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第28話 初夜

「ジンさーん、お疲れ様です。」 優一が戻るとジンはスタジオのドア前で優一を待っていた。疑問符がついたままジンの前に行くと深刻そうな顔をした。 「優一くん、タカと2人で話したあと、タカの様子おかしくなかった?」 「え…?あ、そういえば突然顔色悪くなって、トイレで吐いてました。すごい汗掻いてて、大丈夫って言ってましたけど…。やっぱり体調悪かったんですか?!」 そっか、と黙るジンに優一は焦る。体調が悪いなら無理してたんだと心配になった。 「タカさんはどこにいますか?俺一緒に家に行きます。」 「体調不良じゃ、ないんだ。タカがまた、落ちた。」 「どこに?!怪我ですか?」 「精神面だ。死にたい、消えたい、しか言わない」 その言葉に目の前が真っ暗になる。なんで?なんで?そんな言葉が能を埋め尽くす。練習まではいつものタカだったはずだ。 「シュウトのことが、過去の自分と重なって見えたようだ。そして、さっきの嘔吐はたぶんフラッシュバックしたんだと思う。仕事モードが解除された瞬間、一気に落ちた。」 ジンはふぅーっとため息をついた。 「やっと落ち着いたと思ったのになぁ。この傷口はどんなに縫っても簡単に開いて出血する。」 ジンは疲れたようにため息をついた。 「タカさん、俺と話した時は2つの重みを背負っていくって言ってました。俺にも分けて、と言ったんですがそれは申し訳ないって」 「そうか…。やっぱりダメージがあったか…。シュウトの件を伝えようか迷ったけど…失敗したかな…。この状態になったら仕事に没頭させて気絶するまで様子を見るか、投薬だ。それ以外に抑えられたことはないんだ」 ガチャンガチャンと内側から開けようとするのを、ジンがさり気なく押さえて出られないようにしている。 「ジン…さん?中にタカさんいるの?」 「いるよ」 「出たがってる…んですよね?」 「ちがう。死にたがってるんだ。今開けたらここから飛び降りるぞ」 優一は目を見開いてドアノブが動くのと、頭を抱えてドアにもたれて開かないようにしているジンを見る。 (なにこれ…) さっきの雰囲気とはまるでちがう状況に心臓の音だけが響く。 (死にたがってる?飛び降りる?) まるで想像もつかないことに固まるしかなかった。 「優一くん、恋人である君に、望みをかけてみたい。タカを助けたい?」 「はい。」 「受け止められなかったらすぐ出てきて」 「分かりました。」 少し収まったような中の様子にジンがそっとドアを開け、優一を入れてすぐ閉めた。 「ぅあああああーーーー!!っっう、っふー、ふー」 ドカンッドカンッ!! スタジオは防音だったんだ、と改めて思うくらいタカは叫んでいた。投げたのか、蹴られたのか転がったイスと、解かれた髪はバザバサで、頭が痛むのか蹲る恋人の姿。 「早く、消えないとっ、早くっ、」 「タカさん」 「ッッ!!!」 ビクッと肩を揺らして大きく息を吐く。 「タカさん。俺だよ、わかる?優一だよ」 「優一…」 パシンッ 近づいて触れようとすると、手を払いのけられた。 「タカさん」 「ダメだ。俺なんかが優一のそばにいちゃいけない。優一が傷付く、壊してしまう」 「タカさん」 「俺は幸せになっちゃいけない。早く、消えないと、優一も傷つける。優一が不幸になるっ、早く、早く、早く」 「タカさん、どこにもいっちゃやだよ」 「ぅうぁああーーー!早くっ、早く死にたいっ、俺は、生きてちゃダメだ!ダメなんだ!!」 優一は優しく、暴れるタカの頭を抱きしめて、より頭の中に刻むようにピアスがついた右耳に言い続けた。 「俺はタカさんがいないと不幸だよ」 「幸せになりたいな」 「タカさんがいたら幸せだな」 「タカさんがいるから頑張ってるんだよ」 「ずっと一緒にいたいよ」 「タカさん忘れたの?タカさんの人生はもう、俺の人生なんだよ。」 「ダメでしょ、俺の許可なく勝手に死のうとして。悪い子」 抵抗が弱くなって、タカの呼吸が荒くなる。はっはっはっ、と急ぐように息を吸い込み、真っ青になっていく両頬を掴みゆっくりとキスをする。 「吐いて、タカさん」 「っはっはっは、んぅっ」 「んっ…ほら、ゆっくり、そう、上手だよ」 キスの合間に何度も呼吸するよう促す。タカは強く優一の腕を掴み、苦しそうに息を吸っている。 「大丈夫大丈夫、うん、吐くの上手だよ」 「っ、っ、ふっ、っ、ふっ」 だんだん落ち着いてきた呼吸に安心して、もう一度抱きしめる。 「タカさん、俺も一緒に背負うから、一人で抱え込まないで。俺にも持たせてよ。独り占めしないで」 「はーっ、はーっ、っ、」 疲れ切ったように倒れこみ、タカは目を閉じた。優一はバッグに入れていたタオルで枕を作り、タカの頭の下に敷いた。内側からコンコンとドアを叩くと、ゆっくりドアが開いた。 「ジンさん…」 「優一くん!!どう!?」 「わぁ!カナタさん?!びっくりしたぁ!」 突然のカナタのドアップに優一はビクッと肩が揺れた。その間にカナタとジンが中に入り、静かになったタカを見て目を見開いた。 「うそ…落ち着いてる…。優一くん何者?」 「入った時は叫んで暴れてましたけど、その後過呼吸になってました。」 「でも、すごい…。さすがだよ優一くん。投薬も無しに。…タカ?分かるか?」 タカはゆっくり目を開き、ぼんやりと心配そうに見つめる三人をゆっくりと見回した。その後ゆっくりと起き上がり、髪を掻き上げて申し訳なさそうに呟いた。 「…ごめん、俺、また落ちた」 「タカ!!おかえり!!」 ジンとカナタがガバッとタカを抱き寄せる。抱きしめられながらスタジオの有様を見てタカはため息を吐いた。力が入らないまま、だらりとされるがままになり、目線は優一を見つめた。優一は精一杯の笑顔で迎えた。 「タカさん、おかえり」 「ただいま」 タカの言葉に優一は力が抜け座り込んだ。スタジオの床にパタパタと落ちる涙にジンが優一に寄り添った。 「怖かったね、優一くん。ごめんね。でも君がいたからタカが戻ってきた。本当にありがとう。優一がいてくれてよかった。」 「っぅっ、ぐすっ、ぅっ、ぅえぇえん」 優一は先ほどの冷静さが嘘のように子どもみたいにわんわん泣いた。 「あーぁ。タカが泣かしたぁ」 「ごめん、優一。怖い思いさせてごめん」 「ぅうーっ、ぅっ、ぅっ、うー〜」 鼻水も涙も全部流して大泣きし、3人を困らせて止まらなかった。 ジンとカナタにお前が責任とれ、と強めに言われ、まだわんわん泣き続ける優一の手を引いてタカの家に向かった。 家に着くと、玄関で立ち竦んで更に大泣きに変わってタカは慌てて抱きしめる。 「優一、ごめん。ごめんな、びっくりさせたな」 「うぅーっ、ひっく、っうっうっう」 お手上げ状態のタカは、ひたすら優一にごめんと言いながらキスをした。いつもはキスで泣き止むが今日は全くダメだった。 「優一、頼む、泣き止んでよ…」 「っいった…」 「ん?」 「勝手に死のうとしちゃ、ダメって、俺言った」 「…そうだよな」 「俺を、置いてこうと、した」 「ごめん」 「タカさんは俺のこと、ずっと一緒って、思って、くれてないっ!1人で、ぜんぶ、かかえて、そんなの、無理に決まってるじゃん!1人で死のうって、」 「ごめん」 「俺、ずっと一緒って、思ってたのに!1人でいなくなっちゃって、俺をひとりぼっちにするならっ…一緒にいるって気持ちがないならっ…こんなのいらない!!!」 優一は自分の耳についていた2つのピアスを取って床に投げた。 「っ!」 「消えたいこと、たくさんある、でも!それでも俺は、人生をタカさんにあげたよ!?なのにタカさんは俺に任せてくれなかった!タカさんは俺に人生の一粒もくれないし、自分がいなくなっても、俺が幸せに、なるって本気で、思ってるんでしょ!?」 「…っ」 否定しないタカに優一はますます涙腺が決壊した。 「タカさん、さっきの俺のことば、聞こえた?」 「…あぁ。」 「あれが俺の全て、本心。生半可な覚悟でタカさんといるんじゃない。タカさんは、どうなの?俺は、一生そばにいていいの?」 「そんなのっ…」 「俺はタカさんのトラウマだって傷だってぜんぶ、一緒に背負うよ。俺はタカさんを愛してる。だから簡単に死ぬなんて言わないで。…ぅっ、っ、…俺が、別れた方が、タカさんが生きてくれるなら、俺はっ、身を引く。」 「へ…?」 突然の話の飛躍にタカは優一を見つめる。涙をそのままに、意志の強い目を見て、優一の思考が良からぬ方向へシフトしたのが分かった。 「俺は、タカさんに、生きていてほしい。本当は愛してほしいし、ずっとそばにいたい。でも、俺がいることで、幸せへの劣等感を超えられなくて、死にたくなるなら、俺はもう此処へは来ない。」 「優一…」 「一緒に背負う。お互い思っていても会わない。そしたらそれは、幸せとは言いにくいから、タカさんの枷にもならない。だから死ぬ理由にならない。そうでしょ?」 もう俺、贅沢言わないよ。生きて、タカさん。そう言って涙をたっぷり溜めたまま、優一はニコリと笑った。 「今まで幸せでしたっ!!ありがとうございました!!タカさんを愛しています!だから、生きてください!それだけで俺、幸せです!」 お世話になりました、と勢いよく頭を下げて嗚咽をそのままに踵を返した。 ガチャン パタパタパタパタ… 「へ…?」 タカは優一の言ったことを理解するのに時間がかかった。 床に転がる2つのピアス。 誰もいない部屋。 「うそだろ…?」 誰もいない部屋に響く、自分の情けない声。追わないと、と思っても身体が動かない。 「俺が簡単に死にたいって思ったから…」 優一のことを考える余裕もなかったタカは、どれほど傷付けたかを痛いほど知った。そして、好きな人が生きていてくれるなら、たとえ恋人でなくてもいい、と、身を引くと、涙いっぱいに去って行った。 「行かないで優一…。俺、お前無しじゃ生きてけねーよ」 タカは床に転がる2つのピアスを拾って急いで部屋を飛び出した。 「はい、もしもーし、優くん?」 「っ、ぅ、っう、まこちゃんっっ」 「優くん!?どうしたの?…泣いてる?」 「タカさんと、別れたっ」 「えぇっ!?ど、どういうこと?!」 「俺、タカさんに生きててほしくてっ」 「生きてるでしょ?どうしたの?」 全然伝わらなくて、泣きながら街灯が照らす歩道を歩く。たまに通る車のライトが眩しくて下を向く。冷え始めた気温に少し震えながら、変装もしないまま事務所に向かって歩いた。 「まこちゃんっ、迎えに来てよっ、寂しいよ」 「どこなの?今、外?歩いてるの?」 「俺、タカさんいないと、ダメなのにっタカさんは俺を置いて、死のうとしてっ、置いてかれるくらいなら俺は」 「ダメだよ!何考えてるの!?」 「だって〜〜っ、ぅう、っ、ひっく」 「優くん、迎えにいくから!今どこ?!」 (どうした?ユウなんかあったのか?) 後ろから聞こえた大河の声に、優一は焦って電話を切った。 (まこちゃんは大河さんのだ…俺なんかが甘えちゃいけない) 不安と寂しさに押しつぶされそうになって、ケータイを見るとタカからの着信で履歴が埋まっていた。普段追わないタカからの大量の着信履歴に、やっぱり嬉しい自分がいて、信号を待つ間ケータイを握りしめてしゃがみこむ。自分で決めたのに、こんなにも不安で心細くなるなんて。 (今まで俺は貪欲だったんだ。生きててくれるだけで、幸せなはずなのに) 着信はタカと誠から交互にかかってくる。どちらからのも応答出来ずに信号が青になっても進む気になれなかった。 (俺はどこに行けばいいの) すると近くで車が急ブレーキをかけて停まってびっくりした。 「っ!?」 見慣れた車に焦って走り出すと、降りてきた人にすぐ捕まった。 「優一っ、待って!」 「っ、ぅっ、ふぅっ、ひっく」 「優一、戻ってきて。俺、お前無しじゃ生きていけないよ。頼む、一生のお願い」 「でもっ」 捕まった腕を振り解こうと暴れる優一を、ここが外だとか関係なく強く抱きしめる。 「好きだ」 「っ!」 「別れたくない。お願い。優一、俺のそばにいて。」 タカの必死さに、嬉しさと、でも、という感情でぐちゃぐちゃになる。 「っうぅっえぇえんっ」 大泣きする優一にタカは眉をさげ目を細め、優一の頭を撫でる。 「俺、優一と長くいられるように、努力するから。お前がいないと、本当にダメだから…情けなくてごめん。でもなりふり構ってられないくらい、お前を失いたくない。頼む。優一、もう一度やり直したい。俺と生きてくれないか?」 泣きながら握ってるケータイを見ると誠からで、タカは代わりに電話にでる。 「マコちゃんか?」 「タカさんっ!優くんと何があったんですか?あんなに泣いて…っ今どこですか?迎えにいくためにタクシー呼ぶんで!」 「迎えはいい。ごめんな。もう少し、優一と話させてくれ」 「…本当に、別れたんですか?」 「今、もう一回告白してるところだ。」 「優くんを泣かさないでください。初めてですよ、こんなに大泣きして助けを求めるのは」 「あぁ。本当にな。申し訳ない」 「また笑顔の2人、見たいです。」 「任せろ。じゃあな」 電話中も優一を腕の中に閉じ込めたままで、優一の涙が服を濡らした。電話を切ると、タカは優一に目線を合わせて屈んで手を握った。 「優一、俺はお前が好きだ。一生そばにいてください。」 握った手で渡されたのは、先ほどの優一が投げたピアスが2つ。 「優一と一緒に生きていきたい。だから、もう一度受け取ってくれる?」 「っひっく、…っ、俺にも、背負わせて、くれる?」 「うん…。一緒に持って。1人じゃ重たいから」 「もう、1人で…消えたいとか言わない?置いて行かない?」 「うん、落ちた時はすぐに相談する」 「俺に、全部くれる?」 「全部お前にあげるよ。約束する。だから、そばにいてください」 優一がピアスをタカに返した。タカは目を見開いて、もうダメなのか、と鼻がツンとした。 「つけて」 「え?」 「俺に、ピアス、つけて」 「っ!うん………」 そっと冷え切った両耳にピアスを通す。優一はピアスが付いたのを確認すると、タカを見つめた。 「タカさん、俺、貪欲だから、本当はタカさんと一緒に生きていきたい。そばにいたい。ずっと一緒にいて下さいっ…ンん、っふぅ、ンッ」 泣いて腫れた目で見つめられ、欲しかった言葉に安心して、外だということも忘れて小さな唇に噛み付いた。タカは手を引いて優一を車に乗せ、家へ向かった。 「優一、おいで」 「あ…お邪魔します…」 車で一言も話さないまま家に来て居心地が悪い。さっきはもう二度と来ることのない場所だと覚悟していたのに。 タカはいつもの寝室とは反対側の部屋に案内した。 「…こんな部屋あったんだ」 「今日からお前の部屋だ。」 「へ?」 「優一、一緒に暮らそう。お前と住みたいから部屋片付けて用意してたんだ。」 「そうだったの…?」 「寮解消の指示があってから言おうと思ったが、もう今日からいてくれ」 準備してくれていたことや、今日からでもいてほしいと、強く求められて優一は素直に嬉しくてタカに抱きついた。 「一緒に暮らしていいの?」 「うん。いつも寂しい思いさせてごめん。これからはずっと一緒だな。」 「っ、嬉しい!タカさん、大好きっ!」 「俺も好きだ。もう絶対に離さない。あんなセリフ言わせてごめん。」 優一の部屋にはベッドやソファー、アンプやパソコンなど必要なものはすべて揃っていた。 「タカさん…今日抱いて」 「うん。俺も抱きたい」 ゆっくりとキスをしながらタカは真新しいベッドにそっと押し倒す。泣き腫らした目が痛々しくて目元にたくさんキスを落とすとクスクスと笑った。 ピアスに少し歯を立てて首筋を熱い舌が通ると優一は高い声を漏らした。上着を脱がし、優一のTシャツの上から胸の突起を弄ると、優一は自分で捲り上げ、潤んだ目で誘う。薄ピンク色のそれに目が釘付けになり、赤ちゃんみたいに強く吸った。 「ンッ、アッ、ッ、ン」 だんだん開いていく膝の間を、胸をしゃぶりながら、デニム越しに刺激すると顔を真っ赤にしている。 「っはぁ、っぁ、っあ、も、乳首、とれちゃうよぉっ、ンッ」 歯でコリコリと虐めると、優一はタカの腕をぎゅっと掴んで腰が浮いた。 「ッッーー!っは、っは、」 「…っぷは、イきそうだったな」 「っは、っは、何か今日やばいっ、いつもより、刺激が強くっ、」 「だって今日、復縁記念日だし、同棲初日だからな。俺もなんか緊張する…いっぱい俺に溺れて。全部任せて。」 「うんっ、どうせい…」 「可愛い、喜んでくれて嬉しいよ」 タカの優しい笑顔に優一は堪らなくなって、タカの首に手を回し、キスをした。深い深いキスに優一はこれだけでも絶頂を迎えそうなほど、頭が沸騰したように何も考えられなかった。 (大好き、愛してる) この言葉しか知らないみたいに脳内を埋め尽くす。 「タカさん、好きっ、好き」 「優一、愛してるよ」 いつの間にかお互い何も身につけないまま、貪るようにお互いの身体に跡を残した。 ローションを部屋から取ってくると言ったタカを、行かないでと捕まえ、またキスをする。 「優一、ンッ、濡らさないと、んっ」 「ヤダ、いかないで!今出すから」 「えっ?」 優一は自分のものに手をかけ、思いっきり扱きはじめた。浮いてくる腰と、真っ赤になる顔。普段タカが触ることを思い出しながら刺激している恋人の痴態から目が離せない。 だんだん水音が大きくなり、優一の表情が恍惚としたものになってくる。閉じていた目を薄く開くと、タカとバチッと目が合う。 「っああぁ、もぅ、イくっぅ、から、ッタカさんッ、見てて、ッあっ、…っもぉっ、出るっ、俺のことっ見ててっっぅんっ…あああ…ンッッッ!!」 お腹に白濁が散り、荒い呼吸をしながら目を閉じた。 タカは見ていただけで呼吸が荒くなり、すぐにでも触りたくてたまらなくなった。優一はそっと目を開くと、眉を下げてお願いする。 「今日は、そばにいて?少しもはなれないで…」 「は、無理、もう止まらない…」 タカの目はギラついて、あ、生きてる、なんて場違いなことを思った。優一の放ったものをお腹から掬い、穴の周りを撫でると優一は両手を口に当て首を反らした。 泣きそうな顔で見つめる優一にタカは挑発するように見つめたまま、長い指をそっと挿し込む。 「ッッ!!っあああーっ!」 そうとう敏感になっているのか、出したばかりのそれは大きく固くなり雫が溢れ出す。余裕のない優一にタカは舌舐めずりし、指を抜き、白濁に絡みつけたあと、いきなり三本に増やした。 「ぅあああ!っあぁあ、ンッ、っっはぁ」 指に触れた前立腺をめがけて刺激するとガクンッと腰が反って、頭を左右に振って逃げるように腰を引く。 「こーら、逃げるな」 「ぃやぁああ!!っあ、っあぁ!」 飲み込めない唾液が首を伝うのを舐めとり、中を攻め続けた。 優一の身体からは汗が吹き出し、カクカクと足が痙攣し、中はぎゅうぎゅうと締めつける。 「イきそう?」 「っは、っは、っぁ、っあ、っあ、」 「優一…ふふっ…可愛い」 快楽の波に溺れる恋人は気持ち良さそうに喘ぐ。タカは我慢できなくなり、指を抜いて優一を抱き上げる。 「っあ…ん…タカさん…?」 「可愛い。気持ちよかった?」 「うん。タカさん、大好き。」 「俺も好きだよ。…とろんてしてる。大丈夫か?」 汗で濡れた優一の前髪を掻き上げてキスをすると、ふわりと笑った。 「タカさん好き。」 「ふふ、完全に理性とんでるな」 優一は、視界がぼんやりとしたまま、吸い寄せられるようにタカの右耳に舌を這わせた。 「ンッ…優一、」 「はぁっん、タカさん、すきぃ」 「っん!」 耳に熱い吐息とぴちゃぴちゃという音と共に囁かれる舌足らずな愛の言葉。タカは自分でも驚くほど腰に響き、抑えきれない声が漏れた。 「は…タカさん、すき、声も、仕事してるところも、優しいところも、頼れるところも、弱いところも、歌も、可愛いところも、全部全部大好きなの」 「んっ…ふ、優一っ」 「…愛してるよ」 「ンッ!」 舌足らずで可愛い台詞のあと、はぁっと色気たっぷりのため息と、突然の低い声で囁かれ、タカは腰がビクッと跳ねた。 「ゆ、優一っ?」 「ん〜…タカさん、もぉ、入れてぇ?」 いつも通りの優一に戻ってオネダリされる。優一の二面性には度々驚かされる。タカは心臓がバクバクしたまま、膝の上で優一を抱き上げ、ゆっくりと降ろしていく。 「っぅあああー!!っはぁあ!!ッア!!」 熱くて大きいものが体内を抉り、優一の良いところを強く擦り上げる。堪らずタカの肩に爪を立て首を反らせる。優一の綺麗で真っ白な首筋にダメとはわかりつつも噛みつくように跡を付けた頃には奥の狭くなる場所に当たる。 「やぁああ!っ、深い、奥やだっ、やだぁっ、だめっ、そこ、っ、だめっ、ぁあっ、」 刺激が強すぎるのか涙を流して嫌がっているのを無視して、より奥へと突き上げ続け、優一の好きなところを狙うと、どんどん追い込まれて中の締め付けが強くなる。呼吸も早くなり身体がこわばっていくと、その後大きく跳ねた。 「いっやぁあああああー!!っんーっ!!」 「ッッくぅ…、」 ぎゅううと締めつけた後、一気に弛緩し、2度目の絶頂を味わった。タカは歯をくいしばって耐え、ため息をついた。はくはくと必死に呼吸する優一を頭を撫でて抱き寄せる。中の刺激でイくと快感が長引くのか体力をそうとう奪われている。 「大丈夫か?」 「ッッ、っは、っは、うん、大丈夫…すごかったぁ」 「お前この体勢弱いよなぁ」 「だって自分の体重で奥まで来るんだもん…逃げられないからすぐイっちゃう」 「イく時の顔、最高に可愛いよ」 「やだよ。不細工に決まってるじゃん…余裕ないし…。」 拗ねてタカの胸に顔をうずめるのを見て、タカはたまらない気持ちになった。 タカは抜かないまま、ベッドに横になった。 「優一、俺をイかせて?」 「え?…あ、これ…。俺が動くの?」 カァッと顔が真っ赤になるのを下から見上げる。優一はおずおずとタカの腰に手を置いてゆっくりと身体を持ち上げた。 「っぅあっ、あっ、あっあ」 「…っはぁ、いいよ、優一」 気持ち良さそうに眉間に皺を寄せ、首を反らせるタカに、優一は抱いてるかのような錯覚に陥ってドキドキした。 (タカさん…エッチだ…) もっと気持ちよくしたいと、優一はまた奥へと差し込み、きゅっとワザとしめつけると、中のものがピクっと反応して嬉しくなる。 「っはぁ、タカさん、タカさんっっ」 「っは、はぁ、っ、はぁっ、は、優一っ」 呼吸が荒くなるタカに、もうすぐだ、と優一はタカのお腹に両手を置き、1番深く差し込んだまま腰をぐるぐるとゆっくり回した。 「ぁああっ!あ、これぇ、すごいっ、ぁあっ」 「くぅぅっっ!!っぅあっ、はぁっ、」 自分でやってみたが、思わぬ気持ち良さに優一は中を締めつけると、タカは眼を見開いた後、優一の腰をガシッと掴んだ。 「っは、っは、どこで覚えたんだよ」 「ぁ、これ、すごいっ、タカさん、今の気持ちよかった、もう一回したい」 「はぁ、もう、イキそう…っ」 余裕のないタカにドキドキして優一はそっとタカの手を放した。 「イって」 優一がニコリと妖艶な笑みでタカに言い放つと先ほどより激しく腰を揺らす。 「っっ!!」 「っあああ、あぁ、すごいっ、気持ちいっ、あ、っ止まんないっ、」 「っぅ、っああ…優一、っ、やばいっ…」 「あ、あ、ぁあああ、ッッああ!」 「ぅあっ…優一ッッーーーーくっ!!」 優一の中に熱いものが放たれ、優一もタカのお腹に白濁を散りばめた。 「は、は、優一、最高」 「うん…きもちい」 「眠いか?」 「うん……ねむ…い……すぅ…すぅ…」 優一は疲れたのかそのままタカの身体に倒れてきてすやすや眠り始めた。ゆっくりと抜き、おでこにキスして風呂場へ連れて行った。 ピピピピッピピピピッ 「んー…目覚まし…」 優一が目を覚ますと、いつものタカの寝室だった。ぼんやりしたあと、いつまでも鳴る目覚ましを止めた。優一はケータイを取り出すといくつかのメッセージが入っていた。 まこちゃん:優くん、大丈夫?いつでも連絡して。タカさんとちゃんと話し合って。 大河:マコから聞いた。俺はお前の幸せだけ願ってるよ。 伊藤さん:ユウ、おはようさん。寮解消の日が決まった。タカから前から連絡あったから、ユウはタカと一緒に住む、でいいな?あと、今日はオーデション打ち合わせ2時入りだ。準備しといてな。 タカさん:優一、おはよう。今日も愛してるよ。歌番組の収録あるから先に出る。戸締り頼むな。あと、今日の夕飯はカレーでいいか? 温かいメッセージと、何気ないメッセージが優一の心を温かくさせた。今は午前9時。ゆっくり起き上がり、力の入らない足腰を無理矢理動かしリビングへ行くとメモがあった。 「優一へ お前の担当は洗濯物だ。風呂場の横の洗濯機を回して、乾燥おわったらすぐにハンガーにかけて。 分からなかったらメッセージして」 丁寧な文字に驚きながらも、優一は頼りにしてもらってることと、初めて家事を任され嬉しくなった。2人で住むという実感が湧いて、急いで洗濯機のスイッチを入れた。ドラムの中で回るのをしばらく見つめた後、ニヤける顔が抑えられない。 「同棲」 真っ赤な顔に手を当て、目の前の鏡をみると、首には隠しきれないほどの紅い華。 「わ!?すっごい目立つじゃん!どうしよう!!」 外の気温が寒いのをいいことにマスクとマフラーをすることにした。全員にメッセージを返信して、自分の部屋、に向かう。 優一の好みになっている部屋はさっそくシーツが変えられていた。ベッドに寝転び、夕食のカレーが楽しみでまたふふふと笑った。 「家事も頑張るぞっ!」 気合いを入れ直し、乾燥が終わったメロディーの続きを作りながら洗濯物もクローゼットに持って行った。

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