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第76話 戦略と演出

RINGがすごいのは分かった。  それぞれが才能をもって、今回はそれぞれが役割を果たした。再出発という覚悟も乗せた渾身の一作。 それに、ただのリリース感覚のやつらが勝てるはずはない。分かってはいたけど、初めて社長に反論した。  「売れるために育てるんじゃなくて、切るってどういうことですか」  「もともと、このグループは数年の予定だ。契約書を見れば分かる。大河が入る予定で作ったグループだったが、透が大河を排除した。才能を比べれば雲泥の差だ。たまたま翔が当たってくれたから今があるだけ。」  「グループとしての更新はない、と?」  「そうだ。翔のソロの準備を始めてくれ」  「今、やっと個々が動き出しました。個性だって売れる見込みはあります。この状態だと他事務所へ行ってしまいます。」  構わない、そう言い切った社長に、苛立って社長室を出た。  契約満了はあと1年。  1年の動き方で今後が変わる。まずは翔以外のメンバーの意向を聞くために全員を集めた。  「悪い。今、苛ついてるから、いつもより話し方が悪いのは申し訳ないと思います。」  全員が息を呑んだ。  「お前ら、あと1年で契約満了となる。」  ビクッと肩が跳ね、下を向くメンバーたち。  「この仕事を続けたいなら、翔に乗りかかることをやめて、個々の仕事や魅力を増やさなきゃならない。」 愁は全員を見てハッキリと伝えた。  「いいか。社長は契約更新するつもりはない。」  泣き出したり、悔しそうにするメンバーに愁は喝をいれる。  「悔しくねぇか。今までは全部翔のおかげか?お前らはいらなかったのか?違うだろ!ただお前らが甘えてただけだ。この1年で必要と言わせなきゃならねぇ。仮に満了になっても、他で食っていけるようにならなきゃいけねぇ。」 愛希とヒカルはわんわん泣いているのを、愁は机を叩いて黙らせた。  「いいか。悲劇のヒロインぶるのは今日までだ。結果がモノを言う世界だ。誰のせいでもない、自分のせいだ。」 「だって!愛希はアイドル以外できないもん!可愛いキャラも、ユウにとられそうだし…もう無理かも」  「じゃあユウの穴埋めるか?」  「え?」  「最悪、そのユウの穴埋めの仕事もしなきゃなんねぇ時期もくるかもしれないよ。でもそれは最終手段として置いとけ。」  「どういうこと?」  「AVだよ。需要はある。ここを退所して仕事がなければ頭に入れておけ。愛希は美容系でいく。」  愛希はパチパチと大きく瞬きをした。そこに投げられたコスメ雑誌。  「全部暗記しろ。いいか、絶対に肌を守れ。そのためなら経費を使って構わない」  雑誌をめくった愛希は、わぁあ!と目をキラキラさせた。可愛いと言われたい欲がつよい愛希は夢中で雑誌を読み始めた。  「ヒカル、お前は愛希にあわせてアホなふりしてるけど、本当は頭がいいはずだ。資格を取るんだ。お前はクイズ番組を土台にする。」  ヒカルはひどく驚いて、渡された参考書を涙目で受け取った。  「セナは英語と、映画関係。引き続き英語をやっていこう。」  「はい!」 「長谷川さん!俺は!?」  焦ったように晴天が声をかけると、やっと危機感をもったことにほっとした。  「お前は筋トレだ。晴天はスタイルがいい。体力もあるし、ドラマでも活かせそうだ。俺は、マコちゃんに負けると思っていない。いけるな?」  「ありがとうございます!」  やる気満々に返事をした晴天に愁はやっと笑った。陽介が助けを求めるように静かに待っている。  「陽介は、たくさん食べろ。グルメ系で押す。好き嫌いもないし、料理もすきだろ?まずは野菜ソムリエの資格から。」  「良かった…それならできそう。」  安心したように陽介は笑った。  最後は、スタッフへも悪影響で社長が退所させたい透。  「透。芸能界まだやりたい?」  「っ!もちろんです!」  「どんな仕事もやる、スタッフを尊敬し、態度を改める、そして、何事にも感謝する、これができなきゃ、お前の仕事はとらない。」  「っ!」  「いいか、お前がこのグループに泥を塗ってんだ。仕事をとった俺にも、事務所にも、社長にも。終わったことは仕方ない、これからの話だ。これを約束できないなら、俺はお前に関してはアイディアも出す気はない。どうだ?」  全員が透を見た。透は下を向いていたが、立ち上がって頭を下げた。  「傲慢でした…大変、申し訳ありません。長谷川さん、俺に、チャンスをください」  愁はため息をついたあと、座れと促した。  「お前の最初の仕事はあえて過酷なモノを詰めた。様子を見る。お前の覚悟が本当なのか。口だけだと判断した瞬間からお前を干す。」  「わかりました!頑張ります!」  やっとやる気になった脱落濃厚組に、愁は反応を見て頭をフル回転させた。すぐに解散させ、明日に成果を見るために、愁も全てのジャンルを頭に入れ、どのプロデューサーに掛け合えばいいのかを徹底的に分析した。翔の送迎の待つ間に世間話をし、さりげなく他メンバーを売る。 (陽介はさっそくあるかな、愛希はヘアメイクさんに声かけたし…)  ほとんど事務所と、翔にベタ付きをし、テレビ局やラジオ局に出入りしては売り込みをした。付き合いの飲み会にもはしごしてでも参加し、可愛がって貰った。  (透以外は予定通りオファーが来てる。あとはあいつらの知識が間に合うか…。)  飲みの席でも酔えずに冷静に考えていると、とあるお笑い番組のプロデューサーが隣に座った。  「長谷川さーん、お疲れー!」  「黒田さん!お疲れ様です!話してみたかったんです!」  「えー?本当?王道アイドルのマネージャーさん、僕らになんか興味ないっしょ?」  「いやぁー、実はうちのメンバーで調子乗ってるヤツがいてー、どうにか芸人さんのところでめちゃくちゃにしてやりたいんですよね」  「何それ!面白そう!誰々?」  「透です。みんな嫌いでしょー?ドッキリとかでコテンパンにできないですかねー?」  一か八かの賭けだったが、面白そうと前向きに検討してくれるようだった。 (これで一安心かな…。あいつらのお手並み拝見といこうか。)  ほとんどが、経過報告をくれるのが嬉しかった。音楽以外のことで反発するやつがいてもおかしくない中、必死で取り組んでいる。  (逆にRINGみたいにアーティスト系じゃなくてよかった、かな)  愁は音楽の知識はない。だからお茶の間でもウケそうなものしか提案できなかったのだ。リクならもっとアーティスト目線で言えただろうに、と少し申し訳なくも思った。  「長谷川さん、なんか最近みんな勉強してるけど、なんなの?」  「翔よりヒマだから勉強してみたら、と提案してみたんだ。」  「ふーん。」  セナが最近勉強に集中して会えなくなっているのが不思議のようだ。翔は興味なさそうにしていたが、少し寂しそうでもあった。  「最近さ、めちゃくちゃ活きいきしてるよ、みんな。そんな勉強好きだったのかな」  「かもな。」  さらりと流して翔を送り、また付き合いの飲み会に向かった。  リク:愁、最近何してんの  愁:仕事  高級なクラブで、品のある綺麗な女性がお酒を注いでくれる。テレビ局のスタッフ達の飲み会に呼ばれ、2次会にも引っ張られた。メンバーのスケジュールを確認しようとケータイを開くとリクからのメッセージに簡単に答え、またバッグに入れた。  黒田が透を使ってくれると言われ、安心して飲み過ぎた。綺麗なお姉さんを躱し、挨拶をして歓楽街を歩く。  「待ってよぉーリク。今日はアフター付き合うって言ったでしょ?」  リク、と言う名前に反応して振り返ると、目を見開いた。  (リクが気にかけてる、退所した子…だよな)  “リク”が女をあしらいながら、こちらを見てバチッと目があった。不自然に思いっきり逸らされ、人違いだったか?と気にせずに家に戻った。  (はぁ…飲み過ぎ…かな)  寝不足と空腹のまま酒を流し込んで、今まで以上に視界がまわる。ドアを開けて、玄関に倒れ込んだ。  (だる…)  目を閉じても回る感覚に耐えていると、ふわりと頭を撫でられた。  「やーっと帰ってきた。おかえり」  目を開ける力は無く、そのまま意識が遠のいた。  リク:今どこ  愁:仕事  行きつけになりそうな高級クラブ。ある程度仕事も取れてきて落ち着いたが、いつなくなるか分からないため、続けている。様々な業界の裏話なども聞けて勉強になった。しかし、次の日に影響がでるほどの強い酒が続き、完全に身体の中がやられてきて、何度も吐いていた。  「愁、いい加減にしなよ。頑張り過ぎ。意地になるのはお前の悪い癖だよ」  「うるさい」  「愁〜。頼むよ、お前が心配なんだよ。」 リクの声が遠くなり、また睡魔に襲われた。 (うっ、吐きそう)  デスクで調整していた愁は慌ててトイレに駆け込んだ。ムカムカするのに何も出ずにひたすら吐き気と闘った。トイレの入り口にはリクが水を持って待っていた。  「愁、そろそろ怒るよ」  滅多に怒らないリクが物凄い圧をかけてくる。素直にごめん、と謝って水を飲むと少しスッキリした。   「今日はすぐ帰ってきて」  「今日も付き合いがあるから」  「今日は俺に付き合ってよ」  「仕事だから。」  「愁」  「あいつらは今が大事なんだ。俺がやらなきゃいけないから。」  「俺も大事じゃないの」 「大事だよ。大事だけど、あいつらにはもう後がないんだ!今俺が動かないと」  「1日もダメなの?」  「なんだよ!78は期限なんか言われてないから余裕なんだ!!こっちは崖っぷちなんだよ!!売れてるのに、だ!おかしいだろこんなの!!頼むよ!分かってくれよ!!」  リクは思いっきり悲しそうな顔をしてごめん、と去っていった。力が抜けて、余裕がないことにも、リクに八つ当たりしたことにも腹が立って紙コップを握りつぶした。  例の高級クラブで、顔見知りにまでなったお姉さんと話す。物腰柔らかく、頭の良い人だと分かるほど何でも話を合わせ、広げていた。  「実は、今日誕生日なんです。」  「本当?おめでとう。いくつになるかは聞かないでおきますね」  「うふふ。お店には伝えてないんです。」  「そうなの?バースデーイベントとかで売上とれそうなのに」  「みんなでどんちゃん騒ぎは苦手なので…」  細く長い指が愁の手を握る。肩に凭れてそっと囁かれた。  「今日、祝ってくれませんか?」  思わずついていきそうになった時、リクからの電話がなり、切れた。そこに表示された日付に目を見開いた。  (6月2日…!?…リクの誕生日)  時間はあと1時間ほどで日付が変わってしまう。勢いよく立ち上がって、綺麗なお姉さんに、プレゼントは今度、と言い、プロデューサー陣には急ぎの仕事と言ってお金を置いて走った。  (最悪…!!)  自分を責めながら歓楽街を走り、電話をかけた。  (リクごめん、ごめんな)  『…はい』  「リクッ!っは、はぁ、誕生日、おめでとう!」  『…ばか。やっと気づいたのかよ…』  電話しながらタクシーに飛び乗って、時間を見ながら焦る。  『どーせ、高級クラブにいたんだろ?目撃情報があるんだからな!』  「あー…退所した子。確かにあの町で見たよ。名前同じなんだな?」 『え?あいつはコウって名前だよ?』  そこで源氏名と気付くが引っかかった。  「コウ?じゃあ源氏名か?お客さんにリクって呼ばれてたよ」  『え!?そうなの!?』  「お前ら2人、何もないよな?この間のロスでも…お前遊んでないよな?」  『……あー…テンション上がってたから』  「あ!?」  『あと10分〜』  都合が悪くなったのか時間を告げられて切られた。間に合うかが怪しくなって、渋滞している交差点で降りて走り、エレベーターに乗って呼吸を整える。  (あぁ…しまった。何も用意してない)  あからさまに落ち込むも、愛するリクを祝うことだけを考え、部屋に飛び込んだ。  「間に合ったな」  「はぁ!はぁ!リク、生まれてきてくれてありがとう。愛してる」  「んふふ〜!ありがとう!愛してる!」  久しぶりのキスをすると、欲情するのが分かった。しばらくリクに触れてないことを自覚すると、欲しくて欲しくてたまらなくなった。キスしたまま寝室へ行き、ベッドに押し倒し、隅々まで舐め尽くした。リクも久しぶりだからか、顔を真っ赤にして余裕がなさそうだ。時計を見ると、もうリクの誕生日は終わってしまったが、愛を身体でも伝えようと、ビクビク震える身体に、自身を埋め込んだ。  「ッッ!ぁああー!!」  「リクッ、リク、気持ちいい?」  「ぅん!うん!ンッ!ぁあああ!きもち、きもちいよ」  背中に回した腕が爪をたて、頭を振って快感を逃す。リクは道具を使わず、身体だけのセックスが好きでゆっくりと快感に堕ちていく。この方が幸せを感じる、と言っていたのを思い出して、ゆっくりと良いところをせめる。  「リク…リク好きだよ。」  「はぁっ…ぁっ…ん!…はぁ!気持ちいい!っぁああ!しゅう!気持ちいい!」  リクの誕生日を忘れたことなどなかったのに、と自分の余裕の無さを悔やむ。ごめんという気持ちを込めてひたすら気持ちいいところだけを刺激すると、堪らないというように背を反らして見つめては、幸せそうに笑う。  「最高っ、の、プレゼントだ、よ、しゅうが、いるだけで、こうして、抱いて、くれるだけで…、おれ、幸せ」  どっちの誕生日なのかというほど、嬉しい言葉に涙が溢れた。泣きながら抱くのが不思議だが、リクは笑ってくれた。一緒にイこ?とお願いされてゾクゾクと腰が震えた。  「ぃっあああ!ああああ!しゅう!しゅう!ンッーーぁあああ!!」  「はぁ!はぁ、好きだよ!リク、ーーッ!」  ドクドクと注ぎ込んで、大きく息を吐く。久しぶりで量が多いのが恥ずかしいが最後まで中に出す。リクは恍惚の表情で必死に呼吸した後、出し過ぎ、と笑った。  「正直、クラブの姉ちゃんとヤってんのかと思った」  「あぁ。誘われたけどな、リクと同じ誕生日で気付いた」  「日付感覚ないだろうなぁーって見てたけど、やっぱ寂しかった。いつもすごく、準備してくれるだろ?」  「本当にごめん。でも、必ず祝うから!期待して!」  うん!と明るく笑って抱きついてきたリクにたくさんキスをして、掻き出した後にまた身体を重ねた。  (よし!完璧だな!)  次の日。誘いを全て断って、リクのために時間を使った。プレゼントはずっと欲しがっていたスニーカーと、毎年渡しているリング。料理を全てセッティングして、リクの生まれ年のワインを準備して、少し光沢のあるグレーのスーツに着替えた。この事務所に入ってあまり着ることのなくなったスーツは、リクのお気に入りらしい。それを知ってから必ず着ているし、この日のために毎回新調している。大きな薔薇の花束を持って、リクを待つ。  「ただいまぁー…わぁあ!!愁!!」  「おかえり。そして、遅れちゃったけど、誕生日おめでとう」  薔薇の花束を渡すと、本当に嬉しそうに笑って目が潤んでいる。そっとキスして、左手の薬指に新しい指輪を通す。  「リク、俺と結婚してください」  「うはは!毎年プロポーズ!…はい!」  キスした後にギュッとハグをする。毎年恒例になってきたが、リクは必ず感動して嬉しくて泣いてくれる。涙を吸い取って、ダイニングにエスコートする。ワインに合う料理を調べて作った。味は悪くないはず。テーブルクロスの上に並ぶ料理に、外国人のように感激を表現してくれる。2人で食事をして、ケーキを出し、ロウソクの火を消すのを見守る。毎年増えるロウソクが嬉しくてたまらない。プレゼントを渡すと、うぉお!と少年のように喜んで、早速部屋の中で履いていたのが可愛い。なにより可愛いのが、カッチリきめた自分に、リクがいちいち赤くなって目を逸らすことだ。  (もう見慣れただろうに…可愛いやつ)  「愁!今日は本当にありがとう。すごく、すごく嬉しい!!」  「良かった…。昨日は本当にごめん、余裕なかった。悔しいよ、大好きなリクの生まれた日なのに」  「いいよ!今日有休にしたんだろ?ありがとうな。毎年、世界一幸せな日だよ。…愁…、今日もシたい」  「当たり前だろ?…リク、この姿の俺に抱かれたらヤバイもんな?」  「ん…カッコイイ…本当にタイプ」  見つめるだけで、顔を真っ赤にしている。嬉しくなって、リクの好きな脱ぎ方でサービスする。ゆっくり、リクの興奮が最高潮になるように。ジャケットを脱ぎ、ハンガーにかける。リクを見ながらネクタイを外して、シャツのボタンを片手で外す。3つめぐらいで止めて、カフスを取る。腕時計を外して、袖を少し腕まくりして、そっと押し倒す。  「リーク」 「はっ、はっ、も、もぉ、触って!」  「可愛い。我慢できない?」  「はぁっ、も、無理!」  必死に腰を上げて愁の足に擦り付けてくる。ギュッと握って耳元で囁く。 「お待たせしました。」  ニコッと笑うと腕で顔を隠した。それをイイことにリクのパンツを下着ごと脱がし、吸い付くと腰が浮いた。  「っぁあぁああああーーーッ!!」  「んぅ…ぢゅる」  「はぁああん!!んっ!!はっ、ぁあああ!!」  ビクビクと跳ねて口内が温かくなる。ごくんと飲みこんで足をあげ、孔にローションをかける。ゆっくり焦らすように広げると叫ぶように早く、早くと誘われる。カチャカチャとベルトを外すと、また真っ赤になる。シャツは着たまま、下だけ脱いで擦り付けると、堪らないというように甘い声を出し、シャツを握ってこちらを見る。  「ん?」  「はぁ、かっこいい…」  熱っぽい顔で微笑むリクに深いキスをしたまま中に入ると、蠢く中に、呼吸が荒くなる。  (はぁ…本当にコレが好きなんだな)  誕生日限定の演出がリクを高め、欲情するリクにあてられる。  「はぁん!!ンッ!はぁああ!ぁっ!ぁあああ!んぅー!!ンッ」  「はっ、はっ、リク、リク、愛してる」  顔を真っ赤にして、リクは欲を飛ばした。 「愁!愁!そろそろ起きろ!マジで遅刻するぞ!」  眠くて仕方がない目を擦ってリクにありがとうと言って、リビングに行くとたくさんの薔薇が飾られていた。  「見て!可愛いだろ?」  「……すごいな、なんか、別世界みたい」  「んふー!」  ご機嫌なリクに満足して、さっと準備し、先にデスクに行った。  (おお!オファーが結構きてるな!)  夢中でパソコンを打っていると、社長に呼ばれた。  「はい、何ですか」  「面白い動きだ。あと、この連日遅くまで大変だったな。ありがとう。」  「……。」  「もしかしたら可能性があるかも知れない。セナに英語を教えているとは本当か?」  「はい。本人から武器が欲しいと相談があったので。」  「そうか。君の能力を分けてもらえるのは助かる。少し様子を見させてもらう。楽しみにしているよ。」  「社長。前に言ったことを後悔させてやります。俺は俺のやり方でやらせてください。…楽しみにしていただいて構いません。期待を超えて見せます」  社長が笑ったのに、笑い返し、すぐにデスクに戻った。  (見てろよ)  愁は見返すことが想像できてニヤリと笑った。 

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