ、俺寂しいよ。帰ってきてよ」 さっきの元気から一転、甘えるように優一に擦り寄る大河に、ああ、こうゆうところがタカさんやまこちゃんを虜にしたんだ、と余計なことを考える。 嫌でも勝手に比べてしまうが、そんな思いを振り切って、優一の頭には「今夜」しか頭になかった。 「ユウ!俺が悪かった…お願いだから、帰ってきて」 突然青木が大きな声で優一に謝罪した。真剣な眼差しに居心地悪く目を逸らす。 「帰らない、とは言ってないよ?みんな、大袈裟だなぁ…はは…。青木も…別に謝ることじゃないじゃん…?気にしないで?」 「ユウと話がしたい」 いつもならそこで終わるのに青木は食い下がってきた。みんなも見守っている。優一は少し考えた後、場所変えよ?と別室に移動するため廊下に出た。 「お?ネコちゃん…。今日どうするの?」 後ろの青木を見て、タカが歯切れ悪く聞く。優一はすぐにでもタカのところに逃げたかったが話もしなきゃいけない。 「タカさん、少し待てますか?」 「どのくらいだ、青木?」 「……」 「タカさん、10分で戻ります」 「はいよ〜」 青木が黙っていた隙に制限時間が決まってしまった。青木に与えられた時間は10分。 「話って?なぁに?」 「本当にごめんなさい」 「…もういいよ、って。正直な気持ちきけて良かった。でも、必要以上に絡まないようにするし、今まで通りの対応、とまではいかなくてもさ、メンバーとして」 「ちがうんだ!ちがう…気持ち悪いなんて本当は思ってない」 優一の言葉を遮って叫ぶ。優一は感情がない目で青木を見ていた。 「俺、まこちゃんに嫉妬してたんだ」 「…嫉妬?」 「ユウは誰よりも先にマコちゃんを頼ってるでしょ?俺には甘えないのにってずっと思ってた。」 優一は目を見開いて驚いていた。青木は思いつめたように手のひらを握っている。 「あの日、ユウが俺をマコちゃんと間違えて、俺が見たことないくらい甘えんぼな顔と声で呼んでた。でも、俺って気づくといつものユウになって…」 「だって…まこちゃんとは付き合いながいし」 「分かってる、分かってるけど、あの時の俺は理解が追いつかなくて。自分を見てくれないユウに感情をぶつけちゃったんだ。それもごめん。」 「……。」 「もしマコちゃんと付き合っているなら…と思ったら嫌で、信じたくなくて…でも結果、傷つけてしまったこと、本当にごめん。」 「……。」 「今更だけど…ユウに感情をぶつけたあと、ユウがいなくなっちゃった時…やっと自分の気持ちに気付いたんだ。俺…ユウのこと」 「聞きたくない!!やめてよっ!!」 「ユウ?」 「これ以上俺をぐちゃぐちゃにしないでよ!もう分かんないよ!嫌いなんでしょ?気持ち悪いんでしょ?男なら誰でもって…言ったくせに!」 「ユウ…だからそれは…っ」 「やっと…っ!やっと整理できたのに!!なんで振り回すんだよ!!あの言葉がどれほど…っ」 もう分かんないと顔を覆って泣き出した優一に青木はオロオロとする。 するとドアが開けられタカが入ってくる。廊下で待機していたようだ。 「10分。タイムオーバーだ。優一、帰るぞ」 「ユウ!お願いっ!待ってよ!ちゃんと俺の気持ち、分かって欲しい!行かないで!ちゃんと話そう?」 「ぐすっ…ひっく」 「優一、お前が選べ。帰りたい場所に帰りな。」 タカの声に間髪入れずにタカの手を握り泣いたまま部屋を去った。 (言えなかった。言わせてもらえなかった。) 告白したら戻ってきて貰えるかも、と自惚れていた。青木がのんびりとうじうじと決心しているこの一カ月近くで、溝は大きく深いものになっていたのだ。開け放たれたドアからレイが複雑そうな顔で入ってきた。 「言えたか?」 「…。」 「さっき、すれ違った。」 「レイさん、俺、言えなかった。」 「そっか。」 「言わせてもらえなかった」 「そっか。」 「聞きたくないって…っくっぐすっ」 「…そっか。」 青木の頭をぎっと抱きしめる。お前はできることをした、と何度も何度も言い聞かせた。 楽屋にいた大河と誠は青木の話がうまく行くことを願って待機し、レイが様子を見に行った。すると思ったより早い時間でドアが開けられたが、その姿に2人は思わず立ち上がった。顔を真っ赤にして泣いた優一とその姿を支えるタカ。 「え…優…くん?」 「あ、悪ぃな。ちょっとこいつウチで休ませるわ。ずっと気が張って、みんなに会って糸が緩んだのかもしれねぇ。荷物これだけか?…ほら優一、行くぞ」 「っぐすっ…ごめんね、みんな…っ、来てくれて、ありがとう…嬉しかった、また…ね」 マスクをして本当に辛そうな顔で笑う優一の手は、ぎゅっとタカの服を握りしめていた。優一を支えるのは今はタカしかいない、と大河は察した。帰っていく背中に大河が思わず声をかけた。 「タカさんっ!」 「っ!?…どうした?大河」 「……ユウを、よろしくお願いします」 「任せろ。…じゃあな」 バタンと閉まったドアに2人して力が抜けたようにソファに腰掛ける。 「今のユウに必要なのは、タカさんなんだな」 「うん、それ俺も今分かった。」 「青木…大玉砕だな。仕方ないことだけど」 「レイさんが慰めてくれてる…のかな」 「レイは男らしい慰め方だからなぁ、なんつーの?体育会系?」 2人の大きなため息は楽屋に充満した。 「ぐすっ…っ…ひっく」 「優一、落ち着けって」 「すみっ…ませっ」 マンションのエレベーターで優一の泣き声がこだまする。最上階につくと優一に歩幅を合わせながらドアの前までついた。鍵を開け、部屋に入ると優一は当たり前のように寝室に行き、ベッドで膝を抱えて号泣していた。 「お前は何に泣いてるんだ?」 「…青木っ、が、分かんない、気持ち悪い、て、言ったくせに、っ…俺のこと、好きって、言いそうなかんじ、で」 「うん。」 震える背中を大きな手が摩ってくれて、そのリズムで大きく呼吸をする。タカはゆっくりと優一の言葉を待った。 「…っ、俺が、みんなの、ところ、戻る、ための嘘かな、とかっ、思ったりっ、して、」 「……。あの青木の気持ちが本当なら、お前はこたえるのか?」 「やっと、諦めたのにっ…辛かったの我慢して…やっと、前に進もうって…なのに、っ…なんで、こんな事…」 「…今でも青木が好きか?」 「…っ、今は、もう、諦めたからっ、」 「でも、好きって言われてたらどうしてた?」 タカの質問に優一は顔をあげ、タカの顔を見て余計にくしゃりと顔が歪んだ。大きな目からはパタパタと大粒の涙が落ちる。この質問はタカにとっても賭けだった。 「いじわる、な、質問し、ないでよぉっ」 「…諦めたから、気持ちに答えられないから、聞かなかったのか?」 「っぐす…うん…」 「諦めても、もう一度考え直すことはできるだろ?なのに、なんで気持ちに答えられないんだ?」 優一の気持ちを整理するために、タカはゆっくりと質問する。もう、タカは分かっていた。優一の答えが。あとは、優一が気づいて、認めるだけ。 「青木が、好きだった、のに、今は、おれっ、本当は、タカさんが、好きになっちゃったからっ…だからっ…青木にはっ、こたえられない…っんんっ!ふっ、んンっ!!はっ、んぅ…」 キスしたままベッドに押し倒される。温かい舌が優一の口内で蠢き力が抜ける。ふわふわとする感覚の間に服が脱がされ、優一だけが全て脱がされた状態で唇がはなされた。 「はっ、はっ、はっ」 「涙、止まったな」 「うん…」 目の前には優しく微笑むタカの顔と天井。親指で涙を救われて、真面目な顔になりドキッとする。 「優一、俺はお前が好きだ。」 「っ!!!」 「ずっとお前を見てたから、お前が青木が好きなのも、お前の悩みの原因が青木なのも分かってる。あの日、壊すって言って、抱かなかっただろ?それは、お前の自傷行為のナイフになるだけは、どうしても嫌だったんだ。」 「自傷行為…」 「お前には、ちゃんと気持ちを伝えて、受け入れてもらってからしか抱かないって決めてた。」 「そうだったんですね」 優一は上から見つめられる視線に顔が熱くなる。心臓の音がバクバクとうるさくて、タカの言葉が心臓の音に負けないように集中してきいた。 「お前が好きだから、大切にしたい。お前が俺を選んでくれるなら、俺はお前のそばにいたい」 「選んだよ」 「優一…」 「俺も、タカさんが好き」 「…青木よりも?」 いつも飄々しているタカが少し不安そうに見つめてくる。初めてみる顔に可愛い、という気持ちが溢れ、きゅんと胸が苦しくなった。 「ふふっ…不安そう…。いつからかなぁ、タカさんいないと落ち着かないや」 優一の言葉にタカは一気に不満そうな顔をして目をそらした。 「30点。お前魔性だから心配だよ」 拗ねるセリフにクスっと笑って、優一は両手でタカの頬をそっと触って目を合わせた。 「青木よりもタカさんが好き。タカさんのそばがいい」 「ありがとう」 嬉しそうにふわりと笑ったあと、甘い甘いキスが降ってくる。首筋から胸の粒まで唇で撫でられる。気持ちが伝わったからか、優一は前のような快感に溺れるだけでなく、緊張と羞恥が滲む。 「ぁっ、タカ、さんっ!」 「ん?どした?」 「なんか、恥ずかしいっ」 真っ赤な顔を横に逸らし、声を抑えようと腕で口元を覆っている。 「前は思いっきり声出してたのに?」 「分かんない、もう、こっち見ないでよっ、恥ずかしいってば」 タカの顔を見るだけでも茹で蛸のように真っ赤になる優一に、可愛いすぎるとタカは本能を殺すのに必死だった。愛撫に集中しようと赤く立ち上がった小さな粒に軽く歯をたてると、感じやすい身体は簡単に跳ね上がる。 「っ!っ!はぁ…」 目はとろんとしてきたが、やっぱり声を抑えている。 「明日…仕事は?」 「は、は、…ぇっ…?…たしか2時入り…」 「あ〜…、ま、声枯れたらごめんな」 「声出さないようにします」 「無理だな。」 「無理じゃないです」 快感に溺れつつある優一をはやくおとしたくて粒を強めに吸って、左手で右側を抓る。 「はぁっぅ!!は、は、っ、」 「感じるか?」 「んっ、は、気持ちぃ、タカさん、気持ちぃ」 口元を覆ってたうでを外し、優一の顔の横で指を絡めると優一はその絡めたタカの指をペロリと舐めた。 「っ!!」 「タカ、さん…キスしたい」 「本当魔性だな」 「んぅ、ふっぅ」 優一は本当にキスが好きで全身が溶けるように弛緩する。キスしながらベッドサイドにある引き出しからローションを取る。絡めた指を外して温めてから優一の下半身に塗り込む。 「んっぁあっあ、はぁ、は、」 ビクビクと跳ねた拍子にキスが外れ優一の甘い声がもれる。 「ここ…覚えてるか?」 「ん…ずっと、触ってほしかった」 「1人でしてみた?」 「ううん…怖くて」 「入れるぞ、力抜け」 指を一本ぐっと入れられ身体が反る。前は後ろからだったが今はタカの顔が見えることに安心する。 「痛くないか…ってなんで笑ってんだ」 「タカさんの顔がみえるから嬉しいし、安心する」 「はっ?」 素直な気持ちを言うと、とたんにタカの顔がボンッと赤くなり腕で顔を隠し目をそらされた。 「わ、タカさん真っ赤!んんっ!ぁ、はぁぅ!ん、んぅ」 「うるさい」 タカは誤魔化すように入り口をほぐし出し入れをする。わざと音を立ててほぐすと、気付いた優一はだんだん顔が赤くなった。 「やぁ、音っ、やだ」 「お前のここから音がするんだぞ。指、増やすぞ」 「ん、んんん、っあぁ、苦しっ」 優一の前髪は汗で張り付いている。苦しそうな優一のために雫を垂らす前を扱く。 「っっ!はぁ、はぁ、んっ、はぁっ」 すぐに腰を振り始めた優一に嬉しくなりタカは3本目を中に入れ広げる。 「ぁ、ぁ、いっぱい…」 腰を振りながらもうわ言のように呟く。だんだん優一は快楽に身を委ねはじめた。 タカは優一の手をとりタカが扱いていたモノを握らせると優一はしぜんに1人で動かしはじめた。 「は、は、ぁ、はっ、」 「少しいい子で待ってろ」 優一は扱きながらタカが全裸になっていくのをみてドキドキが大きくなるのを感じた。風呂上がりとかで上半身は見慣れていたが、全身は初めてだった。引き締まった筋肉としなやかな腰、男を抱くのがもったいないほど、スタイルが良く、何よりセクシーな身体だった。優一は大きく固そうなそれに目が釘付けになる。 その大きなものにゴムが被さるのを食い入るように見ていると、自然に扱く手が速くなった。 「そんなに見るなよ、変態」 「だって、おっきい、は、は、んぅ、タカさん、もぅ、出そうっ」 優一は自分で扱きながら限界近くなったところでタカに手をはずされる。 ギリギリでとめられて熱が逃しきれない。 「も、寸止め、ばっかり…」 「優一、今から俺が抱くのに1人でした方がいいのか?それなら構わないが?」 「いやです。タカさん、抱いてください」 「壊れるくらい、愛してやるよ」 その言葉を聞いてゾクゾクと震える。ずっと優一が求めていたものが、これだと本能が喜んでいる。壊れるくらいに愛されたい、それが今満たされる。 「力抜けよ、んっ、」 「ぁああっ!痛いっ!こんなっ!大きいの、入らないっ入らないよっ!」 「だから、力抜けって、息とめるな、大丈夫だから」 「はぁ、はぁ、苦しっ、ゆっくり、ゆっくりして!」 ズズっと入ってくる大きなそれに、きつく締め付ける。時間をかけての挿入に2人とも汗が止まらない。優一はタカの腕に爪を立てこの感覚から逃れようと必死だ。 「ふぅ〜、あと半分だ」 「〜〜ぅ、もう、入らないよぉ」 「泣くなよ、ほらキスしてやるから」 「ん、ふぅ、んんっ……っん、んんーー!!」 キスで弛緩したところで奥まで入れた。優一の太ももが不規則に跳ねる。 「優一、入ったぞ」 「タカ…さんの。入った…お腹いっぱい」 「慣れるまでそのままな」 「うん。タカさんぎゅーして」 「なにそれ、可愛いすぎだろ」 裸と裸でくっつくと気持ちがいい。このまま寝たいくらいの心地よさと満たされてる思いで幸せをいっぱいに感じていた。 「はぁ…ごめん、動くぞ」 「ぇ?…はぁ、んんっ!はぁっぅ!」 大きく熱いものが体内を行ったり来たりして、中のものが全て引き出される感覚にゾクゾクする。目の前のタカは見たことないほどセクシーで眉間にしわを寄せ優一を見つめている。微かな荒い呼吸がより優一を高めた。 「はぁ!タカさんっ、タカさん…」 「は、は、優一…は、」 余裕の無さそうなタカに優一は胸がきゅんとときめいた。自分なんかに欲情してくれて、余裕がないくらい求めてくれている。幸せのキャパを超えたところで、タカの熱があの場所を狙いはじめた。 「集中、しろ」 「あっ!!ぁあああー!そこっ!ああー!!」 「ん、ここだよな、お望み通り壊れてみせろ」 「はぁっ!ん!あ、あ、あ、強いっ、あ、おかしくなるぅっ!」 「は、すごい、締め付け…力抜けって」 「んぅあ!は!ぁあ!タカさん!タカさん!」 「ん?イきそうか?…おっと、自分ではダメだ。手はこっち」 中の痙攣が不規則になって、優一の限界が近いことを示す。優一は生理的な涙を流しながら無意識に自分のものに手を伸ばすもタカに両手を絡められる。 「ダメだ、優一、壊れてみようか、初めてだろうけど、中だけでイッてみな?」 「タカさん、触って、触ってよぉ!」 「ダーメ。ほらここ、突いて、やるから!」 「あぁうっ!!はぁ!気持ちぃ!タカさん!イキたい!」 背中が反って首元に見とれる。噛み付くように首元や鎖骨にキスをする。タカも強い締め付けに余裕はなく、目の前の真っ白な胸や鎖骨に強く吸い付いた。 「いたぁい、あっ、んっ!ん!」 「はぁ、はぁ、優一っ!優一!」 「タカさん、イきたいっ!手、はなして!」 「中でイかせてやるから、まだ待て」 タカは繋いでいた手を放し、優一の腰を少し持ち上げ上から叩きつけるように出し入れする。 「っ!?あぁあああーー!!」 あまりの強い衝撃に目を見開いた。優一は大きな刺激の余韻にふるふると身体を震わせた。そして自分の中が、コントロールできないくらいひくひくと収縮していることがわかる。 「なんかっ、ヘン!タカさん!なんか、」 「ん?中でイけそうか?」 遠くから押し寄せてくる何かに優一は怯えるように頭を振った。身体の震えが強くなったり力が抜けたり、意思とは別に動いている。怖がる優一の手をもう一度しっかり握り、律動を続けると、泣き叫ぶように頭を振って必死に縋った。 「こわいっ!タカさん!あんっ!あっ!」 「優一、大丈夫だから」 優一は握られた手をぎゅぅっと握り背をそらす。味わったことのない快感と、さらに奥から追いかけられる感覚になすすべなく飲み込まれる。 「いやぁ!あ、こわい!なんか!くるっ!」 「うぁ!は、すごいな、締め付けっ蠢いてる」 「いやだ!出ちゃうっ、お漏らしっ、しそぉ!」 「大丈夫、は、俺も、出そっ」 「は、は、は、っ!はぁ、あ、あぁあ!あっあああー!」 「優一、一緒にイクぞっ」 「ああっ!んあああ!っ、っ、あああああーーっっ!!!」 「ーーっく、」 キーーンと耳鳴りみたいで何も聞こえない。身体が浮き上がって、視界はどこを見てるのかもわからない。 (壊れたみたい) そう思って意識が遠のいた。 「ん…」 ぼんやりと目を覚ますとまだ真っ暗で深夜だということがわかる。寝返りをうとうとするも動かない。頭の方から聞こえる寝息にドキッとした。 (タカさんが、寝てる!) 優一を抱き枕のようにしてすやすやと眠っている。いつもしばってある髪もおろされ、無防備な姿にドキドキが止まらない。 ひとつの布団で寝れることが幸せで目の前の大きな胸がにくっついた。無意識なのか優一の頭を2回ほど撫で、またぎゅっと抱きしめられた。 (どうしよう…幸せすぎる) 安心すると眠くなりまた深い眠りについた。 朝日の眩しさに目を覚ますと、タカは側にいなかった。寂しい気持ちを隠しつつ寝返りをうつと仄かにあったかい。 (熟睡できたかな?) 少し空いたドアからはいい匂いがする。行ってみようとベッドからに床に足を下ろしたその時。 ドタンッ!! 「痛ぁあ〜…」 「どうした!?大丈夫か?」 駆けつけたタカにお姫様抱っこをされる。恥ずかしいのもあるが下半身に全く力が入らない。 「立てない〜…」 「あー…すまん」 「前の比じゃないよ〜」 「ははっ、ごめんごめん」 ご飯できてるぞと言ってそのままリビングに連れていかれる。 簡単なものしかないけど、という食卓にはご飯と味噌汁と卵焼きと野菜炒め。 「美味しそう…頂きます!」 「はい、どーぞ」 味噌汁を飲むとほっこりしてタカさんを見るとタカが嬉しそうな顔でみつめていた。 「味、平気か?」 「うん!とっても美味しい!タカさん料理できるんですね」 「料理は嫌いじゃないからな。」 「卵焼きうまぁ!」 「ふふ、食レポもうまそうだな。…なんか、久しぶりに手料理食べてもらうな。」 「つーか、ご飯食べてます?見たことない気がしますけど」 食べてるよ、とやっぱり嬉しそうに答えるからなんだか優一は照れくさくなって食事に集中した。 「優一、寮戻るだろ?荷物どうする?」 「え?!」 食事が終わってのんびりしていると、タカがタバコを吸いながら大きめの袋を持ってきた。 「一緒にいたらダメなの?」 「俺は全くダメじゃないし、むしろいてほしいが…ここの事務所の決まりみたいなもんだ。みんなデビューして2から3年は寮だ。」 「たしかに言ってた気がします」 「今回はプロデュースまでということで伊藤が許可を貰ってる。だから、必要なものだけ持って行きな。泊まりたい時は迎えにいくさ。」 「せっかく両思いなのに」 「…可愛いこと言うな」 「俺、両思い初めてかも」 嬉しそうに言う優一にタカは思わずぎゅっと抱きしめる。伝わったのが初めてで、優一はたぶん、恋愛には鈍感で両思いに気づかなかったことが多いだろう。なんにせよ、優一の中の初めてでタカはたまらない気持ちになった。 「本当は閉じ込めておきたいけどな…お前誰でも誘惑しそうで恐いよ」 初めて見る弱々しいタカに、優一は可愛いとさえ思ってしまう。自分が誰かに取られることが、恐いとか不安に思ってくれるなんて嬉しい以外に何もない。 「タカさんぐらいだよ〜こんな俺を好きって言ってくれるの」 「青木もだろ。ライバルのところに送るのが本当に嫌なんだが」 「タカさん、青木はもういいってば。仲良しのメンバーだよ」 優一は自分からタカにキスをして気持ちを伝えた。タカに電話が鳴って離れた。 「はい、おはよう。起きてるよ、大丈夫。うん、あ、そっだったな。お疲れ、はい。今代わるな?」 電話を優一に渡す。だれ?と思いながら電話に出ると 「おはようございます!サナです!ユウさん昨日はありがとうございました!物販終わったらもうお帰りになっていたので…朝早くすみません!」 「サナー!良かったよぉ!俺感動したもん!うん、うん、良かったなぁー、うん、そっかそっか。うん、あはは!詳しく?はいはい、じゃあまた!」 サナは興奮した感じで電話を切った。自分の発見から始まったデビューまでの道のり。とても濃い日々だった。 「タカさん、ありがとう」 「ん?」 「俺、タカさんのこと、最初大っ嫌いで、こんな関係になるなんてこれっぽっちも思わなかったけど」 「おいおい、はっきり言うなよ!さすがに傷つくだろ?分かってたけど。」 「知っててからかってたくせに…。でもタカさんに好きって思ってもらえて幸せだよ」 「からかうつもりはなかったけど…仕方ないだろ。お前の目に入るためならなんだってするさ。俺は一目惚れなんだから」 「えッ!!?」 「ん?言ってなかったか?」 優一の顔が真っ赤になる。一目惚れだなんてあのブチ切れ事件だ。 「あ、あの時!?」 「そうそう。綺麗だ、って純粋に思ったよ」 「悪趣味…」 まだ照れてる優一に片付けさせ、伊藤が来るまでたわいのない話をしていた。 寂しくなったら呼ぶこと、お互い我慢しないことを約束し、久しぶりに離れた。 「伊藤さん、今までわざわざこっちまでありがとうございました!今日から寮に戻ります!」 合鍵は持ったまま、寮に戻った。

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