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第52話 負けず嫌い

「え?サナの曲って…優一が手を付けてましたよね?」 社長やアニメのプロデューサーに呼ばれたタカは会議室で声をあげた。最近は睡眠時間も削って、作曲中のものに関しての相談と称した打ち合わせだ。 「いや、このアニメはスポンサーが多くついていて、原作ファンの期待値も高い。声優も豪華なキャストになっている分、その顔となるオープニングが心配でして。」 アニメプロデューサーも苦笑いしている。社長も恐らく心配しているのだろう。タカはこの2人が言わんとしていることが分かったが、簡単にこの話を受けるわけにはいかなかった。 「優一からのデモはあがってるんですか?」 「まだだ。あと5日後に打ち合わせになっている。」 社長の言葉にタカはイラついた感情を抑えることができなかった。 「デモも聞いてないのに俺に何のようですか?信用できないのに依頼したんですか?期待値が高い作品だから優一に依頼したんですよね?」 「そうなんですが…」 「ここだけの話、はじめはファンからの期待は多かったがスポンサーはあまりついてなかった。予算の関係でタカに依頼することはできなかったんだ。」 スポンサーがたくさんついた今、予算ができたのなら確実性をとりたいとの製作者側の意図だった。 わからなくもないが、チャレンジさせてもいいのでは、と思う。このままじゃいつまでも下は育たない。製作者がほしいのはタカというブランドと実績からの安心だ。 「5日後までに仕上げておいてくれ」 社長の言葉に大きなため息を吐いて会議室を出た。複雑だがこれが実力主義の世界。いつかはこうして競合する日がくると分かっていたが、意外にも早かった。社長からの直々の指示に手を抜くわけにはいかないと、さらに大きなため息を吐いた。 「ただいま」 いつもお迎えに来てくれる優一も最近は追い込みのため部屋にこもりっきりだ。部屋をノックするも返事がなく、ドアを開けると様々な機材が出しっ放しになっている。 「あれ?どこ行った?」 いくつかの部屋を見るも姿が見えない。最後にスタジオに行くと、録音を終えたのかヘッドホンを外した優一と目があった。 「あ!おかえりなさい!ごめんなさい…勝手に機材借りました!俺のマイクなんか調子悪くてノイズが入るから」 「いいよ。自由に使って。明日から俺も篭るから今のうちに使いな」 「ありがとうございます!タカさん、もしよかったら意見とかもらえないかな?」 不安そうな優一に、助けてやりたい気持ちとライバルになることを伝えたいという気持ちとで一瞬迷う。聞かない、というのもおかしいので了承してヘッドホンを付けた。 (手のうちを知りたくねぇな) 複雑な気持ちのまま目を閉じて準備をすると、いきます、と再生ボタンが押される。 (おっ?) 思ったよりもいい出来のもので、タカは聴きながら歌詞を要求し、タブレットに表示された歌詞を見ながら集中して聞いた。 (優一の本気だな。これなら3曲くらいに分けて出したくもなるが、出し惜しみしないのが覚悟が見えて良い。転調が面白い。) 這い上がってやる、大人に負けない、そんな歌詞は、常に焦燥感を持って仕事をしている優一にしか書けない歌詞だ。 (へー!ラップもあるのか!いいな!) ライブでも楽しめそうな掛け合いもあり、疾走感がたまらない。 (これ、サナ歌えるか?) 優一なら歌えるが、サナが歌うことの想像が出来ない。そしてサナのキーに合わせてデモを撮る優一に改めて尊敬した。 (こいつのソロでやりぁとんでもなくカッコイイだろうな) 優一の中ではこういう見せ方がしたいというプランが出来ているのだ。それが見える曲にタカはやる気が出た。優一に足りないものを自分が作る、そう思いワクワクした。タカはあえてオープニング用ではなく、挿入歌やエンディング仕様にしてみようとプランを作った。 「どうですか?」 「もったいないなぁ」 「…どうしたらもっと良くなりますか?やっぱ音が少ないですか?」 「逆。この1曲にするのがもったいない。3曲ぐらいできただろうに」 すごいな、と頭を撫でるとやっと褒められたと分かったのかぎゅっと抱きついてきた。 「音を少し抜いて、より緩急とか盛り上がりとの差を付けるといいんじゃないか?今のだと全力疾走すぎてサナがバテるぞ」 なるほど、と少し考えたあと、イメージができたのか、ありがとっ!と元気に飛び出していった。 (若いイメージは新鮮だな。社長も心配性だなー。こんな良い人材いないだろ) タカは優一との差を出すためにあえてピアノだけで作ろうと考えた。優一に譲るために手を抜いたと思われないよう、むしろエンディングでいいね、とイメージしてもらうように、アニメの資料を読み込んだ。読み込めば読み込むほど、あの曲はオープニングに相応しいものだった。後は緩急をどう付けられるか、そしてサナが歌えるかの懸念点だけだ。 お互いが交互にスタジオに篭り、いよいよデモの発表の日が来た。社長、伊藤、アニメプロデューサー、サナ、優一が揃う会議室にタカが入ると、知らなかった優一とサナ、伊藤が驚いた顔をした。 「え…タカさん?」 疑問を持って名前を呼ばれるが会釈だけして椅子に座る。さすがに気まずくてタカは何でもないふりして社長に向き合った。 「今回、このアニメは期待値が非常に上がっている。サナの名前があがるチャンスだ。そこで、今回、タカにもオープニング曲を用意してもらった」 社長の言葉に優一がハッと顔を上げ、目を見開いてタカを見ている。視線を感じるが無視して前を向き続けた。 「社長、どういうことですか?」 震える声に、タカは胸が締め付けられるような気持ちになる。自分が期待されていないと思ったようだ。 「アニメプロデューサーからの要望だ。いくつかの案から選びたい、とな。もちろんユウのが良ければ採用される。」 「そんな…の、」 無理に決まってる、と声が聞こえそうだった。腿の上で小さな手を白くなるまで握りこむのを隣の伊藤が大丈夫、と摩る。本来安心させるのは俺の役目なのに、今恋人を不安にさせているのは自分だと居た堪れない。 (仕事だ、仕事!!) 自分のポンコツな精神に鞭を打ち、タカは早くデモを聞いて選んでください、と話を進めた。先方がタカのから聞きたいと言い、優一は更に小さくなり、自信をなくしてしまった。タカは自分のから、と言われたことに内心喜んだ。 (オープニングは優一のがいい。これ以上のもの俺は作れない。) しっとりとした入り、バラード調の入りからの盛り上がり。アニメ資料を見るとやっぱり上へ這い上がりたいというようなイメージでBメロ入りからの盛り上がりで作った。 「以上です。5日ではこのクオリティーですが、音を足すとまた変わるかと。」 「素晴らしい!!落ち着いた入りなのに疾走感がありますね!サナさんの声とも合いそうです!」 「私も歌いやすいかも、と思いました!イメージがしやすいです!」 興奮するアニメプロデューサーとサナに無表情でありがとうございます、とだけ言って終わる。ピアノとタカの声だけのデモでここまでの評価をもらったことに優一は逃げたい衝動に駆られていた。 「じゃあ次は…」 「…聞く必要あります?」 「こら、ユウ!!」 「だって、もともとはタカさんに発注したかったんですよね?出来上がってるからもう決定で良くないですか」 「いや、あの…。一応聞いてみても…」 「そうだよ、アニメに合うかもしれないだろ?ぜひ聞いてもらえますか?」 伊藤が必死に場を繕っているも優一は嫌だ、こんな茶番に付き合いたくない、と駄々をこね始めた。空気が悪くなり、打ち合わせも長引いてきた。 「いい加減にしろ!!」 「っ!」 「評価するのはお前じゃない、プロデューサーだ。お前の自信のなさがこの状況をうんでるんだ。だから俺に話がきた。わかるか!?自信持って、俺の曲を聞いてくださいって言わなきゃいけない立場なんだよ俺たちは!自分が作った曲に愛情がないならもう打ち合わせは終わりだ。どうなんだ?」 「勝てっこない!!タカさんになんか」 「勝ち負けじゃない。これは提案だ。どれが合うかは先方が決める。」 その通りだ、と社長が冷静に治め、しぶしぶ優一は自分の曲を流した。曲が流れると、全員が、お!とリアクションをしてタカは予想通りの反応に頷いた。 「ユウさん!カッコイイ曲じゃないですか!」 「うん!アニメ資料をよく読んでくれている!映像まで浮かんできそうだ!どうしてそんなに自信がなかったのかが不思議なくらい!」 「ユウ、頑張ってくれたんだな!これは本当に曲調がおもしろい」 サナやアニメプロデューサー、社長からの思わぬ評価にきょとんとしている優一。 「この曲はいいですよ。本来ならこの1曲で3曲くらいできるほどの素材があります。転調も心地いいし、サナのラップも聞いてみたい。作品に沿った歌詞は優一にしか書けないものです。こんな飽きさせない曲、俺には作れません。」 「タカさん…」 「今の優一のできる全てが詰め込まれています。このアニメの主人公たちみたいに、今できる全てがある曲だと思いませんか?」 全員が頷き、優一の曲で行こうとアニメプロデューサーがGOサインを出した。 タカは満足して資料を片付けていると、アニメプロデューサーが声をかけた。 「タカさんの曲をエンディングテーマにしてもよろしいでしょうか?」 「喜んで」 にこりと笑うとほっとしたようにアニメプロデューサーも笑った。5日クオリティーだがタカの出せる全てだった。予想通りの展開にニヤニヤしながらアニメプロデューサーに提案した。 「俺の伴奏と、サナの映像を先行配信ということでインターネットに出しませんか?テーマ曲だと思わせておいて実際のオープニングがこの曲ならすごく話題になると思うんですよね。」 「え、いいんですか?こちらとしては是非!」 「社長、いかがですか?」 「楽しみだ」 「ありがとうございます。あと、優一の曲にピアノの音を足したいのですがアレンジしても問題ないですか?」 「あぁ、お任せします。」 「優一、ごめん。これだけ足させて?」 「え、あ、はい」 サクサクと言いたいことだけ伝えて会議室を出ると、後ろから呼ばれ、振り返ると胸に埋まる恋人。 「優一、おめでとう。」 「…」 「ごめんな、不安になったろ。でもな、今後はたぶん、こういう場面が増える。いいか、俺とお前は仕事上ではある意味ライバルだ。」 「…」 「優一?」 何も言わずに強く抱きつく優一に苦笑いしてピンクの頭を撫でる。 遠くで待つ伊藤も苦笑いしていた。 「ふふ、感情ぐちゃぐちゃだろ。とりあえず伊藤さんも待ってるから行きな。」 身体を離そうとするも更に強くしがみつかれる。 「優一?どうした」 「…悔しいよ」 「ん?」 グリグリと頭を押し付けてきて、潜る声に集中する。 「俺が試されたことも、期待されてなかったことも、タカさんに内緒にされてたことも、認めてもらうためにタカさんが俺の曲をプレゼンしてくれたことも、決まったのにまだ足りなかったことも、全部全部、悔しい」 「これも経験だ。」 「俺が何ヶ月もかけたのに、タカさんは5日で合格を貰ってた。」 「これも経験。」 完璧主義からしたら納得いかない採用だったようで、悔しさをにじませる。十分すごいことなのに。 「俺だって悔しいわ。正直話が来た時は、お前をなんてフォローしようか、って考えたよ。でも、あのデモを聞いたらこれ以上のものはない。予備とはいえ、不採用だとお前がいる手前カッコ悪いだろ。だからエンディングで使えるようにって逃げたんだよ、俺は。」 「そうなの?」 「そうそう。オープニングとエンディングで同じアニメに携われたらなって、そう思ったんだよ。せっかくきた仕事は何としてでも取る。いつもそんな気持ちで取り組んでいるのさ。」 下からパチパチと瞬きして見上げてくるのにニコリと笑い、今度はタカからそっと抱きしめた。 「お前はすごいよ。負けねぇからな」 「へへっ!うん!俺も負けないっ!」 やっと笑ってくれた恋人に安心して、次の仕事へと送り出した。伊藤が途中で振り返ってありがとうな、と口パクで伝えてくれた。タカは家に戻ってすぐに編曲しようと首をパキパキと鳴らした。 コンコン… 「はい」 「タカさんおはよう。」 「おはよう?…あぁ、もう朝か。おはよう」 寝巻きの優一が寝ぼけた顔で抱きついてきた。1日以上篭っていたことに気付き、背伸びをする。 優一がキスしてきて受け入れて抱きしめる。 「優一、曲できたよ。聞く?」 「…今はいい。」 「どうした?」 「今はタカさんを独り占めしたい。音楽にも渡さない。今の時間は俺にだけ使って」 向かい合ったまま膝の上に乗ってくる優一に、スタジオから出ようと誘うも嫌々と駄々をこねる。 「最近駄々っ子だなぁ。イヤイヤ期?」 「違うし」 「じゃあ何よ」 「昨日のタカさん、かっこよかった」 「え?何かしたっけ?」 頭に疑問符しか浮かばない。昨日の優一と言えば悔しさでいっぱいしかなかったのに。とにかくスタジオはタカにとって職場。ここから出ようと動くと、またイヤイヤと首を振る。 「よいっしょ!」 「やだやだ!」 「もう分かんねーよ、何が嫌なの?」 優一を持ち上げてスタジオから出て、ソファーに下ろすとそれでも膝の上に乗って首筋に顔を埋める。 「優一?どうしたー?お前眠いんじゃないの?」 ずっと徹夜続きの優一を寝かそうとするも、それも嫌だと言う。 「もう、何」 「眠くない。」 「じゃあ何」 「…タカさんを独り占めしたい」 「ん?してるだろ?」 「音楽の前じゃ俺は全然勝てないもん」 タカはきょとんとして優一が言ってることを理解しようとするも検討がつかない。 「昨日帰ってきたらすぐに甘えたかったの」 なのに無視して、と拗ねた顔に、ニヤつく顔を抑えられない。 「悔しかったけど、本当に尊敬したし、何よりかっこよかった。現実を見せられて、いろんな話がしたかったんだよ。いろいろ教えてほしくて。」 「そっか、ごめんな」 「ん〜…許さない」 「えー…」 「今日甘やかしてくれたら許す!」 もうすでに甘えているが頭を撫でて抱きしめる。 「いつも甘やかしてるだろ?あと、人の曲のプレゼンなんか初めてやったんだぞ。すぐに拗ねやがって。あの時引いてたら努力の結晶が水の泡だぞ。俺はお前の努力を見ていたし、何よりいい曲だと自信持って言える。なのにお前ときたら…」 「だって!タカさん相手は無理だよ!」 「無理じゃなかったろ?」 「それは、タカさんが…」 「いいか、俺が引いたわけでも、譲ったわけでもない。仕事に私情は挟まないように努力しているつもりだ。そして、手を抜いた訳でもない。この曲をオープニングよりいい曲と言わせるつもりだ。」 だんだん仕事モードになりつつあるタカに焦って、優一はキスをしてタカを黙らせた。 「タカさん、ありがとう」 「…うん。自信持て。」 「経験していきます。」 仕事モードに入りつつあったタカは、キスをされて一瞬で優一の恋人に戻った。目が優一の唇を追って何か言わなきゃと焦る半開きの唇に噛み付いた。びくりと肩が跳ねたが、久しぶりのキスに2人は溺れた。 「は、気持ちよすぎ」 「タカさんてば、もしかして眠くなっちゃった?」 「ううん…だいじょうぶ。ゆういちを抱きたい」 「ふふ…とろんってしてる。一回寝よ?俺は今日夜からだから。ね?」 「うん。…ふぁあ、眠い…」 目を覚ますとソファーで寝落ちしていたようだ。優一の毛布が掛けられているが、本人は仕事へ行ってしまったようだ。 (眠い…) もぞもぞと毛布に包まって大きく深呼吸すると仄かに香る恋人の香り。ハグしているような温かさに、また眠りの世界へ引っ張られゆっくりと瞼を閉じた。 「いつまでもつかしらね?あなた達の関係」 はっきりと耳元で聞こえたこえに目を見開く。真っ暗闇のなか、ハイヒールの音が近づいてくる。 「もう、やめてくれ」 「あなたにはあの子は邪魔よ。あの子は音楽の中から出てきてほしいと願ってる。結局あの子だって他の女と同じ。あなたの才能を邪魔する存在」 「ちがう!そんなんじゃない」 「あなたが無理なら私が動くわ」 「ダメだ!頼むから!」 「あなたの居場所は音楽の世界だけ。忘れないで」 「タカさん!!!」 「っ!?ーーはぁ、はぁ、はぁ…ぁ、優一、おかえり」 「…タカさんも、おかえり。大丈夫?うなされてた」 心配そうに見つめる優一にしがみつくように抱きしめる。呼吸が荒いのが情け無い。毛布は床に落ちていて、悪夢を見た理由が分かった。 抱きしめた小さな身体を吸い込むみたいに深呼吸すると、先ほどの悪夢が消えそうだ。落ち着くまで好きにさせてくれて、目が合い、お互いが目を閉じて顔を近づけた。 「ンぅ…ふっ…んぅ…はっ、んっ」 キスしながらお互いの服を脱がしあって、今日は優一の寝室に行った。優一の匂いに包まれて抱きたいと、部屋に入った瞬間、ベッドに押し倒し、膝を広げて、緩く勃ち上がったものを口内で愛撫する。 「んんぅー!!っはぁ!あ、タカさんっ」 じゅるじゅると音をたてて攻めると、まゆを下げて顔を真っ赤にしている。 髪がくしゃりと握られ、腿はピクピクと跳ねる。 だんだん硬くなるモノは、口が疲れるほど大きくなった。可愛い顔の下に立派に成長したもの。優一が女の子を抱くならうんと優しくして、そして男らしく安心させることができるのだろう。 「タカさんっ!もぉ!出そうっ!」 今男に攻められて、気持ち良さそうに見つめてくる。 (誰にも渡さない) 女だろうが男だろうが、この優しすぎて、男らしくて、可愛くて、完璧主義で努力家のこの恋人を美奈子にも、他の人にも渡さない、と目の前の優一の象徴にしゃぶりつく。勢いを増した愛撫に、トロンとした目を大きく見開き、腰が跳ねる。 「っぁああ!っもぉ!はぁっ、どうしよ、」 イきたいけどイけないのか、不安そうな顔で歯を食いしばっている。緩く腰を振り始めても出そうな雰囲気はない。 「はぁっ、何で…っ、んぅっ、気持ちぃのに」 イけないことに焦っている優一に、ふふっと笑って、口を離し、固く閉ざした孔に舌を突っ込み、唾液を送りながら撫で回すと仄かにボディーソープの香り。 「っっ!!っあああ!」 「準備してくれたの?」 「っ、うん、うん!したぁ…」 「固いと思ったらゆるゆる…ほら、指がすぐ入る」 指を奥まで差し込むとビクビクと腰が浮き、優一の表情がタカの好きな顔に変わる。身体が強張ったあと、ゆっくりと弛緩した。 「え?」 「…はあ、はぁ、はぁ、」 「イった?」 「ぁっ、はぁっ、ん…イった…。聞かないでよ!デリカシーないなあ!」 恥ずかしそうに顔を枕に埋める恋人が可愛くて愛しさで胸がいっぱいになる。 (後ろがないとイけなくなったか?) クスクス笑って、責任を取ろうとゆっくり指を増やす。とたんにふにゃふにゃに善がった優一に満足して、広げるように指を回す。 「んぅっ…ふっ…んんっ」 「声出して」 「んっ、…っ!…ぃゃだ…」 「まーたイヤイヤ期?」 「んっ…ん、ふぅっ…っ、ン!」 「久しぶりだからな…いつまでもつかな」 うるうるとした目で見つめられ、無意識に唇を舐める。すっかり反応した熱を、ヒクヒクと急かすその孔にゆっくりと入れ込む。口を手の甲で押さえて、その刺激をやり過ごそうと頑張る恋人にニヤリと笑い、勢いよく奥へ突き上げる。 「ーーーーっ!!!」 「ふぅ…っ、よく我慢できたなぁ。なんのチャレンジか知らないが好きなだけ我慢してみろ。」 「っ!…っ、ーーっ!んっ」 顔が真っ赤になってきて、前髪が汗で張り付き、身体中が汗ばんできた。 (本当にどうしたのか…) 身体を撫でるだけでビクビクと反応し、首を振って快感を逃そうとする。 「優一」 「っ、っぅ、…ん、んぅ!」 「愛してる」 言葉が届いた瞬間、優一は目を見開いてタカを凝視したあと、慌てたように首を逸らし、ビクビクとする身体をコントロールできずにタカの腕に爪を立てる。 「っ!?ーーっ!んぁっ!っあああ!」 「くっぅ…っは、」 「っああぁ、っはぁっ、んぅ、タカさんっ」 「っは、っ、ん?…っ、」 「ダメっ…イっ…くぅ…ーーっああああ!」 優一の長い射精を堪能しながら、髪をかきあげてやると、その刺激にもビクビクと跳ねる。 「盛大にイったな。可愛い」 「…っ、はぁっ、はぁっ」 「イイ声でした」 「はぁ、はぁ、うるさい」 「何だよ、反抗期?」 「俺だけが…ベタベタしているのが嫌なの。俺だけが寂しく思って…俺男なのに…女の子みたいに…」 「だから声我慢したりイヤイヤしてたのか?ふふっ。いろいろ間違ってる気がするけど、どんなお前も好きだよ」 「んぅっ」 キスをしながら腰をすすめると、観念したのかいつものように身体を委ねた。やっぱりこっちが可愛いと、顔中にキスを送り、身体を密着させて奥を攻める。耳元で気持ち良さそうな声を聞くだけで腰にクる。ぎしぎしと軋むベッドが更に興奮を煽って、邪魔な布団が床に落ちていく。 「っああ!っああ!んぅっ!っぃっあああ!」 「はぁっ、はぁっ、も、出すよ」 「うんっ、んっ、中してぇっ!」 「ん…っぅ、んっ!!」 奥の奥に注いで気持ち良さに浸る。顔を見ると恍惚の表情でぼーっとしている。ゆっくりと引き抜くとトロリと飲み込めない熱が溢れてきた。 「甘えてばっかりじゃダメだって思ったけど、やっぱり甘えたくなって…自分と葛藤してたらわけわからなくなって、反抗期みたいになっちゃった。ごめんなさい。」 2人で湯船につかるのもいつぶりだろうか。お互いが大きなミッションに取り組んでいた分、ゆっくりできるのはだいぶ久しぶりだ。 優一はタカに音楽の世界から帰ってこないと言うが、優一も集中したら仕事以外で部屋から出ない。そして完成するまではピリピリして不安定だ。今回はサナのイメージを変えたいとはりきった分、だいぶ難産だったようだ。 「大きな仕事だったな。お疲れ様。あとはサナが歌えるか、だな。お前の声でのイメージを超えて欲しいところだが…」 「サナならできるよ!きっと俺よりいい歌になるかも」 「いやー…なんとも言えないな。お前さ、自分のスキルの高さ分かってるか?…まぁ明日のレコーディング次第だな。」 「タカさんも参加するの?」 「エンディングがあるからついでに。」 楽しみだな、とぶくぶくと息を吹きかける優一に笑いかけると、2人は風呂から上がってタカの寝室に向かった。 「おはようございます!よろしくお願いします!」 「…。おはよう。」 レコーディングスタジオにタカが入ってくると空気がピリついた。音響監督やアニメプロデューサーも真剣なトーンになった。 「タカさんも来てくださいましたし、エンディングからいきましょうか。」 「よろしくお願いします」 サナは緊張したように録音ブースに入った。以前にピアノバージョンの動画はとったようで、今回はエンディングテーマのバージョンだ。ピアノバージョンよりは音が多く、盛り上がりも多い。 歌いはじめると、タカは大きなため息を吐いた。周りが更にピリつくのを優一は黙ってみることしかできなかった。 「サナ、なんだその声」 「え?」 「なに、風邪?」 「いえ…大丈夫です」 「じゃあなんで声弱いの?」 優一は気づかなかったサナの声の調子。タカはイライラを隠せないままサナを詰める。その場が静まり返り、タカの声だけが響く。 「ごまかせると思ったのか?こんな声で何しにきた?」 「すみません!もう一度お願いします。」 「この状態で酷使したら喉が潰れる。今日はやめだ」 スケジュールも押している中の判断にスタッフが慌てはじめた。歌わせてください、というサナに勝手にしろと言ってそのまま様子を見ている。 「俺の曲は今日はとらない。プロデューサー、すみません、エンディングは後日お願いします。」 「分かりました。サナさん、オープニングいいですか?」 「よろしくお願いします」 今にも泣き出しそうなサナに、優一はヒヤヒヤした。 (万全の状態じゃないと厳しいかも、俺の曲は) 歌いはじめるとイメージと全然違う仕上がりに優一はぽかんと口を開けた。プロデューサー陣もあれ、と首を傾げている。全員が優一のデモのイメージだったが、あまりにも迫力が無く、テンポもゆっくりに聞こえる。優一は慌ててやめさせた。 「サナ?今日は調子悪いみたい。やっぱり後日にしよう?」 「大丈夫です!お願いします!」 スタッフに気を使って、なんとか収録しようと焦るサナにタカはため息を吐き、立ち上がった。 「大丈夫というならダメ出しさせてもらう。はっきり言ってガッカリだ。」 「っ!」 「優一のデモ聞いてきたか?どうやったらこんな疾走感のある曲をバラードみたいに歌えるんだ?リズム感もグルーブ感も無い、聞いていてつまらない。台無しにするならこの仕事降りろ」 「タカさん!言い過ぎですよ!サナ、気にしないで。大丈夫だよ」 「どこがだよ。サナ、優一が何ヶ月もかけた曲だ。お前のイメージをもっと良くするために。だがお前の実力が足りなすぎる。曲ができるまでの間、一体何をしていたんだ?難しいだろうとは思ったがここまでだとは残念だ。このレベルならオーディションのちあきでもできる。」 サナはついに泣き出した。歌詞の紙を握って静かに嗚咽を漏らす。堪らず優一はブースに入りそっと抱きしめた。 「少し休もう?すみません、休憩お願いします」 タカはタバコとライターを持ってすぐに出て行ってしまった。何人かのスタッフも気まずそうにしながらも出て行った。 「サナ、大丈夫だよ。ゆっくりやろう」 「っぅ、ぐすっ、ぅうー〜っすみませんっ、私のっ、力不足でっ…ぅ、」 「サーナ大丈夫大丈夫。曲が難しいから、少し大げさに歌ってみるよ」 まだ残ってくれている音響監督にお願いして、サナをブースに残したまま、優一は少しオーバーな表現でデモを取った。 あえてがなったり、荒くしたり、ウィスパーボイスにしたりと汗を掻くほどの仕上がりだ。 「もうお前がやれば?」 タカはいつの間に戻ってきたのか、満足そうな優しい顔で残酷なことを言う。サナは更に傷つき萎縮してしまった。タカが録音ブースに入ってくると、どこから持ってきたのか湯たんぽとブランケット、薬や水などをサナに渡した。 「顔色悪すぎ。後日が嫌なら少し休憩しろ。集中もできてないし、お腹に力が入ってない。」 ボロボロ泣くサナにため息を吐いて、タカは肩を貸してゆっくりと立ち上がった。医務室までは嫌だというサナに配慮してソファーに座らせると、お腹に湯たんぽを置いたあと薬を飲ませ、ブランケットをかけた。 「皆さん、ごめんなさい。」 「調子悪い時は無理すんな。制作側は納期も大事だが、良いものを作りたい。だから焦るな。」 寝とけ、とそっけなく言われたサナは、そうとうきつかったのか、湯たんぽを抱きしめて横になった。しばらくすると薬が効いたのか寝息が聞こえた。 その間に優一は歌詞にブレスの位置や、抑揚を細かく書いた。タカはそこまでしなくていいと言ったが、参考になれば、と夢中で書き込んだ。 30分くらいするとサナは目を覚まして、顔色は先ほどよりも見違えるほど良くなり、声にもハリがあった。 「皆さん、申し訳ありません!もう一度よろしくお願いします!」 いつも通りのサナに戻って足取り軽く録音ブースに入ったのをみて優一はホッとし、タカは苦笑いした。 「女の子は大変だな」 そっと呟いた言葉に生理痛だったと察し、すぐに分かったタカに複雑な気持ちになった。 (彼女とかにやってあげてたんだろうな) サナは優一のメモを見ながら少し声出しをし、先ほどの優一のデモを聞いて自分でも何か書き込んだようだ。 「お願いします!」 元気よく笑顔になったサナに、優一も笑顔になった。曲がかかるとリズムをとり、大げさにやった優一のイメージからか、先ほどよりもだいぶ良い仕上がりになった。 「イイね!イメージ通りだよ」 「ありがとうございます!」 「サナ、すごくイイよ!驚いた。」 タカも嬉しそうにコメントすると、安心したのかまた泣き出し、スタッフがタカを責めたのにタカは慌てていた。 「サナ、褒めただろ?泣くなよ」 「違います、ありがとうございます!気づいてくださってっ、私、立つのもきつかったんですが、言えなくて」 「言うのも仕事のうち。次から言えるようにな。誰も怒ったりしないさ。ただ、中途半端な状態でOKが出ると思ったならナメるなよ、と思っただけだ。言い過ぎたな、悪かった」 「いえ!ありがとうございます!」 泣きながら笑うサナに、タカはブサイクと言ってからかって笑った。スタジオの空気が良い状態でレコーディングを終えた。 「不機嫌だな、優一」 「え?そんなことないよ」 「そんな口どがらせて…拗ねてんのか、キスしてほしいのか、鳥なのか」 「鳥じゃないし!」 「で?何が不満なの」 助手席で黙り込む優一に、クスクス笑いながら問いかける。 「サナの、すぐ気付いたから…彼女にもそうしてたのかなって」 「まあな」 「……。」 「え?それ?!」 どうせ仕事のことだろうと思っていたタカは驚いて優一を見た。 「タカさんが彼氏になった女の子たちは幸せだろうなぁって」 「お前は幸せじゃないの?」 「幸せだけど…」 「じゃあタカさんが彼氏になった人でいいじゃん。わざわざ性別分ける必要ある?」 「タカさんの子どもとか、産めないし」 「…頼んでないだろ。俺は子どもに恋人を取られたくないの。ずっと俺が独り占め!」 「でも…」 「お前だって子どもほしかったら他にいけよ」 え?とこの世の終わりみたいに見つめてくる優一にタカは苦笑いした。 「俺だって大好きな優一の子どもを産んでやれない。お前が子どもほしいなら、そう言うしかないだろ。」 「俺はタカさんといたい!!」 「そうだろ?俺も同じ。だからお前が勝手に想像して傷付くことで、俺も同じように傷付くこと、分かっててな」 男とか女とか関係ないぐらい好きなんだから、と伝えると、両手で顔を覆って黙った。 不審に思って優一を見ると耳まで真っ赤にして悶絶している。 「タカさん!大好き!!本当に俺、タカさんの恋人にしてもらってよかった!幸せ!」 急にこちらを見て、タカの好きな笑顔でそう言われて、優一のパーカーのフードをかぶせて頭をしたに抑え込み、タカはアクセルを強く踏んだ。 「わぁ!安全運転お願いします!」 「無理だろ」 「え?どこ行くの?ここどこ?」 「ラブホ」 「ぅええ!?何で!?」 「無理もう我慢できない」 「初めて行く…男同士は入れないんじゃないの?」 「知るかそんなこと」 淡々と短い言葉しかなくなるのを、優一は知っていてドキドキする。タカが抑えられない欲をぶつける時なのだ。優一は初めてのラブホテルにも、タカの様子にも興奮する。 タカが慣れた様子で適当な部屋を選んで鍵を取る。少しまたチクンと痛む胸を無視して早歩きでついていく。 部屋に入ってキョロキョロする暇もなく、タカの舌技で口内が気持ちよく、ぼーっとしてきた。 「優一、愛してる」 腰が抜けた優一を、部屋の真ん中にデカデカと置いてあるベッドに降ろす。少し落とされた灯と、非日常感。キョロキョロとあたりを見渡すのを、初めてのラブホテルと察し、タカは嬉しくなった。優一はシャワールームがガラス張りになってるのを見て顔が真っ赤になった。それをタカはニヤリと笑い、服を脱ぎ、待ってろとシャワールームに向かった。 (やば!エロいっ!なんか恥ずかしい!) タカの裸体を惜しみなく凝視し、ゆっくり見ることのない貴重なシャワーシーン。思わず自分のものを握ってゆっくりと動かすと、ガラス越しのタカが子どものように笑ってタオルで拭きながら戻ってきた。 「一応俺でもオカズになるんだな?」 「だってすごく…んぅ、んっ、んぅ」 言葉を遮って大きなベッドに沈め、身体がより密着するようにくっつき、口内を堪能する。お腹に触れる硬いものをキスしながら強く握ると下で身体が跳ねる。腕に爪を立てられ、口を離すと大きく呼吸し、視線が彷徨う。 (今日はイきそうだな) 前は後ろの刺激がないとイけなくなってたが今日は興奮してるのか今にも爆発しそうだ。 「は、は、はぁっ、んぅ、はぁっ、」 「こっちだけでイってみるか。少し待ってろ」 常備されているローションとコンドームを持ってきて、自分と優一にもつける。きょとんとした優一にニコリと笑い、ローションまみれの手で包むとぐちゃぐちゃと厭らしい音が響く。 「んぅうう…、んっ、なんか、ヘンな感じ」 「ゴムはこんな感じ。でもこれ薄い方かな。」 「でもなんか…んぅ…」 「んー?」 「足りないよぉ…」 言うのが恥ずかしかったのか、顔を手で覆った。握り込むのを強くすると腰がガクガクとし、は、は、と呼吸が早くなった。本能だろうか強く腰を振り始めた優一に、雄を見た気がしてゾクゾクする。快感だけを追う優一をイかせてやろうと更にキツくする。 「っ!!…っぅあっ!!」 気持ち良さそうに放った白濁はゴムの中に注がれ、ビクビクと出し切っている。 (やば…エロすぎ) 出し切ったのにギラつく優一の視線を浴びながら、白濁の止まったゴムを取ると、ほっとしたようにため息を吐いた。足を大きく開かせ、ローションをかけると冷たかったのか眉間にシワを寄せたあと、ジロリと見てきて思わず笑って謝った。タカも余裕はなく、適当に解すとすぐに中に入った。 「っあああ!っあ!はぁっ、んぅ!気持ちいい!タカさん!気持ちいい!」 「くぅっ…力抜け…」 「はぁっ!気持ちいい…っぁああっ」 優一はトんだのか、気持ちいいしか言わなくなり、先ほどの雄の顔はどこかへ行き、愛されるために見せる顔で奥をねだる。 「っはあ!…は、優一、」 「タカさん、気持ちいいよぉっ、奥がイイ」 「ん、ここ…?」 「っ!?っあぁあああー!!っあ、やめっ!そこ!ダメっ!っ!ぁああっ!」 「奥がイイんだろ?…は、っくぅ」 「あ、ヤダ…くる…タカさん、きちゃう」 「はっ、はぁっ、ん、締め付けすぎ」 「あっ、あっ、あっ、ああっ、っや、」 「はぁ、もうイけ」 「んっ、イく、っっ!!っあぁあああーー!」 ものすごい中の動きにタカも我慢できず、ゴムに欲を出す。優一は触ってもいないものから白濁をまき散らした。 「続きは家でな。そんな足りない顔すんな」 「足りてるよぉ。もう満足。」 「俺が足りないの。お前も中出しされたかったんだろ」 「はぁっ!?ち、違うし!」 図星だったのか顔を真っ赤にして反論する優一を無視して、帰り支度を始める。優一はシャワーを浴びに行ったが、ガラス張りというのを忘れている様子だ。 気持ち良さそうに顔からシャワーを浴び、髪をかきあげる仕草やお湯でほっとしてる表情。抱かれたあとだから動きが緩慢で、腰のくびれが綺麗だ。 (たしかにエロいなこれは) 思わず復活しそうな自身に待てをして、片付けた。シャワーから上がった優一の髪を簡単に乾かしてまたパーカーのフードを被せた。 「んー!なんで被せるの?」 「撮られたら俺たちは終わりだ。衝動で入ったから俺は隠すもんないけど、お前だけは確実に隠さないと。なんかあったらグループにも迷惑がかかるし、別れなきゃならない。」 「そんな大袈裟な…こんなところに記者いるかなぁ?」 「お前撮られたことないから余裕なんだよ。大河や青木はマークされてるから可哀想だよ、あれ本当面倒だからな。事務所からも怒られるし。」 ふーん、と頷いて少し痛む腰をタカに支えられながら車に乗った。 「優くん、大丈夫…?」 「え?」 後日、誠がケータイの速報を見て心配そうに声をかけた。ほかのメンバーはこの報道に気づいていたが声をかけられず、様子を見ているようだ。 「タカさんの、熱愛報道。」 「え!?だってここんとこずっと家のスタジオこもってるのに…」 優一は慌てて記事を見る。浮気だなんて疑いたくないが、タカは本当にモテる。知らないところで女性が絡むかもしれない。 2月未明、ブルーウェーブのタカがオシャレな女性を連れてラブホテルに入って行った。女性は一般のアパレル関係者だとみられる。 (あれ…この場所、この服…) 「っぷぷー!!あはははは!」 「え?優くん?」 優一の笑い声にメンバーは集まってきた。涙が出るほど笑って、ネタバラシをした。 「俺、アパレル関係の一般人だってー!」 「「「え?」」」 「だってこれ、俺だもん。」 「「「えーー!?」」」 「タカさん、事務所から怒られてるだろうなぁ!あはははは!」 笑う優一に大河が大きくため息を吐き怒鳴りながら怒りはじめた。 「お前な!一回撮られてみろ!大変さがわかるから!つーか、お前までバレてたらどうなってたか!分かってんのか!?」 「大河の言う通りだ!今回はタカさんが全部被った形だけど、アイドルの自覚あるのか?ただでさえアイドルは恋愛ご法度、さらに同性なんて話題性しかないぞ!そこまで考えたのか?どうなんだユウ」 「う…すみません」 「たまたまパーカーきてるからバレてないけど、ピンクの頭なんかすぐお前って分かるぞ。」 「そうだ、タカさんが被せてくれたんだ」 「芸能人だって自覚しろよなぁ」 年上チームから怒られ、素直に反省して落ち込む優一に、誠はバレなくてよかったと、頭を撫でた。優一はみんなに謝罪したその後、伊藤に呼ばれめちゃくちゃ怒られた。 「申し訳ないと思ってるよ。俺が悪かった。」 「何その早く終われって感じは!私の仕事を増やさないでくれる!?」 「…チッ」 「今舌打ちした!?信じられない!そもそもあなたが…」 タカは社長室で新しいマネージャーにヒステリックに怒鳴られていた。頬杖をついて窓を眺める。冗談ではあったが本当に撮られるとは危なかった、と心底反省はしている。社長にも苦言を呈され、さすがに自覚のなさに落ち込んではいる。しかしだ、 「うるせぇな!!分かってるって言ってんだろ!!」 「っ!?何なのよその口の利き方は!」 新しいマネージャーとかなり相性が悪い。今までの人らがだいぶマシだったと思う。はじめての女マネージャーは説教がとにかく長く、ヒステリックだ。いつもはカナタとジンが宥めてくれるが今日はいない。 「社長!この度は大変申し訳ございませんでした!仕事があるので失礼します」 「あ、コラ!逃げるな!待ちなさい!」 「三輪さん落ち着いてください。タカも反省しています。本件はこちらで対応しますから。」 社長も苦笑いして、二度目はないぞ、と出ていくのを許可してくれた。マネージャーの三輪は納得いかないのか、タカの後をぶつぶつ言いながら付いてきた。 「着いてくんな!鬱陶しい!俺はマネージャーとして認めてないからな、勘違いすんなよ」 「あなた、私が嫌だから嫌がらせしてるのね!?スキャンダルをおこしてやめさせようと!」 「誰がリスク冒してまでそんなことするかよ!頭おかしいんじゃねーの!」 怒鳴り合いを聞きつけた事務所社員たちが止めに入り、なんとか場が収まった。 (イライラするなあのババア) タカは喫煙所で煙を肺に入れる。 (俺、年上の女合わないのかな。いちいち勘に障る) ため息と一緒に不満も吐き出した。

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