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第62話 開花
最近モデルの仕事が一気に増えた。写真だけじゃなくて、映像もある。目線を動かしただけでも褒められる環境にいて、正直戸惑う日々だ。風呂場で自分の顔を見てもよく分からないまま過ごしている。
「マコさん、今回はダンサーの彩さんと絡んで頂きます。ダンスの後に抱き寄せて2人ともカメラ目線お願いします。」
世界的に有名なダンサー彩が登場すると大きな拍手で迎えられた。黒髪に目鼻立ちがはっきりした顔。赤いリップが似合っている。真っ赤なタイトなロングドレスには踊りやすいようにスリットも入っている。
「マコちゃーん!ヨロシク!彩です!楽しもうね!」
世界を飛び回る彩は社交的で、大きく口を開けて笑うのが綺麗で自然体だった。まずは曲とイメージ映像をチェックする。曲はあのシンガーソングライターのリョウが提供したもので神秘的なものだった。
「はぁーい!やってみましょ。マコちゃんが現実に戻す感じーよね?マコちゃん、あたしを現実に戻すのは大変だよー?あははは!」
「頑張ります!」
まずは彩だけのシーン。音が鳴ると別人になった彩にスタッフも誠も釘付けになった。滑らかで繊細で何より美しい。曲が止まってOKが出ても、誠は目が離せなかった。
「あんたが現実に戻ってないじゃん!」
手を叩いて笑う彩に現実に戻された。そして2人のシーン。遠くに行っちゃいそうな表情を見て、自然に体が動いた。
(やっと捕まえた)
そう思って抱きしめながらカメラを見ると、OKの言葉の後に大きな拍手が上がって恥ずかしくなった。すぐに体を離して頭を下げると、よく出来ました〜とハグされてドキドキした。
「マコちゃん、聞いてもいい?あんたの事務所にリクっている?」
「リク…?タレントでいたかな…?」
「あ、今はマネージャーかな。」
マネージャーと聞いて探すと、相川が浮かびいます!と言うと、会いたいんだけど、と言われ、伊藤に相談し、彩を事務所に招いた。
「へー?リクこんなところにいるの」
「お知り合いだったんですか?」
「あれまっ!あんた、リクのこと知らないの!?ダンスのジャパングランプリだし、世界大会も出てるし、振付師でもダンサーでもあるのよ。アメリカじゃまだ有名だけどなぁ」
「そうだったんですね…」
伊藤も驚いたように聞いていた。そんな経歴ある人がマネージャーなんてもったいない、と残念だった。
「マコちゃんもダンス習いたいなら、せっかくリクがいるんだからリクに習いなさいよー?全然違うから!78というグループのプロデュースもしてるんだよね?あのグループはいいけど、まだ迫力がないよねー」
「悪かったなー!これからのびるんだよ!」
タイミングよく入ってきたリクに彩はものすごい勢いで抱きつき、首にキスをした。慣れてるのかスルーして彩の隣に座る。
「彩、今、日本なんだー。公演あるの?」
「ミュージカルがあるの!シカゴでやったやつ!」
「あー…あれで痛めたからもう見てないやー。思い出してイライラするし。」
「ケガは?ジョージが会えたら聞いてきてって。」
「治らない。一生このまま。」
瞬時に泣きそうになるリクに、誠と伊藤は胸が苦しくなった。ケガをしていたのも知らなかった。
彩は驚いている誠と伊藤を見てため息をついた。
「リクのことを知らない日本人が多くてビックリしてる。なんで表に出ないの?」
「踊れない奴が過去の経歴だけで、口だけ言っても意味ないだろ」
「ならロスに戻りましょう。ニューヨークでもいい。あたしの拠点のところならみんなリクを待ってる!リクのアドバイスや表現を学びたい人はたくさんいる!」
一瞬動揺したリク。やりたい気持ちと現実的に出来ないことに葛藤しているようだ。
「あたしは1週間日本にいる。ステージも見に来て。あんたが裏方なんてまだ早い。リクはライトを浴びるべきだよ!アメリカに戻ろう?」
リクの手を握って大きな目がリクをしっかりと見つめ、ウインクした後に誠と伊藤を見た。
「マコちゃんも見においで。あんたは人の目を引きつけるオーラがあるから、海外も視野に入れることができる。関係者も多いからスケジュールあえばぜひ。」
ニコリと笑って去っていった。リクは机に伏せて考えているようだった。 リクを1人にして会議室を出た。
「相川さんってめっちゃ大物だったんだぁ…知らなかった。」
「確かに…。ケガって大きいのかな、見た目じゃ分からないな」
リクの顔を見て2人は苦しい気持ちになっていた。
「今、表現出来てることに感謝しなきゃ。」
そう言うと伊藤は笑ってそうだな、と言ってくれた。
今の自分にできることは何だろう、と帰りの送迎車で頭を悩ませる。大河は今路上ライブにバラエティーも頑張り始めた、復帰した優一はやりたかった舞台の稽古に作曲、青木は演技とダンスの表現、レイはバラエティーやラジオでのトーク。
(目を惹くオーラ…)
有り難いことに昔からスカウトが多かった。ただ身長が高いだけかと思っていたが、違うかもしれない。伊藤にお礼を言い、送迎車を降り急いで部屋に戻ると、過去の自分の出たものをチェックした。 トークでは、はっきり言ってアホっぽかった。見ていて恥ずかしいくらいトンチンカンで早送りしたかったが我慢して見ると、好きなものの話だけはまともに話せていた。大河を尊敬していること、恋愛、音楽についてはくどいほど喋ることが分かった。ライブの映像に移ると、歌は人並み、大河みたいに劇的に上手いわけではないが支えられているとは思う。
(あ。雰囲気が変わった)
曲や衣装、セットや映像、ライトに合わせて表情が全く違う。今まで褒められていたものはコレかと理解した。良くも悪くも雰囲気に呑まれるタイプが功を奏したのだ。 特に、ファッションで変わる気がした。メイクやヘアスタイルでモチベーションが変わるのは自分でも自覚はある。自信があるスタイルでは強めに、あまり似合ってないんじゃないか、と思う時には落ち着かないし、最終的にはアイテムを変える相談をしていた。
(ファッションは青木や優くんよりはそんなに興味ないと思ってたや…)
ファッションが好きだと気付くと、すぐに本屋に行き、メンズファッション誌をジャンル問わず買って熟読した。
(あ…青木がタカさんから貰ってたジャケットのブランド…。カッコイイ)
なんとなく、タカとの写真が撮れたらなぁと思った。ならば、とネットで服を数着買って、アピールの為に着て声がかかるのを待とうと考えた。そして、タカにもプレゼント用に買った。
(…相川さんも似合いそう)
今日の葛藤した表情が忘れられず、また1着カートに入れた。
ファッションからデザインまで興味が広がり、こんな色があったらな、とかこの素材ならもっといいのに、と調べたら止まらなかった。ふと、学生時代の成績で美術だけは評価が高かったのを思い出した。
(ちゃんと遺伝してたのかな…)
久しぶりに両親を思い出して苦笑いした。
バンドの練習の日。誠はタカへのプレゼントを持ってきていて、会うのが楽しみだった。ジンと練習しながら待っていると先に優一が入ってきて小学生みたいに元気いっぱいに挨拶され、可愛くて思わず爆笑して抱きしめた。すると後ろから入って来たタカを見て驚いた。
「わっ!タカさん髪切ったんですか!?」
「うん。優一が切ったら似合いそうっていうから。どう?良くね?」
「めっちゃカッコイイー!パーマですか?」
「言うなよ、くせ毛。だからいつも結んでたの。」
少し長めの髪で前髪をゆるくあげているのもカッコイイ。少しゆるふわなくせ毛が動きがあってすごく似合っていた。優一は今のタカがお気に入りなのかぎゅうぎゅうとくっついている。
「タカのファンたちは大騒ぎだよね!本当似合ってるよー!」
ジンに褒められると急に照れたタカは、早くやろうと話を変えた。
夏のコンサートで、サナのソロ曲の演奏も担当することになった。優一が作った曲は転調もあって難易度が高い分、ベースもやり甲斐がある。
「あれ?まこちゃん、めっちゃ練習したでしょ?超上手くなってる!」
優一がクリクリの目を更に大きくして嬉しそうに褒めてくれた。大河や優一に会えない期間ずっと練習したかいがあった。ジンにも前よりももっとやりやすくなった、と褒められ、ご機嫌で練習を終えた。
「あ!タカさん!これ!」
「ん?何これ。俺誕生日じゃないよ?」
片付けを終え、帰ろうとするタカを引き止め、紙袋を渡した。となりの優一やジンもきょとんとして誠を見ている。帰る前に伊達メガネをかけていたタカに、用意した服がマッチするのが想像できて誠はニヤニヤする。
その場で着てもらうと想像以上に似合っていてテンションがあがる。誠も用意した服を着てスタジオの前で優一に写真撮ってもらい、タカにも了承をもらい、最近始めたSNSにアップした。
【タカさんとお揃い。似合ってるでしょ?】
見ていたジンと、写真を撮影した優一は、この写真にカッコイイと大喜びして、ちょうだいと騒いだ。タカはこの服本当に貰っていいの?と最後まできょとんとしていたが、似合う人に着て貰えて嬉しかった。早速大きな反響となり、誠はワクワクした。
「マコの作戦勝ちだな。このブランド好きなのか?」
予想通りにオファーが来て誠は伊藤に抱きついて喜びを噛み締めた。伊藤も嬉しそうに頭を撫で、SNSの良い使い方だと褒めてくれた。
「おはようございまーす。」
後日、撮影スタジオに入って来たのはタカとマネージャーの翔太。
「タカさん!おはようございます!」
「マコちゃーん。このブランドの特集狙ってたんだって?すげーな。」
翔太にもよろしくお願いします、と頭を下げられ、慌てて挨拶した。
衣装合わせでは新作が並べられ、心が躍るようでテンションが振り切っていた。服を見て手に取ると、タカをマネキンのようにしてコーディネートした。
「えっと、タカさんにはこっちがいいと思います。俺はこっちでいいですか?あと、撮影の時はライトもっと落として貰えませんか?…はい、そのくらいです。」
誠は楽しくて仕方なかった。スタイリストと同じ目線で話し、カメラマンやブランドの方とも意気投合し、雑誌の編集の人にも服の魅力を説明するのが止まらない。
「マコさん洋服好きなんですねー!いやぁ嬉しいです!このデザイナーのコンセプトが分かってますね!」
「新作もかっこよくて本当にテンションあがります!本当に嬉しいです!こんな楽しいお仕事…幸せっ!」
スタッフさんたちに可愛がってもらい、良い写真が撮れそうだ、とワクワクする。打ち合わせが終わって着替えていると、着替え終わったタカが隣に来た。その出で立ちはタカのために作られたように着こなしていた。
「マコちゃん、本当すげーな。尊敬する。やりたいことあったら言って。マコちゃんのイメージ通りになるか分からないけど、やってみるから」
タカからも頼られ、ますますやる気が上がる。伊藤も関係者に褒められているようで恐縮していた。
撮影が始まると、自然とスイッチが入る。タカは指示しなくてもコンセプトを理解したのか誠に合わせて表情やポージングをした。 カメラマンと、タカと自分の呼吸がピッタリ合う瞬間が最高に気持ちよかった。
「お疲れ様でしたー!!」
大きな拍手をされ、我に返ると場の雰囲気が良くて幸せだった。メイクしたままで2ショットを撮り、SNSにアップした。今日来た服をスタイリストから購入してウキウキと帰る準備をする。
(楽しかったぁ〜またやりたいなぁ)
ケータイを見るとすぐさま反応があり、ブランドのスタッフも驚いていた。現場にいたスタッフがどこかへ電話で話しだしたと思ったら伊藤と翔太が呼ばれていった。
タカはパソコンを開いて曲の編集を始めたのを隣で質問をしながら見ていた。
しばらくすると2人が戻ってきてやっと帰れると、購入した服を持つと座れと言われた。
(あれ、怒られるのかな…)
不安になって伊藤を見ると、ニコリと笑った。
「このブランドの専属契約が取れた。やったな、2人とも」
「「え?」」
「デザイナーから2人がイメージにピッタリだと。」
翔太も嬉しそうに笑い、良くやったと褒めてくれた。
「えーー!!ありがとうございます!!」
全力で頭を下げると、タカと伊藤と翔太が噴き出して爆笑していた。
次回の撮影は楽器を使うと聞いてタカもほっとしたようだった。誠はすでにつぎの構想を練っていた。
「マコー?」
「わぁ!大河さん!おかえりなさーい!」
「すげーな、ファッションショーでもしてたのか?服片付けろよ」
「あはは!本当だ散らかしちゃってた。大河さんあのね、このブランドの専属契約できたよ!」
大河が雑誌を除きこんでどれどれ、と見たあとガバっと顔を上げた。
「マジかよ!すごいな!」
「えへへ」
「このブランド外国人モデルしかみたことなかった…日本人のくせにお前〜!」
ぎゅーと抱きしめられ嬉しくなる。タカも一緒だと伝えると、SNS効果か?とすぐにバレた。大河は誠の出演したものやSNSなど全てチェックしてくれている。それは忙しくても時間があっても必ず続けているそうだ。そして、必ず自分のお金で雑誌を買ってくれるのだ。
「お前の活動増えると物が増えちゃうよ…。嬉しい悲鳴だけどな?」
最近良く見る優しい笑顔。この笑顔に弱い自覚はある。大河はそんな誠に気付かず発売日を調べ始めた。
「マコ、最近なんか大人っぽいよなぁ?」
「そうかな?…でもよく言われる。老けたかな?」
「んー…老けたっていうか、大人。ほら、タカさんと写っててもお前負けてない」
調べていると思ったら撮影後にアップした写真を見ていたようだ。思わずクスクス笑うと、大河はこちらを見てぼーっとし始めた。
「負けてないってなーにー?負けてたの、今まで」
「ちがう。ほら、大人っぽさ?」
まだ顔を観察されてることに照れて目線を外すと、ゆっくりと大河の顔が近づき、唇を重ねた。驚いて少し開けた口に温かい舌が入ってくる。内腿に手を置かれてさらに身体ごと近付いてきた。
「ん…っ…ふぅ…」
薄く目を開けて見つめ合いながらゆっくりと味わうようにキスをする。気持ちよすぎてお互い息が上がっていく。
「は…っ、ふふ…今のキス…なんかさ、初めての時のキスみたいじゃない?」
顔が近いまま懐かしそうに笑う大河に理性がとんだ。そのまま床に押し倒して貪るように唇に噛み付いた。キスしながらシャツを脱いで、大河のニットの中に手を入れるとビクビクと跳ねた。
「はぁっ…大河、大河…」
「ンッ!、マコ…ッ、」
先に惚れたのは誠だったが、2人の関係を進めたのは大河だった。引っ張ってくれていたことや、まだそばにいてくれていることに想いが溢れた。大河の両手が誠の首の後ろで組まれ、口を開き真っ赤な舌を伸ばして誘う。大河の仕草、一つ一つが、欲しいのは自分だけじゃないんだと、安心して舌を味わう。
(すごく…甘い。)
味わうようにキスに没頭していると、大河が首から手を離し、誠の内腿を撫でる。そこには触れずに何度も触れる手に我慢出来ず、自分のものを全て脱ぎ、大河の顔に硬くなった熱を近づけると、熱に浮かされた顔で口を開けぺろぺろと先端を舐めたあとパクンと咥えた。
「はぁっ…っぁ、ぁっ…大河っ」
「ンッんぅ…んぷっ…ぅんっ」
温かい舌が気持ちよくて少し腰を振ると苦しそうな声がして、ギロリと睨まれた。口から抜いて大河の服を脱がせ、ベッドへと誘う。裸でベッドにいるだけで鼻血が出そうなほどエロい大河をうつ伏せにして肩から背中、腰を舐める。腰にきた時にビクビクと跳ねる様子に新たな性感帯を見つけ、舌舐めずりした。
「腰…気持ちいい?」
「知らないっ…なんか、身体が…っ、勝手に…!アッ、んぅっ!」
「細いね、すごく綺麗。」
「んぅうっ、やだぁ、ヘン…ヘンだって、腰」
「マッサージの時もエッチな声でちゃうの?」
「はぁっぅ!ンッ、出ないっ…」
腰が跳ねるたびに、プルンと揺れるのが興奮する。足を開かせると期待した目で見つめてくる。
「マコッ、我慢できないっ、マコ、」
「ん…ならすね」
ローションで濡らした指をそっと奥に差し込むと背が反り返って絶叫が聞こえた。
「大河大丈夫?」
「はぁっ!ぁああ、なん…っで、ヤバイっ、」
「気持ちいい?」
「こわいっ」
怖いというセリフに驚いて指を抜き、顔を見ると見たことない色気で震えている。
「どっか、いっちゃいそ、わけ…わかんなく、なりそう…マコ、ヘンだ、おれ、ヘン」
焦点があってないように見える大河の目からは今にも涙が零れ落ちそうだ。今日は一段と敏感になっているのか、大河自身もどうなってるのか分からないようだった。怖がらせないように、とゆっくりゆっくり中に1本だけ入れると、ぎゅーっと手が白くなるまでシーツを握り、グググッと上半身が浮いた。
「ダメッ!なんか、おかしい!マコッ、こわいっ!マコッマコッ!!!」
ついに泣き出した大河の頭を撫でて、容赦なく2本目を入れるとガクガクと足が揺れた。
「マコォッ!!ーーっ!!ッぁああーー!!」
ビシャビシャとシーツにぶちまけ、一気に弛緩した。まだビクビクと跳ね、大きく呼吸をした。
「大河…?大丈夫?」
「はぁーっ、はぁーっ、はぁーっ、はぁー…は、は、はぁ」
「大河、こっちみて」
「は、は、は、」
「ゆっくり呼吸して。大丈夫だよ」
「ふぅ…はぁっ…ぁ…マコ…おれ…?」
やっと目が合い、どうなったか分かっていない大河にニコリと笑い、入ったままだった指をクンッと動かすと目を見開いた後、シーツを強く握った。
「どーしたの、今日。敏感すぎない?」
「知らないっ、おれ、だって、知りたいっ、ああああー!!ッやだやだ!!マコ、止まって、やめて!!」
弱々しい手でなんとか動かすのをやめようとするが、無視して3本目を激しく抜き差しする。誠ももう入れたくて限界だった。いつも以上に叫び、善がる大河を早く味わいたくて、指を抜き穴に擦り付ける。
「あ…っあ、どうしよ、マコが入ったら…ッおれッ、」
泣き出しそうな顔さえも色っぽくて一気に奥まで突き立てた。
「アーーーッ!!!」
「くぅ!!はぁ、ヤバイ」
ビクビクと跳ねるのが腰を振ってるみたいで誠も瞬時に追い込まれる。またシーツにぶちまけた大河を気遣う余裕もなく、細い腰を掴んで叩きつける。動物みたいに一心不乱に腰を振って奥の奥を目指す。
「はぁーー!!ッ!!マコォッ!まこぉ、ッ!」
「大河…ッ、気持ち、」
ギシっギシっと鳴るベッドが余計に興奮を煽る。顔が見たくなって一度抜いてひっくり返すと涙と涎でぐしゃぐしゃの大河。子どもみたいに泣きじゃくり、顔を真っ赤にして、腕で顔を隠した。
「大河…?ごめんね、きつかったね」
「うっ…ふぅっ、っぅ、ぅ」
「大河さん、ごめんね、余裕なかった」
「ちがう、ちがうよぉ、まこぉ、ちがう」
舌ったらずで泣きながらちがう、ちがう、と言う大河に困ってそっと抱きしめる。
「よしよし、少し休もうか」
「ぅぅ、っ、ちがう…っ、てばぁ」
「どうしたの?」
「まこ、に、好きって、っ、言いたいのに、っ、気持ちいいに、負けて、言えなくて、伝わって、ないかもって、っ、思って、でも、不安なのに、イきたいって、しか、考えられなくて、おれっ」
気持ちが快感に負けたと思って嫌だったようだ。あまりの可愛さに顔中にキスして慰める。快感を送ったのは他でもない誠なのに、その誠に気持ちが伝わってるか不安だなんて幸せしかなかった。
(めちゃくちゃ愛されてる…)
落ち着いてきたのか、大河も首筋に舌を這わせてきた。泣いた目がウルウルしたままで可愛くてそのままにする。首にかかったリングにキスしたりして嬉しそうにしている。頭を撫でていると、下から大きな目が見つめてきてドキッとする。やっぱりこの顔に1番グッとくる。ヘラっとしてしまう顔を頑張って引き締めていると、大河の舌が胸の粒に伸びる。
「ンッ!大河?」
「んぅ…ちゅぅ…っ」
ちゅぱちゅぱと吸い付いてくるのが可愛くて首筋や髪を撫でる。赤ちゃんみたいなのにエロくて目のやり場に困る。特には快感にはならないが視覚的にくる。大河は恍惚の表情になっていき、自分のを弄り始めて焦る。
(どうしよう、大河さん女の子抱いたらハマっちゃうかも)
心配になって顔を離させると不満そうに見上げてくる。
(うっ!可愛い)
「マコ、だめ?」
「いいよ」
思わずOKを出すと、物凄く嬉しそうに笑い、また大きな口を開けてちゅぱちゅぱとしゃぶり始めた。
(嘘でしょ、大河さん。おっぱい好き?)
悔しくなって、自分のを弄っている大河の手を取って、ローションをつけ、大河の指を大河の中に入れると、口を放して大きく喘ぐ。 目の前で快感に溺れる顔を見て堪らない気持ちになる。大河は自分で指を抜くと誠の肩に両手を置き、首筋に顔を埋めて甘え始めた。
(可愛いー!もういいかな、いただきます!)
大河を持ち上げた後、ゆっくりと手を離すとズズッと入っていく。
「あっ!マ…コ、ッぁああああああー!?深い!マコ、奥きてるっ!んぅーーっ!!」
「はぁっ、気持ちよすぎっ」
「あっん!んぅ!はぁっ!あ、あんっ!イイッ!あ、気持ちっ、ヘン!ヘンになるっ!」
「ココ?」
何とか逃げようとする腰を固定して突き上げると肩に爪を立てて頭を振るのが興奮を煽る。
「はぁっ!気持ちぃ!マコの、が、気持ちぃとこ、擦ってるっ!今のして、もっとぉ!」
完全に快感に落ちた大河は舌を出してキスを求めながらおねだりしてくる。欲に濡れた目は誠しか見えていない。
「はっ、んちゅぅ、っは、はぁ、やばっ、えろっ、もっと?ここ、シてあげるね、しっかり、捕まって」
「やっ!?ぁっ!あっ!マコぉ!!はぁ!ダメッ!!っぅああ!ーーッ!!あぁあーー!!」
何度も絶頂を迎えて大河は突然ガクンと意識を失った。
大河の後処理をして風呂から上がると、大河はまだ夢の中だった。泣いた目が少し腫れて赤くなっているが、気持ち良さそうにすぅすぅと寝息を立てていて自然と笑みが浮かぶ。 誠が布団に入るとすりすりと寄ってきてまた寝息を立てた。
(はぁ〜〜!!可愛いすぎ!!本当に年上なの!?可愛いすぎる)
唇に指を持っていくと、自然に口に咥え、ちゅぅと吸い始めてゾクとしたところで慌てて抜いた。すると口寂しくなったのか、自分の指を口に持っていったところで大河が薄く目を開いた。
「おはよう」
「ん……?…おはよう…。」
「大丈夫?まだ寝てていいよ?」
髪をサラリといじると長いまつ毛が潤んだ目を隠した。
「まこ?…まこすきだよ。かっこよくなってるから、しんぱい」
「え?」
「かっこいいのどきどきして、だいすきだけど、ほかのひとに、いっちゃ、だめだよ」
目を閉じたまま言うのが寝言かもしれないし、本心かもしれないが嬉しくて堪らない。
「きゅうに、おとなになって…おいてかないでよ」
不安だったのか、と抱き寄せるとすやすやとまた深い眠りに入った。年上彼氏の可愛さが爆発したある日の夕方だった。
ブザーが鳴って、ざわついていた会場が静まり返る。誠は大河の公演を見た時を思い出して少し緊張していた。この間は1人で観劇したが、今回は同伴者がいることも緊張する原因の一つである。
78のマネージャー相川リクが隣で足を組んで座っている。伊藤は優一の稽古に同伴したため、1人で行く予定が伊藤が勝手にリクと行くように手配していた。ダンサーの彩への挨拶も兼ねて、ということだろう。
相川リクが世界的に有名なダンサーだとは知らずに過ごしていた誠はさらに緊張した。
「緊張しすぎー。気が散る、普通でいいから。俺なーんも気にしないタイプよ」
「あ、すみません…」
「マコちゃん、しっかり見ときな?これはなかなか見られるもんじゃない。エンターテイメントショーだ。これが、本場よ。」
ニヤリと笑って嬉しそうに視線を前に向けた。怪我をしてから見ていない、と悲しそうな顔で言っていたのを心配したが、今は楽しみを堪え切れない少年のようだった。
大きな音がなり、全員が動き出す。構成や動き、演出、音楽、全てが会場を圧倒させ、楽しませた。彩は外国人ダンサーの中でも劣らず、のびのびと自由に表現していた。
(すっごい!!カッコイイ!!)
カーテンコールで観客が立ち上がって大きなは拍手が鳴りやまない。誠も自然に立ち上がっていた。拍手が落ち着いてくると隣に気づくと立たずに俯いていた。
「相川さん…?」
「…悔しいな…。見せつけてきやがって…。悔しいくらい、いいショーだった。」
左手で右手を強く握るのを見て反射的にその手を取った。 目が合うと、はっとして誠の頭をぐしゃぐしゃにして立ち上がった。
「彩のところ行くぞ。」
「はい!」
リクは慣れた様子で裏に行くと、見かけたダンサー達がリクを見て大騒ぎになっていた。英語で笑って話すのがかっこよかった。なにやら紹介してもらっているようで慌てて挨拶をする、というのを何度も行った。
「ふぅ…やっと着いた。あーやー!お疲れー!」
「わぁお!リク!マコちゃん!きてくれたのねー!」
ハグとキスされて真っ赤になる。そんな誠には気付かない2人はショーの話で盛り上がっていた。
「悔しいくらいイイショーだったよ!やるじゃん!」
「どう?リク!やりたくなったでしょ?」
「だーかーらぁー!やりたいけど動かねぇの。…本当にいいな…。今の俺はこのステージに立つことさえ想像できねーよ。俺の役のマイケル?あいつイイな!めっちゃ良かった!」
「会ったの?あの子はマコちゃんと同じ年かな?若いけど努力家よ。あんたに憧れてうちに入ってきたの。リクの役は僕がってね。何度オーディションに落ちてもチャレンジしていたわ」
彩が笑うと、リクも嬉しそうに下を向いた後、少し黙って顔を上げた。
「彩、俺は日本に残るよ」
「どうして!!?このチームにはあんたが必要よ?マイケルはあんたからの指導を楽しみにしてる!」
「それは…正直、本当に嬉しいし、報われたような気持ちだよ。ありがとう。」
なら!と大きなリアクションで問い詰めている。誠は圧倒されてみていることしかできなかった。
「ほっとけない、奴らがいる。彩も言ったろ?まだまだ迫力が足りない。あいつらが楽しそうにダンスしてるのを見て、俺はまだこの業界にいる。あいつらがどこまでいけるか、見てみたいんだ」
リクの言葉に誠は自分のことかのように胸が締め付けられるような気持ちになった。こんなに頼れる人が78を支えているんだと初めて知った。
「…正直、ずば抜けたセンスは感じないわ…。あの小さい…ルイ?あの子は伸びそうだけどパワーばかり。あとセンターの子、あの子は真面目で型にはまりすぎている…リクの技術とはあまりにも差がある。リクはあたし達と一緒にいた方がいいわ」
彩はつまらなそうにタバコに火をつけた。自分が少し吸ったあとリクに口紅がついたタバコを渡し、リクは何でもないようにそれを吸って煙を吐き出した。
「カッコイイこと言ったけど…。ただ恋人と一緒にいたい」
「ふふっ!あはは!そんな事だろーと思った!」
「俺が行くって言ったら、あいつはきっと全部を捨てて俺についてくる。今までもだいぶ待たせし、優先してくれてたから…今はただあいつのために、そばにいたいんだ」
蕩けるような笑顔で言うリクに誠はドキッとした。なんとなく、大河の優しい笑顔に似ていた。
彩はそのリクの顔を見てあはは、と笑った。
「あーあ。あたし、リクのこと狙ってたのに」
「あははっ!そうなの!?残念だったな!…うそうそ。彩?ありがとうな。嬉しかったよ」
「マコちゃんフラれたぁ!慰めてー!」
泣いたような演技をしながらハグしてくるのを受け止めて、よしよーし、と慰めてやるとまた大きな声で笑っていた。
その後はショーの感想などを話した後、彩がバックステージを案内してくれた。道中でスタイリストや監督に声をかけられていると、彩が本当に目を引くわね、と言ってくれて嬉しかった。ステージに上がると照明が面白くて口を開けてみていた。
「あー!これ!マジ気をつけろってー!また閉まりきってないじゃんかよ!」
リクが突然大声で怒り始めた。閉まりきっていない奈落。落ちてしまったら危険な幅に彩は慌ててスタッフに声をかけていた。
「見て、マコちゃん。この小さなミスがさ、本番中には取り返しのつかないことになる。これで…俺は一生踊れねぇのよ。ありえねぇだろ?…たったこれだけで…って何度も思ったよ。なんて脆いんだろうな…人間て」
笑いながら、それでも悔しそうにつぶやくリクに心が痛んだ。それでもこの業界にいるのは、きっとこのエンターテイメントの仕事が好きなんだろうな、とも思った。
「…そうだったんですね…。脆いからこそ、人は心動かされるものに惹かれるんでしょうね」
何となく、そうだと思って言った言葉に、リクが目を見開いて固まった。地雷を踏んだのか、と慌てると、リクは花が咲いたように笑った。
「それもそーだな!!」
大きな声で言ったあと、リクはステージの真ん中に立って息を吸った。トントン、とつま先でリズムをとったと思ったら柔らかな表情で踊り出した。戻ってきた彩は目を奪われ、先ほど挨拶したメンバーたちが続々と集まってきた。メイクも衣装も来ていないそのままのリクの無音でのダンスは、なぜかショーの1シーンのように目を惹くものだった。 踊りきって無人の客席に向かって深くお辞儀をすると舞台袖や後ろから大きな歓声があがる。彩が声をかける前に、長身で金髪の若い男の子がリクを抱き上げた。先ほど言っていたマイケルだと分かった。やっと出会えた恋人との感動の再会のような雰囲気だ。マイケルはゆっくり降ろすと強く抱きしめ、しばらくリクはマイケルの胸の中に大人しく収まっていた。英語でリクが何か言うと、さらに強く抱きしめられていた。
「相川さん、マイケルに何て言ったんですか?」
行きは運転してもらっていたが、帰る直前に代わってくれと頼まれ、快く了承して、リクの車を運転しながら話しかける。
「んー?お前に任せた、って言った」
煙を吐き出しながら、思い出し笑いしている。あのあとマイケルは大興奮して号泣していたのだ。みんながリクを求めているのを断ってまでそばにいたい恋人が気になった。
「相川さん、恋人のこと大好きなんですね!」
「そりゃそうでしょ。これ以上迷惑かけられないよ。あいつには頭上がんない。」
「ふふっ。愛されてますねー彼女さん。結婚しないんですか?」
「結婚?んー?しないかな。女じゃねーからできない、か。」
「え!?」
自分たちを棚に上げて驚く。自分たちが普通ではない、と自覚があるからこそ、こうしてサラッとカミングアウトされると動揺した。
「あ、お前らのことは知ってるから。俺も女じゃなくて男〜。いい男よーあいつは。あんなにできる男なのに、俺を選ぶなんてなぁ…。ふふっ!あいつもへんなやつよ」
急にでれっとして話し始めたリクに誠まで嬉しくなった。恋人が大好きなんだ、とハッキリ分かるぐらい溢れ出ている。
「あいつはね、本当に俺のために生きていると言っても過言ではない。自分のやりたいことが、俺がやりたいことを自由にやらせること、だってよ?俺がやりたいことは、こいつといること。だからアメリカには行かずにこいつと日本にいる。あいつにも大事なものはあるから」
蕩けるような笑顔で言うのが可愛いくて思わず頭を撫でると、ナメてんのかコラと怒られた。
「マコちゃんもさ、大河大事にしてやれよ。…しかし、大河おとすなんてすげーな。気難しそうだし、ワガママそうだし、でも高嶺の花、っぽいしな」
当たっています、とクスクス笑う。そうだろう、とリクはドヤ顔をして満足そうだ。
「今でもそばにいてくれるのが奇跡だと思ってます!本当に…可愛くて仕方ないです」
「うはは!お前テレビでも言ってたよなぁ?ウケる!無視されたり流されたり…やっぱ大河はドSなの?」
「いや…全く。俺がドSって言われてます」
そう言うときょとんとして顔を見ている。恥ずかしくなって見ないでください、と言うとMっぽいのに…と呟いた。
「なんか…優男に見えるやつってSなんかなぁ?俺のやつもスーパードSよ。数々のオモチャで虐め抜かれてるからね。」
「ぉ、オモチャ!?」
「あれ?まだないのー?やべぇよ、マジぶっ飛ぶから。気付いたら朝だし。まぁでも最高に気持ちいいし、ハマる。俺だけに見せる凶暴さもさ、あー…抑えきれないんだろうな、と思うとゾクゾクするわけよ。しかも逆に何も使わない時が新鮮でドキドキするから堪らないんだよなぁ〜。たまにはオモチャいいんじゃね?」
何でもないように話すリクと真っ赤になる誠。リクは誠を見て爆笑し、童貞か!と突っ込んだ。
「なぁ〜?誰にも言わないから大河どんな感じなのか教えて」
ニヤニヤしているリクに負けて最近のものを思い出す。
「最初は恥ずかしがってましたが、最近は指だけでもイきますし…この後はめっちゃ俺の乳首しゃぶってました」
「あっははははは!可愛いー!大河可愛いー!授乳大河!?やっば!!俺も授乳してあげよっかなぁ」
「ちょ、しーっ!内緒ですよ!この間突然だったので…ビックリしちゃいました。でも本当可愛いかったです!」
「やばい…もう大河にみたら母乳あげたくなるわ…俺のもあげていい?」
「ダメに決まってます!もう!」
一気に距離が縮まって後半は夜トークで盛り上がった。事務所に行くと、紙袋を渡し、あげます、と言うと、タカ同様きょとんとしていた。
「相川さんに似合うと思って。」
「ありがとう。めっちゃ好きなブランドのやつ。…確認だけど、お前は大河が好きなんだよな?」
「??はい?そうですけど。」
「だよな!はは!じゃ、遠慮なく貰います!ありがとう!あと、彩のこと誰にも言うなよ?俺の彼氏は嫉妬深いからこんなプレゼントや、彩に告白されたとか聞いたらマジで俺がヤバイから。な!OK?」
「はい!」
車を停めて運転席から誠が降りると、長谷川が事務所入り口で待っていた。
「長谷川さん、お疲れ様です!」
「お疲れ。運転ご苦労さま。ありがとうね。」
「?はい」
「リクは?」
「わっ!!」
驚かそうと隠れていたリクは大きな声で出てくるも、長谷川はハイハイ、と鍵を受け取った。
「マコちゃん、響くん、事務所の中にいるからね」
「はい!ありがとうございます!」
「マコちゃんバイバイ!」
テンションが上がったままのリクの肩を抱いて車に乗せると運転席に長谷川が座ってエンジンをかけたところで、リクが濃厚なキスを仕掛けていた。
(え!?相川さんの恋人って…長谷川さん!?)
キャー!と心の中で叫んでリクの話を思い出す。
「長谷川さんドSなんだ…」
嬉しそうに話していたリクを思い出して、誠はオモチャもみてみようかな、とケータイでリサーチをはじめた。
「わぁ!相川さん!めっちゃ似合うー!」
「だっろー?お前さ、俺抱いたのか?ってくらいサイズピッタリ!すげーな!…あ。」
「リク、おいで」
「…え〜…」
次の日に早速着てくれたが、喫煙所に連行されていったのを苦笑いで見送った。
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