15 / 140

第15話 初恋

(やばい…) 体調が完全に戻ってライブツアーも残すところあと少し。初日の夜から絶不調に耐え、恋人と距離を置き、メンバーを巻き込んで仲直りすることができた。その後からは少しずつ体調もよくなり、予定通りにライブを行うも、ファンが求めるのはあの日の公演。ファンの間で神回と呼ばれる公演を越すため、予定してないアピールやらファンサービスが増えた。誠はレイとのユニットでは艶めかしく絡まれ、男らしい色気にドキドキするし、大河のソロはどんどん表現力を増す。優一と青木もアレンジを加えたり、気分で絡んだり。そしてそれをメンバー自身が楽しんでやってる、それはいいことだ、いいことだけれども誠はため息をついた。 (俺を殺す気?) 仲直りした恋人は、何かふっきれたのか、観客にキャーキャー言われるのを楽しみはじめた。口数少なくクールで歌うと迫力がある王様、みたいな風格だったのに、今は普通の青年に戻りキャッキャとはしゃいでいる。ファンはこのギャップに可愛いと大きな歓声で喜び、ファンが増えたようにも感じる。そして何より、この恋人が楽しんでるのは、 「マコ〜?こっち見て?」 誠の照れる顔を見ることだった。気分が乗ってくると顔を近づけてみたり、ハグしたり、わざわざMCで絡んだりする。しかし、誠から行くと拒否し、拗ねたところを甘やかしたり、すぐに笑顔で応えてくれたりと、予想がつかず、ライブ中はとことん振り回されるようになった。 「もうやだ!大河さん、俺に絡まないでいいから!先いって!ほら、次のMCしてよ!」 「そんな冷たいこと言うなよ、なぁー?みんなもっと話したいよなぁ?」 「「話したーい!!」」 「ほらマーコ?」 「レイさん助けてよー!」 「知るか!自分で処理しろ!」 慌てる姿を青木も楽しそうにからかい、優一は微笑ましいのか天使のような笑顔で聞いている。会場は笑いに包まれ、和やかな雰囲気になっていた。 ライブが終わると、ご丁寧に青木が観客の反応を教えてくれるし、伊藤からも褒められるようになった。 終わった後の恋人はいたっていつも通りなことが余計にドギマギさせられる。 「マコ帰ろー」 疲れたと、半分くらい閉じた目で誠を呼び、先にバンに乗って隣をポンポンと叩く、誠が座ると膝に頭を乗せてすやすやと寝る。本当に猫みたいな人だ、と誠は頭を撫でながら目を閉じた。 「マコ、起きて。着いたって」 「ん、ありがとうございます。おつかれさまでした」 地方を回っているときはそれぞれビジネスホテルの1人部屋を取ってもらっている。ぼーっとしたままそれぞれの部屋に入る。誠を悩ますのはライブ中よりも「後」だ。 コンコン (きた…) 少し緊張しながらドアをゆっくり開けると、荷物を置いた大河が無理矢理部屋の中に入ってきて、背中に腕を回される。誠のももに当たる熱いもの。 「マコ、身体、熱くて…。シて?」 ライブ後の大河さんは、興奮が収まらないのかものすごい色気を持って誘惑してくるのだ。今までは、淡白な人だと思っていたが、プライドとかがあって我慢していたのかもしれない。あの日を境に最近素直に甘えるようになって少しずつわかった、快感に弱いこと。 「んっ、ちゅぅ、まこ、まこ」 「うん、ちゃんと、あげるから、待って。ほら、ベッドいこ?」 大きな目は欲に濡れて潤み、身長差で上目遣いになるのをそのままに見つめてくるからたまらない。誠の服をきゅっと握り早くと急かすのを求められて舞い上がりそうになる。さっさとベッドに行きたくて大河を持ち上げ運ぶと、大河は誠の耳を甘噛みして首すじを舐める。我慢してるのに、と、舌打ちしそうな気持ちのまま乱暴にベッドに投げて両手首を押さえつけて見つめる。 「ぅぁ、っ、かっこいい…」 蕩けた目を伏せて顔を真っ赤にするから誠はもう抑えることをやめた。誠もまた、ライブの興奮を逃せないでいた。 「ぁっ、っ、はぁっ、んっ」 「んっ、っ、っ、っは、っ」 お互い密着しながら本能に忠実に欲だけを追う。お互いしか見えていない空間が誠を安心させた。 「まこ、中、さわって、なんか、っ、へん」 ビクビクと跳ねながら切なそうに眉を下げて懇願される。 「舐める?」 「ゃ、奥に、入れて、ほし、舐めたら届かないからぁ」 「ん、分かった。力抜いて?」 「んぅ…っ、ぁっ、ぁっ、ぁああっ!」 恍惚の表情で仰け反る。目は誠から外されることなく、ぼんやり見てくれている。 あの日以来、大河は最中に絶対に目を見てくれるようになった。 その大きな目からコロリと涙が落ちて誠はそれに吸い付いた。指を少しずつ増やしていくと快感に溺れ、ひたすら善がってくれた。 「まぁこ、まこっ、気持ちっ、んっ、ぁあっ」 「大河さん、入れるよ?」 「ん、ん、も、入れて、良いからぁっ!」 キュンキュンと指が締め付けられ、もうイきそうなほど張り詰めた大河のを見ながら、指を抜き誠の熱を押し込んだ。 「んっ!?ぅあっ…ぁあああーーーっ!!」 「っくぅっ!」 入れた瞬間にぎちぎちと締め付けられ、大河の腰が大きく沿った。そしてパタパタとかかった白濁。 「ーーッ!!はーっ、はーっ、んっ、」 視点が定まらない目でぼんやりとどこかを見て顔は真っ赤になって、不規則に体が跳ねる。 「イッちゃったね」 「…っ、っ、」 「あら、トんじゃった?」 どうしようかと誠はしばらくそのままで耐える。跳ねる身体に合わせて中もものすごく蠢めいている。 大きな目が閉じて、息を整えはじめた。真っ赤に濡れた唇に目が奪われる。 「大河さん、ごめんね?」 「っっ!!ぁっ、ぁああ、あっ、あっ、ん!待って、マコ!っ、ぁっ、マコっ」 誠は軽く謝って抜けるギリギリまで引いて奥に押し込んだ。閉じだ目を大きく見開いて大河が起きた。 「あ、っ、起きた?」 「はぁっ!ぁああ!っっ、まこ、待って、いま、っぁああ、まだ、」 「っ、は、っ、だって、すごい、締め付けで」 「っんぅ、はあっ、また、気持ちいっ、気持ちっ、マコ、マコっ、」 「うん、っ、気持ちぃね、っ大河さん、すきだよ」 自然に出た言葉に、とろとろの大河が嬉しそうにニコッと笑った。あまりの綺麗さに目を見開いて誠はそれに釘付けになった。 「っぁ、は、っ、おれもぉ、すきっ、」 (本当にっ、可愛いすぎでしょ) 誠は真っ赤になって口元を手の甲で抑え目を逸らした。 動きが止まったことに不安そうにまこ?と聞く大河の顔を撫で、言葉がでてこないまま見つめると、また笑顔でうんうんと頷くから誠は首を傾げる。 「俺のこと、好きって、伝わってるよ」 「!!」 「俺のも、ちゃんと、伝わってる?」 「…痛いほど、伝わってるよ」 「痛い…?」 「うん、ドキドキしすぎて痛い。」 「ふは!可愛いこと言うのな。そういえば急に照れはじめたよなぁ?どうしたんだよ」 「だって、こんな俺を好きだとか失いたくないとか…本気で言ってくれた人初めてなんだもん」 「やった!俺が初めてだな?」 「うん。なんだか初めて恋した気分」 誠がそういうとキラキラした顔で嬉しそうに大河が笑った。たまらなくなってぎゅっと抱きしめた。 「んっ、ぁっ!…お前っ、急に、動くなよっ」 「入ってたの忘れてた…」 「あ?緩いってことかコラ」 「くぅっ!!ぁ、ちがぅよ、急に締めないで」 「へへっ!イイ顔してた。」 「もうお喋りはおしまい。」 「っ?!あっ、あっ、んぅ、っあ!!」 細い腰を強く掴んで、大河の気持ちのいいところの律動を再開すると、すぐに顔を真っ赤にして高い声をあげる。もうイきそうなのか余裕がない様子で首を振って快感を逃そうともがく。誠はさらに奥へ奥へと入れ込み、強く打ち付けると大河が誠の腕に爪を立て体が仰け反った。 「っっっ!!っぁああ!!!」 「っっ!」 欲を解放して大河の上に倒れ込みそうなのを腕で抑え、出し切るまで腰をゆっくりと動かした。 そして誠は息が落ち着くと自身を引き抜き、大河の膝を胸の方まであげて開かせる。 とろりと溢れる誠の欲が流れてきた。 「んぅ…。はぁ、お前、これ見るの好きだな本当」 「やばい…すごくエロい。ずっと見ていられる」 「ん、ヘンタイ…もう見るなってぇ」 「まだパクパクしてる」 「やめろって」 「はぁ、可愛い」 誠は指を入れひろげてよく観察しはじめた。大河は誠の好きにさせてやりたい気持ちと、恥ずかしい気持ちとで、真っ赤になったままされるがままだった。 「大河さん、中、出すよ?すこし辛いかもだけど我慢してね」 「ん、大丈夫」 無理矢理出される感覚に大河は歯をくいしばって耐えた。誠は真剣に、そしてかなり丁寧にかきだした。終わったころに大河がほっと息を吐くのを見計らい、誠はわざと前立腺を押しつぶした。 「っぁあ!!…っ、あ、マコ、やめろよ!」 「あ、少し勃ってきたね?」 「はぁ?…っ!マコ、まさか、うそだろ?」 「だって、大河さん見てたら…ほらみて硬くなっちゃった」 「ふっざけんな!っん、やだ、今日はもうっ」 「前の公演のときは大河さんのもっと、っていうおねだり聞いたでしょ?今日は俺の聞いて」 「だって…っ、ああっ、んぅ、はっぁ、っっ!!もう、入れてるしっ、明日もあるのにっ」 せっかく掻き出した中にまた熱い塊を打ち込む。髪を振り乱しながら快感に耐える大河はどの時よりも美しく、誠は目が離せなかった。頭では拒否したいのに、身体はキュンキュンと締め付けて誠を放さない。その刺激にゾクゾクと快感が走る。 「っあーー、気持ちい、クセになるっ」 「あっ!あっ!あぁあ!ンんっ!!」 顔を背けた時に見えた優一とお揃いのピアスに舌を這わせると、大河は大きく喘ぎ逃げる。それを舌で追いかけ、腰の動きも早くして掻き出した時のような姿勢で足を胸まで持っていく。じわじわと追い詰めると、首を仰け反らせ、大河は自分の顔にぶちまけた。目を閉じて息を整える大河を、誠は舌なめずりして凶暴な欲をぶつけた。 ーーーーーーー 「まこちゃーん!おはよう!」 「優くんおはよう。眠れた?」 「うん!元気いっぱい!あ…。まこちゃん、昨日大河さんと寝た?」 「えっ!?何で!?」 「お肌ツヤツヤ!羨ましい〜」 最近は優一も青木の影響で、からかうのをはじめた。例のごとく真っ赤になった頬を両手で隠す。その姿をみて優一はさらに爆笑した。誠が優一にプロレス技をかけると、笑いながら優一はごめんごめんと謝った。 「だって、大河さんも全く同じリアクションするから面白くて」 ひぃひぃと笑いを落ち着かせようとしてる優一に、誠もつられて笑ってしまった。 「まこちゃん、好きな人でこうなるの、初めてじゃない?ずっと照れてる」 「うん…そうなんだ。なんだか…自分でもコントロールできなくて…。もうどうしたらいいか分からないよ」 「本当に初々しいよね、反応全部が」 「初めてなんだ。いつも俺、振られてばっかりだったでしょ?でも大河さんは、俺が諦めても、ぶつかっても全力で向かってきてくれて、こんな俺を受け止めてくれたんだ。」 普通なのかもしれないけど、と苦笑いするが優一はそんなことないよと続きを待つ。 「こんな恋、したことない。だからすごく浮かれてるのかも」 はにかんで笑ってメイク行こって話題を変えた誠に優一は心が躍るようだった。 (まこちゃんを救ったのは大河さんだ) 敵わないなぁ、と少し拗ねながら誠の後をついていった。 その日、誠の肌の調子が本当によかったようで、メイクさんにも褒められて何かしてるんですか?と聞かれ真っ赤になる。 隣でメイクされてる優一が必死に笑いを堪えているのが見えて、どうしようと焦る誠に、優一が笑いながら助け舟をだした。 「しいていうなら、恋ですかねぇ?ね、まこちゃん!」 メイクさんはまぁ!と嬉しそうに驚き、内緒にしますね、とウィンクされたのを優一は肩が揺れるほど笑っていた。 誠の初恋は恥じらいとの闘いだった。 (もうほっといてよ!恥ずかしすぎる) この日のライブは大河の方が誠に照れていて、メンバーは疑問符がついていた。誠もその1人で、少し近寄ると、近寄るな変態!と罵声を浴びせられ、会場内が爆笑に包まれた。この日は大河は優一にくっつき、それはそれで小動物コンビが可愛いと言われ、拗ねた誠をレイがフォローしたことでレイマコと騒がれた。 「大河さんー、ねぇ、もうこっち向いて?」 「…お前、昨日、別人みたいに」 「昨日?」 「いきなり雄感だしてくんなよ!びっくりするだろうが!」 「雄感?」 また顔を真っ赤にし、先にバンに乗ってしまった。苦笑いしながらついて行く。 ツアー終了まで残すところあと1公演。

ともだちにシェアしよう!