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第85話 最終日の次の日 伊藤×レイ

バタン  (ん…ひびき…?)  朝早く仕事に行ってしまった恋人の温もりを目を閉じたまま探す。いつもは行く前に声をかけてくれるが、今日は寝かしておいてくれたらしい。  二日酔いでぼんやりと目を開くと、ベッドサイドに置かれた手紙。  『レイへ  おはよう。 コンサートお疲れ様。  今回はレイの中で試練がたくさんあって、たくさん不安になって泣いたりしていたけど、本当にいいステージだった。  俺は、伊藤響は、レイの1番のファンだから  レイの歌を聴くことができて幸せです。  ありがとう。よく頑張った。  レイは自慢の恋人だよ。 響  』  後半は目が潤んで、パタパタと涙をこぼした。こんな嬉しいサプライズがあるのかと、嬉しくてひたすら泣いた。今すぐにも抱きしめたいのにそばにいない。仕事中に電話するのも気が引ける。   レイ:響、愛してる。手紙、ありがとう。響に会いたい。  言葉だけを送ってまた目を閉じた。 (ん…?)  息苦しくて、ぼんやりと目を開けると、ピントが合わず、もう一度目を閉じる。  (なんか…気持ちいい…)  「レイ」  「っ!?」  腰にくる甘い声にゾクゾクして、呼ばれるまま目を開くと、優しい顔の伊藤。前髪をそっとかきあげて、愛しそうにこちらを見る。  「レイ」  「?」  「おはよ」  「っ!!」  ガバッとタオルケットを頭まで被った。  (何これ!何でこんなに恥ずかしいんだよ!)  クスクス笑う声もくすぐったくて、心臓の音もうるさくて、どんどん顔が熱くなる。  「レイ?どうだった?おはようのキス」  「〜〜〜っ」  「姫のお目覚めだな」  今度は手を取られて、手の甲にキスされる。キザな仕草なのに、まんまと食らって恥ずかしくて逃げ出したかった。  (今なら大河の気持ちが分かる!からかってごめん!!)  心の中で大河に謝って逃げようとうつ伏せになると、上から体重をかけられ、グエッとへんな声が出た。  「姫、どこいくの?」  「姫って言うな、なんなのそのキャラ」  「や?王子様の気分だったから」  「ふふっ!似合わないよ」 「えー…残念。」  悔しそうにしながらも、笑う顔がとろけていて直視できない。  「ひ、ひびき、仕事は?」  「今空き時間。」  「事務所で待機じゃないの?」  「いいだろ?別に」  伊藤はご機嫌で、レイが何を言っても愛しそうに笑って、ゆっくり、うん、うん、と聞くのがレイはたまらずに伊藤に抱きついた。  「ふふっ、どうした?」  「恥ずかしい」  「今更ー?」  「響、めっちゃ俺のこと好きって顔で見てくるじゃん…。仕事中なのに」  「そうだな…ダメなのに。レイが好きすぎて少しでもそばにいたくて帰ってきた。」  「っ!夜収録行くのにっ」  「でも、今会いたかった」  後ろから耳を甘噛みされて、ブルッと震える。 「ひびきっ!…ンっ!」 「は…っ、レイっ…」  「こ…ら…、仕事、中、だろ…?」  「うん…そうだよ…」  伊藤はレイのお腹の方に手を回し、反応したものを確認すると、下着の中に手を入れてきた。  「アッ…響っ…ダメ、だって…」  「可愛い…」  「んぅ…っぁ、はぁっ、はっ、ひ、びき」  手を取ろうとするも抑え込まれ、また耳を甘噛みされる。  「好きだよ…レイ…」  「んぅ!ん!」  「レイ…愛してる…可愛い、こっち見て…は、綺麗…」  目が合うと、ニコッと微笑まれ顔が熱くて仕方がない。耳に吹き込まれる色気を含む声は簡単にレイを落とした。  「ひびきぃ」  「うん、少しだけ、な」  下着の中で、大きな手がレイを高めていく。はっはっ、と目を閉じて快感だけを追う。  「いいよ、イって…」  まだイきそうになかったはずのソレは、伊藤の声で大きく腰が跳ねる。  「ァアァアッ!!!」 ビクビクと震えながら、気持ち良さにほっと息を吐くも、下着の中に出したのが気持ち悪い。  「レイ、脱がすよ」  「ンっ!」  鳥肌がたってタオルケットを握る。丁寧に処理してもらって新しい下着を用意される。  「あれ?響…」  (シないの?)  思わず出そうになる言葉を止めて見つめると、チュッとキスされた。  「行ってきます」  頭を撫でて颯爽と出て行った恋人に、たまらない気持ちになって枕を抱きしめた。  (うー!カッコイイー!) 仕事の送迎にきた伊藤はマネージャーの顔になっていて少し寂しくなった。2人の時だけに見せる特別な顔だとは知っていても、先程の甘い顔を見たくてたまらない。  「なんだ?どうした?」  「えっ?」  「レイさん、伊藤さん見過ぎ!穴空いちゃうよ!」  後ろから誠もニヤニヤと声をかけてくる。そんなに見ていたのかと驚くも、伊藤に笑ってほしくてじっと見つめると、手のひらで隠された。  「気になるからやめて」 ズキッと痛んで前を向くと、隣と後ろからクスクス聞こえて誠を振り返ると、可愛いと頭を撫でられた。 収録は絶好調で、何より誠の天然が炸裂してツッコミが忙しかった。本人は大真面目だからよけいに面白い。そして終わった後は少し凹むのも面白い。 「ねー、俺変なこと言った?」  「マコ!お前はそのままでいて」  「どうしよう、今日の放送カットされてて欲しい!大河さんに見られたくない…」  落ち込んだ理由は大河にカッコ悪いところを見られたくないということに伊藤とレイはさらに笑い、誠は拗ねてシートに横になった。  「ギャップがいいよなぁ。黙ってたらカッコイイ、でおわるけど、喋るとおバカ」  「バカじゃないよ!みんなが欲しい答えが分かんないだけ」  「お前学校でもこうだったのか?」  「テスト前は優くんのスパルタだったからテストは大丈夫だったよ。」  昔から優一にお世話になっていたようで、想像がついてクスクス笑った。  「おい、マコ?大河休ませろよ?」 「はーい。今日どうだったの?」  「収録中以外は爆睡。OK出た瞬間眠ったからスタッフさんも心配してた。」  「体調悪いのか?」  「いや?マコがドSだから。」  「ち、ちがうよ!」  誠がドSだなんて、と振り返ると顔を真っ赤にしてもじもじしはじめた。  「だって、可愛いんだもん。」  思い出したのか、顔を隠して蹲った。  「昨日大河かばって愛希に怒鳴ったってな?」  伊藤がバックミラーごしに誠に話しかけると、それも思い出したのか、珍しく興奮し始めた。 「ちがうよ!大河さんに怒鳴ったの。愛希さんに文句言われても仕方ない…みたいな感じだったから!愛希さん、何にもしらないくせにさ!…俺、愛希さん苦手!優くんの悪口も言ってたし!なにより大河さんや優くんが圧倒的に可愛いし!」  全然タイプじゃない!と言い切ったところで、誘われたのかな、と想像がついた。愛希はレイが透に好かれていることから、練習生の時に当たりが強かった。 (「レイのどこがいいんだろうねー?可愛くもないのに」)  (「大河ならまだ話はわかるけど、なんでレイ?歌もダンスもビジュアルも平均じゃん」)  言われたことを思い出して苦笑いする。 「認められたいなら、相手を下げるんじゃなくて自分があがればいいだけなのに!ムカつく!」  「それもそうだな。愛希は余裕ないんだろうな。」  「なさすぎ!!クオリティーだけみたらAltairがトリなんて不思議!78かブルーウェーブでしょ!」 怒ったまま到着した誠だったが、お疲れ様でしたー!と元気よく降りて行った。  「ここだけの話、Altairからの乗り換えファンが増えているらしいよ。」  「え?」  「RINGはありがたいことにそのファンを取り込んだ。ブルーウェーブも78も。ブルーウェーブはタカのファンサービスで一気に増えたらしい。」  「へー!ファンサービスすごかったんだ!カナタさんしか見てなかったや!」  「愁くんが頭を抱えてるよ…。さすがに翔だけじゃ抱えきれないところまできてる。」  どうしたもんかね…と伊藤もため息を吐いた。 「もしも、三輪さんのままだったら、まずあのステージに立てていないと思う」  「え?」  「ユウも復活できなかったかもしれないし、大河はもしかしたらまだ路上ライブかもしれない。ううん、辞めていたかもしれない。RINGは3人だけでは成り立たない。伊藤さんが立て直してくれたから今がある。離れたから分かることもあった…代償はあまりにも大きすぎたけど…。」  「……。」  「ありがとう、伊藤さん。」  ニコリと笑うと、少し目が潤んで鼻をすすった。  「あの時は…本当に、ごめんな」  「あっはは!ビックリしたよー!許さないっ!何かの時に取っておく!」  「うん…。レイ?」  「ん?」  「愛してるよ」  「っ!」  優しい顔で笑ってくれたのが嬉しくて、早く部屋に行きたかった。駐車場に着くと急いで降りて、伊藤を急かした。  「なんだ?どうした?」  不思議そうな伊藤を部屋に急いで押し込むと、そのまま激しくキスを仕掛けた。  (響、響がほしい)  余裕のないレイとは違い、伊藤は微笑んで髪を撫でてくる。  (いつも…俺ばっかり欲しがってる)  そう思うとパッと離れた。伊藤はそれでもクスクスと笑っていて悔しくて泣きそうになる。  「レーイー。泣くなよ。お前だけが欲しいんじゃないよ」  「知ってるくせに…性格悪い…」  「本当に俺の前では泣き虫だな…可愛いからいいけど」  「可愛くない!」  一瞬ビックリした伊藤だったが、ぎゅっと抱きしめて首にスリスリと顔を擦り付けてきた。  「んっ」  「欲しいよ、レイ。お前が欲しくて、頭おかしくなりそう」  「んぅんッ!あ、痕ダメ…」  「嬉しいくせに。」  ヂュッと吸われた首筋がピリッと痛んで気持ちよくなる。伊藤を見つめると、欲情した目にホッとして身を委ねた。  (響も欲しがってくれてる…)  その事実が嬉しくて、伊藤のベルトを外して、スラックスも下ろし、緩く立ち上がったものを口に含む。髪をぎゅっと握って吐息が漏れるのにゾクゾクする。  (ん…大きくなってきた…)  「レイ…イイよ、上手」  褒められて、嬉しくてもっと奥までいくとぎゅっと喉がしまった。気持ちよかったのか声が漏れるのに興奮して、苦しくても何度も繰り返した。  「レイっ、っ、っ、離して、っ、出そうっ」  余裕のない声がレイをさらに欲情させ、裏筋を刺激しながら吸い上げた。  「くぅっっ!まっ、て、ンっ!っぁあ!」  喉にドクドクと注ぎ込まれるのをコクコクと分けて飲み込み、口を開けると不満そうな伊藤の顔。  「顔に出したかったのに…」  「残念でした!本当好きだよなぁ…」  「たまらないんだよ。綺麗なレイを俺ので汚す背徳感?ゾクゾクすんの。」  思い出してるのか想像してニヤニヤするのに苛つく。 (こんなことならかけて貰えばよかった)  過去の自分に負けた気がして悔しくなる。勢いよく全裸になってベッドに飛び込んで自分ので代用しようと伊藤に見せつけるように足を開き、立ち上がったものに右手をかけた。  「レ、レイ!?」  「は、っん、おの、ぞみどおり、かけて、やるよ…っ、ひびきは、そこで、見てろ」  「そんなっ、やば…鼻血でそっ…」  動画撮っていい?と聞かれ、もうどうでも良くなり、伊藤に欲情してもらうために必死で自分を追い込む。  (響が見てるだけで…すぐ…イきそ…)  「はぁっ、レイ、っレイっ」  興奮してるのか、息荒く欲情した目で名前を呼んでくれる。  (響が…俺に…欲情してる…)  「ぁっ、ァア、っああ!っやば、ぃ、もっ」  「レイ!はやく!レイ!」  腰がググッと仰反る。顔にかけなきゃと、焦るも、間に合わなかった。  「ッ!!」 胸やお腹に温かいものがかかって、必死に呼吸をする。伊藤の希望に添えなかったのに眉を下げるも、服を脱いで飛びかかってきた。  「はぁっ!はぁ!レイっ!レイ!」  「ァアァア!あん!!ッぁああ!まって、ダメダメ!そこぉ!」  ローション塗れの指が一気に入り込んで、前立腺をググッと押すのにたまらず背をそらす。 「どこまで煽ればっ、気が済むんだよっ」  「ッァァアァアーー!イきそう!響ッ!も、出ちゃうからァッ!」  「大人ぶらせろよ…ッ、ガキみたいに、ッ余裕、ないの、かっこ悪いだろ…ッ、甘やかしたいのに…ッ、」  指が乱暴に抜かれて、熱が一気に貫いた。  「ッァアァアーーーーッ!!!」  「くぅ…ッ、はぁ、ッ、は、行くよ、レイ」  「ンァッ!!はぁん!ぁん!!ッダメダメ!!奥ダメ!おかしくなるからッ!」  「俺だけ落としといて…お前も落ちてこい」  「ッァアァア!!ァアァア!!」  強い快感への恐怖が、ふっと心地よさに変わった。力が抜けて、伊藤が見つめるのが恥ずかしい。  「はっ、はぁっ、んっ、は」  「レイ?…大丈夫か?」  「はぁっ、は、気持ちい、は、ひびき、きもち」  「っ!!」  「やばい…なにこれ…ぁっ、きもちっ、っ、.っ!ぁっ、はぁっ、きもち」  じわじわと遠くから押し寄せるような快楽。味わったことのない感覚に震えて、でも期待で口角があがる。  「はぁっ、ひびき、くるっ、はぁっ、きもちぃの、くる、はぁっ、どうしよ、」  「はっ!はっ!レイ、レイ」 「ひびきっ!ひびきぃっ!!」  何も考えられなくなって、中の伊藤をぎゅっと締め付けてはその快感に追い込まれる。  (はぁ、ヤバイ、ぶっ飛びそう!) 伊藤の背中に爪を立てて、頭を振っても追いつかれる。腰を引いても奥を貫かれ頭が真っ白になる。自分で何を言ってるのかもわからないまま、全身が強張っていく。  「ひびきっ…っ!っあ!!ダメッ!」  「レイ、いいよ、イッて」  涙がポロポロ溢れて、必死に意識を保とうとするも強烈な快感に飲み込まれた。  「ッッ!!ーーッァアァアーー!!」  「くぅっ!はぁっ、やば…きっつ…ッーーッ!」  ドサッ  「はっ!…?…は、はぁ、はぁ」  「はー…はぁ…、レイ、大丈夫か?」  「え??…あ、うん」  「中だけでイくときつかったろ。よかった…意識あって。」  苦笑いする伊藤にぎゅっと抱きついた。好きという感情で溢れて追いつかない。  「響、好き!好きだよ!」  「あははっ、ありがとう。どうした?」  「ん〜大好き〜」  「甘えん坊さんだな。…ふふっ、可愛いなぁ…レイが甘えてくれるの嬉しい」  頭を撫でて抱きしめてくれる。胸に収まって深呼吸するだけで疲れがとれていく。  「癒しだぁ〜」  「あはは、おっさんみたいなこと言うな」  「いやぁ、本当に。パワースポットだ。」  「レイ専用のな」  「…っ」  瞬時に顔が赤くなって、抱きついて隠した。すると、伊藤がレイのパートを歌い出した。目を閉じて聴くと柔らかな声が気持ちいい。  「響、上手」  「ここのパート好きー。レイ、ここのパートでカメラ抜かれるだろ?その時の顔、最高」  どんな顔だっけ、ときょとんとすると、ケータイを取り出してミュージックビデオを流し始め、慣れたようにそこでとめた。 「ここで、少し笑うだろ?カッコイイー!ってなる!会場もめちゃくちゃ沸くしな!」  「そうなのか?大河とユウのところしか見せ場ないかもって思ってた」  「アホ言え!今回は見せ場だらけだろ?推しのメンバーの良いところが揃ってるから最高!」  「こら、マネージャーに推しとかないだろ?」  「今は響だもん!」  「あははっ!ぶりっ子すんな!」 頭を叩いても嬉しそうに笑う。笑い合って、お互い甘やかして、この居場所がパワースポットだなんて、誰にも教えない。  (俺だけの、癒し)  ぎゅっと抱きしめると、またエロい顔した響がこちらを見た。  「響、おいで」  すぐに体重を乗せてくる恋人に嬉しくて笑った。 バタン  (ん…ひびき…?)  朝早く仕事に行ってしまった恋人の温もりを目を閉じたまま探す。いつもは行く前に声をかけてくれるが、今日は寝かしておいてくれたらしい。  二日酔いでぼんやりと目を開くと、ベッドサイドに置かれた手紙。  『レイへ  おはよう。 コンサートお疲れ様。  今回はレイの中で試練がたくさんあって、たくさん不安になって泣いたりしていたけど、本当にいいステージだった。  俺は、伊藤響は、レイの1番のファンだから  レイの歌を聴くことができて幸せです。  ありがとう。よく頑張った。  レイは自慢の恋人だよ。 響  』  後半は目が潤んで、パタパタと涙をこぼした。こんな嬉しいサプライズがあるのかと、嬉しくてひたすら泣いた。今すぐにも抱きしめたいのにそばにいない。仕事中に電話するのも気が引ける。   レイ:響、愛してる。手紙、ありがとう。響に会いたい。  言葉だけを送ってまた目を閉じた。 (ん…?)  息苦しくて、ぼんやりと目を開けると、ピントが合わず、もう一度目を閉じる。  (なんか…気持ちいい…)  「レイ」  「っ!?」  腰にくる甘い声にゾクゾクして、呼ばれるまま目を開くと、優しい顔の伊藤。前髪をそっとかきあげて、愛しそうにこちらを見る。  「レイ」  「?」  「おはよ」  「っ!!」  ガバッとタオルケットを頭まで被った。  (何これ!何でこんなに恥ずかしいんだよ!)  クスクス笑う声もくすぐったくて、心臓の音もうるさくて、どんどん顔が熱くなる。  「レイ?どうだった?おはようのキス」  「〜〜〜っ」  「姫のお目覚めだな」  今度は手を取られて、手の甲にキスされる。キザな仕草なのに、まんまと食らって恥ずかしくて逃げ出したかった。  (今なら大河の気持ちが分かる!からかってごめん!!)  心の中で大河に謝って逃げようとうつ伏せになると、上から体重をかけられ、グエッとへんな声が出た。  「姫、どこいくの?」  「姫って言うな、なんなのそのキャラ」  「や?王子様の気分だったから」  「ふふっ!似合わないよ」 「えー…残念。」  悔しそうにしながらも、笑う顔がとろけていて直視できない。  「ひ、ひびき、仕事は?」  「今空き時間。」  「事務所で待機じゃないの?」  「いいだろ?別に」  伊藤はご機嫌で、レイが何を言っても愛しそうに笑って、ゆっくり、うん、うん、と聞くのがレイはたまらずに伊藤に抱きついた。  「ふふっ、どうした?」  「恥ずかしい」  「今更ー?」  「響、めっちゃ俺のこと好きって顔で見てくるじゃん…。仕事中なのに」  「そうだな…ダメなのに。レイが好きすぎて少しでもそばにいたくて帰ってきた。」  「っ!夜収録行くのにっ」  「でも、今会いたかった」  後ろから耳を甘噛みされて、ブルッと震える。 「ひびきっ!…ンっ!」 「は…っ、レイっ…」  「こ…ら…、仕事、中、だろ…?」  「うん…そうだよ…」  伊藤はレイのお腹の方に手を回し、反応したものを確認すると、下着の中に手を入れてきた。  「アッ…響っ…ダメ、だって…」  「可愛い…」  「んぅ…っぁ、はぁっ、はっ、ひ、びき」  手を取ろうとするも抑え込まれ、また耳を甘噛みされる。  「好きだよ…レイ…」  「んぅ!ん!」  「レイ…愛してる…可愛い、こっち見て…は、綺麗…」  目が合うと、ニコッと微笑まれ顔が熱くて仕方がない。耳に吹き込まれる色気を含む声は簡単にレイを落とした。  「ひびきぃ」  「うん、少しだけ、な」  下着の中で、大きな手がレイを高めていく。はっはっ、と目を閉じて快感だけを追う。  「いいよ、イって…」  まだイきそうになかったはずのソレは、伊藤の声で大きく腰が跳ねる。  「ァアァアッ!!!」 ビクビクと震えながら、気持ち良さにほっと息を吐くも、下着の中に出したのが気持ち悪い。  「レイ、脱がすよ」  「ンっ!」  鳥肌がたってタオルケットを握る。丁寧に処理してもらって新しい下着を用意される。  「あれ?響…」  (シないの?)  思わず出そうになる言葉を止めて見つめると、チュッとキスされた。  「行ってきます」  頭を撫でて颯爽と出て行った恋人に、たまらない気持ちになって枕を抱きしめた。  (うー!カッコイイー!) 仕事の送迎にきた伊藤はマネージャーの顔になっていて少し寂しくなった。2人の時だけに見せる特別な顔だとは知っていても、先程の甘い顔を見たくてたまらない。  「なんだ?どうした?」  「えっ?」  「レイさん、伊藤さん見過ぎ!穴空いちゃうよ!」  後ろから誠もニヤニヤと声をかけてくる。そんなに見ていたのかと驚くも、伊藤に笑ってほしくてじっと見つめると、手のひらで隠された。  「気になるからやめて」 ズキッと痛んで前を向くと、隣と後ろからクスクス聞こえて誠を振り返ると、可愛いと頭を撫でられた。 収録は絶好調で、何より誠の天然が炸裂してツッコミが忙しかった。本人は大真面目だからよけいに面白い。そして終わった後は少し凹むのも面白い。 「ねー、俺変なこと言った?」  「マコ!お前はそのままでいて」  「どうしよう、今日の放送カットされてて欲しい!大河さんに見られたくない…」  落ち込んだ理由は大河にカッコ悪いところを見られたくないということに伊藤とレイはさらに笑い、誠は拗ねてシートに横になった。  「ギャップがいいよなぁ。黙ってたらカッコイイ、でおわるけど、喋るとおバカ」  「バカじゃないよ!みんなが欲しい答えが分かんないだけ」  「お前学校でもこうだったのか?」  「テスト前は優くんのスパルタだったからテストは大丈夫だったよ。」  昔から優一にお世話になっていたようで、想像がついてクスクス笑った。  「おい、マコ?大河休ませろよ?」 「はーい。今日どうだったの?」  「収録中以外は爆睡。OK出た瞬間眠ったからスタッフさんも心配してた。」  「体調悪いのか?」  「いや?マコがドSだから。」  「ち、ちがうよ!」  誠がドSだなんて、と振り返ると顔を真っ赤にしてもじもじしはじめた。  「だって、可愛いんだもん。」  思い出したのか、顔を隠して蹲った。  「昨日大河かばって愛希に怒鳴ったってな?」  伊藤がバックミラーごしに誠に話しかけると、それも思い出したのか、珍しく興奮し始めた。 「ちがうよ!大河さんに怒鳴ったの。愛希さんに文句言われても仕方ない…みたいな感じだったから!愛希さん、何にもしらないくせにさ!…俺、愛希さん苦手!優くんの悪口も言ってたし!なにより大河さんや優くんが圧倒的に可愛いし!」  全然タイプじゃない!と言い切ったところで、誘われたのかな、と想像がついた。愛希はレイが透に好かれていることから、練習生の時に当たりが強かった。 (「レイのどこがいいんだろうねー?可愛くもないのに」)  (「大河ならまだ話はわかるけど、なんでレイ?歌もダンスもビジュアルも平均じゃん」)  言われたことを思い出して苦笑いする。 「認められたいなら、相手を下げるんじゃなくて自分があがればいいだけなのに!ムカつく!」  「それもそうだな。愛希は余裕ないんだろうな。」  「なさすぎ!!クオリティーだけみたらAltairがトリなんて不思議!78かブルーウェーブでしょ!」 怒ったまま到着した誠だったが、お疲れ様でしたー!と元気よく降りて行った。  「ここだけの話、Altairからの乗り換えファンが増えているらしいよ。」  「え?」  「RINGはありがたいことにそのファンを取り込んだ。ブルーウェーブも78も。ブルーウェーブはタカのファンサービスで一気に増えたらしい。」  「へー!ファンサービスすごかったんだ!カナタさんしか見てなかったや!」  「愁くんが頭を抱えてるよ…。さすがに翔だけじゃ抱えきれないところまできてる。」  どうしたもんかね…と伊藤もため息を吐いた。 「もしも、三輪さんのままだったら、まずあのステージに立てていないと思う」  「え?」  「ユウも復活できなかったかもしれないし、大河はもしかしたらまだ路上ライブかもしれない。ううん、辞めていたかもしれない。RINGは3人だけでは成り立たない。伊藤さんが立て直してくれたから今がある。離れたから分かることもあった…代償はあまりにも大きすぎたけど…。」  「……。」  「ありがとう、伊藤さん。」  ニコリと笑うと、少し目が潤んで鼻をすすった。  「あの時は…本当に、ごめんな」  「あっはは!ビックリしたよー!許さないっ!何かの時に取っておく!」  「うん…。レイ?」  「ん?」  「愛してるよ」  「っ!」  優しい顔で笑ってくれたのが嬉しくて、早く部屋に行きたかった。駐車場に着くと急いで降りて、伊藤を急かした。  「なんだ?どうした?」  不思議そうな伊藤を部屋に急いで押し込むと、そのまま激しくキスを仕掛けた。  (響、響がほしい)  余裕のないレイとは違い、伊藤は微笑んで髪を撫でてくる。  (いつも…俺ばっかり欲しがってる)  そう思うとパッと離れた。伊藤はそれでもクスクスと笑っていて悔しくて泣きそうになる。  「レーイー。泣くなよ。お前だけが欲しいんじゃないよ」  「知ってるくせに…性格悪い…」  「本当に俺の前では泣き虫だな…可愛いからいいけど」  「可愛くない!」  一瞬ビックリした伊藤だったが、ぎゅっと抱きしめて首にスリスリと顔を擦り付けてきた。  「んっ」  「欲しいよ、レイ。お前が欲しくて、頭おかしくなりそう」  「んぅんッ!あ、痕ダメ…」  「嬉しいくせに。」  ヂュッと吸われた首筋がピリッと痛んで気持ちよくなる。伊藤を見つめると、欲情した目にホッとして身を委ねた。  (響も欲しがってくれてる…)  その事実が嬉しくて、伊藤のベルトを外して、スラックスも下ろし、緩く立ち上がったものを口に含む。髪をぎゅっと握って吐息が漏れるのにゾクゾクする。  (ん…大きくなってきた…)  「レイ…イイよ、上手」  褒められて、嬉しくてもっと奥までいくとぎゅっと喉がしまった。気持ちよかったのか声が漏れるのに興奮して、苦しくても何度も繰り返した。  「レイっ、っ、っ、離して、っ、出そうっ」  余裕のない声がレイをさらに欲情させ、裏筋を刺激しながら吸い上げた。  「くぅっっ!まっ、て、ンっ!っぁあ!」  喉にドクドクと注ぎ込まれるのをコクコクと分けて飲み込み、口を開けると不満そうな伊藤の顔。  「顔に出したかったのに…」  「残念でした!本当好きだよなぁ…」  「たまらないんだよ。綺麗なレイを俺ので汚す背徳感?ゾクゾクすんの。」  思い出してるのか想像してニヤニヤするのに苛つく。 (こんなことならかけて貰えばよかった)  過去の自分に負けた気がして悔しくなる。勢いよく全裸になってベッドに飛び込んで自分ので代用しようと伊藤に見せつけるように足を開き、立ち上がったものに右手をかけた。  「レ、レイ!?」  「は、っん、おの、ぞみどおり、かけて、やるよ…っ、ひびきは、そこで、見てろ」  「そんなっ、やば…鼻血でそっ…」  動画撮っていい?と聞かれ、もうどうでも良くなり、伊藤に欲情してもらうために必死で自分を追い込む。  (響が見てるだけで…すぐ…イきそ…)  「はぁっ、レイ、っレイっ」  興奮してるのか、息荒く欲情した目で名前を呼んでくれる。  (響が…俺に…欲情してる…)  「ぁっ、ァア、っああ!っやば、ぃ、もっ」  「レイ!はやく!レイ!」  腰がググッと仰反る。顔にかけなきゃと、焦るも、間に合わなかった。  「ッ!!」 胸やお腹に温かいものがかかって、必死に呼吸をする。伊藤の希望に添えなかったのに眉を下げるも、服を脱いで飛びかかってきた。  「はぁっ!はぁ!レイっ!レイ!」  「ァアァア!あん!!ッぁああ!まって、ダメダメ!そこぉ!」  ローション塗れの指が一気に入り込んで、前立腺をググッと押すのにたまらず背をそらす。 「どこまで煽ればっ、気が済むんだよっ」  「ッァァアァアーー!イきそう!響ッ!も、出ちゃうからァッ!」  「大人ぶらせろよ…ッ、ガキみたいに、ッ余裕、ないの、かっこ悪いだろ…ッ、甘やかしたいのに…ッ、」  指が乱暴に抜かれて、熱が一気に貫いた。  「ッァアァアーーーーッ!!!」  「くぅ…ッ、はぁ、ッ、は、行くよ、レイ」  「ンァッ!!はぁん!ぁん!!ッダメダメ!!奥ダメ!おかしくなるからッ!」  「俺だけ落としといて…お前も落ちてこい」  「ッァアァア!!ァアァア!!」  強い快感への恐怖が、ふっと心地よさに変わった。力が抜けて、伊藤が見つめるのが恥ずかしい。  「はっ、はぁっ、んっ、は」  「レイ?…大丈夫か?」  「はぁっ、は、気持ちい、は、ひびき、きもち」  「っ!!」  「やばい…なにこれ…ぁっ、きもちっ、っ、.っ!ぁっ、はぁっ、きもち」  じわじわと遠くから押し寄せるような快楽。味わったことのない感覚に震えて、でも期待で口角があがる。  「はぁっ、ひびき、くるっ、はぁっ、きもちぃの、くる、はぁっ、どうしよ、」  「はっ!はっ!レイ、レイ」 「ひびきっ!ひびきぃっ!!」  何も考えられなくなって、中の伊藤をぎゅっと締め付けてはその快感に追い込まれる。  (はぁ、ヤバイ、ぶっ飛びそう!) 伊藤の背中に爪を立てて、頭を振っても追いつかれる。腰を引いても奥を貫かれ頭が真っ白になる。自分で何を言ってるのかもわからないまま、全身が強張っていく。  「ひびきっ…っ!っあ!!ダメッ!」  「レイ、いいよ、イッて」  涙がポロポロ溢れて、必死に意識を保とうとするも強烈な快感に飲み込まれた。  「ッッ!!ーーッァアァアーー!!」  「くぅっ!はぁっ、やば…きっつ…ッーーッ!」  ドサッ  「はっ!…?…は、はぁ、はぁ」  「はー…はぁ…、レイ、大丈夫か?」  「え??…あ、うん」  「中だけでイくときつかったろ。よかった…意識あって。」  苦笑いする伊藤にぎゅっと抱きついた。好きという感情で溢れて追いつかない。  「響、好き!好きだよ!」  「あははっ、ありがとう。どうした?」  「ん〜大好き〜」  「甘えん坊さんだな。…ふふっ、可愛いなぁ…レイが甘えてくれるの嬉しい」  頭を撫でて抱きしめてくれる。胸に収まって深呼吸するだけで疲れがとれていく。  「癒しだぁ〜」  「あはは、おっさんみたいなこと言うな」  「いやぁ、本当に。パワースポットだ。」  「レイ専用のな」  「…っ」  瞬時に顔が赤くなって、抱きついて隠した。すると、伊藤がレイのパートを歌い出した。目を閉じて聴くと柔らかな声が気持ちいい。  「響、上手」  「ここのパート好きー。レイ、ここのパートでカメラ抜かれるだろ?その時の顔、最高」  どんな顔だっけ、ときょとんとすると、ケータイを取り出してミュージックビデオを流し始め、慣れたようにそこでとめた。 「ここで、少し笑うだろ?カッコイイー!ってなる!会場もめちゃくちゃ沸くしな!」  「そうなのか?大河とユウのところしか見せ場ないかもって思ってた」  「アホ言え!今回は見せ場だらけだろ?推しのメンバーの良いところが揃ってるから最高!」  「こら、マネージャーに推しとかないだろ?」  「今は響だもん!」  「あははっ!ぶりっ子すんな!」 頭を叩いても嬉しそうに笑う。笑い合って、お互い甘やかして、この居場所がパワースポットだなんて、誰にも教えない。  (俺だけの、癒し)  ぎゅっと抱きしめると、またエロい顔した響がこちらを見た。  「響、おいで」  すぐに体重を乗せてくる恋人に嬉しくて笑った。

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