「…っ！！んっ！！ーーっ！！」 「タカ！！おい！大丈夫か！？」 「ーーっは！……あ、悪い…」 最近あの頃の夢を見る。また魘されてたようだった。 切れ長の目のカナタが心配そうに覗き込み、タオルを渡される。 ありがとう、と苦笑いして額の汗を拭う。 ブルーウエーブはツアーの真っ最中。ダンスなどはないがその分歌は出ずっぱりだ。少し疲れたかな…と思いながらタバコを手に取る。 「タカ？そろそろタバコ抑えろよ」 「え？なんで？」 カナタは呆れて喉に悪いだろ、と言って取り上げる。少しずつ減らしてはいるがタバコは精神安定剤みたいなものだ。昔は嫌いな香りだったのに、今はヘビースモーカーになってしまった。 「ジンさんも心配してるぞ。最近楽屋でも眠れてないだろ。さっきも魘されてたし。」 「あー、なんか調子悪くてさ…たしかに寝れてはないな。ここんとこ嫌な感じがして…胸騒ぎ？てやつ」 今日だけ吸わせて、とカナタからタバコを取ってすぐに火を付け煙を吸い込む。この胸騒ぎは何なのか、予想が外れてしまえと祈るばかりだ。 そしてその祈りはいつも神には届かない。 コンコン 「「はい」」 「っ！」 「お久しぶりね」 「美奈子代表」 この会場での声の調子はかなり良かった。余計なことを考えないように全てを出し切った。いつも以上にバテ気味で飛ばしすぎたまま、後半戦に向かう。 「タカ、少し力を抜いて。僕らがカバーするから」 「ジンさん〜心配いらないですよ。ちょっとはしゃいでるだけですから〜」 心配性のジンを軽くかわし、次のスタンバイに入る。何かしていないと自分に飲み込まれる。プロとしてそれはありえない。あの人がいようがいまいが、お客さんには関係のないことだから。 「へぇ〜。あの子強くなったわね。見違えるようだわ」 「代表、そろそろ時間です。打ち合わせがこの後3件…」 「全てキャンセルよ。急ぎの別件があるの」 「別件ですか？」 「スカウトよ」 「お疲れ様でしたー！」 「お疲れさーん、ありがとうー」 スタッフに挨拶しながらカナタとタカは楽屋に戻る。後半は集中が研ぎ澄まされ、今までで1番出来が良かった。リードボーカルのカナタとのハーモニーも良く、2人ともテンションが上がったまま歩いてると非常階段のところでタオルで汗を拭きながらシュウトが誰かと話していた。 （誰だ？知り合いか？） スーツを着たおじさんだったが、業界の長いタカでも知らない人物だった。 細身で甘いマスクのシュウトは、タカと同じ年でずっと切磋琢磨してきた。伸びのある高音が武器でフェイクはほとんどシュウトの役割で見せ場も多い。彼は少し人見知り気味で群れるのを嫌うが、よく2人で深い話をする仲だ。そんな仲でも、シュウトがメンバー以外の誰かと話していることが不自然すぎる光景だった。 「タカ！」 「はい！」 聞き覚えのある呼ばれ方で、反射で返事をする。覚悟を決めて振り返ってみると、本郷エンターテイメントの代表取締役の本郷美奈子だ。白いスーツに黒のハイヒール。真っ赤な唇に真っ黒なロングヘア。元女優だけに美しさが際立っている。 「お疲れ様。タカ、今日は素晴らしいものを見せてもらったわ。すごく成長しているわね」 「ありがとうございます。」 誰もが目を奪われるように美しい笑顔を見せるが、タカは目を合わせず頭を下げた。そして美奈子はタカの隣にいるカナタを見ると、恐ろしく冷たい表情になった。 「それに比べてカナタくん、あなたリードボーカルの自覚はあるの？タカの歌の邪魔になっていて不快よ！」 「大変申し訳ございませんでした」 「いい？天才の邪魔にならないよう努力なさい。」 「精進します。申し訳ありません。ご指摘ありがとうございます。」 タカは頭を下げたまま小さくため息をついた。突然ライバル会社を設立した本郷美奈子は、タカのいる事務所社長の妹だ。しかし、たまに現れてはこうして確認しに来て、所属でもないのにいつまでも上から発言してくる。 美奈子が確認しにくる理由はただ一つ。タカの引き抜きだった。 本来それはタブーだが社長の妹ということで口出しできる人は社長が動かない限りありえない。以前から美奈子はタカを「天才」と称して、タカ以外を邪魔だとさえ思っている。 「タカ？そろそろ決断出来そう？」 「…前も言いましたが…移る気はありません。せっかくのお誘い、申し訳ございません。」 「まぁだ凡人たちと仲良しこよしで歌うつもりなの！？いい？あなたはここにいても今が限界よ！？なぜなら周りが足を引っ張るからよ」 「…助けてもらってばかりです」 本心だった。タカはこのグループだから歌いたいと思っている。こうして定期的に引き抜きに来る美奈子に言われたい放題でも、次は頑張るからと、タカを支えてくれるメンバーなのだ。 「…？タカ、あなた、まーた目が変わってるわ。」 「え？」 「歌以外に余所見してるわね。」 その言葉と全てを見透かすような強い目に冷や汗が背中を通る。心臓が激しく血を送るのにどんどん身体は冷えていく。 「また誰かにうつつを抜かしてるのかしら。懲りないわね。本当に…あなたの人に依存するところは最悪だわ。私が何度歌のためにサポートしたか…あなたと関わった人がどうなってきたか分かるでしょうに。」 イライラを隠さないまま、くるっと背を向けカツカツとヒールを鳴らしながら、美奈子は去っていった。 「っふぅぅぅぅ〜〜〜！」 「あはは、タカお疲れさん！」 姿が見えなくなるとタカは盛大なため息を吐いた。カナタは美奈子の言葉なんか受け止めるどころか、全くスルーしていた。笑いながら背中をさすられる。カナタは一歳年上のお兄ちゃん的存在だ。いつでも明るく、気がつけばカナタにくっついてしまう。 「嫌な予感的中。とんでもないストレスだよ」 「優一くんのことはばれなかったな」 俺もあの瞬間ビビった〜とまた楽しそうにおちゃらけている。タカは苦笑いしながら胸をなでおろした。タカが少しでも歌以外のことを考えると片っ端から排除されてきた。それも、恐ろしい手段ばかりで。 「いや、分からない。いつもとことん調べて何かしてくるから…。でも今回こそは絶対、知られないようにしないと」 （今度はうまくやる） 次は同じ過ちを繰り返すものかと顔を両手で打って気合を入れなおす。ジンとカナタに食事に誘われたが断って部屋に戻った。 ライブの疲れと美奈子との対面に、タカはホテルに戻ると倒れるように眠った。 ーーー見覚えのある景色が広がる。 懐かしい場所、風景、愛した、人たち 「隆人先輩、付き合ってください」 「…私、先輩の邪魔になりますよね」 「夢と…あの人と私どっちが大事ですか？」 「絶対に手放さないですから。別れません」 「俺を分かってくれるのはタカさんだけです」 「タカさん、今のところ教えてください」 「いやだ！！怖い！誰かっ！助けてっ！」 「ーーっ！！は、は、は、は」 意識が覚醒してあたりを見回すと真っ暗な部屋。時間は帰ってからそんなにたってないが走馬灯みたいに過去が流れていた。それも、ずっと傷として足枷として残るもの。 ベッドにも辿り着けず、ベッドを背もたれにして縛った髪をおろし項垂れる。解放されることのない、多くの重たい出来事。全部投げ捨てて逃げてしまいたいという思いと、歌うことで懺悔になるのではという思いを抱えてステージに立っている。 ヴーヴー ヴーヴー ケータイが震えて表示された名前にほっとする。 「優一？お疲れ」 「タカさん！今大丈夫ですか？」 「あぁ、大丈夫だよ」 よかったぁ、と安心した様子の、愛しの人からの連絡に自然と笑みが零れる。ツアーの準備真っ最中の優一と、ツアー中のタカはなかなか時間が合わなかったが、こうして合う日はお互い嬉しさが滲み出ていた。 「ラップが難しいんだぁ〜顔が筋肉痛だよ」 「いい筋トレじゃないか。演出も決まったのか？」 「うん、少しダンスも入るかも」 「そっか。楽しみだな、東京公演なら顔出せそうだぞ、今のところだけど」 「えー、なんか緊張する〜。あ、タカさんの東京公演、スケジュール開くかもしれないから行くね！楽しみにしてる」 照れたようすの優一が浮かんで会いたくてたまらなくなる。 「…タカさん、会いたい」 「っ！！」 優一が急にトーンを落として同じ気持ちを伝えられ、切なさが駆け巡る。 「名古屋遠いよぉ…早く帰ってきてー」 素直に甘えてくれるこの恋人に何度ドキドキさせられ、幸せをもらっているのだろうか。そしてちゃんと返せてるのだろうか。 「優一、ありがとう」 「へ？」 「本当に愛してるよ」 「へ！？な、なに、急に！！」 真っ赤になってるのが想像できてまた笑う。だいぶ年下の恋人に完全に惚れている自分が人間らしくて嬉しい。 （ーーあなたと関わってきた人がどうなるか分かるでしょうにーー） 「っ！！」 「…タカさん？どうかした？」 「あ、いや、なんでもない」 「なに？言って？気になることがあるみたい」 ちょっと変化にも敏感に察するこの恋人は察しが良すぎて驚くことが多い。言うまで切らないとでもいいそうな雰囲気に言いたいことだけを伝える。 「……例えどんなことがあっても、俺はお前を守るから。」 「さ、さっきからどうしたの！？」 恥ずかしいなっ！と照れてる優一が可愛くて、神さまどうかこのまま、と祈る。 何度も神に裏切られたのに祈りを続ける人間は本当に愚かだ。でも、祈らずにはいられない。 1秒でも長く、愛し合いたい、「天才」を捨てしまって普通に生きていきたい。目を閉じて強く祈った。 「シュウト君が協力？」 「はい。その代わりにソロでのデビューを希望、とのことです。」 「それはいいけど、彼にそんな売上が期待できないから2作品くらい出させて契約終了になると思うわ。」 「所属は約束すると？」 「全てはタカの動き次第よ。私はタカ以外に興味がないの。」 「かしこまりました。」 コンコン… 控えめにドアが叩かれる。 「あ、優一？ごめん誰か来たから切るな？」 「え〜…わかったぁ。またね！」 「ふふ、拗ねるな、またな」 ドアを開けるとシュウトが立っていた。ライブ後にはどちらかの部屋でよく反省会をしているから、タカは迷わず中に入れた。 缶ビールをシュウトに渡して乾杯する。 「お疲れ！」 「お疲れさま。タカ、今日とばしすぎてなかった？喉大丈夫？」 「大丈夫大丈夫。今日は調子が良かったからいけるかなって」 「そっか。なら、よかった。タカ、今日僕のファルセットどうだった？」 「12曲目アレンジしたろ？」 「わ！気付いてくれた？！」 「あれはテンションあがったなぁ〜」 シュウトは本当に嬉しそうに笑った。いつもは楽譜に忠実なイメージだが、最近は少しずつアレンジを入れてくる。シュウトは普段口数は多くないが同じ年ということもあって、タカには相談やたわいのない話もしていた。 しばらく飲み進めていくと、夢はある？という話になった。 「タカは今後どうしたいの？」 「特にはないなぁ…もう十分夢見させてもらってるしな。このチームで変わらずやっていければいいかな。」 「そっか…。」 「シュウトは？」 「僕はね、小さな頃からの夢で、シンガーソングライターになりたいんだ。」 「ソロか。いいんじゃないか？次のツアーでやってみるといい」 シュウトはビジュアルもいいし、曲も作る。話すより歌った方が僕らしい、とよく聞くのでタカも応援した。 「僕ね、少し焦ってるんだ」 「なんでだ？」 シュウトは迷ってるのか缶ビールを見つめてしばらく黙った。タカは急かすことなく待った。シュウトは言葉にするのに時間がかかるのだ。 「ずっと、音楽をやっていけるか不安で。若いうちにいろいろ動かなきゃって。ほら、タカはデビューしてすぐに他の人のプロデュースとか作曲とかもしてるでしょ？正直羨ましくて」 タカはなんとなく声がかかったり、チャンスも貰うことが多いが、シュウトは大人しい性格からか、曲も最近やっと使われるようになった。 「そっか、プロデュースとかもやりたいのか？」 「プロデュースとかよりは、やっぱ自分で表現したいかな。だから、ソロかなぁって」 「そっか、それはグループではできないのか？ソロ活動をメインが理想？」 「…正直ね」 そっか…。と天を仰ぐ。人の夢を縛ることはできないし応援したい。でもグループにもいてほしい。いい案はないものか、と考えていると。 「本郷エンターテイメントなら、グループで移籍すれば両立ができるって」 「は！？」 シュウトからこの話題が出ることに驚いて盛大に咽せる。さっきのスーツのおじさんは本郷エンターテイメント関係者と察した。ついにメンバーを、その中でもシュウトを巻き込み始めたようだ。 「シュウト、お前」 「僕はやりたいことができるなら本郷エンターテイメントに行ってもいい。タカ、みんなでの移籍ならグループもそのままだ。どうかな？」 「落ち着けよシュウト。お前、言いくるめられてるぞ。そんな簡単に行くはずない！美奈子さんのことは俺がよく知ってる！」 「でも、今日の公演で全員が良かったから、本郷エンターテイメントに相応しいって…」 美奈子本人から聞いた言葉と異なりすぎて言葉を失う。シュウトは真っ直ぐな性格で相手の言葉を疑うことはない。タカは今までとちがうアプローチに頭が混乱した。シュウトは一緒に夢を叶えてほしい、と部屋を出て行った。 「…恐ろしいな、本当に」 タカは机に伏せた。 （俺が行けばあの人は大人しくしてくれるのだろうか。） どんなに飲んでも酔えず、灰だけが積もっていった。 「「本郷エンターテイメントに移籍！？」」 「シュウト、どういうことだ？」 「シュウ君、何かあった？」 次の日は移動日でホテルのロビーに集合したところでシュウトが口を開いた。もちろん寝耳に水のジンとカナタは矢継ぎ早に質問している。いつもはタカが一個ずつ消化できるようにフォローを入れるが、それをする気にもならなかった。 「レベルが底上げされたから、グループごと移籍しないかって言われたんだ。新しいことにも挑戦して各個人のレベルがあがるようサポートもするって」 ゆっくりとシュウトが例のおじさんの言葉を復唱している。タカはそんな訳ないと叫びたい気持ちを抑えた。 「シュウ君、それって今の事務所ではできないことなのかな？よく考えてみよう？」 リーダーのジンは、緊張を隠し、笑顔でシュウトを諭した。カナタは怪訝そうにシュウトを見つめる。 「僕は、この事務所でチャンスを貰いにくい気がしてるんだ。どう頑張ったって天才には敵わない。」 タカは「天才」という代名詞が大嫌いだった。美奈子がタカを見つけ、そう発信してからその言葉だけが一人歩きして、そのまま孤立した。若い頃はこの言葉の通りに頑張らないと、と必死で、でも仲間が欲しくて同じ「天才」を探し続けた。このメンバーだけは使わなかった代名詞を突きつけられた。 「誰かがいて達成できない目標なら、場所が移っても同じじゃないか？」 カナタが冷たく言い放つ。同じくあの代名詞に引っかかっているようだ。カナタはよく、「お前はお前だ。なんでもない、ただの仲良しのメンバーさ」と笑って言ってくれる。何度も何度もこの言葉に救われた。 「シュウト、もう少し考えてみよう」 カナタが更に苛立つ前にタカが切り上げる。 「…タカはさ、居場所がたくさんあるから余裕なんだよ」 背中にシュウトの言葉が投げかけられる。普段言い返したりしないシュウトを意外に思い、ゆっくりと振り返る。 「本郷代表だって本当はタカだけが欲しいなんて、分かってるよ。僕なんて眼中にもない、僕だけじゃない、カナタさんもジンさんも。」 真っ直ぐ見つめてくるシュウトから目が離せない。タカは目を見開いたまま固まった。 「それでも、夢が叶うかもしれないなら、望みをかけたっていいじゃないか。」 「…だから、ジンさんも言ってただろ？ここでもできることが…」 「正直に言うね。タカが移籍するなら、僕がソロ活動するのにサポートしてくれるんだ。だから、タカ頼む、一緒に移ってくれ。」 （あの人は今度は居場所を消すつもりなんだ） 思わずバッグを落とし立ち尽くす。カナタが慌てて駆け寄るが心臓の音しか聞こえない。ジンさんはシュウトに今の事務所でのソロ活動の手配を聞いてみると言って場がとりあえずは治った。 ただ、このやり取りをロビーで行ったことがより事を大きくした。 最終公演の東京では、後輩たちや事務所の研究生、社長なども関係者席にいた。本番直前の舞台裏はいつもと空気が違い緊迫し、場が慌ただしくなる。 「ジンさん、どうした？なんか慌ただしいな」 「タカは気にせずスタンバイしてて。カナタ、タカについて。」 「はい。」 セットの裏でカナタは神妙な顔つきで黙っている。すると社長の本郷朝陽がすごい勢いで入ってきた。 「タカ、本番前に申し訳ない。単刀直入に聞くぞ。お前、事務所抜けるつもりか？」 「え？どういうことですか？そのつもりはありません。」 そうか、とほっとして社長にハグをされる。ずっと意味がわからず、ハグされたままカナタを見るがなにも言わないし、真顔のままだ。 社長は向き直って実は…と話し始めた。 「週刊誌に脱退説が出てる。このライブで釈明できそうか？」 「っ！？」 「また、美奈子が絡んでるようだな。俺が美奈子の対応をする。お前は自分の気持ちをファンに伝えることをお願いしたい」 カナタはイライラしたようにため息を吐いていた。社長はできるか？と必死に聞いてきた。 「…分かりました。お騒がせして申し訳ございません。あの、メンバー…、シュウトの様子は？」 「…とりあえず、今回はタカだけの話題だ。メンバーはこのことに関して発言はしない。いいな。」 「分かりました。」 社長が去っていき、会場が暗転しオープニング映像が流れる。動揺して震えが止まらない手をカナタが握る。目が合うと今日初めての笑顔を見て、タカは目の前が歪む。強くハグをされ、イヤモニを取られ、お前ばっかりに重荷を背負わせてごめんと囁かれた。その後またニカっと笑い、やるしかねぇ！行こう！と元気に言われ背中をバチンッと叩かれてタカも気合を入れ直した。 ーー関係者席 午後からオフだった誠と優一はキャップをかぶり関係者席についた。客層がRINGよりは上で大人の女性が多かった。 「優くん、タカさんのライブって見るの初めてじゃない？」 「あ、そーいえばそうかも！前一緒にステージにたったけど、あくまでサナのサポートぐらいだったし…意識してないときはテレビとかで見てたけど」 「みんなも見にこれたらよかったねぇー！…って優くんニヤニヤしすぎ！」 「まこちゃんやめてよ！…だって2ヶ月ぶりだもん。やっと会えるんだよ、そりゃニヤけるよ」 たしかに、と笑う誠も幸せそうだった。 オープニング映像が終わって暗転した後、徐々にライトが照らされていく。それと合わせて伸びのある柔らかな声が会場に広がる。鳥肌が立つような歌声に目が釘付けになる。伴奏なしのメロディーを歌い上げるのは、優一が会いたくて会いたくてたまらない人。スポットライトと会場の全視線を浴びて目を閉じて歌う姿は、ステージがこの人のためにあるような錯覚。フレーズを歌いきり長い睫毛をゆっくりと持ちあげ流し目で前を見ると会場が一気に沸いた。 誠も優一も圧倒され、2人して涙が溢れていた。そこから4人の厚みのあるハーモニーが広がる。 リードボーカルのカナタはジンと目を合わせながら歌い上げ、シュウトのハイトーンは迫力があったが、中でもタカは圧倒的に感情を震わせた。 「大河さんの言う通りだ…。本当にすごい人だったんだ…」 「タカさん…かっこいい…」 誠は大河が「タカさんの歌声は本当にヤバい。あの人は他と違う」と語っていたのを思い出した。あの大河さんでさえ認める歌声は予想をかなり越えてきた。 2人は涙も止まり、今度はキラキラした目でライブを楽しんだ。トークも何回か節々にあったが前半とはちがい、後半のMCではタカのセリフに空気が一変した。 「えー、皆さん、一部報道について、驚かせてしまって申し訳ありません。」 「報道？」 「優くん、何か聞いてる？」 「分かんない。ここ1週間くらい連絡がすれ違いで。」 （もしかして何かあったから連絡がつかなかったのかな…） 「僕は、今後もブルーウェーブで活動していきたいと思っています。どうぞ、今後とも応援をよろしくお願いします。」 「え？」 「どういうことだろう？」 他のメンバーは特にふれなかったが、会場はタカのセリフに泣き崩れるファンや、歓喜するファンの歓声に包まれた。その興奮をそのままにアンコール、Wアンコールと大盛況のままツアーは幕を下ろした。 楽屋挨拶に行こうとしたところで伊藤がすぐに車に乗るよう急かした。 「伊藤さん、挨拶いいの？」 「タカからの指示だ。終わった瞬間に車に乗せて帰ってほしいと」 「どうして…？」 「あ、伊藤さん、一部報道ってなに？」 帰ってほしい、に引っかかっていた優一は誠のセリフにそうだったと前のめりになった。 「今日発売の週刊誌に、タカの脱退説が掲載された。メンバー全員がホテルのロビーで話している写真も一緒にな。事務所移籍とかも書いてあったから社長が大慌てだ。」 「脱退…」 「移籍…」 「移籍先で書かれていたのは本郷エンターテイメント。社長の妹がちょっと前にここを急に抜けて立ち上げた事務所だ。」 「へー社長の妹さんもバリバリなんだな〜」 バリバリというか女王様かな、と伊藤は苦笑いした。優一はあの実力を目の当たりにして、引き抜きの声が多そうだと予想した。 「この報道でしばらくタカは缶詰だろうな。」 伊藤のセリフに優一はがっくりと肩を落とし、誠は苦笑いして肩を抱いた。 「順を追って説明してくれるか？」 「はい。あの」 ライブ後、ブルーウェーブ全員がすぐに撤収し事務所の社長室に呼び出されていた。 ジンが説明しようと口を開くも、タカが自分が、と話し始めた。 美奈子が新事務所を立ち上げてから、ずっと引き抜きの話が出ていること。メンバー全員の移籍を持ちかけてきたことや、干渉してくること。タカは美奈子にやめてほしいことを全て話した。 そして、シュウトのソロ活動を応援してほしいことも伝えた。 「そうだったのか、恐らくスタッフたちも美奈子に頭が上がらず黙ってたんだろう。精神的なプレッシャーがかかっていただろう…申し訳ない。」 社長は全員に頭を下げたことにメンバーが慌てた。そして、とシュウトの手を握り 「シュウトのソロプロジェクトが実は半年前から動いてる。ツアーが終わってから発表予定だったが…不安にさせたな。」 「本当…ですか？」 「やったな！シュウト！」 「シュウ君！おめでとう！」 「お前意外にせっかちだなぁ〜」 シュウトは目を見開いて固まっていた。みんなのお祝いの言葉に涙をながし、ありがとう、ごめんなさいと頭を下げた。 タカが満面の笑みで思いっきり抱きしめると、ごめんねタカ、と静かに泣いた。 マスコミにはすぐにデマと発表し大きな反響を呼んだ。それと同時にシュウトのソロ活動も発表され更なる話題になり、ブルーウエーブは知名度も今まで以上に上がった。 優一:タカさん、お疲れ様でした。とてもかっこよくって、正直びっくりしちゃいました！落ち着いたら連絡くださいね。 ライブ後のメッセージを受信してから約2週間後に内容を確認した。怒涛のツアーをこなし、脱退騒動も落ち着き、やっと一息つくことができた。 事務所は美奈子に勧告を行ったようで今のところ落ち着いてはいる。 （用心に越したことはない、か） 美奈子が勧告くらいで止まるタイプではない。欲しいものは全て手に入れ、強行でも思い通りにことを運ぶ。とにかく優一との関わりがバレないように…と気合いを入れ直す。伊藤に電話し、優一のスケジュールを確認すると明日は休みらしい。伊藤に曲のアレンジ案を聴きたいと相談し、今の収録が終わったら連れてくるように頼んだ。電話を切って少しソワソワする自分が思春期の学生みたいで苦笑する。とりあえず掃除をしたり、録画していた番組をぼーっとみたりして時間を潰した。 （早く、会いたい） ガチャン 鍵が開く音がしてリビングの入り口までそっと移動する。 ここの鍵を持ってるのは自分以外にただ1人。小さな頭が見えて胸がいっぱいになる。 「タカさ…うわぁ！！ちょっと重いっ！」 「優一〜」 リビングのドアを開けた瞬間優一に全体重をかけて抱きしめる。うなじに顔を埋めると久しぶりの恋人の香り。 「あはは、タカさん、甘えん坊ー！…んっふぅっ！」 「…っ、は…」 「んちゅぅ…んっ、っ、ん」 もう止まらなかった。トロンとなった優一を抱っこして、替えたばかりのシーツの上に転がし押さえつけ、何も喋らせないまま唇を塞いで舌を絡め続けた。 「んっ、ふっ…」 「はっ、ん…」 互いの呼吸と舌の絡み合う音と身動いだ体を縫い付ける布ずれの音だけが響く。見下ろした優一の顔は欲情に濡れ、目が合うとそっと逸らされた。 優一はあのステージでのタカが頭から消えなかった。かなりのインパクトで、あの歌声の持ち主が今目の前で自分を愛しそうに見つめることが非現実的だった。 「どうした…？」 「いやだ…見ないでよ」 「優一」 「〜〜〜！」 「なんだよ」 ふふっと笑うタカに優一は顔から湯気が出てるんじゃないかというくらい真っ赤になった。 「優一？久しぶりだからか？」 「それも…あるけど…」 「けど？」 「歌…本当にすごかった」 潤んだ目と上目遣いでやっとこっちを見た優一は本気で照れてるようで、つられてタカも真っ赤になった。 「お気に召しましたか？」 「うん…。本当にすごくて…あんなにすごい人が俺の隣にいるなんて信じられない」 「すごい人なんかじゃないよ」 「かっこよすぎてどうしたらいいか分からない」 耐えられなくなったのか、ついに両手で顔を覆ってしまった。久しぶりに会ったのに可愛い発言と仕草で理性が切れそうだ。必死に冷静を装って、こっち見てというと少しだけこっちを見た。 「そんなに気に入ってくれたなら、お前のためだけに歌うよ」 「へ…？」 「優一が求めるならなんだってあげる」 「…っ」 「お前に全部あげるよ」 優一はキャパを超えたのか目がどんどん潤んでついに思いが溢れた。流れる涙を吸い上げキスを再開する。ゆっくりと味わうように身も心も裸にしていく。タカが肌に触れるだけでビクビクと跳ねる。少し開いた目は、好きでたまらないという目だ。タカはその目を知っている。他の人で受け止める時はその目が怖かった。自分に依存されるのも、自分がはまっていくことも、そしてその目が変わることも怖かった。でも今は、 （可愛い） ふっと笑うと目を見開いてまた顔を背けた。愛しいこの人をどろどろに愛してみたい、そう思っていつも以上に緩い愛撫に時間をかけてみる。 酔いしれる表情に満足して、身体の隅々にキスをする。 「タカさん…」 「ん…？」 「気持ちくておかしくなりそう」 涙で濡れたまつ毛をそのままに、息が荒れたまま切なそうに見つめてくる。タカの腰がズクンと重くなった。 「もっとおかしくなって。優一のいろんなところ見せて」 「んっ、んぅ、…っ、んっ、」 「我慢するなよ」 「いやっ…だ。恥ずかし、ぃっ、ん、」 「いつまで我慢できるかな？」 タカはどんどん下にさがって、期待からか久しぶりだからか露を流し続けて震えるそれを口内に迎え入れる。優一は初めての刺激に目を見開いて腰が浮く。 「っあああ！っはぁ！んぅ！！」 裏筋を丁寧に舐め上げ、時折わざと歯を軽くたてると背を反らし足が空を蹴る。 真っ赤に染まった身体はしっとりと汗で湿ってツアーに向け鍛えられた腹筋を通っていく。 「んっ、ふぁ、はぁ、気持ちいっ」 優一はやはり口内が性感帯なのか自分の指を口内にいれて舐め始めた。エロい仕草にタカは目眩がした。優一を舐め上げながら濡れた手で穴の周りをゆるゆると撫でる。 「や、んっ、んちゅ、んふっぅ、タカさんっ」 「ん…なんだ？」 口を腕で拭って顔を覗き込むと、いじわるしないで…と指を加えたまま、大きな目を潤ませて言われ細い理性の糸がプツンと切れた。 「あぁああっ！！んぅ！あっ、あっ！」 「ちぅっ、んっ、ふぅっ」 足を大きく開かせそこに顔を埋め、穴の周りも舐め上げる。優一は絶叫しながら頭を振ってシーツを握った。 タカは様子をみながら指を一本入れると、待ってましたとばかりに食いついてくる。思ったよりきつくない中に、言いようのない不安を感じた。 「優一、ここ、いじった？」 「あっ、あっ、んっぅ、」 「優一？」 2本目を入れても余裕がある気がする。優一が応えない分誰かが手を出したのかと不安が募る。 そんな時、小さな小さな声でぽそりと白状した。 「昨日っ…いじったぁ」 「待てなかった？」 「んっ、だって、も、我慢できない、もん」 「待たせたな」 「でも、全然気持ち、よくなくて、んっ、できなかった…っ、イけなくて、やめた」 真っ赤になって素直に答える優一にタカは自然と顔がニヤける。 「笑うな…連絡くれなかったのに」 拗ねるセリフに、タカは嬉しさが止まることなく溢れ出す。 「ごめん。待たせた分、いっぱい気持ちよくするから」 「うん…っ、もう…、来て？」 両手を広げて迎えてくれる可愛い恋人に誘われるまま、身体を密着させたまま、痛いほど大きくなったものをねじ込む。 「んっぁああ、入って…ぁああっ」 「っは、は、すご…絡みついてくる…っ」 「ぁ、ああぁあっ！？うそっ！アァッ、や、ぁ、クるっ、どうっしよお、俺っ、んっんぅ」 「は、まだ、半分だぞ」 「わかんないっ、ぁ、やばいっ、ゃ、あぁっ、はっ、んっ、タカさんっっ」 「くっ、ーっ」 「ぃっやぁあああ！あっ、あぁあ！」 まだ半分しか入ってないが、優一の中が突然蠢き、搾り取るように中が収縮してタカは顔をしかめて耐えた。 優一はタカの背中に爪をたて仰け反るのと同時に勢いよく欲が飛んだ。 「ふぅぅ、きっつ。優一、大丈夫か？」 「は、は、はぁ、ぁ…っ…は…はぁっ…大丈夫。すごく、気持ちよかった…」 「久しぶりだったからな」 「は、は、は、は…ぁ、」 イッた余韻に浸って呼吸を整えるのを見て、タカは中途半端に入れたモノがさらに大きくなった。 「は…っ、ごめん、」 「ぅああっ、待って、待ってよぉ、まだっ」 「優一、優一」 「ーーっ、ぁ、あぅ、ふうっっ」 ぐぐっと狭い中をこじ開けるように全てを埋めてお互いが深い息を吐く。優一の出した欲が2人のお腹に広がるのも気にせず、指を絡めてしばらくキスしていた。 「タカさん、は、んぅ、んちゅっん、」 「ん…？」 「だいすき」 「っ！」 「俺なんかを…俺を選んでくれて、ありがとう」 至近距離で唇が触れたまま、優一がふわりと笑った。 （こっちのセリフだよ） タカは込み上がる涙を目を閉じて誤魔化し唇に噛み付いた。 少しずつきゅっきゅと締め付けられる中に、優一が求めてくれてるのがわかり嬉しくなる。 （最高に気持ちよくしてあげる） 身体を密着させたまま、奥だけを小刻みに刺激する。 「んっ、んっ、むぅ、んっ、ん」 「はぁ、はっ、はっ、」 「んあっ、アァッ、はんっ、ぅああ！」 「ん？…奥もっ…よくなってきたか？」 「ぅんっ…は、これ、気持ちいっ…」 生理的な涙をポロポロ流し、恍惚の表情でぼんやり見てくる。くん、くん、っと締め付けられ、タカも今まで禁欲状態だったのもあり、身体が頭のコントロールを全て無視した。 ぐぐっと引き抜き、抜ける寸前のところで浅く出し入れする。そして、優一の大好きなあの場所を攻めはじめた。 「っ！！！ぁあああっ！！もぉ！ヤ、すぐっ、出ちゃうっ！」 「また、イきそ？」 「ああっ！あぁあ！んっ、タカっ、タカぁ！」 「っ！？くぅっ！！ぁ、悪いっ、出すぞ！！」 「んあぁああーーっ！！んっ、は、ーっ、は、ぁ、タカさんの…、あったかい…」 優一の中に出し切るように腰を動かしながら、優一に覆い被さる。重いよぉ、とくぐもった声が聞こえるが、呼吸を整えるのと、真っ赤であろう自分の顔の赤みが収まるまで抱きしめた。 （呼び捨てぐらいで…恥ずかしい） 優一のいつもとは違う呼び方に、急に訪れた絶頂。まだばくばくしている心臓に苦笑いする。 中から出て行くと結構な量がトロリと流れて行く。その感覚に目を閉じて耐えている優一が愛おしくて、抱き上げて太ももに乗せる。顔中にキスをするとふにゃりと嬉しそうに笑った。 「タカさん…、気持ちよかった？」 「最高」 「えへへ、嬉しい」 「可愛いやつ…。本当にお前をはなしたくない」 「はなさないでよぉ」 「前も言ったが…絶対お前を守るから」 「んふふ。かっこいい。じゃあ俺もタカさんを守る！」 「ふふっマコちゃんで精一杯じゃないか？」 「マコちゃんは大河さんに任せる！…ま、もちろん守るけどね。…でも俺にはライバルがいっぱいだから」 頑張らないと、と意気込む優一に？が浮かぶ。 「ライバル？」 「そ！ライブではみんながタカさんに惹きこまれてたもん。俺もその1人。タカさんを好きっていう人は他にもたっっっくさんいるだろうから、釣り合う人間になって、そして、タカさんが頼ってくれるような人になる！俺が1番愛してるって証拠を見せる！」 って本人に言うことじゃないけどね、と笑う優一に目の前がどんどん歪む。 「え！？タカさん！？どうしたの？大丈夫？」 「お前、俺を殺す気？」 「へ？！なんか傷つけること言っちゃった？」 「幸せすぎて、もう今死にたい」 「タカさん、泣かないで。幸せをもっと2人で作って行こう？」 小さな身体にふわりと抱きしめられる。今回はいろんなことが多かった。自分が思ってる以上に心は疲れ切っていた。 「優一？」 「なぁに、タカさん」 「もしもの話だけど…俺が歌うことをやめても、お前はそばにいてくれる？」 「タカさん…」 「…なんてな、冗談だよ」 「タカさん、俺はタカさんが幸せで、笑って過ごせるならそれが幸せだよ。歌はほら、全部俺にくれるんでしょ？そしたら俺がハモってさ、寄り添って生きていける。俺はずっと、歌手のタカさんじゃなくて、その…隆人さんと一緒にいたい。」 タカは目を見開いた。込み上げてくる思いが消化できずひたすら涙をこぼした。滅多に呼ばれることのない、本当の名前。いつも求められるのは歌手としてのタカだけだった。 「俺、もう、“天才”をやめていい？」 いつか、大河さんがポツリと言った言葉と一緒だった。タカさんと大河さんは同じだったのかもしれない。 「タカさんはタカさんだよ。天才とか凡人とかじゃなくて、タカさんはそのままでいいんだよ。タカさんが嫌ならやめたらいい、誰かが決めたものに縛られなくていいんだよ」 「ーっ、っ、くっ、っ」 どんなことが起こっても飄々としているタカがここまで感情を表現することに、今回の問題やツアーが大変だったのだろうと察した。 「タカさん、本当にお疲れさまぁ〜〜！大変だったねぇ〜！」 「ーーっ、っ、」 「よしよし、お疲れさま」 小さな身体にしがみついたまま、タカは涙を流し続けた。優一は優しい笑顔で強く抱きしめ、縛られた髪を解いてわしゃわしゃと撫でる。 「わ、いい匂いする」 ふわりと香ったシャンプーの匂いに優一はくんくんと鼻を鳴らした。今日はタバコを吸ってなかったからか、優一はご機嫌だ。その様子にタカは思わず吹き出した。 「え？タカさん、笑ってるの？」 「だってお前、犬か」 「前はネコちゃんって言ってなかった？」 「動物には変わりないな」 すっかり涙は止まったが、まだ潤んでる大きな目と濡れた長い睫毛。笑って目を細めるとこぼれそうなそれに優一は口付け、しっかり見つめた。 「タカさん、俺はずっとそばにいるよ」 「……お前、かっこいいな」 「えへへ〜でしょ？」 「うん、かっこいいよ。ありがとう。」 優一に初めて弱いところを見せたタカだが、幻滅されるどころか優一の男気ある一面が見れた。 ガシャン！！ 「ふざけないで！！私の計画がめちゃくちゃよ！！！」 「も、申し訳ございません。」 「結局今のところにステイが認知されちゃったじゃない！！そして私は接触が許されなくなったわ！」 美奈子は秘書を怒鳴り続け、脱退がデマという週刊誌を投げつけ、どかっと座って大きなモニターを見る。そこにはブルーウェーブのライブ映像が映し出され、タカが映ると美奈子がニヤリと笑った。 「逃がさないわよ。あなたは私だけのものなんだから。」 美奈子は次の手を考えはじめた。