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第80話 責任感

ギシッギシッ ビクビクと不規則に跳ね出した身体に、にこりと笑う。敏感な腰をなぞって肩に噛みつく。  「レイ…ッ、も、イく?」  「はぁッン!!んッ!アッ!ひび、き、ぃっ!」 「ん…イっていいよ?」  「ッァアァア!!ッーー!!ァア!!」  ドサッとベッドに倒れ込んだレイをひっくり返して顔に吐き出した。  「ん…も、ひびき、顔にばっかり…」  そう言って、出した後の熱を咥えてチューチューと吸ってくれるのがゾクゾクする。出し切ってほっと息を吐くと用意していたタオルで拭いてやる。  「響…今日リハーサルからエロい顔して…」  「いやいや!お前ら全員大河にあてられてただろーが!レイの顔みて、俺…」 「そんなんじゃないし…」  恥ずかしそうに目を逸らしてお風呂に行くのをついて行く。湯船でマッサージしながら労ると、気持ちよさそうに目を閉じる。  「あー…そこ、いい」  「レイ、もっとエロい声出して」  「えー?だって、本当疲れがとれるほど気持ちいいから…いいだろ?」 「疲れが取れたならよかった」  明日から本番までリハーサルが続くため、湯船から出て、髪を乾かし、足のマッサージをしているとイビキが聞こえた。気持ちよさそうに眠るレイにキスをして布団をかけて、伊藤は自分の部屋に戻った。  「あ、レイ今起こそうと思ってた!おはよう」  「……」 目は合っているのに逸らされて無視された。体調が優れないのかと、朝食を作っていた手を止めた。 「レイ?どうした、体調悪い?」  「昨日、部屋戻ったのかよ」  「え?…あぁ。」 何があったのか分からなくて、レイを見ると、ギロッと睨まれた。  「何で戻るんだよ!響のバカ!」  「え?」  「本番まで…一緒に寝たいのに…緊張ほぐすのがマネージャーの仕事だろっ!ヤったら終わりかよ!」  珍しく怒鳴るレイに唖然とする。確かに、今回はレイにとって新しいことが多く、不安だと弱音を漏らしていた。なにより不安そうなのはラップから歌も増えたこと。特に新曲は見せ場も多く、メンバーの覚悟も思い入れも一番強い楽曲だった。何も言わない伊藤に、目が潤んだのを見て、はっと抱きしめた。  「伊藤さん…っ、緊張するんだよ…分かってよ…」  「あぁ。ごめんな、分かってやれてなかった」  「夜中、歌詞が飛ぶ夢見た。怖くて起きたら響がいなくて…」  「眠れなかったのか?」  「うん。そこからはもう頭が冴えて、不安になって…」  「そしたら俺のところ来いよ」  「だって、部屋戻ってたから、別々がいいんだろうなって」  泣くのを我慢しているレイに、苦笑してポンポンと背中を叩く。  「いいか、寂しかったり不安になって眠れないときはいつだって来ていいから。本番まで休ませないと、って思ってたから戻ったの。でも、違ったな。ごめん。本番までは一緒に寝ような?」  コクンと頷いて、肩口に顔を埋めるレイが心配だった。現場では明るく振る舞わなければならないと、気を張っていたようだ。  送迎車でもウトウトするも、はっと何かを思い出してはケータイで歌詞や動線を確認していて、そうとうプレッシャーになっているようだった。楽屋に入ると、レイを横にさせ、伊藤の車にあったブランケットをかけた。  「伊藤さん…?俺、寝ないよ?」  「いいから。とりあえず目だけ閉じてろ」  目を手のひらで覆うと、しばらくして寝息とイビキが聞こえて一安心した。 大河はやっぱり熱を出していたが、誠の様子を見ると問題なさそうだった。その後、優一がご機嫌にギターを持って登場し、弾こうとしたのを慌てて止め、最後に入ってきた青木に、散歩しておいでと楽屋から出した。  「伊藤さん、レイさん体調不良なの?」  誠が心配そうに聞くと、大河も起き上がった。  「今回、そうとうプレッシャーを感じてる。もともとの楽曲のラップパートと、新曲の歌、ダンスユニットでの歌。ここまで任されるのが初めてだからな。昨日も心配で眠れてないみたいだ。」  「そんな…レイさん本当に上手いのに」  誠が不思議そうに言う言葉に、大河も大きく頷いた。 「あぁ。カナタさんと歌うようになって、自然と歌唱力が伸びてる気がするんだよな。低い声が滑らかで俺の音色と合う気がする」  「俺もそう思う!…自信持ってほしいなぁ。リクさんも、レイさんのことめちゃくちゃ褒めてたのに」  「本当か?」  「うん!とりあえずレイを見ていれば大丈夫って!あと、青木から聞いたけど、リクさんに青木が酷評をうけたときも、レイさんは褒められてたって」  伊藤は今日のダンスチームのリハーサルを楽しみにしていた。  リハーサルのスタートは、大河とサナのデュエットだった。シュウトもそばにいていい雰囲気だ。大河はRINGでの歌い方と違い、サナに寄り添うような歌い方で、サナの良いところを目立たせていた。隣で見学していた優一も、サナがめっちゃ上手くなったように聞こえると大絶賛していた。 次にシュウトとのデュエットになると、また歌い方が変わったが、いつもの歌い方だ。  「なんか、優くんと歌ってる時みたいだね、なんか安心してるみたい」  一緒に来ていた誠がニコニコして聞いていた。優一はシュウトの歌い方を真剣に聞き、メロディーを一緒に歌ったりしていた。  (あ、次だな)  伊藤はリクの隣に座り全体を見た。伊藤と反対側、リクの隣に長谷川も腰掛け、曲がなった。  (うっわぁ!78みたいだ!ダンスチームすごいな)  隣のリクはステージから目を離さないまま、タブレットのメモに、サラサラと何かを書いていた。 (おぉ!レイ!カナタに負けてない!) 激しく踊りながらの歌唱は、レイの体力アップに繋がっていたようだ。これが新曲にも活かされたと思うと嬉しくて、このグループにして良かったとほっとした。  (やっぱ、翔はセンターだな)  ダンスパートでもセンターで堂々としている。表情も本番そのものだ。そして、青木も緊張する様子もなく、大きな体を活かして踊るのに迫力があった。  (成長しているな!いいぞ!)  曲が終わり、暗転するとものすごい荒い呼吸が一気に聞こえた。リクがマイクを持ってタブレットを見ながらダメ出しをしていく。  「全体的に、気持ち大きく動こうか。暗転のタイミングはこちらで調整する。個人評価いきます。カナタ、問題ないから本番もよろしく。レイ、歌詞に意識がいってるから例え飛んでもいいから頭で考えるな、お前は感覚でいい。翔、日に日に良くなっていく、翔も問題なし。ルイ、腰の調子がいいから問題ない。後は楽しむだけ。楓、一番オイシイところ、もっと前に出ていい。大地、今ぐらいの自信と、ルイとの交差のところ、ルイを信じてそのままいけ。」  「「ありがとうございます!」」 やっぱり見抜かれていたレイの不安。リクは伊藤を見て、レイどうした?と聞いてきた。  「ちょっと緊張しているみたい。歌がプレッシャーになってきたようで」  「あちゃー。本番近いのに…。レイは本当、何にも問題なかったのに…。それにしても大地は見違えるぐらい良くなったよ!」  「ありがとう!」  リクとダンスチームが撤収する中、長谷川が伊藤の腕を掴んだ。  「愁くん?どうしたの?」  「昨日、セナにダメ出ししてくれたユウのことだけど」  「え!!?ご、ごめんなさい、失礼しました!先輩なのに…。たぶん、翔が大変そうだと見て思ったんだと思います…。悪気は無くて、本当に良かれと思っただけかと…」  「いや、ありがとうっていいたくて。音源まで送ってくれて、セナに火をつけてくれた。翔に音を確認したり、愛希とずっと練習してる。本当にありがとう!」  いい方向にいってくれてほっとして、伊藤も頭を下げた。生意気にも捉えられることもあるから気をつけないと、と気を引き締めた。  「あと、翔から、大河さんもダメ出しをくれた、とみんなの前で言ったんだ。Altairから大河を追い出したメンバーには刺さる言葉ばっかりで、正直助かる。」  「大河が?」  「あぁ。翔がダメ出しをお願いしたら、言ってくれたって喜んでた。他のメンバーはあからさまに傷ついてたけどな。ま、これが現実だからな。」  重ねて失礼しました、と頭を下げた。そうこうしていると、ステージにバンドセットが組まれ、噂の優一が沢山の機材を自分でセッティングしていた。  (ユウ、嬉しそうだな)  思わず笑うと、隣で愁も笑った。  「本当、RINGって音楽好きだよなぁ。正直、Altairのマネージャーでよかったって思うよ。RINGは音楽レベル高すぎてついていけないよ」  苦笑いする愁に伊藤は優一を見ながら言った。  「音楽しか、できないんだよ。先輩にダメ出ししたり、メンバー同士でごちゃごちゃしたり、まだまだアイドルになりきれない不器用なやつらだよ。でも、みんなが音楽にしがみついて生きているんだ。特に、ユウは。もともとユウとマコはバンドマン。アイドルには興味ないから。」  ステージにタカとジン、誠が揃い、楽しそうに話している。タカがスタッフに声をかけて、少しライトの明るさが落ちる。そして、タカの声の後に優一のギターが入り、リズム隊が入る。  「「おお!」」  思わず声が出るほどカッコ良かった。タカのバラードのイメージは完全に覆り、海外のバンドを見ているようなクールなイメージだ。 「ちょっと、響くん!ユウ上手すぎない!?」  「うわぁ、本当だね!」  いつものニコニコだけじゃない、雄の顔でギターに集中している。そしてラストサビで優一と誠が一歩前に出て、誠がメインメロディを、優一がフェイクを、ジンが下のハモリ、タカが上のハモリと一気に分かれ、盛り上がりがすごかった。ビリビリとする圧に愁も釘付けになっていた。  曲が終わると、見にきていた大河とレイ、青木が盛り上がっていた。カナタ、楓とルイ、篤、翔とセナも客席にいて大きな拍手を送っていた。そして、その中にサナが入り、センターに立ち、タカはキーボードの前に移動した。  「おお!サナちゃんいいね!」  優一のデモを聞いていた伊藤は、サナが歌いあげた優一の曲を嬉しく思った。いつものサナの雰囲気とのギャップはカッコよくて盛り上がりそうだ、と嬉しくなった。  ふと、会場の入り口付近で石田三兄妹が集まって楽しそうに話していた。  「こんにちは!」  「「伊藤さん!こんにちは!」」  「さすが双子ちゃん!ハモっちゃうんだ」  笑って言うと、2人もキャッキャと笑った。レナがもの凄く明るくなり、レイも一安心していた。デビューが決定するのはこのコンサートだが、緊張していないようだった。  「どっちにしても、私はやりたい音楽が見つかったので!それが嬉しいんです!本当に、ユウさんやタカさん、楓さんには感謝しかありません!」  その隣でレミがぴょんぴょん跳ねる。  「私!ユウさんのギター初めて見て、超カッコイイです!!お兄ちゃん、ユウさんって彼女いるかな?」  「コラコラ、アイドルでしょ?」  「はーい…。でも、本当にカッコイイ…」  目がハートになる妹に苦笑いして頭を撫でた。すると、レナがニヤニヤして耳打ちした。  「お兄ちゃん、伊藤さん、ここだけの話!ルイさん、マリンちゃん大好きなんだよ?」  「「え!?」」  「でね!マリンちゃんも少し気になり出してるのっ!でも、知らんぷりしてる!2人見ていると可愛いよっ!」  本当に嬉しそうに笑って悪戯っ子の笑顔だった。  「私もユウさんとお話ししたい!ねぇ、お兄ちゃん!」  「お兄ちゃんを頼らないでよー。自分で話しかけた方が、ユウは喜ぶかもよ?」  「そうかな?!うー!頑張っちゃお!」  レイが頭を抱えたのを、伊藤は隣でクスクス笑った。リハーサルが終わり、4人で楽屋を歩いていると、バンドチームと鉢合わせ、レミがレイに隠れた。  「お、双子ちゃんたちだ」  オーディション以来のタカに緊張していた2人だが、あの時とは違う話し方に驚いて挨拶していた。  「レミ!ほら、ユウさんいるよ!」  「ちょっと、レナ、やめてよ!」  「ん?レミちゃん?」  レイに隠れるレミを優一が覗き込むと、思いの外顔が近くて2人はビックリして真っ赤になった。  「うわ!ビックリした、ごめんね!」  「えっ?!いえ!あ、あの!お疲れ様でした!」 「うん、お疲れー!…あ、レナちゃん、デビューできるといいね!応援してるよ!」  「あぁ、俺も楽しみにしてるから」  「はい!ありがとうございます!」  「本当、見違えるように綺麗になったし、明るくなったね!楽しみだよ!」  優一からの言葉に、レナは元気よく返事をし、頭を下げた。  「うー…レナに取られたぁ」  「お前が話さないからだろ?」  拗ねてレイの腰に巻きつくレミに、フォローを入れてやろうとした所で、タカが優一の手を握って歩き出した。  「「え!?」」  「レミ?こいつは、俺のだから諦めな」  ウィンクして去っていこうとするのを、優一が顔を真っ赤にして手を振りはらい、慌てて後ろを振り返った。  「タ、タカさんは、からかってるだけだから、へんな妄想しないでね?」  必死な優一は、勘違いさせないように誤魔化したが、更に自分で地雷を踏んだ。 「でも、タカさんは渡さないよ!」  レイとタカは大爆笑して崩れ落ちていた。え?と2人を交互に見てきょとんとしている優一に伊藤は頭を抑えた。レナは顔を真っ赤にして、マリンちゃんに伝えなきゃと大興奮していたが、レミは理解が追いついていなかった。  「俺、変なこと言った?」  「もういいから。先戻って。レミちゃんとレナちゃんもリハーサル頑張ってね。」  「「はい!頑張ります!」」  伊藤は全員を解散させると、タカは側から見てもわかるほどご機嫌になり、いつまで笑い、ついには優一が怒りはじめていた。  「はぁー…レミの恋が…」  「まぁまぁ、よくある憧れだろ?」  「あそこまで照れるのはあまりないよ。いつも積極的だから。」  複雑そうに前を歩くカップルを眺めてため息を吐いた。  「レイ、帰るぞ!」  「はっ!…あ、こんな時間に…」  リハーサル会場から事務所のスタジオに行きたいと言ったレイの声を聞き、夕方には降ろしたが帰ってくる様子がなく、迎えにいくとまだ歌っていた。  「レイ。リラックスして」  そういうと、気を張っていたのかボロボロ泣きはじめた。  「伊藤っ、さん」  伊藤は慌てて中に入ると、急にスタジオのドアが開いて、リクとカナタが入ってきた。  「じゃじゃーん!助っ人参上!」  「リクさん、何ですかそれ。レイ、大丈夫?あぁ…泣かないで」  ひっくひっくと泣くレイにカナタが抱きしめて、リクは苦笑いした。座らせて、円になるようにして座る。  「レイー?大丈夫だよー。お前は何も問題ないんだから。もっと力抜いて?」  リクが優しく言うと、更にぼろぼろ泣きはじめ、あれま、と困った顔して伊藤を見た。  「レイ、何が自信ないの?」  カナタが聞くと、歌、と呟いた。  「歌?どうして?すごく歌えているよ。」  「大河、みたいに、歌えないし、俺より、マコが上手いのに、なんで俺なのって。ダンスチームでも、カナタさんに助けてもらってばっかりで…」  「レイはどんな歌い方したいの?誰になりたいの?」  カナタが少しきつめに話したことが珍しく、リクと伊藤はカナタを見た。  「誰だったら満足するの?…レイが歌が好きなこと知ってるよ?嫌いになったなら、辞めたらいい。歌わないでいいよ」  「っ!!」  「歌は、比べるものじゃないと思ってる。伝わるか、伝わらないかだよ。今のレイは不安ということを歌でみんなに伝えてしまってるの。歌詞の意味や世界観を伝えずに、個人的な思いだけを乗せるのは違うと思う」  作品に対する向き合い方に、レイは涙を流しながら聞いた。 「レイ、これから2つのパターンで歌うから聞いて?どっちが好きか教えてね」  突然立ち上がり、アカペラで歌い出したカナタ。歌う曲はダンスチームのものだった。ものすごい声量と技術に圧倒され、レイの涙も止まった。2回目、と言った後、表情がカッコイイものになった。  「おおー!いいねー!」  リクがすぐに声を上げ、レイは目を輝かせた。  「…どっちが好き?」  「俺は2番目ー!」  「リクさん、しー!今はレイの番です!…ふふっ、ルイにそっくりだ」  「やめろよ!ルイよりはマシ!」  一気に和んだ空気に、レイはにこりと笑った。  「俺も、2番目です!」  「どこが気に入ったの?」  「曲のテーマとか、雰囲気が表情や歌い方から伝わりました。踊りたくなります!」  「そうでしょ?これは技術じゃないんだ、自分が何をどう伝えたいかを考えるだけでこんなにも違う。なんなら1番目の方が技術は出し惜しみなく出したつもり。でも1番目は選ばれなかった。なぜなら、伝わらなかったから。」  リクは足をぶらぶらさせて楽しそうに聞いていた。レイは教祖様のお言葉を聞く信者のように、崇拝の眼差しでカナタを見つめた。  「力んでいたら伝わりにくいよ。上手く歌うことじゃなくて、お客さんに届くように、それだけ考えたらいいよ。」  「ありがとうございます」  「レイ、大地に言ったな?メンタル弱い奴は邪魔だって。ただ、レイにはそうは思わない。お前は責任感が強すぎる。見てる位置が高いからその差に焦っているだけだ。ただ、その位置は、実は、近づいてきている。いいか、レイ。伝わるも伝わらないも、判断するのはお前じゃない、他人だ。お前がどれほど出来ていない、と自分を責めようが、お前の評価は他人がする。その他人の俺から言わせてもらう。お前の歌に、ここにいる全員が、任せられる自信を持っている。」  リクの言葉に、はっとレイは伊藤を見て笑って頷くと、顔をくしゃりと歪ませ静かに泣いた。  「レイ、何も心配いらないよ。俺だってレイだから安心して歌えるんだよ」  「そうだよー。翔じゃなくてレイが歌パートに入ったんだから、そこも分かっとけよ?」  2人の言葉に笑って、ありがとうございます、安心しましたと頭を下げた。カナタとリクから頭をくしゃくしゃに撫でられ、レイと伊藤はスタジオを追い出された。  「レイ、寝よう?」  ぼんやりテレビを見ているレイを誘うも動こうとしない。隣のソファーに腰掛けると、ぎゅっと抱きついてきた。  「響…リクさんやカナタさんが言った言葉、本当かな?」  「わざわざ嘘つくわけないだろ…全く…。俺、レイの歌好きで、今回のコンサート本当に楽しみなのに…歌パート嫌いなのかなって悲しかった」  「ごめん…嫌いじゃなくて、実力が足りない気がして…自信がなかった」  「自信持ってよ、大好きなのに。俺…本当に嬉しいんだよ、レイの歌が音源になったり、歌パートでつかってもらえるの。」  キスしながら言うと、気持ちよさそうに身を委ねてくれた。  「レイ…今日はヌくだけな?」  「え?…っ!?、響っ!?…ッァアァア!」  無理矢理下着ごと足首まで下ろして、反応していないそこを咥えて愛撫すると、頭をきゅっと掴まれ、甘い声が響く。  「はぁっ、はぁっ、響っ、ッ、ァアア、」  表情を確認すると、目を閉じて快感に震えていた。ビキビキに硬くなったものに興奮して裏筋を強く刺激すると、腰が浮き、ゆらゆらと腰を振りはじめた。  「ぁっ、あっ、ああっ!ァア!ァアア!」  快感に没頭しているレイに満足して思いっきり吸い上げると、前屈みになりガクガクと足を震えさせ達した。  「レイ、寝ようか。」  そう言うと、ソファーの背もたれに捕まって腰を落とす。後ろを振り返って潤んだ目がこちらを見た。 「響、ちょうだい?」  「っ!!」  年下らしい甘えた口調に理性が切れて、唇に噛み付いた。 「ンッ、んぅ、ふっ、」  近くにあった乳液で指を濡らしてキスしながら指を入れると、口を離して大きな甘い声が響き、反対の手で口を塞いだ。  「ンーッ、ん、んぅ、」  「はぁ、はぁ、はぁ」  苦しいのか首を振るが、ぎゅっと押さえつけて三本目を入れると綺麗な肩甲骨がみえて肩にキスをする。顔を真っ赤にして、背中を汗が通る。 (はぁ…エロい身体だな…)  後ろから熱を擦り付けると、堪らないというように首を振る。口を塞いだまま、後ろからそっと挿入すると、腰を支える手を握られ、背中が反る。  「ーーッ!!んー!」  「はぁ…レイ」  「ンッ!ンッ!ンッ!ンッ」  「はぁ、はっ、はっ、はっ」  お互い無言で高みに上り詰めていく。レイが支え切れずにガクガクと震え、きついだろうと、一度抜いてソファーに仰向けにする。  「っ!!?」  とてつもなくエロい顔に釘付けになる。快感に支配されて伊藤を潤んだ目で見ている。火照った顔と汗ばんだ身体。まゆも下がり半開きの濡れた唇。  「ぁ…ひびき、もう、すぐ、だから…」  イく直前に抜かれて、レイは弱々しく伊藤に手を伸ばす。そっと握ると、それだけでもゾクゾクしたように目を閉じてる甘い声を漏らす。何も出来ずにじっと見つめると、レイも目を合わせた。  「ひびき…すぐ、すぐだから…」  「レイ…」  「おねがい…ひびき、もう、イきそ…」  ずっと快感の余韻にしびれているように気怠そうな表情。レイは何をしてもイきそうな自分を抑えるように、目を閉じて、呼吸を必死に整えている。ついに我慢の限界だったのか、薄く目を開いて手が自分のものに動いた。  「だーめ」  「やだっ、ひびき、もう、すぐ、すぐなのに、イきたいっ、ひびき、助けて、もう、我慢できない」  ポロリと涙が落ちて、必死にお願いされ、足を開かせもう一度中に入る。  「きっつ!!」  「ぁっ、あんッーーっぁ、ダメ、ダメぇ!ッッ!!ーァアァアァアァア!!!!」 「ッく!」  ビクビクと跳ねて、ボロボロと涙を零す。胸まで飛んだ白濁がさらに伊藤の興奮を煽る。腰を抱え直して、ガンガンと腰を入れ込むと絶叫が部屋中に響き、また口を押さえると中ぎぎゅーっと締め付け、伊藤も声を漏らす。レイを見ると、顔を真っ赤にして伊藤を見ていた。  (あ…なに。レイ、これに興奮してる?)  先ほども以上な速さで絶頂に上り詰めたのはコレかと、ニヤリとする。  (レイはドMなんだな、だからシュウトにも対応できていたのか) だからと言って乱暴にするつもりはない伊藤は、体を密着させて耳元で囁く。  「レイ…、無理矢理が好きなんだな?」  ふるふると首を横に振るも、中はぎゅっと締め付ける。  「興奮した?襲われてるみたいだったから燃えたろ?…ここ、すっごい締まったよ」  またぎゅっと締めつけ、レイの呼吸が荒くなっていく。  「俺のものを締め付けて…レイの前立腺抉っちゃったから最高に気持ちよかっただろ?ここ…ほら、前立腺。ここ、を…こうして、ほら、わかる?」  「んーーッ!!」  「ほら、締まった。いい子だな…。」  いい子と言われた瞬間、レイが目を見開いて、ゾクゾクと背が反り、中はくんっくんっと締め付け、その後、足がガクガクと震えていた。  「イった…?」 口から手を離して、前髪をかき上げてやると、目を閉じて余韻に浸っている。  「レーイー…?」 「ど…しよう…気持ち良すぎて…本当におかしくなる…いつ…イくか、自分で…分からない…」 「可愛い」  「ンッ!…はぁ、も、響、早く、気持ちいい、から俺を解放して、もう、楽になりたい」  気持ち良すぎて怖がるレイに、明日のことも考えて寝かしてやろうと、抜こうとしたが、レイが腰を押し付けてきた。  「レイ?もう、今日は」  「やだよ…も、気持ち良すぎて、こわい、のに、響が欲しい、ずっと、こうしていたい、離れちゃいやだ」  「っ!!?」  「ひびき、ひびきが好き…、もっと中きて、ひびきしか、入れないところ、もっと…ッ!?ッぁああああ!!!っあー!」  「レイっ、レイ、好きだ、好きっ、」  「ぅあっ!ああっ!ああっ!っああ!?」  「はぁ、は、奥、行くぞ?…は、少し、痛いかも」 「っぁああーー!!」  ググっと入った奥に、伊藤も大きく息を吐き、レイはビクビク震える体で伊藤に必死にしがみつく。  「こわいっ」 「はっ、はっ、大丈夫っ、動くよ」  「アッァアァア!!!」  泣きながら善がって頭を振る。強い快感に逃げる体を押さえ込んで奥まで押し込んで、絶叫が響く。伊藤も理性が飛んで、明日無理させることを忘れて、レイの意識が飛ぶまで抱き潰した。  「響くん、慰めエッチはいいけどヤりすぎ。レイバテバテじゃん。可哀想」  ニヤニヤとリクが話しかけてきた。RING全員にも怒られ、レイは少しの時間も爆睡し、起きればあの色気を撒き散らし、手に負えない状態になってしまった。全体の通しリハーサルなのに緩慢な動きと弱々しい笑顔。汗をかいて火照った顔は昨日の情事を想像させる。RINGがボーディーガードのようにぴったりとレイに張り付き、終わった瞬間、2人は帰れと大河に怒鳴られた。  「伊藤さん、ごめん。今日、調子悪かったかも」  「いや、…俺の方が本当にごめん。」  「響は悪くないよ。昨日気持ち良すぎたから…」  「もういいから。今日はもう寝ような。」  「一緒に寝てくれる?」  「いいよ」  嬉しそうに笑うレイに、今夜の生殺しを覚悟した。  「響、キスだけ」  「響、触って?」  「お願い、入れて」 「イきたいっ!もう!!響ぃ!」 「ッァアァアーーッ!」  結局誘惑に勝てずに抱いてしまった。レイは爆睡し、朝には完全回復していた。 事務所の一大イベント2日間がスタートする。9万人のファンが集まるコンサートは、ペンライトの色でどのグループのファンが多いのか一目瞭然だ。マスコミの取材があるため、早めに現地入りして待機の時間が長いステージをどうモチベーションを切らさずにサポートするか、楽しませるためにそれぞれの力を見せるとき。  「仕上がりはどうだ?」  「Altair、問題ありません」  「ブルーウェーブは安定しています」  「RING、全員の調子が上がっています。」  「ダイアモンド、サナはいい仕上がりです。男性ファンを増やして見せます」 「78、最高のショーにします。」 社長との最終確認も終わり、全員で士気を高める。  (この瞬間がたまらない)  「開場します!」  スタッフがバタバタと動き出す。その声はどの楽屋でも聞こえ、全員のモチベーションが高まった。

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