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第68話 一線

「大地っ!昨日のリクさんの見せて!」  慌ただしくスタジオに入ってきた翔に驚きながらも昨日のダンスバトルの動画を準備した。練習で体験したようなダンスバトルではなく、本当に自信がないとできないステージ。そんな中でもリクに会場が引き込まれていくのを味わって鳥肌が立ちっぱなしだった。  「愁さんだけずるい!まぁー恋人のラストステージなら休み取るわな。」  「え!?」  「リクさんと愁さんラブラブよ。リクさん追ってうちに入ったらしいし。」  昨日もそばにいたのはそう言うことかと、納得した。動画を見る翔はすげー!と叫び、釘付けになっていた。  今日は映画から派生したユニットの振り付けがあり2人だけが集まった。ストレッチしながらも動画を何度も見返している。  (研究熱心なんだな、意外に)  リクに絶賛されていた翔は、小さなことにもとことんやる、そして時間がない分、すぐにインプットできるように訓練しているそうだ。  歌いながら踊るのにも慣れて来て練習を重ね、スキルアップしていくと次の課題として、何度も翔からダメ出しされ、その都度ケータイにメモをした。また曲を止められてアドバイスを受けていると、ふと翔の肌に目がいき、頬を触った。  「っ!?…な、なんだよ…っ」  「あ…ごめん。手が勝手に」  やめろよ、と言うのが本当に嫌そうで謝って、前との違いを感じた。  「翔くん、好きな人できた?」  「はぁ?!お前さ、練習中に何言ってんの?真面目に練習しろよ!!」  結果、めちゃくちゃ怒られた。 忙しい翔は次までに直しといて、と次の現場へと飛んでいってしまい、スタジオの片付けはゆっくりと青木だけで行った。 午後からオフになったので久しぶりに正樹の部屋に行くと、相変わらず、室内で突風でも吹いたかのような物の散乱具合に呆れた。  (全く…)  キッチンを片付けた後、バスルームに入ろうとした時、化粧品やピアス、女性物の下着、可愛いブラシやピンクのドライヤーを見て、固まる。  (ま、まさか。…え?)  慌てて玄関に行くと、散乱して気がつかなかったが男物の靴の中に、小さなサイズの女性用の靴。ドクドクとうるさい心臓にどうしたらいいか分からず玄関に立ち尽くす。  (ま、舞ちゃんか?) ショックを受けて部屋に戻ろうとすると、寝室のドアが開いた。  「っ!?ど!どちらさまですか!!」  前見た舞ちゃんとは雰囲気が違って何も答えられずに立ち尽くす。  「お、お兄ちゃんに何かようですか!?」  「お兄ちゃん?」  「え…あなた…。えっ!?うわ!RING?」  「あ、えっと、RINGの青木大地です。驚かせてしまってすみません。お兄さんのお友達で…」  キャーと言い、部屋に戻ってしまった。慌て青木も部屋に戻り、正樹に連絡をした。  『はいはい?』  「正樹!妹さん来てる?」  『あぁ。会ったんだってな?パニックになって連絡来たよ。ふふっ、あいつさ、RINGの大ファンなんだよ、サプライズしようかなぁと思ってたんだ。』  「俺もビックリしたよ…舞ちゃんかと思った。」  『舞ちゃん結婚したよ。』  「え?」  詳しくは後で、と電話を切られた。正樹が帰ってくるまでは一日中のんびりとノンタンと遊び、動画を撮っては優一に送り、稽古の後にでも見てもらえるように準備した。  (そうだ!妹さん誰のファンなんだろう?)  そう思って聞くと、誠と大地らしく、誠も呼び出し、青木の部屋で食事をすることにした。  「ノンタン、おいで〜。あらまぁ向こう行っちゃった。」  「ノンタン好き嫌いあるんだよね。なんだろ?たぶん人見知りだから大丈夫。翔くんにはめちゃくちゃ威嚇してたよ。」  「俺動物飼ったことないから、居心地悪いの分かるのかも。」  苦笑いして青木の準備を手伝ってくれた。  ピンポン…ピンポンピンポン  しつこく鳴らされクスクス笑い、誠にドアを開けるように言うと素直にドアに向かった。  「こんばんは、いらっしゃい」 ニコッと誠が笑うと、マンションの廊下中に響く悲鳴に正樹が妹の口を押さえて入ってきた。  「待って!やばい!やばい!イケメンすぎるっ!」  大興奮している妹、吉田エミリはボブの髪をふわふわさせながら正樹にくっついていた。  「マコさんこんばんは。正樹です。こっちはエミリ。この間高校卒業したばっかりで、今春から大学生。」  「エミリちゃん、こんばんは。大学も頑張ってね。」  「〜〜!はい!」  リアクションが可愛くて誠が頭を撫でると顔が真っ赤になった。キッチンに到着すると更に青木に驚き、笑って挨拶すると、倒れそうと返事が来た。  「お兄ちゃんの人脈やばすぎ…」  正樹の後ろから顔をだすエミリは正樹にそっくりだった。有名な女子大に通うというエミリに誠も大地もたくさん質問をし、慣れて来たのか、たくさん話し始めたのをうんうん、と聞いてあげた。  「お兄ちゃんが舞ちゃんと別れて本当に嬉しいです!私の家族はみんな大反対してました!」  「僕の話はいいから…」  「結婚式の招待状を実家に送ってくるなんて、本当に信じられない!お兄ちゃん、世の中には良い人いっぱいいるんだからね!」  「お前に言われたくねーよ!兄ちゃんより年上はダメだからな!」  そう言うと誠は、あー残念、と笑って言うとお兄ちゃんのバカと怒っていて可愛い。  「私、RINGのツアー最終日に行きました!行く前にお兄ちゃんがメンバー覚えるくらいメッセージしてました!私のお友達がユウのファンなんですが…近くにユウのアンチファンがいてずっと泣いてました。直接文句も言われたりして、聞かないフリしよって、言ったんですが…。でも、最後はユウがめっちゃ近くに来てくれてファンサもしてくれてお友達が一生ユウについて行く〜って満足そうでした!」  あのストーカーファンのせいでファンも苦しんでいたのを知り、誠も眉を下げた。そして優一が復活すれば、エミリのお友達ももっと幸せになる、と青木と誠は頷いた。 「前もエントランスでユウのアンチが待ってたよ。大地ファンなんだろ?」  「ん、まぁね。」  「大地ファンはみんなこうなの?」  「私、正直大地さんのファンって言うの怖いです…。みんな本気なので。あ、本気っていうのは、その…彼女みたいな好き?なので。私はマコさんと大地さんが一緒にわちゃわちゃしてるのが好きなんです!」  鼻息荒くいうエミリに2人は爆笑してありがとうと言った。正樹はもぐもぐとお皿を空にしていった。  「あ、お前はじめ、大河嫌いだったじゃん」  「もう!お兄ちゃんやめてよ!」  「マコを独り占めしてるー!って」  「あの時は幼かったの!」  顔を真っ赤にして正樹を叩き、誠はそんな分かり易かった大河にデレデレしていた。  「レイのファンの皆さんはめちゃくちゃ面白いです!レイがかっこつけた写真は心臓に悪いって言ってました。大河のファンは長年ファンみたいで怖いです。最近は新規が増えたんですが、古くからの大河ファンが怒ってます」  ファンからの事情を聞き、2人は伊藤にも伝えなきゃ、と真剣に聞いた。エミリが明日帰るそうでみんなで写真を撮って解散した。  にゃー…にゃー… (ん…ノンタン?)  ノンタンの鳴き声がして、いつも眠る青木の近くにいるが遠くから聞こえる。リビングは消したはずなのに灯りがついていた。  「あ、ごめん。起こした?」  「正樹」 ノンタンと遊ぶ正樹に、青木は近寄ってキスをした。ソファーに押し倒してしばらくキスをした後見つめ合う。ノンタンは眠かったのか寝室へと歩いていった。  「大地…。」  「舞ちゃんの結婚式の件?」  「…そう。」  「行くの?」  大きな目に涙が溜まるが溢れることはなかった。目を逸らし、分からない、と呟いた。  「大地、苦しいよ。も、僕が下でいいから全部、忘れさせて。」  「うん、分かった。」 また深いキスをして服の中に手を入れる。ゆっくり脱がしあい、まだ反応していないものを、口に含むとビクッと跳ねて、甘い吐息を漏らした。正樹は青木に舌技になす術なくどんどん高みに連れて行かれる。青木は手に持ち替えて、クチュクチュとならしながらローションを探すと、正樹がカバンにあるといい、真新しいそれを開けた。  「はっ!…冷たい。何か言えよ。」  「はは、ごめん。」  少し緊張している正樹を落ち着かせるようにまた舌で愛撫すると、はっはっ、と気持ちよさそうに息を吐いた。その間にゆっくりと指を差し込むと、息を詰めるのを激しい愛撫で無理矢理呼吸させた。  「大地っ、だいち、」  「大丈夫だよ正樹。俺が全部忘れさせるから」  ポロッと涙が落ち、心配になって顔を見ると恍惚の表情で見つめていた。  (大丈夫そう、かな。)  時間をかけて、ゆっくりと筋肉をほぐす。途中何度も萎えたものを扱きながら何とか解れた気がする。次は中で気持ち良くなってほしいが、今は繋がって安心させたいと、青木は自分のものにローションをたくさんつけて孔に擦り付けた。  「正樹、いくよ?」  「っ、ん、…大地…大地」  「大丈夫。俺が責任とるから。」  腰を掴んで奥に入れると、正樹から絶叫があがる。腕をぎゅっと握りしめて、すっかり萎えたものを手で激しく扱く。  「正樹、あと少し」  「はぁっ、はぁ、ぁっ、は、」  「ん…きっつ…」  青木もぎゅうぎゅうと痛いほど締め付けられ、汗がポタポタ落ちる。正樹も痛みに耐え、ぎゅっと目を閉じていた。 「はぁっ、は、入ったよ」  「…っ、ぅ、…ふぅ、」  「泣かないで正樹。」  ボロボロも涙が止まらない正樹にキスをして落ち着かせる。そうとうな覚悟をしてくれたのが分かり、ありがとうという気持ちを込めて何度も何度も愛を囁いてキスをした。 「大地、ぼく、間違ってないよな?」  「間違い?」  「僕は間違ってないって言って、男同士でも、受け身になっても、ぼくは、ぼくは…」  号泣しはじめた正樹の頭を撫でて抱きしめる。何でもないふりして悩んでいたのだろう。お互いの好きな人を忘れるためだったが踏み外したのでは、と思いつめていたようだ。  「正樹」 「誰にも、言えなくて、っ、周りの目が怖くて…でも、お前にハマっていくのが分かって…後に引けないのに…っ」  「…」  「怖いよ大地。僕ら間違ってないよな…?好き同士なら…いいんだよな…?」  優一を傷付けた言葉が今になって自分に突き刺さる。そして正樹も、中の痛みと、心の痛みで泣いてしまった。責任を取ると言ったのに言葉にならない自分を叱咤して、目の前の愛しい人を安心させたいと見つめた。  「正樹。間違ってないよ。誰が誰を好きになっても周りは関係ない。」  「ぅっ、…ふっ、ぅぅ、」  「俺は正樹がそばにいてくれて、嬉しいよ。好きになった人が男だっただけ。それだけのことだよ。」  嗚咽までする正樹の頬にキスして、萎えないままの自分に苦笑いする。ハマっているのは自分もだ、とゆっくり腰を引くとまたぎゅっと目を閉じてしまった。  (せめて、気持ち良くなってほしい)  翔を抱いている時には優一のことで頭がいっぱいで考えたこともない思考で溢れた。正樹がイイところを探そうとゆっくりと出し入れをして角度を変えた。  「あああっ!?」  突如高い声が上がり、2人はパチクリと目を合わせた。正樹もきょとんとしている。  「正樹?」  「えっ?あ、僕?僕の声?」  「ふふっ、可愛い。正樹、気持ちよくなろうね」  まだきょとんとしている正樹が可愛くて微笑む。先ほどの場所を優しく刺激すると、瞬時に顔が変わった。  (あ…やば…!エロすぎ)  「ああっ!待って!待っ!あぁあ!うそだろ!?」  「はぁっ、気持ちい?」  「分からないっ、んっ、んぁあっ」  青木の肩を握り、真っ赤の顔で背を反らす。萎えていた正樹のものはギンギンに勃ちあがりほっとした。  「はぁっ、やば、っ、何コレ…っぁ、」  力も抜けて動きやすくなってきた。正樹はまだ戸惑っているようだったが、何も考えられないくらい快感に浸って貰おうと、敏感で弱いソコだけに集中して攻めた。  「っ!??ーーッぁああああっ!はぁっ!んあああっ!」  ビクビクと腰が跳ねて、表情から見て理性は飛んでいた。顔を火照らせ、何も話せずひたすら喘ぎ声も漏らし、快感に全てを支配されていく。  「ああっ、っはぁっ、んっんっ、んっ、ぁっ、あっ、あっ!」  首を振って腰を引き出したのに、イきそうな雰囲気に嬉しくなる。好きな人のこんな姿がここまで幸せな気持ちになるのかと、胸がいっぱいになる。  (正樹、俺が全部受け止めるよ。正樹の不安も気持ちも全部。)  「いやだっ!あっああっ!大地っ!大地待って!」  「正樹、大丈夫。大丈夫だよ。越えても大丈夫。一緒にいこ。」  今にも出そうな正樹のを掴み、ゆっくり握ると泣きそうな顔で首を振った。その表情にもゾクゾクして、安心させるように抱きしめた。 「大丈夫。正樹、いくよ?」 「っぁ、っああ!?ッ!ああっ!あぁあ!っん、こわいっ、っ!」  「正樹、好きだよ」  「ああっ!っ、あっ、ーーーッ!!っ!」  「くっ、っぁ、…ッ、ーーッ」  気持ち良さに慌てて引き抜いて正樹のお腹に吐き出した。息を荒くしてぼんやり見る正樹にゾクゾクして舌を絡めると嫌そうに肩を押された。  「正樹?」  「待って…いまは、待って」  まだ余韻があるのか敏感になっているようだ。髪をかきあげるだけでンッと目を閉じて声を上げた。  (可愛い…) タオルで拭いてやるとトコトコとノンタンが正樹のお腹に乗って丸くなった。  「ふふっ…ノンタンくすぐったい」  「ほらノンタン、ちょっとこっちで待ってて」  正樹は床に置かれたノンタンを指でトントンと呼ぶと抱き上げた。  「んー!可愛いなぁお前は」  にゃーとご機嫌に鳴いて遊んでるのを見ながら後処理を終えると、正樹は腹筋で起き上がり服を着て、ノンタンと本格的に遊びはじめた。  「正樹ー、俺にも構ってよ」  後ろからハグするとそれだけでもビクッと跳ねた。  「な、なんだよ!ビビらせんなよ」  「うふふ、正樹〜?もしかして俺見るだけでヤバイ?」  「ンッ…息かけんな、あ、もう、何だよお前」  そのまま押し倒すとノンタンは綺麗に着地して猫タワーに遊びに行った。  「正樹、顔真っ赤!」 「いいでしょ、別に。」  「エッチしちゃったね」  そういうと更に真っ赤になって、ぎゅっとしがみついてきた。  「ん…もう戻れないよ大地。」  「うん。」  「捨てないでくれよ?」  「正樹こそ。もう絶対女の子抱かせないし、俺以外にも抱かれちゃダメ」  その言葉に正樹は嬉しそうに笑ってお前もな、とキスをした。イチャイチャして明け方に妹を送ると行って戻って行った。  (はぁ…幸せすぎる…。)  誰かに聞いてもらいたくて誠に連絡するが寝ているのか取らなくて、優一にノンタンの動画を送るとすぐに返事が来て電話をかけた。  「ユウ、起きてたの?」  「ん…。起きてたよぉ?のんたん可愛い、ありがとぉ」  寝起きなのか眠いのか、ポヤポヤした話し方だ。でも前ほどドキドキしたりしないのに越えられた気がした。  「ユウ、恋バナしたい」  「え〜?ふふっ、今何時だと思ってんの…こんな時間に恋バナなんて…正樹は?」  「今帰ったとこ」  「うん、幸せそうでよかった」  (優一、電話か?)  後ろでタカの声がして、優一の幸せにも嬉しくなった。  「幸せになれたよって、伝えたかっただけ。ごめんね、こんな遅くに。」  「んーん。大丈夫、嬉しい電話だよ。ーっ、タカさん、んっ、ちょっと、あっち行ってて。」  悪戯してるのか、優一があしらってるのが面白くてクスクス笑うと、困ったように優一も笑った。 「タカさんにも前生意気なこと言っちゃったから…幸せになりましたって伝えてね」  「タカさん、青木、今幸せだって」  すぐ伝えると、向こう側でおめでとうと聞こえ嬉しくなった。その後、優一が慌てて電話ありがとう、おやすみと言って電話が切れたから、タカの我慢がきかなかったのかと想像して笑った。 「なーにニヤけてんのよ。今日は真面目にできそうかなー?」  子供に言うように声をかけてきた翔に、笑顔で答えると怪訝そうな顔をして距離をとられた。練習を終えてケータイを見ると正樹からのメッセージにニヤけ、思わず顔が熱くなった。  正樹:大地、幸せすぎてニヤける。ヤバイ。  しゃがみこんだ青木に、翔はドン引きしながら先に帰っていった。  大地:俺も。早く帰ってきて。抱きたい。  メッセージを送るとすぐ返事が来た。  正樹:早く帰る。 青木は部屋で夕食を用意していると鍵が回って足音がした。  「おかえり、んっ、んぅ」  「んっ、ただいま。っ」  「ちょっと、正樹、火止めるから。」  火を止めて、正樹のネクタイを取ってソファーで求めあった。 「正樹ハマった?」  「ん…最高。やばい、気持ち良すぎ」  タバコを吸う正樹がエロくてまた腰が重くなった。感じ取ったのか幸せそうに笑うのがたまらなかった。

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