13 / 140

第13話 固結び

「本郷代表がタカさんを支配している」 優一は周りがやけに静かに感じていた。あの日、タカが天才をやめていいか聞いたのはこのことか、とやっと理解ができた。エレベーターの到着が半日待ったくらいの感覚で焦燥感はあるものの、気持ちが高ぶることなく奥底で煮えたぎるものを抑えている。 青木が言いにくそうに話した内容は、映画やドラマみたいな話で想像し難いものだった。悉く愛する人を消されてきた、それでも自分を選び、守ろうとするタカの気持ちを踏みにじる例の女に会わなければ。そう思った。 「優一くん!!」 「……はい?」 「ブルーウェーブのカナタだ、タカを知らないか?!」 息を切らして走ってきたのはブルーウェーブのカナタ。手にケータイを握って焦った様子だが、優一はなんでもないように答える。 「ああ、魔女に捕まってるみたいです。今から迎えに行きます。」 「魔女…?まさか、美奈子さんが!?」 「さぁ?だれか知りませんが俺の大切な人に手を出したんじゃただじゃ済まされません。」 カナタはごくりと喉をならし、そばに立って大人しくなった。 「…?どうかしましたか?」 「俺も行く。」 「すみません、邪魔しないでください」 「ダメだ!まず、タカは美奈子さんに君の存在をバレたくないと努力していた!わざわざ行って知らせる必要は…」 「バレても構いません。消されても這い上がるつもりです。そんなことどうでもいいんで」 チンッ とドアが開く。カナタはやっぱり着いてきているが優一は全く気にしなかった。 「本当に行くのか?」 「もちろんです。」 その後は到着まで無言だった。部屋の前までくると優一はコンコンとノックをするが返事はない。何度も何度もノックをしても出てこないことに痺れを切らし、優一は思いっきりドアを蹴った。 「おいこら、出てこい!!!」 ライブぐらいの声量で怒鳴る優一にカナタは驚き、慌てて優一の口を手で塞ぐ。もがく優一だが体格差でカナタはなんとか抑えた。 「やめろ、他のお客さんもいるんだぞ!」 「だって…出てこないから…」 ガチャ 「何事なの?」 出てきたのはバスローブに身を包んだ美女。はだけた胸元はスタイルの良さと色気をにじませる。 「こんばんは。タカさんを迎えに来ました」 「あなた…たしか、RINGの…」 「はい。タカさんの恋人、優一です。恋人を返してください。」 「バカ!お前!」 「カナタさんは黙っててください。誰だか知りませんが、タカさんいますよね?失礼します。」 開いたドアから入ろうとするも、美女に止められ、優一は美女を睨みつける。 「…ふふ、そう。あなたがタカの」 「……。」 「邪魔する存在なのね」 「は?」 相変わらず童顔が好きね、とクスクス笑ってお入りと言って中に通された。広い部屋にはいくつもの部屋がある。リビングには夜景が一望でき、部屋の真ん中になんの意味があるのかバスタブがある。そこにタカの姿はない。 「…タカさんはどこですか?」 「寝室よ?お楽しみの中邪魔してくれちゃって、野暮なこと聞かないでよ。デリカシーがないのね」 ガチャン!! 「冗談だよな?」 「さぁ?どうかしら」 優一が机を蹴って飾られた花瓶が割れた。異様な空気にカナタは感じたことない緊張感と冷や汗をかいている。 「まず話をしましょう?」 「…そうですね。では、タカさんに絡むのやめてもらえません?」 「あなたこそ、タカを邪魔するのやめてくれない?」 平行線の会話は何往復か続けられた。優一はイライラを隠さないままあたりを見回すと、バスタブの中にタカのケータイを見つけた。完全にお湯に沈んだものを見て優一は席を立って寝室を探し始めた。 「人の部屋を勝手に動き回らないでよ」 クスクス笑いながら言うのを無視し、2つ目の部屋を開ける前、優一は少し躊躇った。 (ここに、いる…) 見るのが怖い、とさっきまでの強気の態度が怯む。それを見逃さない魔女はタバコを吸いながらよく通る声で言った。 「妊娠したら知らせるわね?最高にヨくしてもらったわ。」 ブチンとキレる音が脳内で聞こえてバスローブの胸ぐらを掴む。 「あら、女性に手を出して大丈夫?あなたのグループ終わるわよ?」 「お前が大丈夫かよ?たしかどこかの事務所の代表とかだっけ?事務所つぶれるんじゃねぇの?」 優一が美奈子を突き飛ばしたのをカナタがキャッチする。優一はずんずんと寝室のドアを開けると全裸で眠るタカの姿に血がのぼる。ただ、様子がおかしい。 「…?タカさん?起きて。タカさん。」 血色がなく、死んだように眠るタカに優一はカナタに目線で助けを求める。カナタも慌ててベッドにいき、タカを揺するも全く起きない。 「美奈子さん…?あの…何かしました?」 「知らないわ。タカが自分で薬を一気に何錠か飲んでたけど。」 「薬?」 ネタばらしをつまらなそうに美奈子は語り出した。美奈子が風呂から上がると誰かと電話していたが美奈子を見るとケータイを室内のバスタブに沈めたそうだ。そして誠の代わりに、と美奈子を受け入れそうだったが、その前にタバコを吸いたいと言い、バッグを漁ったかと思ったら何錠かの薬を飲んでいたそうだ。その後、頭が痛い、眩暈がする、眠い、と言ってベッドに倒れ込んだらしい。 優一はタカのバッグを見るといつものタバコの他に睡眠薬があった。錠剤だけが抜かれたゴミが7錠分。適量は2錠だ。 「…なぁ?ここまで追い詰めて何がしたいの?」 「この子は天才なの。あなたみたいなのに構ってる暇はない。私はタカのプロデューサー。一曲でも多く歌って世に音楽を残すの」 「…音楽だけ残せば、その天才がこの世からいなくなってもいいの?」 「え?」 「あなたは、この天才を殺そうとしているの、分からない?」 「何言ってるの?これだから凡人には…」 「お前が何言ってんだよ…。事実、見ろよ、自分の目で。“この世にいたくない”…これが天才の答えだろうが!!!」 泣きながら叫ぶ優一につられてカナタも涙が溢れた。タカは美奈子の事で幾度とない死への執着があった。優一と出会ってそれが無くなっていた。 「タカさんは言ってたよ、天才をやめていいかって。俺が歌わなくてもそばにいてくれるか?って。そんな当たり前のこと、確認しなきゃ分かんないくらい追い詰めておいて、何がプロデューサーだよ。プロデューサーはアーティストを殺すのか!?違うだろ!!」 美奈子は目を見開いて黙っている。 「タカさんはお前の所有物じゃない。1人の人間だ。意思も感情もある。繊細なところも弱いところも優しいところも努力家なところもある。だからあんな歌が歌えるんだろうが!人に響く歌が!!お前のプロデュースなんかじゃ誰の心にも響かない!!世に残るどころか台無しだ!!」 優一の目からパタパタと涙が落ちる。詳しい事情は知らないが、タカがそこを選択することが物語っていた。 コンコン… 静かに叩かれるドアをカナタが急いで開けに行った。優一は涙をそのままに美奈子を睨み続けた。美奈子は黙ったままタカを見つめていた。 「社長!!ありがとうございます!タカが睡眠薬をたくさん飲んでしまって!」 「カナタ落ち着け。部屋に案内してくれ。」 寝室のドアをあけて入ってきたのは社長だった。 「え、社長…?」 「美奈子、約束とちがうな?」 「何よ、今回は手を出してないわ。タカが勝手に睡眠薬を飲んで眠っているだけよ。」 「俺は接触するなと警告したな」 「そうだったかしら。」 「そうか。なら、明日マスコミに公表させて貰う。他事務所のタレントへの圧力とな。お前の事務所のタレントも被害が及ぶだろうがそれも仕方ない。」 「ちょっと待ってよ!私は!」 社長は首を横に振り、美奈子を黙らせた。そして寝ているタカの髪を撫でて 「遅くなってごめんな。早くそうするべきだった。申し訳ない。」 優一とカナタにも申し訳ないと頭を下げ、服を着せて新しい部屋に運ぶよう指示した。 「優一くん、と言ったわね?」 「はい。」 「タカは絶対に渡さないわ。あなたみたいな男なんかに。」 「俺もです。あなたみたいな女に渡しません。汚いマネじゃなくて正々堂々勝負しに来てくださいよ。受けて立ちます。」 「凡人のくせに」 「あなたからの天才の称号なんて糞食らえだ」 悔しそうに睨む美奈子に気にせずカナタとタカを運ぶ。社長は部屋に案内した後、リビングで少しいいか、とカナタと優一を呼んだ。優一は青木から聞いた今日の話を伝えた。 「社長、タカさんとさっきの人に何があったんですか?あの人どこかの事務所の代表なんですよね?」 「あの人は本郷エンターテイメントの代表、本郷美奈子だ。」 「え…そこって。」 「そうだ。この間の騒動も美奈子の引き抜きからだ。美奈子は元女優で俺の妹だ。元は所属のタレントとして活動していた。女優として軌道が乗り始めた時、美奈子が通っていたジャズバーのママさんの息子が歌っていて、その子をスカウトした。それがタカだ。」 美奈子は長い撮影や人間関係でストレスが溜まっていてよくジャズバーのママに話を聞いてもらっていた。その日は急遽ショーの予定が無くなり、ママがタカに歌わせたそうだ。当時12歳の少年のピアノ演奏と歌声は心が疲れた美奈子を洗い流した。美奈子はママを説得し、タカを練習生とした。 「ただ、美奈子はだんだんタカに執着していった。成長するにつれて、1人の男としてタカを見るようになった美奈子は、私がプロデュースすると言って女優を急遽引退した。売り出し時期の女優が勝手に引退表明したことで当時の社長はお怒りだった。そして、ついに事件が起こる」 「事件?」 「美奈子がタカと肉体関係を持った」 「へ!?」 カナタは知っているのか目を伏せて黙った。優一は目を見開いたまま固まった。 美奈子はタカの彼女の存在を知り、嫉妬に狂って嫌がるタカと無理矢理関係を持った。その行為の写真を彼女に見せ、別れさせたという。そこから美奈子の監視が始まったようだ。 「あの事件が発覚してすぐに事務所から追放したが、どうやってか、美奈子は事務所の知らないところでタカに接触をしていた。もちろんタカは実家もばれてるし、母親にも言えるわけがなく、ずっと不安定になっていた」 「お前は守るから」 タカが言った言葉を思い出す。バレないように、優一に被害がないように、と必死だったのだろう。眠れないことが当たり前になったのも納得がいった。 「タカは傷つけた人たちのために、せめてもの懺悔として歌うと、俺に話してくれた。自分にできることはそれしかありません、精一杯やります、とな」 「ただ…大河の事件の時は、本当に死ぬかと思った…」 カナタが口を挟んであの時のことを思い出したのか、苦しそうな顔をしている。 「大河さんの事件もあの人が?」 「そう。マネージャーに差し入れを渡したんだけど…今、誠が苦しんでいるものと同じだ。」 「そんな…!」 青木から誠の話を聞いていた優一は驚愕した。 「俺は、タカから大河のことが気になるって聞いていたから、あの事件が衝撃的だった…。あの日、タカは大河に告白するつもりでいた。例え歌を辞めても大河を支えたいと、」 「それなのに…っ」 「そうだ。その後、タカはパニックや副作用やらで病院に担ぎ込まれて、美奈子さんが来ると大暴れ。何度も自殺未遂をしてはいろんな人に阻止されて泣いてた。」 大河からしか聞いてない優一は胸が締め付けられそうな気持ちだった。こんなに思っていたのに伝えることも出来ずに…。 「泣かないで優一くん!ごめん、今の話じゃなくて…」 「ちがいます、っ…だって、こんなに好きなのにっ、伝えきれないで…っ、そんなの、辛すぎるっ」 「優一くん…」 「たぶん、両思いだったのに…こんなことっ、ひどいっ!」 「優一くんは人のために泣くんだね」 カナタは優しく笑って優一を抱きしめた。社長も微笑んでいる。 「名前の通りの人だな。ユウは。タカをよろしくな」 「はい!」 カナタも一緒にいると言ったが、社長が引っ張って出ていった。カナタはレイに連絡すると言っていたので素直に甘えた。 深く眠るタカの隣に潜り込みぎゅっと抱きしめた。 「タカさん、いっぱい寝たらまた一緒にお話しよう?そして曲作ってみたり、ハモってみたりしてさ…あ、俺タカさんの作ったご飯食べたいなぁー!洗い物はちゃんとするから…」 優一はタカの唇にチュッと口付けた。 「タカさん。ここも捨てたもんじゃないよ。一緒にたくさん笑おう?俺が涙がでるほど笑わすからさ…ずっとそばにいるよ?だから…だから…戻ってきて…起きて、名前を呼んでよぉ…」 急に1人になった優一は不安に押しつぶされそうになってタカにしがみつく。抱き返す大きな腕も今日は力なくベッドの上だ。 「タカさん…っ、タカさん、起きてよ」 どんなに揺すっても反応がないことに恐怖を感じしつこく揺らし続ける。起こさなきゃいなくなる、という恐怖だ。 「タカさん!タカさんってばあ!!」 「ー、…っ、」 「タカさんっ!!」 「…ゆ、いち…?」 低い掠れた声に、ガバっと抱きついて嗚咽が出るほどに泣いた。タカは少ししか開かない目で微笑んだ。 「優一…寝たばっかなのに…起こすなよ」 「〜〜〜!タカさんっ」 「?…どうしたんだよ?…甘えんぼだな」 タカは薬を飲んだことがうろ覚えのようだったが、ケータイを沈めたのは覚えているらしかった。一連の出来事を話すとタカはぎょっとした様子で優一に質問責めをした。 「お前!美奈子さんに会ったのか?!」 「うん」 「な、なんて話したんだ?」 「恋人を迎えにきましたって言ったよ」 うそだろ、とタカは頭を抱えたが優一はニコニコと話している。 「美奈子さんにお前の存在を隠していたのに…お前に何かあったら…」 「そんなの返り討ちにしてやるよ。あの人にもずるいマネしないで正々堂々勝負しようって言ったし」 「おっまえ…。はぁ…。そうか、優一だもんなぁ」 「え?!なに?ダメなこと言った?」 不安になってタカを見つめると、クスクス笑い始めた。 「いや?正義のヒーローだな。かっこいい。」 褒められてえへへと笑うのをタカは愛しそうに見つめ唇を寄せた。 「ありがとう。守ってくれて。」 「恋人を守るのは当たり前だよ。…タカさん、だから俺をおいてかないで…。本当に怖かった」 「ごめん…」 「いなくなっちゃ嫌だよ」 「ごめんな…心配かけた」 微笑みながら優一の頭を撫でる。優一はその手を外し、タカの顔を両手で包んだ。 「タカさんに、俺の全部をあげる」 「っ!」 「タカさんはもう1人じゃないから、勝手に、生きることをやめないで」 「…うん…分かった」 「誰かを守らなくていい、歌が嫌なら辞めたっていい、だから、生きて。ずっと俺と一緒に生きて。」 「…っありがとう」 優一からぎゅっと抱きしめられるのを受け止めて、タカの腕が背中に回った。この何でもない仕草が、当たり前じゃないことを感じ優一は嬉しさが込み上げた。 「ふふっ…プロポーズされたな…」 「え?あ…本当だ!プロポーズになってる!」 優一はそんなつもりがなかったのか、顔が真っ赤になるのをタカが笑った。こうして笑い合えることが嬉しくて優一はぎゅうぎゅうと強く抱きしめた。 「優一、痛いって」 「痛いってのも生きてるってことだよ」 「そうだな、じゃあ」 ドサっとタカに倒され、天井とタカの顔が見える。 「気持ちいいのも、生きてる実感だよな?」 「えっ?」 優しく口付けられそのまま耳元に唇が移動する。 ピアスを甘噛みされると優一がピクッと反応した。 「このピアス…大河とお揃いだってな?女々しいかと思って言わなかったが、さすがに他の男とお揃いは許さないよ?」 「んっ、ぁ、はぁっ、だって大河さんだし…っ」 「ダメなものはダメ。優一は俺のだから」 低く囁やかれゾクゾクとして真っ赤になる。射抜かれるように見つめられ素直にはい、と返事をすると、良い子、と笑って首筋を甘噛みする。 いつもよりもゆっくりと味わうように高められる。触って欲しいところまでまだまだ距離があって待てずに震える。 タカのしっかりした指が触れるか触れないかのギリギリで胸の尖を掠め、触ってほしくて無意識に胸を張るとタカがニヤリと笑った。 「くちゅ、ん、ちゅ、」 「ああっ!ふぅ、ンっ、ん、」 ちゅぱちゅぱと吸われたまらなく恥ずかしくて首を振る。タカの髪を掴んで顔を上げさせようとするとこっちを見たまま目だけで笑って先端に舌を這わせる。 「っ!!!」 カァッと茹で蛸みたいになると、タカは嬉しいそうに喉の奥で笑って、今度は歯を使ってコリコリと弄り始めた。 「んんんっ!!あぁあ!」 「ん、気持ちイイか?」 弄りながらも息をかけ、様子を見てくるタカの視線から逃げたくて顎を反らす。 そうするとタカは全ての愛撫をやめ、優一を見つめる。 「もぅ…っなに?」 「俺がお前を愛してるところ、見てて」 「っ!?なんで今日そんな恥ずかしいことばっかりっ」 「お前のプロポーズが嬉しかったんだよ…俺だって浮れるのさ」 そういって幸せそうに笑われると優一は負けた、と思い観念して目を閉じた後、タカを見つめた。 すると歯を見せてニコッと返されて心臓が強く跳ねた。 真っ赤になるまできつく吸われて、優一はどこを触られてもビクビクと敏感に反応した。少しタカが体勢を変えた時に見えた大きいものに優一は手を伸ばした。 「んっ…、びっくりした…触りたい?」 「うん、俺にさせて?」 いいよ、と服を脱ぐ姿を見る。優一はいつもその姿を見るのがすきだった。タカが全部脱いでベッドに上がると優一は吸い寄せられるように唇にキスしながらタカの熱を手で触る。キスの合間に漏れる息が嬉しくなり、だんだんと下にさがる。 「タカさん、シテいい?」 「無理するなよ?」 「ん、んむぅ、んっ、ちゅぅ、」 「っ、…っ、ン…」 口の中いっぱいに満たされて、恍惚な表情で夢中になる優一の頭を撫でる。これをシテるだけでイくんじゃないかというくらい気持ち良さそうに頬張っている。 「んちゅ…っ、はぁ、苦いの出てきた」 「優一が上手いからな」 「なんか…っ、俺も、気持ちい…。タカさん、もう、我慢できない」 「うん、どうしたい?」 「入れてぇ?」 四つん這いになったまま真っ正面に見つめられ首を傾けられるとあまりの可愛さにタカは眩暈を起こしそうだった。タカはあぐらをかいてその上にくるように太ももをトントンと叩く。優一誘われるままトロンとした目でストンと乗った。 「ならすよ。指舐めて」 「ん、ちゅうっ、ぅむっ、ん」 「こーら、舐めるだけ。指舐めてイきたいのか?」 「やだ…入れてってばぁ」 優一の口から指を引き抜いてそっと孔に押し込むとゾクゾクと背中が反っている。タカの肩にしがみつき、耳元で荒い息を吐いているのを聞き、空いてる方の手でタカは頭を撫でた。 「なんか、深い…っよ、ぉ、んっ」 「奥も最近気持ちイイもんな?ここのあたりだったか?」 ぐりっ 「ッあああ!!やぁ!ンッ!……あ、…っは、うん、ここだったぁ…、は、はぁ、びっくりしたぁ」 「可愛い」 「ン、タカさんちゅうして、んっ、ちゅ、んぅ」 快感に溺れ始めた優一を少し持ち上げ、指を抜き、タカはゆっくりと中に入る。ビクビクと腰が跳ね、キスの途中の息も喘ぎ声に変わる。 「〜〜っ!ぁああっ!あっ、深い!」 「はぁ、そんなに嬉しい、のか?、中が喜んでるぞ?」 「は、ぁっ、うれしっ、あ、まだ、待って」 いつもと感覚が違うのか、生理的な涙でまつ毛が濡れている。その涙を吸い取って落ち着くまでキスをする。 「お前、んっ、本当にキス好きだな」 「んっ、気持ちいっ、ふわふわする」 フニャっと笑う優一にタカがさらに固くなり、動いたと思ったのか、まだダメっと目を閉じいる。 きゅんきゅんと締め付けられ、タカの呼吸も荒くなっていく。まだしないでと何度も言われたがタカは優一の耳元でタイムオーバーと囁き、腰をより奥に入れ込んだ。 「っぁああ!ああっ、あぁあ!!」 「ふっ、くっ……、っ」 そこから2人は快感を追うだけひたすら求め合った。タカが開発した奥に集中して腰を進めると優一が狂ったように叫び始めた。 「っいやぁああ!やだぁ!やだぁって!!」 「大丈夫、大丈夫」 強すぎる快感に肩に爪をたて頭を振る。腰も別物みたいに動いていてタカの腹筋で欲を刺激され涙を流しながら快感に耐える。 「っぁああ!あ、っあ!あ、ぁあああ!」 「イくか?」 「っっ!!っぁああ!!あぁあーーッ!!」 思い切り仰け反ってタカと優一のお腹に熱いものがかかる。 「っっ!?待って、待ってよぉ」 「はぁ、っ…っ、くっ…出すぞっ」 「ぁああ!もぅ!ぁあああ!!…っ、はぁ、熱い」 「っ、はぁ、は、気持ちよかったな、優一」 「んっ、はぁ、うんっ…気持ちいい」 「生きてるな、俺ら」 「バカ…。でも…うん、そうだね、生きてる!」 まだ入ったままいちゃついていたらそのまま2ラウンド目が始まった。その後2人で風呂に入って汚れたベッドじゃなくて大きなソファーにくっついて寝た。 深夜に優一は目を覚ますとタカのホールドで動けない。抱き枕みたいに足も腕も絡みついていて、寝顔は口が半開きで子どもみたいにすやすやと寝息をたてている。眉間のシワもなく胸が上下に動くのが嬉しくて優一は込み上げる涙をおさえた。 (一緒に生きていこうね) おでこにキスをして優一はもう一度目を閉じた。優一のケータイが鳴るまで2人は眠り続けた。タカは一瞬起きたもののまた睡魔に襲われて目を閉じた。移動しなきゃいけない優一はメモに自分の番号を残し、部屋を後にした。 コンコンコンコン 「ん…、優一?」 タカがノックで目を覚ますと部屋に優一はいなかった。ずっと叩かれるノックに寝起きの顔でドアを開けた。 「はい…」 「おはようタカ!俺たちも移動だぞ」 ドアをあけるとニカッと笑うカナタ。部屋に招き入れ、だらだらと準備をはじめた。 「お前ケータイ壊したからマネージャーが心配してたぞ?」 「あー…そうだった。あ」 (優一にどうやって連絡とろう?) 準備の手が止まるとカナタが1枚の紙をヒラヒラと見せた。 「ちゃんと番号書いてくれてるぞ。本当お前のためにいるような人だよな。優一くん。名前の通り優しさの塊ってかんじ」 昨日本当かっこよかったぞー!俺ハラハラしたもん!と興奮気味に話すカナタにタカは少しイラッとした。 「優一は渡さないよ?」 「はぁ!?なんでそうなる!あんなおっかない人いいって!」 「おっかない?」 「や、強い?カッコいい人、かな?あはははは」 「?ならいいけど」 「タカ、なんか吹っ切れた?」 「そうかも。優一がいれば俺は大丈夫」 「そっか!」 ニカッと笑ってカナタは早くしろー!背中を押してくる。なんだかおかしくなって2人で笑った。ふだん怒らないジンさんが叱りに来るまでふざけていた。 「本郷エンターテインメントの代表、本郷氏が以前いた事務所のタレントへの圧力や引き抜き行為の問題で、本郷氏は今朝、代表辞任を発表しました。」 「これで私に失うものは何もないわ」

ともだちにシェアしよう!