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第79話 ファンサービス
サナのリハーサルを見ながら、優一は先ほどのことが蘇る。セナが好きだと言った翔。しかし、一切その様子を見せないし、何よりプロ意識の高さを感じた。そんなメンバーがいるのにも関わらず、何もしない、というのがありえなかった。セナが好きだと分かっていても、ボロクソに言ってやったことに後悔はしていない。
「サナ、いいよ!今の感じを本番までもっていこ!」
「ありがとうございます!」
サナの仕上がりは本当に良くて、優一も驚いた。リハーサルだけでもカッコイイし、何よりサナに自信が見られた。褒められて嬉しそうなサナが、優一の後ろを見て、お疲れ様です!と言った。振り返ると、スーツ姿の恋人。
(うわ…っ!初めてみた…)
「お疲れ〜。サナ途中からしか見てないけど仕上がってるな」
「ありがとうございます!本番が楽しみです」
「あぁ。楽しみだな」
サナと笑顔で話すタカに目が離せない。ピアニストとのツアーが今日までだったのは聞いていたが、リハーサルは明日からだと思っていた優一はタカの登場に驚いた。クラシックなだけあって、正装したタカ。ネクタイはすでに取ったのか、シャツのボタンを少し開けて、髪型もカッチリと整えられている。スタイルの良さがよく分かって、ぼーっと観察する。
「優一、お疲れ」
頭に大きな手が置かれて目が合うと、ボンッと顔が熱くなった。
「優一?」
「えっ!?あ、お、お疲れ様です!」
「うるせー。大きな声出すな」
ハハッと笑われるのも久しぶりな気がして、仕事場ということを忘れて甘えたくなる。
「疲れていると思うけど、リハ終わったら帰れるから待っててくれない?」
「うん、分かった」
「客席で見てて。何かあったら教えてな」
タカの日程に合わせて、ブルーウェーブのリハーサルは最後になっていて、78のリハーサルの後にステージに4人が立った。やはり、他のグループとはオーラが違っていた。他の3人はいつもどおりラフな格好なのに、タカだけがフォーマルで不思議だった。タレント達が帰宅して、人が少なくなった会場に、様々なブロックの席に座って、どう見えるのかを写真を撮った。ライトが少し落ちて、スクリーンの映像チェックと、マイクチェック。簡単に進むブルーウェーブのリハーサル。それだけでも、全員がスタッフに何かしらコメントしている。突然シュウトのマイクチェックがはじまり、どんどん高音になっていく。
(え?そこまで上がるの!?すごいっ!)
慌てて録画をし、大河に聞かせようと思った。そして少しのノイズとバランスを見逃さないメンバー。4人がハモるところは1発で音を当てて、OKと一瞬で終わった。
(俺たちや、Altairと全然違う)
その後、一曲だけ通します、とブルーウェーブの1曲目が流れる。ただ歌うのではなく、歩きながら、音の返しを聞きながら軽く歌っているのに音は全くぶれない。タカが花道を歩いてきて、優一の座る席の近くでしゃがんで歌う。
(え!?)
目を合わせて、笑顔いっぱいで笑う。しゃがんでいたのが、今度はステージに腰掛けて、優一だけに歌ってくれている。
(うわ…やばい、泣きそう)
『泣くなよ〜優一〜』
ステージ中に反響した、タカの嬉しそうな声に、ジンが真面目にやりなさーい、と返し、シュウトは僕もいく〜とやってきた。ちょうどシュウトとタカのハモリを目の前で見てぼろぼろ泣いた。
『『かーわいー』』
ブルーウェーブはバラード中心だが、やり方は紛れもなくアイドルだった。
『タカもシュウトもふだんファンサービスしないくせにー!本番もやりなよ?』
カナタがマイクでダメ出しすると、2人ははぁいとメインステージに歩いて行った。
(うぅっ!ファンの気持ちが分かった!!)
好きな人が目の前で歌ってくれる、それだけで幸せなのに、笑ってくれたりされると完全に骨抜きにされる。
(俺も、幸せにしてあげたい)
涙を拭いて、やる気に満ち溢れた。
「優一、どうだった?」
「ごめん、ちゃんと見てない。…タカさんがロックオンするから…」
「ははっ!お客さんに可愛い子ちゃんいるなぁと思ったらお前だった。」
「もう!やめてよ!…でも、本当に本当に嬉しかった。」
「だろー?ファンサービス成功!」
帰ろ、と左手を差し出すのを握って、久しぶりの体温にドキドキした。運転中もじっと見つめて、いつもと違う恋人を観察した。
「なんだよ?」
「え?」
「疲れた?」
「ううん。」
「そっか。人多かったから大丈夫かな、って少し心配してた。良かった」
信号待ちにふわっと微笑んで目が合う。ツアーで大変な時にも想ってくれたことが嬉しくて袖を掴んだ。
「うわぁー。女子がやる可愛いやつ」
「そ!そんなつもりじゃないし!」
「じゃあ何よ」
「タカさん、ツアーお疲れ様です。会いたかった」
クラクションが鳴って、ハッとしたようにアクセルを踏んだタカはそこから黙ってしまった。
「タカさん…?」
「優一、とりあえず帰ったら抱くから」
「え?疲れてるんじゃ…」
「あ?お前誘っといて断るのかよ」
「誘ってないよ!お疲れ様って…」
「ん、もう何でもいいから優一に癒してもらうって決めたの。俺にご褒美ちょうだい。頑張ったから」
「あはは!うん、分かった!」
笑ったのに、タカもつられて笑って、その後鼻歌を歌ってご機嫌だった。
「あぁ!待って?タカさんお風呂あとにして」
「え?だって…髪もワックスついてるし…」
「やだ、このままシて?」
「ん〜?なに、気に入ってくれたの?」
「ん。大人っぽい」
嬉しそうに笑ってキスしてくれて、久しぶりの恋人に嬉しさが止まらない。尻尾があったら振り切っていたはずだ。
「タカさん…似合ってるよ」
「ありがとう」
「あと、お疲れさま」
「ん。ありがとう」
優一は自分から服を脱いでベッドに乗ると、タカがクスクス笑って後ろから覆いかぶさる。上からたくさんキスが降ってきて、ビクッビクッと反応するとそれも楽しそうに笑っていてくすぐったい。
「優一、こっちみて」
「…」
「いいの?見たいんじゃないの?」
「ん、見たい」
くるんと仰向けになると、いつの間にかジャケットはなくてシャツだけになっていた。
「わっ!なんかエロいっ!」
「あはは!そんなわけあるか!もういいだろ?」
「えー?残念」
脱ぐのを見ていると、やっぱりスタイルの良い身体にギュッと抱きついた。
「ほら、こっちがいいだろ?」
「うん!」
「お前が着てみ?お前もエロくなるかもよ?」
「そうかな?」
タカのシャツに袖を通すと、ニヤニヤするタカにやっと気付いてイラッとした。
「タカさん、サイズでかいって知ってて…」
ニヤニヤしていたタカが固まっていた。不思議に思って首を傾げると顔を逸らした。
「やばいな…思ったよりエロかった」
え?と聞き返した瞬間にまたベッドに押し倒されて、激しいキスをする。シャツの袖が長くて、タカの肩を掴みにくい。
「は…可愛い」
「ぁっ、んぅ、んっ」
身体を熱い舌がなぞってゾクゾクする。自然と潤む目でタカを見つめると、微笑まれてやっぱりくすぐったい。
「タカ…さん…」
「ん?」
「かっこいい…」
「今更」
足をぐっと開かされ、熱い舌がピチャピチャと敏感な熱を舐める。
「あっ、ァア!ッ!ンッ!」
先端だけをチロチロと舐められて、ふわっと腰が浮くが、イくほどではなくてゾクゾクと震える。
(タカさんが、欲しい)
じっと見つめると、タカがギシッとベッドに乗って、タカの怒張したものが顔の前にきたのを必死に下を伸ばす。
「欲しい?」
「ん、欲しいっ、欲しい」
「ほら、咥えて」
角度が難しくて先端しかできずに、不満を隠さないまま睨むと、クスクス笑った。先ほどの位置に戻ってあぐらをかいたタカに、飛びつくように咥えた。
「ッ!ーは、優一…」
「んぅむっ、んっ、」
だんだん顎が疲れて口を離し、見つめると、よくできましたと唇を親指でなぞられて、その親指をまた咥えるとまた嬉しそうに笑われた。
「タカさん、早く」
シャツは大きくて肩まで落ちていた。袖から手がでないまま、後ろを向いて腰を上げると、ペシンと叩かれ振り返る。
「お前誰にでも誘ってないよな?」
「どうしてそんなこと言うの?」
「お誘い上手過ぎだからだよ」
シャツをめくり、温めてくれたローションが中に入り、指が奥まで入る。1人でしてなかった分、自分でも予想外の快感に腰が抜けそうになる。
(ぁ…どうしよ…まだ、1本なのにっ)
とびそうで必死にシーツを握る。最後までタカを迎えてから絶頂にいきたいのに、ゾクゾクと快感が止まらない。ふと、ピアノを弾くタカを思い出した。2階の遠くの席だったけど、すぐに寝ちゃったけど、舞台稽古ですぐ出て挨拶もできなかったけど、あの演奏は素晴らしい演奏だった。疲れた優一の心を癒し、寄り添うような曲。伊藤に起こされるまで気付かないほど、久しぶりにゆっくり眠った。あの繊細なピアノを弾き、美しい演奏で人々を感動させたあの指が、優一の身体を触っている、そう思った瞬間、突然の絶頂の波に襲われた。
「ァァ!!ど…っ、しよぉお!ッ、タカ、さんっ!」
「イきそう?」
「はぁぁ!ッァア!!ダメッ、なんで…ッまだ、ッァアァア!ーーッ!ぁああああ!」
恥ずかしいくらい量の多い欲をベッドに飛ばし、はぁはぁと激しく呼吸する。
脱力した身体からシャツを取られ、仰向けに寝かされる。まだ余韻で震える身体に二本目がググッと入り、たまらず頭を振った。
「ーーッァア!!」
「はっ、はっ、優一、っ」
「んぅ!タカ、さんの、指っ」
「ん?」
「はぁっ…指、入ってる」
真っ赤になって顔を隠すと、またクスクス笑って耳にキスをされる。
「気持ちいいだろ…?俺の指が、お前の中触ってんだよ…。」
「気持ちっ、気持ちぃよっ」
「俺しか触れない楽器、だな?」
「やだ…ンッ、楽器じゃない…ッ」
「ほら、いい音出して」
グチュッと三本目が入って、一瞬目がチカチカした。思わず音になった声に、いい音、と言われれば更に顔が真っ赤になった。
「優一、入れていい?」
「うん、うん、早くぅ、でも、すぐ、出るかも…」
「好きなだけ出せ。ちゃんとお留守番できたご褒美だ。」
「タカさんにも、ご褒美になる?」
「あぁ。最高のご褒美だよ」
指と比にならない熱が、敏感なそこに擦り付けられて、期待に呼吸が荒くなる。
「タカさん…ッ、きてっ」
「はぁ…んッ」
もの凄い音と共に入ってきて、久しぶりの圧迫感がたまらない。浅く呼吸して、必死にしがみつく。
「あと半分な」
「も…、出そぉっ!」
「好きなタイミングでイっていいから」
「ッァアァア!ん…ッァアァア!」
「は、あと少し…」
「っアア!ンッ!ぁっ!だ…めぇ…ッ!!ダメダメ、ッ出ちゃぅ…」
「くぅ…きつい、イく?」
「ッァアァアーーーーッ!」
中のものをぎゅっと締め付けて、思いっきり吐き出した。
「はぁ、悪い、我慢できない」
「ァア!?待って、待ってぇ!」
「だから、っ、ごめん、って」
「ッぁあああ!っタカさんっ!気持ちぃっ!気持ちぃっよ」
「泣くなよ、大丈夫、何回イってもいいよ」
「んぅーッ!ーアッ!またぁ…ッ、あっ、あっ」
「やば…俺も、イきそっ…」
「タカさん、タカさんっ!好きぃっ!好きっ!」
「は、俺も、愛してるよ」
ガンガンと激しく腰を振られ、優一の背中が反った。夢中で身体を合わせて明日もリハーサルがあることを忘れて求めあった。
「優一、起きろ時間」
「眠い…」
キスしてもらって起こされ、目が覚めるまでハグをすると幸せな気持ちになる。
「おはよう」
「おはよう、タカさん」
「今日はダンスリハ無くて良かったな?動かないだろ」
「あは…そっか。リハーサル忘れてた」
「俺も。ごめんな、久しぶりにお前見たら止まんなかった」
「ううん、嬉しい」
昨日のフォーマルなタカもいいが、やっぱりいつものタカに安心する。えへへ、と笑うと顔を真っ赤にして、早く準備しな、と部屋を出て行った。
(あはは、可愛いなぁ、タカさんも)
怠い身体をゆっくり動かして、恐る恐る床に足をつけ立ち上がる。今日はしっかり立てたことに嬉しくなり準備に向かった。
準備を終えて、ギターを背負う。サナの演奏と、自分たちのバンドに合うギターを選んだ。タカにもそれがいいと言われ、自信がでた。バンドを人前でやることが夢だった高校時代。昔の自分に笑顔で言えそうだ。
(夢は叶うよ!)
顔に出ていたのか、タカもニッコリ笑ってくれた。
「あー!楽しみ!」
「だな!よし、行こう」
「はーい。お願いしまーす。」
タカの車で歌いながら会場に向かった。
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