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第57話 恋のはじまり

「カット!!OKです!大地さんオールアップです!!お疲れ様でしたー!」 「お疲れ様でした!ありがとうございました!」 最後のシーンを撮り終えてカットの声が響くと大きな拍手に包まれた。スタッフで囲まれたまま、笑顔で頭を下げてると、突然道が開き、昨日クランクアップした翔が大きな花束を持ってサプライズで登場した。 「大地!お疲れ様でしたー!」 「翔くんありがとうー!!」 花束を受け取って抱き合うと、スタッフから大きな拍手が起こった。共演者たちも集まってくれて無事に終えることができた。伊藤からの誕生日プレゼントは最高の形で世に送りだされる。 「最後のシーン良かったよ!俺泣きそうになった!」 「えー!泣いてないじゃん!…まだまだ演技は翔くんに敵わないや!」 「はは!大地のもよかったよ。あー楽しかった!なんか寂しくなるよなぁ。毎回映画やドラマ終わったらこんな感じ。」 「そうなんだね、翔くんドラマ多いから。俺はまだ達成感しかないよ〜!やっと眠れる!」 ケータリングを食べながら寛ぐ。翔の演技はとても上手くてこちらまで乗せてもらったようだった。座長に相応しい振る舞いも、人見知りで、態度の悪い第一印象とはかけ離れていた。 (本当にプロだな) いつかの日に、真面目な話をした。芸能は自分の天職だ、この仕事以外では俺はクズも同然。社交性も協調性もない。こだわりが強すぎるし、何より誰かに愛されたい、褒められたい、それしかないのだ、と。そして、その為なら仕事に手を抜かない、その時のベストを尽くす、そう言う翔はかっこよかった。 青木が撮影に入った頃、RINGでは大きな問題が立て続けに起こったがこの撮影があったからブレずにいられた。目まぐるしく変わっていた状況に巻き込まれず、淡々と目の前のことをこなした。 「主題歌も一緒にできるなんて、嬉しいな。歌も売れるといいな」 「そうだね!ダンスもあるから楽しみ!」 「歌もダンスもカバーするから心配するなよ」 「翔くんって本当、ザ・センターだよね!」 「そうかな?そう言って貰えるとありがたいよ。」 ニカッと嬉しそうにするのが可愛いくて頭を撫でたら触んな!と怒られた。 「あー…グループ外ユニットだと、ほかのメンバーがウザそう。いちいちなんか言ってくんの、あのおっさん達」 「コラコラ、先輩におっさんはダメでしょ」 「いや、あっちがさ、1番下っ端のくせに、とか後から入ったくせに、とか嫉妬がすげーの。下に越されたくないなら努力しなって感じ。」 頬杖をついてイライラしたように顔を背けた。 「収録とか以外で喋ることないしな。楽屋はみんなイヤホンしてケータイ触ってるよ。俺はヒマだからブラブラ歩いてるけど。」 「うわ!怖そう」 「俺が売れる前はめちゃくちゃ可愛がってくれたのにさ、目立ってきたら全員シカトよ。怖いよな、女子かよって思ったね。おっさんのくせに」 「えー…怖すぎる。俺やめちゃう」 「リーダーがクソだから。全てあいつの気分と機嫌次第。あいつが好きだと言えばみんな好きって言わなくちゃいけない。逆も然り。やばくない?口答えすると他のメンバーから呼ばれて、和を乱すなって怒られるの。あー!レイさんのいるRINGが羨ましい」 心底羨ましそうな翔に同情する。ただ、今回の引き金になったのは、レイと伊藤の縺れからだった。普段しっかりしたこの2つの柱がぶれただけでRINGは粉々になるほどの不安定さを身をもって体感した。 「ユウ…戻ってこれるかな…」 この間のオーディションの話を聞いて、青木も酷く驚いた。優一がそんな仕事に出されていたことにもそうだが、伊藤がブチ切れていたこと、優一のパニック、完全なるマツリの趣味での仕事がここまでの傷になったことが辛かった。 「きっと、大丈夫!メンバーみんなで支えていくから!伊藤さんがベタ付きしてくれてるから安心だし」 「ベタ付きはすごいな。まぁあの状態なら仕方ないよな。うちの長谷川さんにはありえないね。仕事のできるロボットだよ。頭いいし抜かりないし、あの透さんをうまく誘導するんだから。」 「やっぱマネージャーさんってすごいよね。三輪さんになって伊藤さんとか長谷川さんの凄さを実感するもん」 うんうんと頷いて、2人は現場で解散した。取り立ての運転免許と、急いで買った車。以外にもドライブは楽しかった。家の近くまで来ると、深夜にトボトボあるくサラリーマン。もしかして、と思って声をかけた。 「正樹、お疲れ!」 「…。あ、大地!お疲れ…頼む乗せて!」 助手席に乗ってぐったりしている。 「正樹?どうした?飲み過ぎ?」 「知らん。部下から移ったかも。頭痛い」 「病院行こうか?」 「……ごめん…お願いします」 そういうと、ふっと目を閉じて苦しそうな呼吸をした。深夜だから救急外来に行き、駐車場で待機した。だいぶ時間がかかってマスクをした正樹は薬を持って戻ってきた。 「やばい。やっちまった。インフルエンザだから、俺タクシーで帰るわ」 「今更でしょ。ほら乗って。きついんでしょ?」 「悪い…。」 「熱は?」 「39」 そう言った後すやすやと眠った。コンビニで飲み物を買ってやり、マンションに到着すると起こし、支えながら歩いた。 「ありがとう。お礼は必ず。」 「気にすんな、お大事に」 青木は正樹を見送って部屋に入るとノンタンがすぐに駆け寄ってきた。抱きあげてくすぐると嬉しそうに目を閉じた。 しばらくノンタンと遊んで、あり合わせのもので料理を作る。ふと、正樹が気になって電話をすると、何もいらないというので部屋に向かった。 「はい…」 「正樹、開けてー」 「いや、アホか。うつるぞ。…で、何?きついんだけど。」 「お粥作った」 「ごめん、本当食べられる気がしない。」 「じゃあここ置いとくね」 「チッ!今開ける」 ナチュラルな舌打ちを聞いて、さすがにニヤける。クランクアップしてテンションが上がっているのかもしれない。 「ありがた迷惑、ありがとう」 「うわー!ハッキリ言うねー」 「何笑ってんの。人が苦しんでるのに性格悪いな。」 袋を受け取って中に行くのをついていく。めちゃくちゃ汚い部屋に驚く。 「汚っ!」 「うるさいな。女の子こないし、いいだろ別に。」 「舞ちゃん来ないの?」 「あぁ。2ヶ月くらい音沙汰ないよ。この時期激務だから正直有り難かったけど、インフルエンザはヤバイ。明日パソコン取りに行って、数字だけは見とかないと」 「え、自宅待機でしょ。インフルエンザは」 「パソコンないと仕事できないだろ。あーこんな時期に終わってる…最悪。部長に何を言われるか…恐ろしすぎる」 相当きついのか洗濯物が溜まったソファーの上に横になった。 「はぁ…っ、きっつ…」 熱が高いのか顔が真っ赤になっている。寒そうにガチガチと歯がなるのを見て、そうとうきついのがわかった。間取りが同じ部屋に行き、寝室であろう場所から毛布を取って正樹にかける。眠りの世界に落ちている正樹は呼吸は荒いまま、力なく毛布を握った。 「はぁ…っ、は…、まい、ちゃん…」 きつい時に浮かぶのは正樹が愛した人だった。舞ちゃんに看病してもらったことはあるのだろうか。しなさそうだが、この今日だけはそばにいてやってほしいと祈った。冷えピタを貼って、薬と水、体温計、タオルを取りやすい位置に置いて部屋を出た。 大地:正樹、体調は? 正樹:昨日よりマシになった。会社からパソコンとって仕事中 「はぁ!?」 次の日の朝、青木は正樹にメールを送るとすぐに返信が来て、その内容に思わず正樹の部屋に向かう。ドンドン叩くと、しばらくスルーされ、インターホンを鳴らすとマスクと冷えピタをつけたまま、電話しながらドアを開け、嫌そうに顔を顰めたあと、中に入るように促した。 「あ、はい、すみません。はい、もちろんです、数字は落としません。はい、承知いたしました。はい、本日もよろしくお願いします。」 リビングに行き、パソコンの数字をみながらカタカタとキーボードを打ち込む。電話を切ったあとすぐにまた他の電話をかけ始めた。 「柏木、今送ったデータ見て。高倉が数字悪い。状況は?追客してんの?日報からは見えないけど。オーナーさんはなんて?…把握してないな?頼むよ、柏木。柏木のところが大きく落としてるの自覚ある?今取らないと厳しいよ。…そう、分かった。高倉から俺に電話ちょうだい」 聞いている印象としてはバリバリの営業管理職。若くして出世しているのが分かる気がする。電話を切ってすぐに電話が入る。 「高倉?お疲れ。電話の理由分かる?うん、どうなのオーナーさんは。厳しそう?柏木に相談してないの?何で?……うん、取れてないじゃん。どうすんの?ここまで厳しくなってから柏木に言っても変わんないでしょ。案件あんの?……。無いなら作るしかないでしょ、決算近いの分かるよね?うん、」 電話をしながらパソコンを打つ手は止まらず、目の動きも物凄い。タバコとブラックコーヒーもセッティングされている。ため息を吐いて電話を切ると、盛大に咳をした。 「…おまたせ。なんですか?朝っぱらから」 「インフルなのに会社行っちゃダメでしょ」 「始発に行ったから誰もいなかったよ。」 「始発?!正樹全然寝てないじゃん!」 「気になって眠れないよ。朝から部長の怒鳴られて30分説教よ?今日の報告は僕のせいで荒れるだろうな…」 机に伏せる正樹はまだまだきつそうだ。一日オフの青木は正樹の看病をしてやろうと溜まった洗い物からはじめた。また電話が鳴り、話していくうちに声が枯れていった。 「す…みません…、っ、は、っぁれ、っ」 完全に声が出なくなり、電話口の怒鳴り声が聞こえる。正樹はぎゅっと目を閉じたかと思った時、ふらついたのを慌てて支えた。 「あ、もしもし、すみません。正樹の友人です。今看病してて…すみません、高熱で今失神しちゃいました。起きたら折り返すようにしますので」 恐る恐る電話にでると、急に丁寧な話し声になり、今日は休むように伝えてほしいと言ってもらえた。 夕方6時。 青木は正樹の部屋の家事をこなし、充実した1日を過ごした。正樹はまだ起きない。そろそろ薬を飲まそうと正樹を起こしに寝室に行った。 「正樹、正樹。」 「ん…っ、ん、は、はぁ」 眉間にシワを寄せて魘されているようだった。冷えピタを替えようとおでこに手を伸ばすとその手を取られた。 「きついよ…っ、苦しい」 薄く目を開けた正樹は弱々しく、泣きそうになっていた。心細くなったのか、青木の手を握って泣き始めた。 「正樹、大丈夫大丈夫」 「吐きそう…っ、は…、寒いっ」 「お水飲んで」 冷えピタを取ると熱くなっていた。新しいものを用意して汗を拭く。動きが緩慢でふっと力が入らなくなる瞬間があって青木は慌てた。ペチペチと頬を叩いて起こし、何とか着替えに成功した。子どもみたいにされるがままで、ぼんやりとしている正樹が先ほどの仕事中のギャップがあって可愛くみえた。 「大地、いといて」 「オッケー」 「一人暮らしつら…」 「分かる〜。ペット飼えば?」 「世話できないし、いらない。」 「忙しそうだもんね。」 「ううん、お前いるから、いい」 「は?…んっ!!?…ちょっ…」 「んっ、はぁ、」 「正樹っ、ちょっ…と、おいっ!舞ちゃんじゃないって…こらっ…んっ」 熱に浮かされた整った顔がぼんやりと青木を見つめ、青木のマスクを下げて唇を重ねる。慌てて抵抗するも、熱い舌が絡められて焦る。 しばらくすると満足したのか唇を離し、トロンとした目のまま正樹は青木を見た。 「大地が優しくしたんだから、責任とれよ」 「はぁ?!どういうことだよ」 「…すぅ…すぅ…すぅ…」 「え?…ウソだろ?何今の」 恥ずかしくなって顔が真っ赤になる。 (こいつはモテるな…とんでもないやつだ) 青木はすやすや眠る正樹を見て頭を撫でて、簡単なものを作って小分けにした。一度部屋に帰って着替え、ノンタンと遊んでいると着信が入った。 「どした?正樹、良くなった?」 「いといてって言った」 「あはは!ごめん、直ぐ行く。」 ノンタンに餌をやって、少し掃除をした後に向かうと、真っ暗なままの部屋に荒い息遣い。 「正樹ー」 「んー…、っ、いといてって、言ったのに」 「ごめんってー」 「遅いし」 「はははっ、ごめんごめん」 「優しくしたくせに」 疑問符がたくさん浮かんで正樹を見ると苦しそうに眉間にシワをよせ荒い息を吐く。 「大地ならそばにいてくれると思ってたのに」 「だからごめんってー。ノンタンに餌をやらなきゃだったんだよー。」 「頼れる人は大地しかいないのに」 「はいはい、ごめんごめん。熱測ろうか。」 体温計を取って渡そうとすると弱々しくハグされる。 「流さないで」 「ん?」 「大地、察してよ」 「何を?」 暗闇にカーテンの隙間から月明かりが照らす。顔が見えなくてハグをやめさせるとその表情に息を飲んだ。 (やば…本当整ってんな) 「大地」 分からなくて体温計を挟ませた。ゆっくり抱き寄せて鳴るまでの間、ぽんぽんと背中を叩く。青木が不安な時、よく誠がやってくれる。とても落ち着いて穏やかな気持ちになるのだ。 ピピッ 「38.7…うーん、まだ高いな」 「大地」 「ん?」 「僕、大地ならアリだよ」 「何が?」 「優しいし、綺麗だし、家事できるし」 「はいはい、ありがとー」 体温計を片付けながら、病人の言うことをスルーする。伊藤もこうして心細くなって浮気したに違いない、と理解した。弱ってる時に優しくされると、それは感謝もするし落ちやすいのだろう。 (ユウが弱ってる時には必ずタカさんがそばにいる) 青木は優一を失った時、結局誰もそばにいなかった。だが逆に正樹の失った瞬間や今みたいにきつい時、そばにいるのは (あ、俺だ) その瞬間初めて正樹の顔をしっかり見た。泣きそうな顔で服の掴んでいる。一気に意識した青木はカァッと顔が真っ赤になった。青木には友達としか思ってなかった存在が急に形を変えた。 「大地、流さないで」 「え、あ、あの、…っあのっ…」 「鈍感。やっと分かったのか?」 「えっと…その…」 「こんなんじゃ、拗れても、仕方ないな、」 「あ、の」 「お前に惚れて、勝手に失恋したやつなんかたくさんいるんだろうな。」 「…そうかな」 「僕はもう、失恋したくない」 「え?」 「進みたい。舞ちゃんからもう先に進みたいんだ。」 「正樹…」 「進むなら、大地とがいい」 「っ!!」 「大地も進もう。ユウさんから、僕と」 甘えるようにハグしてきて胸に埋まる友人。今までハグもしていたのに、なんだろう、心臓の音がうるさい。ここまではっきりと言われたのは初めてでひたすら緊張する。 「大地、僕らは進まなきゃいけない。お互いタイプじゃないけど、ほら、居心地は最高ただろ」 「…まぁ…確かに」 「大地は僕はアリ?ナシ?」 さすが営業。話術にとことん押されている。大事な時に思考停止して黙ってしまう青木には逆にシンプルな質問が答えやすかった。 (アリかナシかで言うと…) キスできるかでいつも考えていた青木は、さっきキスしたのを思い出し、別に嫌でもなかった、と判断した。じゃあセックスは、と考えると自分が受け入れるのは有り得ない。正樹を抱けるか、と思った時、たまたま病人で弱った状態からイメージが浮かび、また青木は真っ赤になった。 「エッチなやつだな。そこまで想像すんなよ」 正樹が呆れたように力なく笑った。そして、アリ?ナシ?ともう一度聞かれた。 「アリかな」 「そんなに時間かけて考えるとは思わなかったよ、鈍感。じゃあ、そういうことでいい?」 「恋人、ってことだよね?」 「うん。だから、そばにいてって言ったらそばにいて」 「分かった」 「キスもして」 「分かった」 「どっちが抱くかはじゃんけんにしよ」 「え〜…」 「浮気はダメ」 「分かった」 「好きな人が出来たら、ちゃんと言って」 「違うでしょ。」 「え?」 「俺は、この瞬間から正樹以外見ない。正樹以外好きな人はいない。だからそんな約束要らない。」 「…っ。」 正樹は真っ赤になって目を逸らした。意識して見たらあまりの可愛さや1つ1つの動作や仕草にドキドキする。 「大地、思わせぶり得意だっただろ?」 「そんなことないよ。ユウは」 「ダメ。ユウさんの名前も舞ちゃんも禁止。僕らはこの2人の前では腰抜けなんだから。お互い勝てる相手でもない。比べもしないし、名前も出さない。約束しよ」 「ん。約束。…やっと進める気がする。正樹、よろしくね!」 「うん。…すぅ、…すぅ…」 ぎゅっと抱きしめると安心したように寝息をたてた。寝顔を散々見ていたのに、初めて見たかのようにドキドキする。意識しただけで目の前に映るものが全て変わった。 (やば…勃っちゃった) アリかナシかで聞かれたとき、頭で考えると時間がかかったのに、本能は簡単に答えを出して恥ずかしくなった。 (恋人が…できた!…一緒にいて落ち着く人) 定期的に目を覚まし、そばにいるのを確認すると嬉しそうに綺麗な顔が笑う。そばで本を読んでいた青木は本を置いて微笑み、熱っぽい頬にキスをした。一瞬きょとんとしたあと、ボンッと赤くなる顔にニヤニヤして首や耳に唇を寄せる。 「ンっ!急に盛んなよ…。ちゃんとじゃんけんって言っただろ?」 「正樹が可愛いのが悪い」 「可愛くねーだろ。あー…でもヤりたい」 「付き合った初日に、とか気にするタイプ?」 「いや?男は抱きたいもんでしょ」 「そっか。正樹、残念だな。俺も男なんで、抱かせてもらいます」 「じゃあじゃんけん…」 「病人は寝ときなさい」 青木は楽しそうに無抵抗の正樹の服を脱がす。気怠げで身体を動かすのも億劫な様子に、それでも抱きたがる正樹が面白かった。高熱の身体を舌でなぞり、薄い胸と突起を歯でコリコリと弄るとゆっくりと顔が背けられた。 「どう?」 「あ…?んー、別に悪くない。ある程度のアブノーマルはシタことあるから別に気にしないで好きにしていいよ」 「おい、なんか、今のムカつく。」 「あー…ごめん」 「正樹、俺だけ見て?俺が正樹を抱いてるんだから。…よかった勃ってる」 「…っぅ!?っあっああっああ!!」 緩く勃ちあがったものを咥え、裏筋を強く攻めると大きな声が上がる。青木は優一をイかせた自信から吸い上げたり、舐めたりとできる愛撫で攻めた。 「っぅっそだろ、っ、ん、んぁ、上手すぎっ、ヤバイ、っっ!っぁ」 「ぢゅるっ、はぁっ、んちゅ」 「っぁっあ!大地っ、ん、っ!っ、!は、我慢、できないっ、はなせ、」 髪をぎゅっと掴まれ、正樹の様子を見ると目を閉じて快感に浸っている。 (正樹エロっ) 「マジで、っ、はなせって、っ、くっ、ぅ、大地っ、っ、っぁ、っああ!もうっ!ーーっ!!」 腰を上げたと同時にドクドクと熱いものが注がれて、ゴクンと飲み込む。正樹はぼんやりと青木を見たあと、長い睫毛が大きな瞳を隠した。規則正しいリズムの寝息が聞こえて青木は温かいタオルで身体を拭き、自分ぐらいの身長の正樹を時間をかけて着替えさせた。 「ゴホッゴホッ!」 「青木、大丈夫?風邪?」 誠が心配しておでこに手を置いた。気持ちよくて目を閉じていると、そのまま寝落ちた。 「手がかかるなぁ優一の次はお前か。」 「伊藤さんもインフルエンザだったじゃん」 「たしかに!まぁ、なったもんは仕方ない。しっかり直そう。運良くダンスレッスンだけだったからな」 伊藤は体温計を見て苦笑いした。きついよな、頑張れ、と看病して帰っていった。 正樹:大丈夫か?見事に移ったな。そして看病できなくてごめん。必ず数字上げて明日の夜には帰るから 大地:気にしないで。頑張って 正樹にそれだけ返して青木は眠りについた。 にゃーにゃー 「ノンタン、おいでー」 久しぶりの声に青木は飛び起きた。フラつく身体に鞭打って、リビングに行くと、料理をする伊藤と、ノンタンと遊ぶ優一。 「あ、青木ごめん起こしちゃった」 前のようにふわりと笑うのに強く抱きしめた。 また、この部屋に来てもらえるとは思わなかった。逃げていくノンタンを気にせず、細くなった体が腕を回してくれる。 「体調どう?大丈夫?」 「元気になった。」 「ふふっ、良かった」 「こらこら青木!うつすなよ!ユウ、マスクしろって!」 伊藤に怒られて優一はゆっくりとマスクして、体温計を持ってきて隣に座った。見た目は普通に見えるがまだまだ万全ではなく、仕事をセーブしている。体温計を待つ間、大河と一緒にやっていた路上ライブの歌を口ずさんでいた。のんびりと、穏やかに歌い、幸せそうに足をぶらぶらさせる。 (なんか、消えちゃいそう) 儚く見えて、手で触れようと伸ばしたが、体温計が鳴って触れられなかった。 世間では優一の脱退説、休止説、引退説など噂が飛び交っているが、伊藤はその情報を優一以外のメンバー全員、そして関わりのあるタカ、オーディションメンバー、リョウに徹底して口止めした。マスコミは事務所が公表や対応しないところから様々な憶測を競って書き、広めていた。メンバーはこの事には一切話してはいけない、と指示がある。 ノンタンは優一が好きで、また戻ってきて優一のお腹で丸くなった。 「可愛い。お前と会うのも無いかもね」 「なんで?おいでよ」 「いいの?」 「ユウがよければ」 本当に嬉しそうに笑ってノンタンを抱き上げ、ノンタンにキスして喜んだ。 伊藤が食事を運んできたが2つ分だけ。伊藤が食べないのかと思ったら伊藤が席に着き、優一を隣に呼んだ。 「はい、ユウ、味見して」 「ん…おいひい!!」 「じゃあこれは?」 味見、と称して食べさせているようだった。気付かないふりをして、食べている優一に安心して青木も食事をとった。 「あ、2人ともに報告。」 青木は食事を終えて、2人に正樹との事を言おうと考えた。人に伝えることで覚悟になると思った。 「恋人が、出来ました」 2人はえ?と振り向いたがそれぞれ表情が違っていて面白かった。 「本当っ!?おめでとう!青木!やったね!」 「ありがとう」 「待て待て。いったい誰だ。そんな影なかっただろ」 「好きな人いたんだね!言ってくれたらよかったのに!」 「一般人だよ」 「「一般人?!」」 「うん。会社員の人。ユウは知ってるよ」 「……正樹?」 「正解!」 優一は一瞬固まった後、ニコッと笑っておめでとうともう一度言ってくれた。1番に言いたかった、1番好きな人。思った以上に苦しくて思わず涙が溢れた。 「青木、幸せになってね」 激励がこんなにも苦しいのかと、でも優一で流す最後の涙と決めた。正樹の事だけを正樹の幸せだけを考えていく。 「青木、おめでとう。」 伊藤も笑って応援してくれた。どんな人?と聞かれると自分でも驚くほど惚気になっていて、優一が嬉しそうに聞いている。 「青木のニュースで本当に嬉しくなっちゃった!今日はよく眠れそうだよ!2人ともイケメンだから絵になるだろうなぁ」 「そんなにイケメンなのか?うちに入らないかな」 「正樹は見る側専門だって。RINGならユウのファンだよ。音楽は好きみたいだけどかなりワーカホリックな感じ。インフルエンザの時も仕事してたし」 そう言った瞬間べちんと頭を伊藤に叩かれた。 「お前、その正樹くんからインフルエンザ貰ったな!?全く!仕事がたまたま無かったからいいけど、お前までうつったら意味ないだろ」 「う、ごめんなさい」 「あはは!怒られちゃった!青木早く良くなって正樹を安心させなきゃ!」 「うん!早く治すね!」 優一は本当に喜んでくれて、ご機嫌だった。ノンタンと一緒に好き放題遊んで、伊藤が看病を終える頃には眠そうに欠伸をし、うとうとし始めた。 「ユウ、眠い?泊まる?」 「大丈夫。夜はまだ、怖くて。タカさんのとこ行く。」 伊藤が帰る準備をし始めると、ソワソワし始め、伊藤の後だけをついて行く。目がおかしいのを見て、ああ、まだだ、と青木は心配になった。外に出るときはぎゅっと伊藤の服を掴み、下を向いて出て行った。 「ノンタン、一緒にユウを見守っていこうね」 にゃー、と鳴いてペロペロと青木の指を舐めて擦り寄ってきた。寂しくなったのかと抱き上げた。 「あとね、ノンタン。俺恋人ができたよ。ノンタンもきっと、好きになると思うよ」 ペロペロといつまでも舐めているのに笑って、餌をあげ、まだ怠い身体を無理矢理動かして眠りについた。 「あ、はい。いえいえ。当然のことです。来月が勝負なので。はい…もちろんです。よろしくお願いします。」 ドア越しに正樹の声が聞こえて目を覚ます。時間は6時だが、朝なのか夕方かわからない。ぼーっとしていると静かに正樹が入ってきた。仕事帰りなのかシャツにネクタイ、袖は腕まくりしてタオルと水を持ってきた。 「あ、悪い。起こしたな。」 「ううん、大丈夫」 「起き上がれるか、少し水飲んで。」 「仕事は?」 「早めに帰ってきた。なんとか交渉できたから…一安心だよ」 「そっか…朝から大変だったね」 「朝…?…そっからお前ずっと寝てたからな。今は夕方だよ。」 「あ、れ、そうなんだ。」 ふわりと笑って水をくれる。仕事が落ち着いたのか穏やかな表情にキュンとして腕を引き唇を奪う。 「んっ?!」 「っは、はぁ、っ、ふふ、びっくりした?」 「…するだろ…」 「えー!正樹嘘でしょ?可愛いすぎる!こんな感じ?」 「はいはい。病人はお静かに。まだ熱あるから大人しくしなさい。…うわぁっ!」 「んふふ、いい眺め。」 体制を入れ替わって押し倒すと、驚いた正樹に可愛いと思うのが止まらない。 (どうしよう、正樹が可愛い。) しばらく見つめ合って、2人同時に吹き出した。 「あははっ!何これっ!」 「やめろよ大地!あははははっ!びっくりした!」 「ん〜!正樹可愛いっ!」 「なんだお前!あはは!僕のこと急にめっちゃ好きなってるし」 「だって大好きなんだもん」 「可愛いすぎかよ。」 笑う顔がやっぱりイケメンで見ていて飽きない。 それにゆるくボタンが外されたシャツと緩いネクタイがエロく見える。 「お、おいおいウソだろ。ストップ!じゃんけんだって言ったろ?」 危機感を察知した正樹は慌てて逃げ出そうと動く。緩慢だったはずの身体が獲物を前にすると本能が働いた。 「正樹っ!んっ、ふっ」 「んっぅ!っは、…っは、待てっ、落ち着け!」 「攻められるのも悪くないでしょ?」 「調子に乗るなっ…、病人だからって加減してやってんのに」 首に腕が回され思いっきり力を入れられる。正樹に全体重をのしかかる形になり、慌てて起き上がろうとするもガッチリホールドされ、ゴロンと体制が入れ替わる。 「チッ」 「正樹、舌打ちやめてよ。ごめん怒らないで」 「大地はじゃんけんって言った約束守らないからお仕置き。僕はルールや目標にはストイックだからさ、守らなきゃ根をあげても許さないよ。女の子じゃないから手加減しないから。」 上から冷たい目で見下ろしながらネクタイを取った。 「わぁ!カッコイイ、エロい」 「喜んでおくのも今のうち。僕のしつこさに後悔するよ。」 タバコの香りが強くして、耳元で囁かれる。ゾクゾクとして力が抜けている間に脱がされて寒さに身震いする。 「乳首綺麗。ここもエステとか行くの?」 「そんなエステ知らない。あるの?」 「芸能人は全部ケアしてるのかなって。じゃあ天然の綺麗さね。お仕置きはここを開発します。せいぜい着替えの時に苦しんでな?」 ニヒルな笑みでこっちを見た後、目を離さないまま舌を長く出し、舌先で先端を触れるか触れないかぐらいの距離まで持っていき、様子を見ている。 (もどかしい…) 「触ってほしい?」 優しい笑顔にコクンと頷くと、その笑顔が変わり、言ったな?みたいな顔になった。 ガリッ! 「痛っぁあ!っ、痛っ!やめっ、んっ、」 思いっきり噛まれたかと思ったらジンジンする乳首を優しく労わるように舐めてくる。赤ちゃんみたいに吸ったり、周りを舐めたりとしていると先ほどの強さが欲しくなる。優しい仕草が物足りなくて、潤んだ目で正樹をみる。 「何?」 「…何、でもない」 「言えたらあげるよ。」 悪魔の囁きに頷いてしまいそうだ。先端をノンタンみたいにペロペロと舐め、様子を見てくる。 「大地の乳首、赤くなってきた。僕の舌でほら見て…赤く光って美味しそう。」 ふうっと息をかけられたらだけで、腰がビクッと動いた。欲しくて欲しくて勝手に胸が反る。 「正樹、さっきの、して」 「さっきの、これ?」 わざと先端をペロリと舐める。 「ちがう」 「え〜?じゃあこれは?」 次はちゅぱっと吸われた。これはこれで気持ちよく、はぁっと息が漏れた。ニヤリと笑って合ってる?聞いてくるのが意地悪で顔を隠した。 「噛んで」 「痛いんでしょ?」 「足りない」 「へぇ…満足させなきゃね?」 ガリッ 「痛ぁっ!ん、っ!?っあ、っんん」 先ほどと全く違う攻めに慌てて正樹の頭を掴むも思いっきりしゃぶられたり、歯でコリコリと噛まれればどんどん腰が重くなる。強く吸われるのが痛くて気持ちよくて堪らない。歯で噛まれると痛いのにそのあとがジンジンして気持ちいい。左乳首だけをギリギリといじめられていた後、右側を思いっきり抓られた。 「っぅあああ!!」 「イイ声だよ、もっと出して。もっと気持ちよくなるから…僕に聞かせて、大地の声」 「っぁっ、っあ、んっ、痛っ、はぁっん、」 「エッロい顔して…。乳首気持ちいいね?大地は乳首が敏感だよ、ほらこんなにぷっくりして…恥ずかしいな?」 「っはぁ、ん、恥ずかしい、っ」 「だよな。イケメンがこんな可愛い乳首だったなんてバレたくないよなぁ」 「可愛くない」 「真っ赤で敏感で、ツンって立ってるよ?これ服で擦れたら気持ちよくなっちゃうね?どうしよっか」 言葉と刺激で青木は洗脳されていく。乳首が恥ずかしくなってきてイヤイヤと隠しはじめた。 「こーら、ダメ。もっとよく見せて。こんな可愛いの彼氏に見せないで誰に見せるの?」 「あ…っ、ん、正樹だけ」 「そう、僕だけ。よく言えたからご褒美」 口を開け、また乳首に近づくのを見るのでさえ青木はドキドキした。 (来る…あの痛くて気持ちいいのが) 「っぁああ!っ、気持ちいい、も、我慢できない」 青木は下を急いで脱いで、自分の手で雫をこぼす熱を触った。理性がとんだ青木は目を閉じてぐちゅぐちゅと鳴らしながらひたすら扱く。 「正樹、入れたいっ、俺正樹抱きたい」 「あっれー?入れてって言わせたかったのに。お前マジでソッチ側かよ。」 「正樹、抱きたい」 「だからじゃんけんだって…今日はじゃあヌき合いな。」 正樹も全裸になって上に乗る。興奮が抑えられなくて荒く息を吐くと優しく舌を絡めあった。正樹がお互いのを握り込んで腰を振り始めた。 「「っあああ!」」 2人同時に声をあげ、快感に引っ張られる。お互いが本能のままに腰を振っていると正樹が青木の足を閉じさせ、その間に出し入れを始めた。青木は裏スジをダイレクトに刺激され背を逸らした。 「はぁ、やば…たまらねぇ、大地可愛い、大地抱いてるみたい」 「っはぁあ!っああ、っあ、」 「気持ちいなぁ?僕ら相性ピッタリじゃん?」 「は、っぁ、っぁ!」 「余裕ないな、可愛い」 「んっぁ、っは、はっ、はっ」 「イきそ?」 「っ、ベラベラうるせっ、集中、っ、できない、だろっ」 「やっぱ可愛くなーい。もういいや、めっちゃ腰振っちゃお」 「っぅぅああ!っはぁ、はぁっ、はぁ、」 「は、っ、っ、んっ、ん、っあ、は、」 青木が正樹を見上げると、もう絶頂を迎えそうだ、開きそうだった足に力を入れて思いっきり締めた。 「っぅああ!!ーーっ、っは、はぁ、っ」 「かーわいー」 「はぁ…はぁ…ごめん、先に…」 「いいよ、手でしてくれる?」 「ん…」 余韻なのか素直に手にとってぼんやりと見つめながら扱いてくれる。気持ち良さに目を閉じていると、温かい感触に目を開ける。 「まっ、正樹、いいって!」 大きく頬張り、入りきらない所を手で触ってくれる。先端をチロチロ舐められもうすでに爆発しそうだ。 また大きくなったのに驚いた正樹が思わず歯を立てて、青木は予期しない刺激に吐き出した。 「〜〜〜!?」 「あ!ごめん!出して、出して」 正樹が看病のために持ってきたタオルを差し出すと涙目で吐き出して咳き込んだ。 「ごほっ、ごほっ!…大地、お前すごいな!無理!僕、これ一生無理!ゴホッゴホッ!」 苦しそうな正樹に笑って、しばらく2人でふざけながらゴロゴロして一日が終わった。 「ん…」 仕事復帰でだるい体にシャツを着るとピリッと痛んだ。少しの刺激で目立つほど立ち上がった胸にため息を吐いて、カーディガンを羽織った。 大地:正樹のせいで乳首変なんだけど 苦情だけ書いたメールは、喫煙所でブラックコーヒーを噴射した原因になったそうだ。

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