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第74話 ベストショット

「大河さん、朝だよ!起きてっ!」 「んー…ん、」  (起きない…)  今までどうやって起きてたんだというほど、大河の寝起きは悪い。起きた後もめちゃくちゃ怖いから本当は起こしたくない。寝顔も可愛いし、ずっと見ていられる。でも… 「起きなさーーい!!」  寒がりの彼の布団をバサッと取りあげると、すやすや眠っていた可愛い寝顔が一瞬止まったあと、バチッと目を開けた。 ギロっ  「ひいっ!!…だ、だってもぅ、時間だよ」  「……。」  (無視!!)  寝癖頭をガシャガシャかきながら上着を脱いで風呂場に行った大河は男らしい背中すぎて唖然と見送った。  「マコ、あと何分?」  目が覚めたのか、いつものように上目遣いで見つめてくる。髪から滴る水滴が、上半身に流れていく。10分と答えるのも、その水滴を目が追うと、手のひらで目を隠された。  「朝から盛んなよ」  ニヤッと笑った顔がかっこよくてぼーっと目でおった。伊藤からの電話でようやく慌ててバタバタと出て行った。 写真家アリスのストーカーから大河は誠の部屋に移動してきた。大河の部屋は一応おいてあるが、大河は迷わずここに帰ってくるようになった。実際見てはいないが、相当数の大河の写真があり、処分となった際のアリスは狂ったように叫び、訴えてやるなどと脅していたと社員から伊藤が聞いたという。大河の舞台後のキスもわざとだと知って誠は本気で苛立った。大河を守らなければ、と張り切り、まずは快適な生活から、と家事を行った。センターを売り出すという事務所の方針から、大河はとても忙しくなった。半分寝たような姿で帰ってきて、ハグで迎えてやるとすやすやと寝息をたてる。  ピンポーン  「はぁい!」  大河のために買った枕や、温かい毛布が届いた。昨日は足のマッサージ機も買った。そして、その中に混じってリクのオススメもいくつか手に入れた。その中でも誠が1番楽しみなセットをあけた。  「んー!!悪くないっ!悪くないよー!」  ぎゅっと抱きしめて、どうやったら怒られずにためしてくれるかを考えた。 「よろしくお願いしまーす!」  今日の仕事はハイブランドのフレグランス。レディースのフレグランスは甘くてずっと香っていたら酔いそうな感じ。黒とゴールドの組み合わせは高級感がある。外国人のモデルさんを後ろから抱きしめたり、顔を近づけたり、いつもは照れるカットもだんだん集中してきた。外国人のモデルさんが笑うと、同じように笑い返すとたくさんのシャッターが切られ、あ、正解だった、と嬉しくなる。全員に頭を下げて、スタジオを後にして、大河のために何を作ろうかとスーパーに向かった。  マコ:大河さん、今日何食べたい? 大河:チーズ系  大河はなぜか食材をリクエストしてくる。苦笑いしてチーズ系を探した。  (チーズインハンバーグにしよっ)  スーパーで2人分のものを買うと、視線を感じた。でも視線の主が分からなくて、気のせいかと無視してスーパーを後にした。マンションの駐車場に着いて荷物を降ろそうとすると、見慣れたあの人が立っていて驚いた。 「アリスさーん!お疲れ様です!どうしたんですか?こんなところで!」  誠は大河のストーカーを知らないフリして明るく駆け寄った。アリスは誠が知らないことに驚いた様子だが、以前仕事をしたときのように、ふわりと微笑んで頭を下げた。 「お疲れ様です!マコさん、大河さんの舞台以来ですね。写真家の間でもマコさん撮りたい方いっぱいいますよー!」  「本当ですか?光栄です!…で、どうしましたか?誰か待ってます?」  間違えた、と思ったが遅い。誰かとは1人しかいない。アリスの顔がサッと変わり、豹変ぶりに驚いた。  「誰って。分かってますよね?」  「…」  「マコさん、待ってました」  「え?」 意外な言葉に驚くと、アリスは茶封筒をリュックから取り出した。 「私の作品も勝手に破棄して…あなた達の事務所は許さないから。」  「俺に言われても…」  「じゃあ、マコさん協力してください。大河さんの写真、私買取ります。マコさんにも報酬をお支払いしますから。」 無理矢理渡そうとする茶封筒には現金。慌てて受け取れないと言うと地面に叩きつけた。  「返してよ!!私の作品達を!!何も悪いことしてないじゃない!私は私の作品を」  被害者ぶるアリスに、誠は初めての感情を抑えようと必死だった。  「何も…悪いことしてない…?本当にそう思いますか?」  「もちろんです!私の制作意欲を奪ったのはあなたの事務所です。」  「被写体に許可は得ましたか?報酬はちゃんとありましたか?契約はしていますか?」  「は?何も知らないくせに、何なんですか?」  開き直ったアリスはギロリと誠を睨みつけた。誠は動じることなく、アリスをみつめた。  「大河さん、あなたの作品を見て、喜んだと思いますか?」  「えぇ。」  「あなたは本当の大河さんを写しきれていない」  「っ!?」  「あなたのフィルターにかかって、自分の都合のいいように大河さんを見てる」  ふざけないで!と叫ぶアリスに、誠はどんどん自分が冷静になっていく。  「まずさ、大河さんが好きなら、喜んでもらいたい、とか思わないの?」 「喜んでくれていました。」  「全然違う。恐怖であなたの場所から逃げて、大河さん自身がアリスさんの作品の破棄を望み、事務所が対応しました。」  「そんなはずない!私はっ!大河さんが美しい瞬間しか撮ってない!大河さんも喜んでくれる作品なの!大河さんを引き出せるのは私だけです!」  すると誠は仕方ない、とケータイを操作して、最近の1番自然体に笑う大河の写真を見せた。  「見て?」  「っ!!?」  真っ赤になるアリスに鼻で笑ってケータイをしまう。  「もっとたくさんあること、大河さんは知ってるけど、消してくれなんて言われたことないし、カメラ目線だし。こんな写真、アリスさんに撮れるかな?」  「…っ!」  「信頼関係だと思うよ。前のアリスさんになら、もしかしたらこの顔を見せたかもしれない。けど、もう大河さんはアリスさんのレンズに写ることを拒否している。なぜだかわかる?アリスさんが壊したんだよ。行き過ぎた距離感、執着。」  ガタガタと震える手を見て、ヤバイかな、とも思うが大河のために言うことは言わないとと見つめる。 「もう、大河さんに近づかないでください」  ニコリと笑って言うと、アリスは小さな声でぶつぶつ言っている。  「マコさんは大河さんの何なんですか。お互いの部屋行き過ぎじゃないですか。」  「どうしてアリスさんにそんなこと言われなきゃいけないの?メンバーなら普通だよ?ーーその前に、なぜそれを?監視してるの?」  「監視じゃないです!大河さんのナチュラルな姿を…」  「なるほど!盗撮だよ、それ。ダメだよアリスさん。業界人でそんなことしたら大変なことになるよ!」  「リスクを負ってでも!私は大河さんを…」  うーん、と誠は困った。犯罪の認識があってもやめられない人に論理的に解決するのは厳しいと判断した。  「いい加減にして。アリスさん、やってること正当化してるけど、おかしいのはアリスさんだよ。何このお金。犯罪重ねないでよ。そもそもさ、大河さんの写真撮りためてどうすんの?ナチュラルな大河さん?アリスさんなんかに手に負えないよ。外の大河さんしか知らないでしょ。知りたいと思うならアプローチを変えなきゃ。」  誠はアリスに耳打ちした。  「アリスさん、ちなみに、あなたが今この瞬間を撮られたら終わりだよ?」  「っ!」  「俺が事務所に報告しても、アリスさんは終わり。どうしよっか?」  「…っ、ぅ、ぅ」  「泣けばいいと思ってる?ごめんね、大河さんに関しては許すわけにはいかないんだ〜」  「…ごめんなさい…」  「ううん、言ったよね。許すわけにはいかない。」  その言葉の後、アリスがバッグからカッターナイフを持ち出したのを見てニヤリとする。  (あーあ。アリスさん、そこまで好きなら違う表現があったのに)  誠は才能ある人が名前を汚すことに気の毒に思った。興奮するアリスと対峙して、誠は事務所ではなく、警察に連絡した。  「もしもし、恐喝を受けています。すぐに来てください。」  電話を切った後、お金と、アリスがカッターナイフを向けている写真を撮って伊藤に連絡する。  「伊藤さん、アリスさんに恐喝をうけたから警察よんだ。カッターナイフ向けられてる。」  『なんだって!?すぐいく!!』  電話を切った後、まだ興奮しているアリスを見てニヤリと笑う。  「アリスさん。またこの業界に戻ってこれたら、一緒にお仕事しましょうね?」  「うるさい!うるさい!大河さんを出して!早く!」  「出すわけないでしょ?北風と太陽ってわかる?力づくで動かそうとしたってダメだよ。周りから固めなきゃ。」 「大河さんに会わせてっ!」 パトカーが来て、すぐにアリスは取り押さえられ、伊藤も来て対応してくれた。事情聴取などでお金のことや恐喝のことを話し、あとは事務所の処理となった。伊藤は怪我のない誠に安心して涙目で強く抱きしめていた。震えている手がかなり心配をかけたと知り、抱き返した。  「マコッッ!!」  「あ、おかえり大河さん。あとはハンバーグ焼くだけだよ…おっと、どうしたの?」  荷物を投げ出して抱きついてきた大河に慌てて火を消した。ガタガタと震えて嗚咽が聞こえ、心配かけたことを反省した。  「泣かないで」  「ぅっ!っふ、まこぉ、まこっ!まこ」  「大丈夫、ごめんね、心配かけたね」  「ぅぅ〜ーーッ!ぅう!ふぅっ、!」  泣き止まない大河に困ってフライパンに蓋をして、ソファに移動して抱きしめた。  「大河さん、もう終わり、泣かないの」  「ぅっぅ、っぅ」  「大河さん、ごめんね」  「こわ…かった…、まこ、が、けがしてたら…って、おれ…ほんとに…こわかった」  「大丈夫。ほら見て元気いっぱい!!」  「まこっ、よかった、まこがいるだけで、おれ、なにも、いらない」  嬉しい言葉を涙ながらに、必死に伝えてくれる大河に嬉しくなる。  「アリスさんはね、冷静になりきれてなかった。見逃そうかな、とも思ったけど、もう手遅れな感じだったから…冷静になってもらうためにも、第三者をいれようって思ったんだ。おおごとにして、心配かけて、本当にごめんなさい」  「ううん!無事なだけで、おれ本当に嬉しい!」  やっと安心したように笑ってぎゅっと胸に抱きついてきた。誠を確認するように心臓の音を聞いて、手や足を撫でる。  「大河さん、くすぐったいよ」  「マコ…マコ…」  離れるもんかと、しがみつくように抱きついてくるのが可愛くてつむじにキスをした。  「俺のせいで…ごめん。マコを危険な目に遭わせた。本当にごめん。無事でよかった。」  「大河さんのせいじゃないよ。アリスさんは作品に固執してたから…大切なものだったみたい。」  「でも!あれは怖いっ!」  「ん。だから、言うことは言ったよ。逆上しちゃったけど…。でも、アリスさんも冷静になってゆっくり考えてほしいね。いい写真家だから、戻ってきてほしい。」  大河は怪訝そうに見て、お前すごいな、とまた胸に顔を埋めた。  「アリスさんに大河さんの写真を自慢したの。悔しそうだった。ふふっ、これ」  「…これ、見せたのか?…ん、恥ずかしい」  「あと、これは迷ったけど見せなかったよ」 絶頂直後の写真に大河は顔を真っ赤にした。  「バカ!こんなの!お前だけの約束だろ?!」  「だから、見せてないよって」  「もうやだ、ヘンタイ。こんなの撮ってどうするんだよ…」  顔を隠して、恥じらう姿が腰にきた。スイッチが入った自覚があって、今の大河なら受け入れてくれそうだと、今朝届いたものを思い出した。  「俺しか知らない大河さんを増やしたいんだ。」  「分かったよ、分かったけど…。」  「でも、アリスさんにいっぱい写真撮られてたの、許せない」  「っ!?…あ、ごめんな、気付かなかったんだよ…。マコ、怒らないで」  「俺の枚数より多いかもしれないし…大河さん、俺の写真を知らない人がたくさん持ってたらどう?不安じゃない?」  「う…。だから、お前のは全部集めてるだろ?」  「隠し撮りは?」  「いやだ」  「だよね。なら、2人しか知らない写真、撮ればいいんだよ」  大河は首を傾げてきょとんとした。そして、大河を一度降ろして、届いた段ボールを開いた。大河も付いてきて後ろから覗く。  「マコ?何これ?カメラでも買ったのか?」  「ううん。俺はRINGの衣装担当でしょ」  「うん。あ、衣装?」  「そうそう。…大河さんの」  「俺の?…ちょっと待て!お前!」  大河は察したのか、顔を真っ赤にして慌て始めた。そんな大河を無視して、誠が用意したいくつかの衣装を並べる。  「制服、女装、猫…俺的には…」  「せ、制服にするよ!な?それで満足だろ?」  ブレザーの制服を手に取って引きつった笑いをする大河の手から、ブレザーを取り上げて、ふわふわの黒猫の衣装を渡す。  「う…そだろ?マコ?」  「アリスさんの知らない姿、俺にだけ見せて」  「〜〜〜っ!分かったよ!このヘンタイ!」 パーカーを着たまま、猫耳のカチューシャを頭にかけて、ギロリと睨みつけてきた。  「おら!満足かよ!?」  怒ったように恥ずかしそうに言うのが可愛いくて激しく悶えるのを気持ち悪そうな目で見ていた、  (想像以上だよ大河さん!!!)  たくさん写真を撮って、大河は終わったと、カチューシャを取る。ふと、その黒猫セットにまだあるのを見てゲッと顔をしかめた。  「はい!大河さん全部脱いでー!男の子用がなかったから女の子ようになるけど…大河さんおっぱいないから、上はいいよね?」  「いや!全部いいや。」  「ダメ〜!はい、首輪して。大河さんの飼い主は俺だよ?」 「お前…こういうの好きそうだな…。」  「やだやだ!大河さん今日は俺に付き合ってよ!怖い思いしたんだよ?」  「きたねーぞ!お前!!…あぁ!もう!仕方ないな!そんな目でみるな!」  バサっと全裸になり、ん、と首を差し出した大河にキスをすると真っ赤になった。首輪を付けてもらうつもりだったらしい。チリンチリンと鳴る首輪が白い肌に浮いてものすごくエロく見えた。呼吸が荒くなりながら、ソファーに大河をうつ伏せにして腰だけ持ち上げ、ローションをたっぷり垂らした。  「んぅ?…ま、こ?ヤんのか?」  「ん?猫になってもらう」  「?…なっただろ?」 「まだ未完成。」  指をゆっくり入れてかき回すと、ん、ん、と、小さな声が聞こえてさらに興奮した。  (こんな姿も、俺しか知らない)  優越感に浸って、背中にキスすると、ビクビクと跳ねるのも可愛い。最近は腰が弱くて、スルッと撫でると大きな声が漏れた。  「はぁ!はぁ、マコ、マコ」  「ん?入れてほしい?」  コクコクと頷くのが可愛くって、大河の耳を甘噛みすると、キュンと中がしまった。  「入れるよ、力抜いてね」  「ん、ぅん、…っ!!?」  擦り付けられたものに大河はカバっと後ろを振り向いた。誠はニヤリとし、奥まで押し込んだ。  「あぁっ!!?っ!ーーっ、なにこれっ」  「ん?尻尾」  「ふざけ…んな」  ビクビク震えながら、いつもとの違和感に耐えている。悪態を吐く黒猫に躾をしようと、尻尾のスイッチを押す。  ヴヴヴヴ  「っ!?ッああぁああーーッ!!ああぁっ!!やだぁ!!やめッ!アァアアー!!」  「わぁ!すごーい」  「まこぉ!まこ!ダメェ!やめろ!!」   涙を流して叫ぶのが可愛くて写真を撮った。スイッチをそのままに、手に肉球の手袋を付けさせるとエッチな黒猫が完成した。動くたびに揺れる尻尾が艶かしいし、首輪の鈴もチリンチリンと鳴る。この尻尾は前立腺マッサージが付いてるから大河の性感帯をダイレクトに攻めているはずだ。  「ァアァアッッ!!ダメェ!ダメッ、マコ!マコ!ーーーーッぁあああーーーッ!!」  思い切り背をそらした後、一気に脱力し、ガクガクと震える。ソファーにパタパタと吐き出すも、スイッチを切らない限り続く刺激に目を見開いて叫ぶ。  「ッィアアァアァアーー!ンッンッァアァア!!」  ぎゅっと目を閉じると涙がコロリと流れて長いまつ毛が濡れてたまらなくなる。ひっくり返しして、大河のピンク色の粒を吸うと、肉球の手袋できゅっと頭を掴むのもたまらなかった。  「あぁああっん!!んぅっ!ああ、っはぁっ!んっ、んぁっ!ぁああ!ッああああー!!やめてぇ、とって、マコ、とって」  目を薄く開いて、必死にとって、とって、と両手を広げてくるのがかわいくてスイッチを切るとホッとしたように脱力した。  「大河さん、にゃーって言って」  「やだよ!バカ!」  「大河」  「んぅ…やだって…」  「大河」  「……………にゃー…」  恥ずかしそうに小さな声で言ったのが誠の理性を切って、唇に噛み付いた。 「んぅっ…んぅ、ふっ、…ん」  気持ちよさそうに、安心した様にキスするのに笑って、猫耳のついた頭を撫でる。自然と上目遣いになるのが腰にキて、大河のビショビショの熱を咥えた。  「っあぁ!やめてぇ!!ーーッ!あぁ!」  泣きそうな顔が堪らなくて、深く咥えこむと、ふるふると首を横に振って嫌がる。ふわふわの尻尾を動かすと、誠の口の中に温かいものが広がった。 「はぁーっ、はぁっ、はっ、はっ…」  顔を真っ赤にして、前髪もしっとりと濡れて張り付いている。火照った顔と、濡れた目と唇。細い首のアクセントとなる首輪。 誠は舌舐めずりをして大河を見ると、気付いた大河は、いやだ、もうおしまい、と力なく逃げる。うつ伏せになって逃げようとするのが猫みたいで、その尻尾をグリグリと動かすと、クタンと床に体が落ちた。その大河の正面に回って、興奮した熱を荒い呼吸を繰り返す唇に擦り付けた。 「はぁっ、はぁっ、」 「だーめ。逃げないの。ほら、ミルクあげるから。」 「んぅっ、んくっ、んっ、ふぅっ」  「美味しい?」  「んっ、んぅ、っ、んちゅ、」  熱に浮かされ、必死にしゃぶりつく大河が本当に猫に見えてきて興奮する。支える手は大きなふわふわの手袋で、猫耳に首輪がマッチしている。この絶景をカメラに何枚も収める。それを上目遣いで大河が見た瞬間、シャッターを切るのを忘れてケータイを落とし、大河の頭をガッと掴み、激しく腰を振った。  (今の…ヤバイ!もう、出る!!)  「んーっ!んーっ!」  「はっ、大河、出すよ、全部、飲んで」  口を離そうとする大河の頭を更に押し込んで喉の奥に吐き出した。 「んーっ!ーッ!?…んくっ…ごほっ、ごほっ」 「はぁ…はぁ…はぁ…」  「ごほっ、ごほっ」 激しくむせる大河は、飲もうと頑張ったようだが、半分ぐらいは吐き出してしまった。それを見てニヤリと笑った。 「大河…、ミルクを溢すなんて…いけない子。躾の時間だよ」  「黙れっ!このヘンタイ!!」  「やっぱり躾が必要だね」  スイッチを手に取ると、ごめん、うそだよ、と必死に言うのを無視してカチッとボタンを押すと、機械音とともに絶叫が聞こえた。  「あぁあ!ごめっ!!まこぉ!ごめっん!ッィアアア!!」  「大河、猫なんだから、にゃーでしょ?」  「んぅ!!ぁ、は…はぁ、にゃ、にゃー…」  「ンー!!可愛い!可愛いからご褒美っ!」  ずるっと無理矢理尻尾を引き抜くと、またパタパタとフローリングに欲が放たれ、大きくガクガクと震えて必死に呼吸をしている大河に、間髪入れずに、熱い杭を打ち込んだ。  「ッ!?ッぁあああああンッ!!ッーーッ!!」 頭を振って猫耳カチューシャがコトンと落ちた。急にいつもの大河が見たくなって、興奮したまま、肉球も外し、首輪も外した。  「大河…」  「まこぉ!も、おかしくなるよぉッ!!」  「大河っ、大河っ」  「んぅー!っ!!っぁああ!ああッ!」 ぎゅっと床の上で握る拳に手を重ね、絡めて、ガンガン腰を打ちつけ、動物の後尾みたいに2人で絶頂に向かった。  「すぅ…すぅ…」  お風呂に入れて、黒いパーカーを着せて布団をかぶせた。ハンバーグだけサッと焼いて、冷蔵庫に保存して、大河を見つめる。寝顔はずっと見ていても飽きなかった。そっと猫耳のカチューシャをつけて写真を撮った。 (やったーー!ベストショット!!!)  すぐに大河にも送り、鼻歌を歌う。しばらく生の姿を見つめ、指や髪を触って、自然と笑顔になる。  (…はぁ、幸せだな…)  頬にキスして、カチューシャを取ってやり、隣に眠り、電気を消した。  カシャッ 「ん…大河さん…?…おはよう。」  「おはようマコ」 珍しく早起きしている恋人は、なんだかご機嫌だ。  「大河さん、昨日可愛いかった…」  「ははっ!お前もな!」  え?ときょとんとすると、ふにゃりと笑っている大河。頭を撫でられるとカチューシャに気付く。  「お前も!ねこ!」  楽しそうに、悪戯っ子のように笑うのが可愛くて抱きしめる。大河のもつケータイには、寝ている自分の写真。  (敵わないなぁ…)  チュッとキスして、大河はご機嫌で仕事へ行った。  「あ!相川さん!お疲れ様です!」  「おう、マコちゃん!あ、これお土産。ロス行ってきたから」  「わぁ!ありがとうございます!ロスどうでした?」  「この間話した、恩師のジョージとか、あの号泣したマイケルたちに会ってきた。楓と、この事務所辞めたやつを会わせてきたんだ。ただ、あいつら言葉が喋れねーから超疲れた。」  疲れた、というリクはとても楽しそうに話してくれた。お土産のお菓子を食べながら、話を聞いた後、こそこそと話した。  「相川さん、見てください」  大河の猫耳を見せると、大爆笑して崩れ落ちた。 「何してんのお前!あっはははは!」  「相川さんから教えてもらったホームページでいくつか買っちゃいました!」  「そうかそうか!でー?どうだったの?」  「最高っです!」  そう言うと涙を流して笑ってくれた。もう一回見せて、と言われ、見せると、猫にしか見えないと絶賛され喜んだ。更なるオススメをいくつか聞いていると、リクの後ろから静かに長谷川がやってきた。内緒とジェスチャーでアピールされ、何でもないように話を聞いた。  「これは、やっばいよ!たぶん大河もハマると思う。最近これやってもらえないからさぁ…」  「へえ?じゃあ今日はリクエストに応えてあげようか。」  長谷川が言うと、リクはカチンと固まり、ギギギとなりそうなほど、ぎこちなく後ろを振り返った。長谷川がニコッと笑うと全速力で逃げていった。  「マコちゃん、ちなみに…これ、リクが大嫌いなやつ。」  長谷川が教えてくれたのは尿道バイブだった。ひいっ!と怯えると、参考にしてね、とウィンクして去っていった。  「うわぁー…ハードだな」  ポツリと呟いて、一応カートに入れた。

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