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第70話 子ども

シュウト:タカ、彼女から連絡きた  優一を抱き潰してタバコを吸っているとシュウトからメッセージが来た。相変わらず情報が少ないが、返信をしようとすると更に続けた。  シュウト:明日、会う  思わぬ進展に慌てて電話をすると、嬉しさを隠しきれないシュウトが出た。  『タカ!明日会うよ!会いたいって言ってくれたんだ!』  「良かったな…。ちゃんと話せそうか?」  『ん…少し緊張する。もう人妻なんだもんね、気をつけないと犯罪者だ。』  「そうだぞ。迷ったら連絡して」  ありがとうと、ご機嫌に電話を切ったシュウトと違い、タカは不安が募る。  (向こうから会いたい…?自分からシュウトをふったくせに?何か嫌な予感するな)  灰皿にタバコを押しつけて優一のベッドに潜った。  胸騒ぎを発散するように歌って、アレンジをどうしようかと迷う。ケータイを手放さないところを優一や誠が不審がっていたが、やっぱり連絡がきた。  『タカ、もう分かんない。』  「どうした?」  『僕の子だって』  「え!?」  『1歳の可愛い女の子…DNA鑑定で彼氏さんの子じゃないって』  何も言えず固まるタカに、ジンが不審に思って近寄ってきた。  『結婚は、してないって。妊娠中からケンカして籍入れないままだったって。鑑定結果みたらすぐ別れたって。』  「…。」 『タカ、どうしたらいい?』  「…お前はどうしたいんだ?」  『すぐにでも、結婚したい。』  よく考えろ、と言いたいところだが恐らく本当のことなのだろう。今更シュウトに寄ってきたのが裏がありそうで何も言えない。  「彼女は、なんで今頃シュウトに連絡を?」  『僕からの連絡が嬉しかったんだって。手酷く振った手前、意地でも一人で育てるつもりだったけど、まだ可能性があるなら、って来てくれたんだ。』  まさかの展開にタカは思考が止まった。シュウトは嬉しさのあまりテンションが上がり切っていた。とにかく、2人とも事務所で話すようすすめ、タカは翔太やジン、カナタを集めた。 明るい女性と抱っこされた女の子。親指を吸って髪を2つに結ばれて、ぴょんぴょんと揺れる。人見知りして女性に顔を埋めた。一瞬見えただけでも分かった、シュウトにそっくりだった。  「みんな、紹介するね。こちらがサクラとモモちゃん。」  「初めましてですよね?いつも応援していました!突然…すみません。」  「待て待て。どういうことだ?」  翔太は苛立ちをそのままに質問すると、シュウトはサクラの手を握って言った。  「僕たち、結婚します。この子は僕の子です。」  「「はぁ!?」」  カナタと翔太が驚くも、シュウトは幸せそうにモモを抱っこした。瓜二つの顔に全員唖然とした。  「突然すみません。昔からお付き合いをしていたんですが、この子を妊娠した頃に気持ちが追いつかなくなって、私から一方的にお別れをしました。シュウトしか知らなかった私は、他の人はどうなんだろう、って。無い物ねだりでした。もちろん、自分勝手で傷つけてバチが当たって、今は1人で育てています。こんな私を、シュウトは今でも想ってくれていて…私…本当に申し訳ないなって、そばにいるならこの人しかいないって…」  泣き出したサクラをシュウトが肩を抱いて慰めている。  「お気持ちは…分かりました。ですが…シュウトのお仕事、ご存知ですよね?」  「はい、もちろんです。」  「結婚や子持ちだと、ファンが驚いてしまいます。段階を踏んでほしかったです。」  そうですよね、と下を向くサクラにシュウトは翔太を睨んだ。 「仕事なんか関係ないです。僕はサクラとまた会えただけで」  「シュウト、ファンがいるからお前は食えているんだ。」  「僕がいなきゃファンは幸せにならないよ?僕が歌うから幸せをもらってるんでしょ」  「ファンの気持ちを考えろ」  「ファンなら僕の幸せを祝うべきです」  どちらも譲らない争いに、翔太は社長を呼びに行った。おめでたいことなのに、仕事上の対応次第でしかおめでとう、と言えないのが辛かった。こんなに幸せそうなシュウトを見られて安心するのに、なぜかモヤモヤするのだ。  「まぁ焦って籍を入れなくてもいいんじゃないか?」 「いやだ。サクラの気が変わらないうちに籍を入れたい」  「シュウト、ごめんなさい。信用してよ」  完全にシュウトが舞い上がっていた。サクラは苦笑いしてシュウトを見ていたが負い目があるのか何も言えずにいた。モモはシュウトに大人しく抱っこされスヤスヤ寝息を立てた。  「こんにちは、サクラさん。社長の本郷です。単刀直入に言います、非常に困ります。シュウトは今大事な時期です。」  「はい、存じております。」  「お子さんがいる以上、早めに籍を入れたいのは分かりますが、なぜ報告が遅くなったんですか?本当にシュウトの子ですか?」  「社長!反対なんですか?」  「あぁ。反対だ。」  腕を組んで冷たい目で見ている。シュウトは絶望したような顔で固まっていた。  「お前、レイにしたこと忘れてないよな?」  「っ!」  「自分をコントロールできもしないやつが、夫どころか父親なんて。この子のためにもお前は成長するべきだ。今も何も考えずに、ただ、戻ってきた彼女に感極まってるだけだ。いいか、子育ては簡単じゃない。他人の気持ちを推し量ることができないお前にはとてもじゃないが無理だ。お前のペースで行動はできない、それがストレスになって仕事に影響でるのが目に見える。」  シュウトは社長の言葉に悔しそうに下を向いた。ここにいる殆どが納得していた。  「私が支えます!」  「サクラ…」  「私がずっと支えてきました!だから、大丈夫です!」  明るい笑顔にシュウトがほっとして笑うが、社長はそのままの顔だった。  「サクラさん。あなたも、なぜ今更シュウトに?シュウトが父親だとわかったら普通はすぐに連絡しませんか?」  「それは…私が傷付けたのに連絡するのは…」  「結婚するつもりで今日は会いにきたんですか?」  「…まだ私に好意があれば、と」  「なるほど。前の彼氏とは精査できていますか?このケースで多いのは、婚約破棄で訴えられていることだ。」  「…全て終わっています」  「慰謝料は?」 「300万です。」  シュウトは初めて聞いたのか驚いた様子でサクラを見た。  「なぜ、あなたが慰謝料を?」  「シュウトと、別れた彼とは同じ時期に付き合っていて…当時の私はシュウトと別れたくて彼の子どもと言い張って、婚約しました。…が、生まれてきた子が私にも彼にも似てなくて、ずっと口論になって…」  「あなたお仕事は?」  「いえ…子どもがいるので実家にいます。」  「どうやって慰謝料を支払うおつもりですか?シュウトに払ってもらうんですか?」  その言葉にシュウトは小さく、やめてくださいと震える声で呟いた。  「社長…お願いします。いくらだって支払います。僕はサクラが戻って来てくれただけで幸せなんです。どんな理由でも構わない。」  「シュウト、彼女のためでもある。精査されてない状態で発表してみろ。マスコミにエサをやるようなもんだ。彼女の周りを根掘り葉掘り調べられ、傷つけてしまうかもしれない。一般人である彼女を守るためにも、2人とも冷静に、もう一度話し合うんだ。…半年、こちらが用意した部屋で問題なく暮らせたら許可する。」  社長の譲歩にシュウトは目を輝かせ、ありがとうございます、と頭を下げた。 「ただ、彼女からシュウトが好きだから、という言葉が無かったのが1番の気がかりだ。半年後には聞けるといいが。」 タレントを1番に思う社長の言葉に、タカも引っかかっていた理由が分かった。2人の温度差だった。別れたがっていた彼女の根本は解決されていないのだ。  シュウトの同居用の部屋を手続きする中、事務所の会議室でブルーウェーブは重い沈黙に包まれていた。翔太は次から次へと問題が続いていることに疲労が見えた。タカは聞かなければ、と口を開いた。 「サクラさん…なぜ、あの時、シュウトじゃなく彼を選んだんですか?」  一瞬固まったサクラだが、ニコリと笑って、ずっとシュウトだけだったからと上部だけの言葉を言ったのが癇に障った。  「ずっと一緒の人じゃダメなんですか?飽きたから、と最近会った人を選んだとすれば、シュウトは簡単に捨てる程度の存在だったということですよね。」 その言葉に、今日はじめてシュウトが落ち込んだ。解決していないことを思い出したようだ。  「そんなんじゃ…」  「妊娠して、どちらかの子だとして、その新しい彼を選んだのはサクラさんですよね。その彼に捨てられたから帰ってきた、としか見えないんですが。」  「そう思われても仕方ないです。」  「違う。俺はあなたの本当の気持ちが知りたいんです。シュウトは俺らの大切な仲間です。仲間を守るのは友人として当たり前なんです。あなたを責めてるんじゃない、気持ちが知りたいんだ」  カナタとジンも深く頷いた。サクラは少し黙ったあと、シュウトではなく、タカを見て言った。  「皆さんには分からないかもしれませんが、シュウトの依存と、人への関心のなさに恐怖をも感じていました。私が悲しくても、怒っていても、気が付いたことはありません。いつも明るい私だと思っています。でも、私は強くありません。ずるいし、寂しいし、愛されたいんです。シュウトはいつも明るい私に依存していました。笑ってなきゃいけないって、自分を追い込みました。悩んで話した時は、全く興味を持ってもらえず、泣きました。それでも、普通にどこかに行こうとか、シュウトが思えば、絶対今じゃなきゃいけないんです。」  シュウトは冷静に聞いていて、何を思っているのか分からない表情だ。  「もう…頑張ることに疲れたんです。私だけが合わせることが。でも、別れた彼も、シュウトと同じでした。みんなそうなんだ、と思ったら私が間違えてたんだ、私が贅沢だったんだ、と思いました。」  サクラからは笑顔が消えて、優しい垂れ目に涙が浮かんだ。 「でも、男の人がそれで許されるならっ、私だって、女だって、振り回していいじゃないですか!ずっと我慢していたんです!私だって私の思うまま生きたいだけなのにっ、いつも私だけが責められる!…っ、私が1番辛いのは…っ、モモの誕生を…誰も喜んでくれないっ!こんなのっ…っ、っ、辛すぎるっ、頑張ったねって言ってくれる人はいないんですかっ!?おめでとうって誰も言ってくれないんですかっ!?勝手に産んだのが悪いんですかっ!?妊娠したのが悪いんですか!?」  泣崩れ、叫ぶサクラの痛みを知って、全員心が痛んだ。シュウトはモモをカナタにそっと預けた。 「いつだって女が一人で耐えなきゃいけないんですか!悪者は私だけですか!妊娠は一人じゃできないのに!!私1人が…」  「サクラ、もういい。もう傷付けないで、自分を。ごめん、サクラ、僕が悪かった。サクラのこと、何にも理解してなかった…本当にごめんね」  シュウトが強く抱きしめると、服を握って声を押し殺して泣いた。母親の声が聞こえたのかモモも大声で泣きはじめたのをカナタが慌ててあやした。  「サクラ、言ってくれてありがとう。僕…甘えてた。サクラの痛みを知らなくて…。本当にごめんね。…サクラ?僕、モモに会えて本当に嬉しいんだ。意外でしょ?…僕もそう思う。他人に興味なんてなかった。でも、君から産まれてきたと思うと愛しくて仕方ないよ。」  「ぅ、っぅ、っふ…ぅ」  「一緒に成長を見られたらいいなって思うよ。サクラの気持ちの整理ができてからでいい。君が嫌なら、それでもいい。でも、僕の気持ちは、君と、モモと一緒にいたいよ。」  「うぇええ〜〜ん!!」  カナタが困り果てているのさえも、シュウトはニコリと笑って、号泣するモモを抱き上げた。寝起きでママがいないと思ったのか顔を真っ赤にして泣いている。シュウトは親指で涙を拭いてゆっくり揺らし、子守唄を歌いはじめた。モモはびっくりしてきょとんとシュウトを見たあと、シュウトの口や鼻を触ろうと手を伸ばしたり、ピアスを触ろうとしたりして、すっかり泣き止んだ。楽しそうに歌いながらモモのさせたいようにさせ、飽きたモモはまたうとうとして親指を吸いはじめ、目を閉じた。  「おお!すげえ!」  タカが驚くと、シュウトは幸せそうに笑って、可愛いでしょ、僕の子、と言った。  「可愛いな、本当。安心して眠ってるよ」  タカが手を触ると指をきゅっと握って、可愛いと悶えた。 シュウトを見ていたサクラは本当に驚いて固まっていた。  「シュウト…子ども嫌いじゃなかった?僕は絶対に要らないって…」  「うん、そうだったね。ふふっ、僕も不思議。でも可愛いくて仕方ないよ。」  「夜泣きするよ?」  「うん。子どもはそういうものでしょ。」  「え?本当にシュウト?」  サクラは笑ってシュウトの頬を抓ると、痛いよ、とシュウトが笑った。  「なーんだ。ラブラブじゃんか。」  「社長も安心するだろうな。サクラさんが吐き出してくれたから、シュウトもやっと気付けた。他人が出しゃばってすみませんでした。」  「いえ…。やっと吐き出せて、少しスッキリしました。すみません、お見苦しいところを。」  「いいえ。サクラさんの言葉響きました。そして、僕らも驚きましたが、モモちゃんに会えて嬉しいです。」  ジンが言うと、ありがとうございます、と泣き出してジンが慌てた。  「ありがとうございます。そんなお言葉、本当に嬉しいです。」  泣きながらニコリと笑う顔は子どもが愛しい母親だった。  「シュウトのソロを子守唄に聞かせていたんです。初めて近くで聞いてビックリしてた…子どもは分かるのかもしれません…」  サクラは笑って、シュウトを見ると、曲を聞いてくれていたのが嬉しかったのか、ふわりと笑った。 翔太が入ってきて先ほどと違う雰囲気に、解決したと察したようだ。 「サクラ、モモ。まずは半年、よろしくね?パパとして認められるように頑張るから」  シュウトはもうパパの顔になっていて、タカは大丈夫そうだな、と安心した。モモはシュウトに抱かれながらすやすや気持ち良さそうに眠ったまま、2人は事務所の寮に向かって行った。 「なぁ、お前らいい加減にしてくんね?俺を殺す気?…なんなのこの連日の試練」  翔太は疲れ切っていて、ジンはすみません、と頭を下げた。  「翔太さん、シュウトが落ち着けばだいぶ楽になるよ!」  「タカ、お前は頼むぞー…。お前はドデカイの持ってきそうだから。」 「もう落ち着いたよーだ!」  カナタとジンは苦笑いして翔太を労った。そして半年間バレないことと、家族の幸せを祈った。 「優一、ここ座って?」  「ん?どうしたの改まって…わぁ!」  幸せな気持ちのまま帰宅したタカは洗濯物を干し終わった優一をソファーに呼び、抱きしめた。  「優一、俺の子産んで。」  「え!?……そんなの無理だよ…。どうしてそういうこと言うの」  「シュウト、子どもできた。」  「え!?」  「1歳のモモちゃん。可愛いすぎた」  「…そっか。」  タカは強く抱きしめて笑った。  「泣くなよ。冗談だよ。」  「冗談じゃないくせに…っ、ごめんね、タカさん」  「想像くらいいいだろ。俺とお前の子だったら超可愛い子だと思うんだよなあ。お前に似てほしいなぁ。女の子なら嫁にやらん。」  「やめてよ、そんな妄想。参加できない」  「ゆーう」  「タカさんっ、子ども欲しくなっても、おれ、はなれて、あげられないよぉ」  決壊したかのように泣く優一に笑って、俺も、と笑った。何笑ってんの、意味わかんないと怒る優一にも愛しさしかなくて、そのまま押し倒す。怒ってイヤイヤと抵抗するのも可愛くてさっさと脱がしてその胸に吸い付く。  「んっぁっ、っぁ、ん、っ、」  「んちゅぅ、ん、はっ」  まだ不安そうな優一に微笑んで見つめると、優一は男でごめんね、と涙を零す。  「優一。シュウトのことが嬉しくて舞い上がってて…ごめんな。」  「ううん…シュウトさん、良かったね…やっと落ち着くかな?」 「あぁ。もう顔がすっかりパパだったよ。人って変わるんだな」  「タカさんはそのままでいてね。」  痛みを隠したような微笑みに、あの発言を後悔して謝った。 「優一、ごめんって。別にお前が女だったら、なんて言うつもりはないよ。ただの妄想だったんだよ。浮かれてたな、ごめん。」  「んーん。泣いたりしてごめんなさい。」  「俺達はお互いだけで精一杯だ、分かるだろ?日々生きるのに必死。そばにいて愛し合う。これ以上の幸せはないよ。」  「うん…そうだね。タカさんありがとう。…でも、ふふっ!もし、子どもがいたらさ、タカさん本当にデレデレだろうなぁ〜だって俺にもデレデレじゃん?」  「当たり前だろ?優一似なら絶対外に出さん。そして…ここにいる本物の優一は俺にとって世界一の人だよ。こんな可愛くてカッコいいやつ見たことない。好きすぎて閉じ込めたいよ」  幸せそうに笑う顔にほっとしていると、優一からキスを貰えて、許してくれたのが分かった。絡まる舌がいつも以上に積極的なのに不思議に思って距離を取ると、驚くほど蕩けた顔で微笑んだ。  「子どもにも、女性にもタカさんは渡さないよ。タカさんは俺だけの。」  「あぁ。もちろんだ。俺だって同じこと思ってるよ。前も言ったろ?」  「うん、ありがとう。今日は俺がシてあげる。」  優一は上だけ裸のまま、ソファーに座るタカのベルトに手をかけ、ゆっくりとファスナーを下ろした。焦らすような動きに、タカは優一の髪を掻き上げた。大きな目と合い、欲情したのを感じた。自分で興奮したものを取り出し、小さな口に擦り付けると、真っ赤な舌が伸びるもなかなか触れない優一に焦れて、後頭部を押さえ、無理矢理突っ込んで息を吐いた。  (はぁ…やっと…)  待ちに待った温かさと刺激に、ほっとしていると、優一からの激しい愛撫が始まり、髪の毛を握り、背を反らした。  「っあ!!ーーッ!!」  もともと口が性感帯の優一は夢中になって頬張って、自分の気持ち良さを優先しているが、タカの快感にも直結し、思わず前屈みになる。  「はぁっ、はっ、優一、っ、はぁっ」  「んっ、んぅっ、むぅっ、ん、」  優一がタカの足を開かせて更に奥まで咥え込んでくるのに、目の前がぼんやりしてくる。 (はぁ…やばい…たまんねぇ…)  無我夢中の優一の顎を上にむかせると、恍惚な表情にゾクゾクし、大きく息を吐いた。小さな口をいっぱいにして、餌でももらっているかのような優一にタカは少しブルっと震えたあと、近付く絶頂に声が止まらない。  「はぁっ、ぁっ、っぁ、っ、ゆぅ、いち、」  「んぅ、っ、んっ、ん」  ガクガクと脚が震えはじめ、強い刺激にたまらず優一の口に吐き出した。強烈な快感に余韻に浸るも、優一はすぐに飲みこんで愛撫を再開しはじめ、敏感すぎるそこには強すぎて、慌てて離そうとする。 「っ!ゆ…いち、優一、っ、」  言葉にならず、名前を呼ぶことしかできないまま、過敏な刺激に耐えると、また復活してきたものに優一は嬉しそうに笑ってタカを見た。 「んっ、タカさん、気持ちいいの?」  「…っ、はぁ、気持ちいいに…、決まってんだろ?」  おいで、と手を伸ばすも躱されてニコリと微笑まれるだけ。そのまま何もなかったかのようにテレビをつけ、隣に座った。  「優一?」  「ん?」  「シよ?」  「やだ。」  目もあわさず、まっすぐテレビを見ている。 「シてあげたでしょ?気持ちよかったって言ってくれたじゃん」  「…優一、怒らないでよ。ごめん。」  「怒ってないよ。…ただ、意味のないことのように感じたんだ。俺たち、何のために抱き合ってるんだろうって」  タカは心底後悔して、萎えたものを収めて優一に向き合った。  「好きだから、触りたい。普通のことだろ?」  「好きならそばにいるだけで良くない?なんでわざわざ抱き合うの?本当に好きならシなくても幸せだと思う。」 大きな目が強い意志を持ってこちらを見て、タカはまさか、と目を見開いた。  「本当に好きなら抱き合わなくても平気だよね?」  タカはしまった、と頭を抱えた。こうなると、優一は試さなきゃ納得しない。これから訪れる試練にため息を吐いた。優一から折れるか、タカが説得するしかない。  「優一、」  「タカさん、たぶんね、子どもを作るために、子孫を残すために抱き合うんだよ。俺たちは間違ってるのかもしれない。男同士なのに真似事してるから、タカさんも勘違いしちゃうんだ、俺が産めるかもって。」  「勘違いなんかしてない。ただのお話しだろ?好きな人と気持ちよくなりたいから抱き合うんだろ?お前だって好きだろ?なぁ、考え直してよ。俺、お前に触れないなんて無理だよ、耐えられない。」  大きな目は冷めた目をしていた。久しぶりのこの目つき。嫌われていた時のものに、懐かしいなぁ、なんて見入ってしまう。  「タカさん、俺のこと好きじゃないの?」  「好きだよ、ずっとそう言ってるだろ?好きだからシたいんだよ。頼むよ、優一、ごめん、許して」  どれだけ傷つけたかを知って謝るも、全然聞き入れてもらえず抱きしめた。どうか気持ちが届いてと胸に収めるも、ブレない優一はやめて、と腕を解いた。  「もう寝よ!一緒に!」  「え?いいの?嫌じゃないのか?」  「嫌じゃないよ。大好きだもん。ただ、エッチはしない。」  「え!?」  「そばにいて?」  可愛い顔でコテンと首を傾げて上目遣いをする。あざといと分かっていても見事にヒットして顔が赤くなり、手を伸ばすも叩かれる。  「タカさん、ダーメ」  綺麗に微笑まれて、ヤンチャな下半身は元気になって優一を寝室に連れこんで押し倒し、真っ白な首筋に舌を這わせた。  「ンッ!…ダメ、タカさんっ!ダメ!」  見下ろした顔は、少し欲情が滲むも言った手前必死に抵抗していた。今日は引こうと、無言で隣に寝て背を向けた。  「タカさん…怒っちゃった…?」  収めるのに必死で、答えないでいると、小さな手が背中を摩った。  「タカさん、分かってるよ。タカさんの気持ち。でも、俺が追いつかないんだ…ごめんなさい…。自分とも向き合いたいんだ。少し、付き合って…」  「……分かった。」  「ぅっ、ぅ、っ、っ」  怒ってしまったと思った優一は、タカが返事をしてくれたことで泣き出した。タカは浮かれてた自分を深く反省して、ゴロンと優一と向き合い、ピンクの頭を抱きしめた。背中を摩って、ごめんな、と言い続けて寝息が聞こえるまで謝罪と愛してるを伝えた。  「タカ、優一くんにタバコ教えたでしょ?」  「教えてないよ。気がついたら吸ってたの。」  ジンが隣に座り、火をつけようとしたタカの手を止めた。  「吸いすぎ。なんなの。灰を作る勝負でもしてるの?」 「どういうこと、それ?」  「優一くんもハイペースでタバコ吸って、全く集中力無くて何だか疲れてるみたい。」  「へー?そう」  タカは正直イライラが募っていた。自分の発言から始まってしまった禁欲生活。そばにはべったりといるのに触れないことで可愛い仕草も愛しさ余ってイライラに変わっている。 「タカ、どうしたの?」  ジンは何かあったことを察していて、苦笑いした。吐き出そうとしたその時、シュウトがモモを連れて会議室にきた。サクラは就職活動とのことだった。  「ごめんね、サクラ今日面接だから…。働きたいんだって。モモも一緒で大丈夫?」  「構わないよ。ね、タカ?」  「あぁ。」  「ありがとう、モモ良かったね?」  人見知りしていたモモだったが、慣れてくるとトコトコと歩き、全てが不思議で触ったり、食べようとしたり小さな冒険をしていた。ジンを気に入り、よじ登っては抱きついていた。  (やっぱり可愛いなぁ…)  タカは灰皿を急いで片付け、ジンからモモを取って抱っこをすると、キャッキャと笑ってくれた。スタジオのピアノの前に連れて行き、小さな指を取って、鳴らすと目を輝かせて夢中になって遊んでいた。シュウトが隣にきて、ブルーウェーブの曲を弾くと、モモはウトウトし始め、シュウトに抱っことアピールした。  「お昼寝の時間」  片腕で抱っこしながら、右手でメロディを弾き続けるとすやすやと眠った。  「昨日はね、大河くんがあやしてくれたよ。サナちゃんもおしめ変えてくれて…。みんな優しい。こんなに周りの人が支えてくれるんだって、初めて知った。これもモモのおかげ。」  シュウトはモモとサクラと住むようになって、人間らしい顔になった。良く笑ったり、困った顔をしたり、メンバーでも初めて見る顔が多かった。  「ジンさん…子ども好き?」  「もちろんだよ〜!可愛いすぎる!」  「自分の子ども、欲しい?」  タカが聞くと、ジンもシュウトもこちらを見た。 「タカ、どうしたの?」  シュウトがいち早く質問してきたのも驚いた。ジンは何かを察したのか、そういうことね、と笑った。  「子どもは可愛いし、大好きだよ。でも、自分の子どもが欲しいかと聞かれると、僕はその余裕がない。そばにいる人を愛することで精一杯。後々余裕ができて、お互いが話し合って、2人の子供がほしいと思ったら養子をもらって育てると思う。」  シュウトはいいね、と笑った。ジンもそうでしょ、とニコリと答えた。  「じゃあさ、何のために抱き合うの?」  「子どもを作る行為かもしれないけど、お互いが1つになりたいから、かな。誰よりも繋がりあいたいし。」  「なあに、タカどうしたの。」  「ジンさん、俺、優一に子ども産んでって言っちゃった」  頭を抱えて言うと、ジンは、あらー、と苦笑いした。シュウトも何だかごめんね、と困った顔をしている。  「俺は子ども産めないからシたくない。好きならそばにいるだけで幸せでしょ、って今試されてる」  「自業自得だね」  「うるさいシュウト、お前に言われたくない」  きつい…と弱音を吐いた。限界を通り越し、今誰かに誘惑されたら付いて行きそうなくらいだった。  「抱いてあげよっか?」  「死ね!」  「こら、タカ!汚い言葉使わないの!イライラを人に当たっちゃダメでしょ!」  注意されてますます凹む。この日はレコーディングも何度もテイクを重ね、声が枯れそうになるまで歌った。  (帰りたくないな…)  家に行くのも嫌になって、駐車場に停めた車内でシートを倒して目を閉じた。  好きすぎて、触りたくて、抱きたくて感情がぐちゃぐちゃだった。キスもせず、ただそばにいて他愛のない話をして隣で寝る。だんだん眠れなくなって自宅のスタジオに篭ると、聞きたいと付いてくる。  (無理だよ優一。俺、耐えられない)  それでも、誰か他の人を誘う気にもならない。頭の中は優一でいっぱいだった。  「〜♪」  自然に出たメロディーを、歌いながら録音した。シートを戻して簡単に歌詞を書いた。何かに吐き出さないと自分を保てなかった。  子どもはいたらいいな、ぐらいのことだった。優一が産めないのなんか分かっている。優一が他の女性との子どもを作ると思うと、発狂しそうなほど嫌だと思う。ただ、優一と俺の子なら可愛いに決まってる、と言いたかっただけなのだ。もしも、の話を楽しんでもらいたかった。実際あり得ないことだから、想像する楽しみ、のはずだった。  目を閉じて、何でもない日常を想像してみた。帰ってきたら優一が子育てしながら待っていて、娘がお帰りなさいと飛び込んでくる後ろで笑って見てる優一。子どもが寝たらこっそりと抱き合う。起きたら優一が仕事に行って、今度は自分があやして…。  コンコン  窓ガラスを叩かれ、見ると優一だった。   「車で何してんの…笑ってたし…」  妄想とまるでで違う、冷たい目の優一。何してんの、と素っ気ない態度にタカはブチンと切れた。  「優一、別れる?」  「え…?」  「許せないだろ、俺のこと。あんな事言った俺を。いいよ、俺が悪いし。」  「そんなっ、」  「だんだん態度悪いし。分かってる?好きならそばにいると言ったお前の今の態度は、好きな人にする態度なのか?」  「普通にしてるつもりだったし…」  「そう。ならもう俺に愛情は伝わってこないよ。ただの同居人だろ、こんなの。」 「そばにいるだけで幸せだって」  優一は助手席に乗り込んでドアを閉めた。目を合わせないのにもイライラした。  「お前は幸せ?」  「うん、幸せだよ」  「そっか。じゃあ、俺から言うわ。別れよ」  優一は目を見開いてぶわっと涙が溢れた。  「愛情表現の違いだ。俺は今のままならもう無理だ。お前に触りたいし、抱いて、気持ちよくさせたいし、キスもしたい。俺は、お前を恋愛対象の好きなんだ。ただそばにいる、友人みたいな、ただのリスペクトのような好きじゃないんだ。」  「ぅっぅ…ぅぅ」  「子ども産んでって、産めないのわかってて言ったのは意地悪だったな、ごめん。でもセックスをただの子どもを作る行為としてやってるわけではない。お前が愛しくて好きでたまらなくて、触りたくて、抱きたいんだ。お前に欲情してその熱をお前と感じたいだけなんだ。1つに繋がって、誰よりも深いところまでそばにいたいんだ。」  優一の手を握ると、ぎゅっと強く握り返された。  「キスも、セックスも、お互いが求め合ってる証拠だとも思う。俺に対して、何も思わないならもう、俺たちは終わってるんだ。」 「…るの、に、」  「え?」  「俺だって、我慢、してるのにっ!」  「今のままで幸せって言ったじゃないか」  「だってぇ!自分で、シないって、言っちゃった、からぁっ、も、どうして、いいか分かんなくなっちゃったんだもんっ」  「え?」  「求めて、くれるの待って、甘えてたっ、ごめんなさいっ、引っ込みが、つかなくなって、きっと、タカさんが、求めてくれるだろうって、待ってたの」  ごめんなさい、別れたくないと号泣しながら言う優一に呆れて抱きしめた。意地で幸せなフリして、タカが折れるのを待っていたようだ。  「はぁ…もう。お前の頑固さどうにかならないの…?」  「ぅっぅ、ぅっ、ごめんなさいっ、ごめんなさいっ」  「…許してくれる?」  「もう、許してたぁ…っ、でも、怒ってるふりして、機嫌とってもらってたから、それも、どうやって、終わったらいいか、分かんなくなって…」  「頼むよ本当に…俺魅力なくなったんだって落ち込んだし」  「ジンさんに…繋がるために、セックスするんだ、子作りのためだけじゃないよ、って教えてもらった…そうだな、って思ったら触りたくて、抱いて欲しくて、でも誘い方も分かんなくなってイライラしてたぁっ、ぅっ、八つ当たりして、っ、ごめんなさい」 涙を拭いてやって、タカからキスをした。久しぶりのキスにビクッと跳ねた優一は、一瞬目を開けたが、また目を閉じてゆっくりと口付けた。柔らかな唇にたまらなくなって優一の服に手を入れると、パシッと掴まれてタカはまだ焦らすのかとイライラして優一を見ると思わず赤面した。  「あ…タカさん…。い、今のキス…、タカさんとの、初めてのキスみたい…」  優一の顔は真っ赤になっていてうるうるした目でタカを見た。嬉しそうな、懐かしむようなそんな表情に噛みつくようにキスをしてシートを倒す。 「わぁっ!ンぅ!…っぅ、ぅ、っん、っ!」 「はぁ、はぁ、優一、優一、」  「はぁ、ッン!!ぁ、っ、んぅ」  呼吸もさせないほど舌を絡ませ、脚をもじもじさせる優一のパンツを押し上げるほどの熱をぎゅっと握る。  「ああッ!!」  タカの腕を掴んで、大きく跳ねた。少し車が揺れた気がして、タカも我にかえった。  「ーッ、っ、」  「あ…優一…、もしかして…」  「っ、っ」  腕で顔を隠して真っ赤になって、荒い呼吸を整えている。腕を外し顔を覗くと  「お…まえ…何つー顔してんの」  「っ、っ、…ぇ?」  見たことないほどのエロい顔に、タカは我慢出来ずに車から降り、優一を抱き上げた。  「んぅ…気持ち悪いよぉ」  「もう少し我慢しろ」  エレベーターでもずっとキスをして、玄関のドアを閉めた瞬間、タカは上着を脱ぎ捨て、廊下で優一の下を全て脱がすと、膝を立たせ、しっとりした熱にしゃぶりついた。  「っ!?っあああああ!!!」  くしゃりと髪が握られるのも懐かしくて、夢中で愛撫した。息が荒くなるのが邪魔だったが、目の前の優一が愛しくて、欲しくてたまらなかった。ガクガクと震える足と、首を振って叫ぶ優一にさらに興奮して思いっきり吸い上げた。  「んぅぅーーーーーッ!!!」  喉の奥に広がる温かさに、思わず泣きそうになった。大切に飲み込んで、優一を見つめると涙で溢れていた。  「タカさんっ…タカさん、好きだよっ」  「うん、分かってるよ」  「タカさん…っ、別れたくないよ?」  「あぁ。俺も。ずっと、2人でいような」  コクコクと頷く優一を見て笑うと、顔をぐしゃぐしゃにして泣き始めた。  「タカさんっ、ごめんなさい、」  「俺もごめん。」  「タカさんが欲しくてたまらなかった」  「俺も、優一が欲しくてもう限界。」  優一は嬉しそうに両手を広げ、タカは甘えるように飛び込んだ。 「あぁあー!!っあ!っあっ!んっ、アア」  顔を真っ赤にして喘ぐ優一に興奮が止まらない。お互い今までの距離を埋めるかのように、求め続けた。何度出しても欲しくて欲しくて奥の奥に注いで、また復活する。もう話すこともできない優一はひたすらされるがまま、揺さぶられている。 「優一っ、はぁ、っ、ん、優一、愛してるよ」  「あぁあ!っは、んぅ、っ!あぁ!」  「優一も、俺が欲しい?」  「ぅあああっ!っはぁん、んぅ、アッ!」  「なぁ?優一?」  コクコクと必死に頷き、声にならないが欲しいと口パクで言った。 「ぜーんぶ、あげる」  ニコリと笑って言うと、優一は驚いたような顔をした後に、ふにゃっと笑った。  (あ、やばっ…可愛い)  「あああぁっ!おっき、おっきくしないでぇ!!」  いやいやと首を振り泣き叫ぶのに、先程の笑顔とのギャップに悶える。そろそろ解放してやろうと腰をしっかり掴み、大きく腰をグラインドすると、背が反ってビクビクと腰が跳ねた。久しぶりの表情にタカは止まらない愛しさにしばらく抱きしめて動けなかった。  (ん…?)  会えなかった分抱き潰したタカは明け方に違和感を感じて目を開いた。  「あ…おはよう」  恥ずかしそうに上に乗る優一に、おはようと返し、自分の髪を掻き上げ、目を擦ってもう一度優一を見ると、恍惚の表情で見ている。  「寝起きのタカさん…可愛い」  「っぅああ!?っあ、ぁ、待て、ちょっと待て!」  「ンッ!も、我慢できないっ、よ、っん、んぅ、隣に、タカさんが、いるんだもん、はぁっ、気持ち?ねぇ?タカさん」  「はぁっ!ぁっ、はぁ!優一、」  無我夢中で腰を振り出した優一に、驚いて何も出来ず、快感に耐える。目の前の絶景に意識が飛びそうになる。  「タカさんに、触りたくてっ、おれっ、も、我慢、できないよ、っ、も、あ、ダメ、イく!!」  「ッ!っくぅ…ッ!!」 ぎゅっと中を締め付けられ、何もできないまま吐き出し、タカのお腹にパタパタと優一の欲が飛んだ。  「んぅっ…はぁ…どうしよぉ、気持ちいっ、ずっとこうしていたいよ…」  優一からの言葉に、嬉しくなって起き上がる。つむじにキスすると、唇が触れ、求め合った。 お互いスッキリすると、今度は好きで好きでたまらなくて、ずっとイチャイチャとくっついていた。付き合いたてみたいにはしゃいでいた。  「タカさん…本当に大好き…。タカさんの子ども産めそうだよ」  「アホか。もういいの、その話は。」  「んふふっ」  「なんだよ?」  「車でのキス、本当にドキドキした…。懐かしかった。」  「あぁ、あの時も駐車場だったな…」  うん、と頷いて上目遣いしてくるのに笑って、触れるだけのキスをした。  「タカ、ご機嫌だな、昨日と大違い」  翔太にジロリと見られてもヘラヘラしてしまう。昨日リテイク続きで終わらなかった分を今日に回していた。  「あのさぁ、機嫌で仕事増やすのやめてくんない?マジで俺最近寝てないから」  「ごめーん」  頭を叩かれ、疲れた翔太にやっぱりニヤニヤして返すと、イラつくなぁとスタジオを出て行った。レコーディングは一発で終わり、翔太はやっと眠れる、と大欠伸をしていた。  「翔太さん、恋人作れば?最高よ?癒し!元気の源!」  「お前…そろそろぶっ飛ばすぞ。惚気は求めてない」  あっさり振られ、事務所に行くと、モモが走って行くのが見えて追いかけると、そこには優一とジンとシュウトがいた。モモを追って来たのに優一をみた瞬間、愛しさで溢れ、すぐに肩を抱いた。  「モモちゃん可愛いー!ジンさんに懐いてるね!俺にはまだ人見知りしちゃうー、抱っこしたいー!」  ジンが抱っこしてモモを優一に渡そうとするも、モモはジンの服をギュッと握っていやいやとしがみついた。  「えー、モモちゃん!俺嫌い?」  「んーー!」  やっぱりジンにべったりとくっつくモモ。このやりとりをシュウトは幸せそうに眺めていた。  「タカ、仲直りしたんだね」  「あぁ。昨日はごめんな、八つ当たりした」  「え?そうなの!?シュウトさん、ごめんなさい」  「優一くんも今日はまだ吸ってないでしょ。お互いストレスになるからレスなんてやめなね?」  はぁい、と優一が言ってタカを見上げる。その顔にチュッとキスすると、それを見ていたモモが、ジンの口にキスをした。  「あーー!モモ!ダメだよ!ちょっと!うそだよね!僕もまだなのに!」  シュウトが慌ててモモを回収して慌てると、怒られたと思ったのか、モモが驚いて泣き出した。さらに慌ててあやしていると、スーツを着たサクラがベビーカーを持ってやってきた。  「シュウト、皆さんご迷惑をおかけしました!モモ、どーしたの?」  「モモのファーストキスがぁ…」  落ち込むシュウトにサクラは驚いたあと、涙が出るほど笑っていた。3人を見送ったあと、ジンと優一は舞台関係のインタビューでまた呼ばれて行き、タカもピアニストとのコンサートに向けて事務所のグランドピアノで弾き続けた。  「ただいま」  「おかえりなさい」  走ってきた優一がぎゅっと抱きついて歓迎してくれた。頬にキスをすると、タカのエプロンを着ていた。  「え?料理したの?」  「卵焼きだけ」  キッチンに行くと、不器用ながらも一生懸命に作ってくれたのがわかって、たまらず抱きしめた。  「優一、俺、萌えすぎて死にそう」  「食べたら本当に死んじゃうかも。味見してない」  てへっと笑うのも可愛くて顔中にキスして腕の中に閉じ込めた。  「彼氏のエプロンとか…わざと?」  優一のあざとさはわかっていてもヒットする。確認してみると、腕の中の優一はもぞもぞして見上げてきた。  「バレた?」  ニヤッと笑うのが色気があって、キッチンで始めようとするも足を踏まれて冷静になった。ニコニコして食べるのを待つ優一のために、不器用な卵焼きを口に運ぶと、意外にも美味しかった。  「え、優一。味大丈夫だよ!」  「よかったぁ。青木に指示してもらいながらやったよ。」  「俺の奥さんは最高だな。」  「料理上手になりたいっ!」  「そうだな。床上手だけじゃなくて料理もな」  「バカ!」 真っ赤にして怒るのも可愛くて優一のエプロン姿をこっそり写真を撮った。 今まで以上にバカっプルみたいにはしゃいでる自分に幸せを感じた。 

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