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第89話 夏の思い出

RINGはファンへの特典映像収録のために、とある旅館にいた。コンセプトはRINGと夏祭りデートをする、というものだった。それぞれが渾身のデートプランをプレゼンし、それを映像化する。それとは別にただの夏休みみたいに「自由に遊んでください」という指示もあって全員が喜んだ。旅館近くの浜辺でビーチバレーをすると、元バレー部の優一の動きがすごく、優一がボールをあげ、レイが叩き落とすという最強のチームができていた。誠と大河のチームワークは最悪で、拗ねた大河が青木と変わった。  「よっしゃー!マコちゃん勝ちに行こう!平均身長なら負けてないから」  「うるさいよ青木っ!小回りが大事なんだよっ!」  なぜか燃えている優一と青木に、伊藤は笑いながら見ていた。ご褒美みたいな仕事となり、スタッフも微笑ましく撮影している。青木からはスタッフに手作りのお菓子まで振る舞われ、スタッフからRINGの評価はとても高かった。  拗ねた大河は暇そうにしていたが、マネージャーが映るわけにもいかず、クスクスと様子を見ていた。1人で砂山を作り始めたのを見て、伊藤は涙が出るほど笑った。  「やったー!レイさん!俺たちの勝ち!」  優一のリベロは崩せずに終わり、青木が優一に謝罪してこの試合は幕を閉じた。  「身体動かすっていいね!超気持ちいい!レイさん、お風呂いこ!」  「賭けにも勝ったし最高だな!」  2人は肩を組んでお風呂に向かうのをカメラが追う。大河を忘れていた誠が慌てて迎えに行くと、拗ねた大河の砂山にトンネルが開通していて誠は可愛いっ!と抱きしめていた。  浴衣に着替えてレイが進行する。それぞれの理想のデートプランを発表した。  「はーい!俺、大地から行きます!俺は…待ち合わせをして、浴衣の彼女と手を繋いで出店を回ってー、たくさんの食べ物を買って座ってゆっくりする。花火が上がった時にキスをする。かな」 「キャーー!ベタ!ベタ中のベタ!!」  優一が顔を真っ赤にして、足をバタバタさせた。白い内腿が見えて青木の目がそこから離れないのを誠に逸らされていた。  「じゃあ、ユウは?」  「とにかく遊ぶ!!金魚すくいとか、射的とか!お化け屋敷もあったら入るかなー!2人でドキドキして、共通の話題ができた後に、花火で手を繋ぐぐらいかな。キスはできない!恥ずかしいもん!」  「キス魔のくせに!何が恥ずかしいもん、だよ!」  優一と青木がきゃっきゃとはしゃぐ。たぶん、優一のはリアルだったのかも、と思わせる具体的さだった。 「マコは?」  「優くんや青木と似てるけど、花火は終わっちゃったけど、まだ星空見ててもいい?って言うかな」  「「えぇーーーーーッ!?」」  優一と青木は目が飛び出しそうなほど驚いた後、けたけた笑った。  「お前、それマジか?」  「えっ?大河さん引かないでよ…学生時代本当に言ってたから…だって一緒にいたいから…」  「一緒にいたい、でいいじゃん」  「でも、それが恥ずかしい時期だから…」  「ふーん」  大河はなぜか顔を赤くして下を向いた。大河には誠の台詞がストライクだったようだ。  「次は大河!」  「一回わざと逸れる。」  「「「え!?」」」  「んで、見つかった時に、手繋ぐ。」  「「っ!!」  「花火終わったら…キスかな」  「「キャーー!!!!」」 いつもは照れる大河だが、真剣に、何でもないように言うのが男らしい。これはファンも喜ぶだろうと伊藤もスタッフも撮れ高に喜んだ。 「レイは?」  「俺はユウに近いかな?全力で楽しむよ!…ただ、慣れない下駄で靴擦れしちゃった子は家までおんぶしてあげます!」  「わぁー!ずるいー!」  「そういう慣れないけど頑張ってくれる子がたまらないよな!!一生懸命準備してくれたんだなぁって!」  レイは想像してはデレデレしていた。そこからどんな女の子が理想かという話になると、RINGも所詮男の子。大盛り上がりになった。  「俺はね、ちょっと抜けてるなぁって子が好き!完璧すぎる子より、面白い方がいいかな。クラスでもお笑い担当みたいな子。」 レイが愛おしそうに話すのに、メンバーもニコニコと聞いている。  「俺…は、んー。大人しい子が好きかな。守ってやりたいな、って言う子。クラスでも目立たない、本とか読んでそうな子。知ってたか?そういう子達、美人が多いんだよ」  大河も少年のように体を左右に揺らしながらニカッと笑う。  「大河が目立つから、付き合ったらその子も目立っちゃうだろ?」  「そうそう。だから、学校では、話しかけないでほしい…ってお願いされるのも可愛い。そういう子は俺にだけ魅力見せてくれるの。はにかんで笑ったり、照れたり、不安になったり…。」  「そうだったんだ…惜しいことしたなぁ…」  優一は全く気がつかなかったようで悔しそうにしていた。大河が苦笑いして話を振った。 「ユウは?」  「笑顔が可愛い子!こっちまでつられて笑顔になる子がいいなぁ。ふわっとした感じの子」  それを言う優一の顔にみんなが笑顔になった。  「聞いて!俺さ、ちょっと強めな人がいい!」  「は?メンタル弱いくせに」  大河が青木を一蹴すると、落ち込んだあとに、ちがう、聞いて!と興奮し始めた。  「芯があるというか、私はこう!っていう拘りや信念がある人!だいたい変人だけど、飛び抜けて可愛かったり、飛び抜けて頭良かったり!そんな人がいいなぁ」  「お前対応できなくてワタワタしてそうだな」  大河がまたからかうと拗ねて隣の優一に甘えた。  「マコちゃんは無類無差別。女の子みーんな大好きだもんねー!?」  優一が嫌味みたいに誠に話を振ると、青木が女の子っていうか人間大好きそう!と言った。  「人間なんて嫌いだよ」  「へ!?」  「ど、どうした?急にブラックだな…」 レイも慌てて笑いに変えようとするも、誠は真顔のままだ。  「俺は俺を好きって言ってくれる人だけが好きなの。それだけ。」  「マコ?」  「まこちゃん?」  「……。顔で言ったら目が大きくてくりくりな人!上目遣いが上手な人ー!」  少し間が空いて、急にいつもの笑顔になって元気よく言った誠は、自分で編集点を作ってこの話題は終わった。一度休憩が入ると、誠はまた真顔に戻って伊藤のところに来た。  「伊藤さん、恋愛関係の話題って、NGってできるのかな?」  「どうした?」  「愛されたくて必死だった自分を思い出して恥ずかしいし…なんか、自己嫌悪で落ちる」  「マコ…」  「無理なら大丈夫だよ!それっぽいこと言うようにするし!アイドルだから仕方ないし!ただ…ごめんなさい、今日は切り替え出来なかった」 気晴らしに行くと出て行った誠を優一が追いかけ、大河は伊藤に駆け寄ってきた。  「マコ、何て?」  「恋愛トークをNGにできないかって。過去の自分が嫌で自己嫌悪して落ちるんだと。」  「マコ…」  「はちゃめちゃに見えてたよな、恋が多かったり、元カノが多かった話を聞く限り。でも、マコにとってはどれも真剣で、一生愛するつもりで向き合っていた。ネタにできるほど、マコの中ではまだ消化できてない。」  どうしたものか、とため息を吐いた。大河は隣にどかっと腰掛けて、マコらしいな、と苦笑いした。  「過去のことは、ユウに任せる。俺が入っていけるものじゃないから。でも今のことは俺が全力で支えるよ。」  「大人になったな、大河」  「まぁね」  ニカッと笑う大河の、オールバックで結んだヘアスタイルが似合っていて、目立つおでこにデコピンすると、キャッキャと笑っていた。  黒い浴衣に赤い帯がアクセントになり、はっきりした顔立ちを際立たせている。似合うな、というと先程と同じように、まぁね、と笑った。  ーー  逃げるように散歩に出て景色を眺めていると、優一が後ろから息を切らしてやってきた。振り返って笑うと、心配そうに眉を下げた。  「まこちゃん、大丈夫?ごめんね、からかったように聞こえたよね?楽しくなったらいいな、と思ったけどデリカシーなかった。本当にごめんね」  泣きそうな顔で頭を勢いよく下げる優一に笑う。顔を上げてと優しく言うと、様子を伺うように覗きこんできた顔があの日と被って深く口付けた。  「っ!?〜〜!!」  「優くん…っ、はっ、はっ、優くん…」  「んっぅ、ぅんっ、はっ、はっ、んぅむ」  抵抗する小さく細い腕を掴んで気が済むまでキスをした。あの日の自分が救われた気がした。  「は、はぁっ、ま、まこちゃん…?」  目を見開いたままの優一をまた抱き寄せた。  「優くん、覚えて…ないの?あの台詞は、優くんに言ったんだよ」  (「優くん、花火は終わっちゃったけど、まだ星空見ててもいい?」)  (「いいよ!わぁ!星いっぱいだねー!」)  「っ!!」  思い出したのか、はっとして動く優一をぎゅっと抱きしめたまま白状した。  「小6の夏祭りと、中1の夏祭り。どっちも、優くんへの気持ちを伝えようかずっと悩んで伝えられなかった。…友達を越えられなくて、苦しくて、中1の夏祭りのあとに諦めた。たくさん泣いた後に、彼女を作った…。それからは必死だった。諦めて正解だったと、幸せにならなきゃって、愛してもらいたいって。」  背中に回る優一の手がぎゅっと誠の帯を掴んだ。  「あの台詞は、優くんにしか言ってないよ。どうしても夏祭りと聞くと、あの日が鮮明に出てくるんだ。」  「まこちゃん…」  「諦めてから…地獄みたいな日々だった…毎日不安で、捨てられるのが怖くて必死で、情けなくて…でも、優くんはそんな俺のそばにいてくれたから、友達でよかった、って思ってる。」  話すと、ふわりと軽くなった気がした。あの日の自分がありがとうと言っているような気さえした。  「今も変わらずそばにいてくれて、ありがとう」  「まこちゃん…」  「お化け屋敷も一緒に入ったし、その後手を繋いだから…優くんのプランも俺だと思ってるよ?違った?」  「違わない…まこちゃんとしか夏祭り行ってないもん」 上目遣いになるのがやっぱりドキドキする。浴衣もあの日みたいで、真っ白で柔らかい頬に左手を伸ばすと、優一も目を閉じて顔を寄せた。自然にまた唇を重ねて、呼吸のために少し開いた優一の口に熱い舌を絡めた。  (どうしよう…っ、止まらないっ…)  薄く目を開けると、優一の目も潤んで欲情していた。堪らなくなって、ここがどこだとか、撮影が残ってるのとかも忘れて夢中でキスをしていた。  ザリッ  「何してんの」  「「っ!!」」 「ねぇ。何してんの、2人とも」  「青木っ、あ…えっと…」  腕を組んで無表情で問いただす青木に、優一が慌てて誠と距離を取った。 「白昼堂々の浮気で野外プレイ?」  「ちがう!」  「ん?マコちゃんは否定しないのは何?大河さんに言うよ」  「……。」  「なんだ、やっぱ2人デキてんの?どっちが本命なの?」  「そんなの!俺はタカさんだし、まこちゃんは大河さんだよ!…ごめんなさい…昔の、話を…してたんだ…それで…思い出話で感極まって…だから…特に何もないからっ」  優一が必死に弁明するも、青木は冷たい目で誠を見ていた。  「ユウ、マコちゃんは違うみたいよ?」  「へっ?…いや、合ってるから!ね、もう戻ろう!青木、声かけてくれてありがとう!みんな待ってる、行こっ!」  離れて行こうとする優一の手を取って、また抱きしめた。  「っ!!…やめてよ!まこちゃん!こんなの…違うよ。間違ってる!…前の大河さんと同じだよ!まこちゃんだってかなり傷ついたでしょ?同じことしちゃダメだよ!黙ってるから、この話はもう終わろ?」 その言葉にハッとして力が抜けた。  「ごめん…俺…」  「もう!いいから!青木、内緒にしてね?ほら、行こう行こう〜!」  優一はニコリと笑って先に行ってしまった。青木は冷たい目でいつまでも凝視している。  「マコちゃん、理性飛んでたでしょ。何、何があったの」  「……あの台詞、幼い頃に優くんに言ったんだよ…全然気づいて貰えなくて…苦しかった…諦めた日から必死にいろんな人と付き合ったんだ…だから…夏祭りは…俺にとっては…失恋と地獄への入り口なんだ。」  「そうだったの…。もう!企画の段階で言ってよ!そんな思いつめないでよ…。見たのが大河さんだったら…気づいてたよ?」  ごめんと下を向くと、頭をわしゃわしゃと撫でられた。  「失恋の苦しさなら分かるつもり。過去の自分に言ってやりなよ!今が幸せだってさ!」  爽やかな笑顔が嬉しくて、笑ってうなずくと戻ろうと、手を取ってくれた。  青木と誠が戻ると、レイは退屈そうに一人でベンチに腰掛けていた。見つめる先には、楽しそうに話している伊藤と大河。大河が髪をアップにしているから、パッと見イチャつくカップルに見える。  「レーイさん、2人に穴が空いちゃうよ」  「穴でも空かないとあの2人はずっとくっついてるよ」  「……。ユウは?」  「タバコ」  レイはそれだけ答えると不機嫌そうにスタッフの中へと向かった。  「はぁ〜…グループ内恋愛があると大変」  青木がぽろっと本音を漏らしたのを聞き、申し訳なく思った。大河と伊藤はスタッフから声がかかるまでひたすら話し続けていた。  「うっ…ユウ!吸いすぎだぞ?」  「えっ!?あ、ご、ごめんなさい!」  優一と伊藤は衣装さんに買い取ることを伝えて頭を下げていた。  (優くん、動揺させてごめんね…)  心の中で謝ると、聞こえたかのようにこちらを見て、苦笑いして答えてくれた。スタートの声がかかるとすぐに切り替えたのがプロだと思い、誠も気合を入れ直した。残りの収録はいつも通り楽しくできて、スタッフも喜んでくれた。  ーー  1人部屋をかけた闘い。壮絶な勝ち上がり戦はモノマネ対決。レイが圧勝だと思われたが、どうしても1人部屋を取りたいのが青木と優一。レイに食らいついていき、伊藤やスタッフは涙が出るほど笑ったが、まるで引かない3人。誠や大河はすぐに敗退し、同じく呼吸困難になるほど笑っていた。  (もう!レイさん今日は譲ってよ!)  (よりによってなんでこんな日に頑張るんだよ、コイツら!)  (やだやだ!万が一大河さんや、ユウと同じ部屋なら大変!)  ネタ切れした優一が敗退し、ものすごく落ち込んでいた。一騎討ちになったが、結局レイが優勝した。  「くじ引きターイム!!部屋割りです。誰と一緒になるかな!」  「俺、大河さんがいいー!」  「俺、マコちゃんがいいー!」  先ほど敗退した優一と、青木が叫ぶように言うのが面白くて笑った。リクエストされた2人も悪くないようだったが、くじは思い通りにはいかない。  青木・大河ペア  優一・誠ペア この2つに分かれた。青木は寝起きの大河を怖がっているから、嫌がるのはわかるが、優一が誠と一緒で嬉しそうではないのが気になった。  「もしかして部屋にカメラとか??」  「さぁー?どうでしょう?」  優一が大きな声でスタッフに聞いて、ありそうな雰囲気に何故か安心して青木を見て、青木もほっとしていた。  企画では、レイが侵入する寝起きドッキリが予定されている。1人部屋を勝ち取るまでは、伊藤とスタッフのシナリオ通りだった。部屋にはカメラは無いが、寝起きドッキリの際にはカメラが入る。 それぞれを部屋に入れて、収録はここまでだ。伊藤はスタッフに頭を下げたあと、明日の打ち合わせに入った。 (寝起きドッキリの準備でレイは5時か…今は3時半…1時間半か…。微妙だな。少し寝ないと明日の運転がやばいか)  伊藤も1人部屋に向かって歩く。仄かな灯りを頼りに、軋む廊下を歩く。老舗の高級旅館は、このようなロケじゃないとなかなか行けない。いいなあ、なんて思ってると、声が聞こえて、早く寝かそうとドアに手をかけようとした時、ピタリと固まった。  (「っぅんっ、っぁ、っぁ、ぁっ」)  (「ん…ココ?…」)  (「っっ、まこちゃんっ、っ、イっちゃう、出ちゃ…っ、っっ!」)  部屋の番号を確認して、資料を急いで広げた。  椿:マコ、ユウ  書かれた自分のメモに目を疑った。  (ど…どうなってんの。ウソだよな?)  あんな声を聞いて突入するわけも行かず、ノックだけするも、ウソみたいに静かだ。  「マコー、ユウー、さっさと寝ろー」  それだけ声をかけると、誠の声がはーい、と聞こえた。ざわざわして、隣の1人部屋のレイの部屋に入り、イビキをかいて気持ち良さそうに寝るレイの隣に入った。   「んっ…?…伊藤さん…?」  「レイ…一緒に寝たい、いい?」  「ふはっ!!嬉しい…おいで、響…」  はだけた浴衣がセクシーで、胸の粒が絶妙に見えなくて、ガバッと襟元を開いて左の乳首に吸い付いた。  「ッ!!?っぁ、っ、ひ…び、きっ、だめ、」  「はぁ、はぁっ、やっと、レイに、触れる…」  「んぅっ、っ、大河ばっかり…大河に、デレデレしてた…くせにっ…」  「…嫉妬してたの…?可愛い…足開いて…」  乱れた浴衣の間から内腿を撫でると、素直に足を開き腰を浮かせた。下着を抜き去り、カバンからゴムを取り出し、レイのものと、伊藤のモノに被せ、持ってきていたローションでクチュクチュと慣らしながら、タオルを引いた。  「準備…っ、しすぎだろっ…」  レイは顔を真っ赤にして文句を言うが、その顔は少し嬉しそうだ。 「俺…と、ヤるかも…って?…思って…くれたの?」  「当たり前だろ。浴衣のレイで興奮しないわけないだろ」  そう耳元で囁くと、中の指がぎゅっと締め付けられた。  「ひびき、っ、も、入れてっ、」  「まだきついよ?」  「今日…苦しいほうがいい…強い…刺激が欲しい」  「声は出すなよ?タオル噛んでて…バレたら本当に終わるぞ」  「分かった。頑張る」  膝を立てて胸の方に押し込み、熱をきついソコに一気に突っ込んだ。  「ーーーーッッ!」  「はぁ、よく、我慢しました。まだ頑張ろうな?」  顔を真っ赤にして震え、コクコクと頷いている。  「かーわい…」  耳元でそう呟いて、激しく腰を振ると、頭を横に振って、伊藤の腕に爪を立てる。身体を密着させて、小さく、耳に直接吹き込むみたいに想いを伝えた。  「好きだよレイ…浴衣…エロい…お前みたら欲情して…昼間から襲いたかった…誘惑すんなよ…たまんないだろ…?なぁ?なんでこんなエロいの?お前しか見えなくなるだろ…ほら…こんなに固くなって…レイのせいだよ…レイがエロいから…俺のが…レイの前立腺を…ほら…ヤバイだろ…?気持ちいいよな…たまんないな…」  ひたすら耳に言うとガクガクと激しく腰が揺れて、涙がポロポロと落ちる。中は余裕なくどんどん締め付けてくる。  (言葉で興奮してるな…?本当にドMだな)  クスクス笑って、また実況を始めると、レイからも激しく腰を振り始め、目を閉じて絶頂に向かい始めた。  「レイ…愛してるよ…」  ガクガクッ  「ーーーーーーッッ!!!」  「っっ!!」  ズルリと抜くと、パクパクとまだ物欲しそうだ。レイに被さったゴムには白濁が入っていた。ゆっくりと自分のとレイのを取ってタオルやティッシュで綺麗にすると、レイの口からタオルを取った。  「気持ちよかったぁ…」 幸せそうに笑うのが可愛くて時計を見るとあと30分しかなかったが、2人はそっと目を閉じた。  「おはようございます!現在の時刻は6時です!メンバーの寝起きをチェックしていきましょう!注目は大河なので、桜の部屋は後回し!まずは椿の部屋に行きたいと思います!」  レイが小声でカメラに言って、椿の部屋に行く。鍵をそっと開けて、カメラとレイが入って行く。  「わぁー、さすが幼なじみ!仲がいいですねぇ…マコが腕枕して…優がすっぽり収まっています。ユウの寝顔は赤ちゃんみたいですねー。早速起こしていきます。…おはようございます!!!」  「「っ!!?」」  「あっ?えっ?……?」  「浮気がバレたみたいなリアクションだな!あはははは!」  「「っ!!!」」  固まった2人には目もくれずレイの大きな笑い声が響いた。 OKが出てカットがかかり、スタッフが準備に出ると、レイの笑顔が消えて、優一と誠の頭を叩いた。  「お前ら、何してたんだ?…2人して大河裏切るのかよ」  「……。」  「どうなんだマコ。お前昨日からなんかおかしいよな。」  「れ、レイさん…やだなぁ、何にもないよ!」  優一は浴衣を整えてなんでもないように笑うが、その顔は引きつっていて見てられない。レイも気付いたのか、優一を見たあと誠に問い詰めた。 「また、ユウに守ってもらうのか?」  「レイさん…、誤解だってば」  「ウソが苦手なコイツにまだ嘘を吐かせるのか?」  「大河さんを、裏切った。」  真っ直ぐな声に優一が慌てたように誠にしがみついた。 「まこちゃん!!ちがうよ、レイさん!違う!」  優一が泣きそうな顔で訴えてくるのが、どちらが本当か分からずに眉を寄せた。 「優くんを、抱いた。」  「っ!!…やめてよ…まこちゃん、言わないって、約束したじゃんか…」  優一から力が抜けて崩れ落ちて泣き始めた。伊藤とレイは訳が分からず、レイはため息を吐いて、桜の部屋に向かった。  「…マコ?どうしたんだ?」  「優くんとエッチした。伊藤さんも聞こえたんでしょ?」  「気のせいと思いたかったけどな」  「これは、これからも過去と向き合うために必要なんだ。大河さんが、タカさんとのことと向き合ったように。だから、優くんには協力してもらったんだ。浮気とは…ちょっと違う」  「…大河は、マコの過去のことは、ユウに任せてる、と言っていた」  「っ!」  「ただ、こういう形ではないと思うよ。あと、大河はタカに身体を許したわけじゃない。お前と大河のしたことは同じじゃない。」  優一はヒックヒックと泣き、ごめんなさい、ごめんなさいとひたすら謝った。  「ユウは、マコに伝えたんだろ?言いくるめられたんだろうけど。」  「まこちゃんと、大河さんのために…必要って…でも、ちがってた…おれが…ちゃんと冷静だったら…ごめんなさい、ごめんなさい」  泣きじゃくって蹲る優一と、反省の色が見えない誠。  「まこちゃん、まだ、上がってこれてないんです…エッチしたら、戻れるのかなって、思ったけど…全然、ダメで…どうしたらいいか、分かんなくて…」  誠の様子が確かにおかしい。真っ直ぐ前を向いて、無表情なのに涙がポロポロと溢れている。 「消えたいばっか…言う…。ねぇ、伊藤さん、俺のカウンセリングのところ、まこちゃん連れてって?抱えているものが…大きい気がするんだ」  「分かった」  誠は大河に会うと愛しそうに笑ってぎゅっと抱きしめ、深呼吸していた。大河はきょとんとしながら、胸に収まるも、はっとしたように顔を上げた。  「マコ…?指輪は?」  「浴衣だから…家に置いてきた」  「マコ、大丈夫。指輪ない時は、俺がいるだろ?」  「…あ、そういうことか。」  「へ?」  「優くん!分かった!」  遠くでハイペースでタバコを吸う優一に、誠が駆け寄った。ビクビクしている優一は恐る恐る話を聞いていたので伊藤も隣に行った。  「いつもの、お守りないから、不安だったのかも!」  「「はぁーー!?」」  単純なことに優一も伊藤も声を上げた。  「確かに、なんか落ち着かなかった。大河さんに言われて気づいた…。やっぱ大河さんはすごいなぁ。」  「まこちゃん!!!心配したんだからね!?俺っ、また、俺のせいで!傷つけたんだっ…て…っ、思って…ッ!っぅ…ぅ〜」  大きな声で怒鳴って、泣き出した優一に誠がいつも通りワタワタして、大河が泣かすな!と誠を注意して優一を抱きしめていた。優一は安心したのか止まらなくて、ヘアメイクさんを困らせていた。  「「ごめんなさいっっ!!」」  誠と優一が勢いよく大河に頭を下げるのを、大河はきょとんとしていた。ロケが終わって、バンに乗る直前で他のメンバーも不思議そうだ。  「「俺たち、一夜の過ちを犯しました」」  「は?」  「大河さん…本当にごめんなさいっ!まこちゃんが、不安定になって…それで…助けたい一心で…でも、間違ってた!本当にごめんなさい」  「お守りがなくて…ずっと落ち着かなくて、過去のことばっかり考えてた…優くんに甘えちゃいました!ごめんなさいっ!」  大河は意味を理解したのか、一瞬泣きそうな顔になったが、その後苦笑いした。  「いやいや…そこは隠してくれよ…。どうしたらいいのか、分かんねぇし。」  「大河さんっ!こうしたらいいんだよ!」  ベシンベシン!!  「「痛ぁ!!」」  「全く!この2人は沼にハマると一緒に落ちて行くから怖いよ。マコちゃんはユウに甘え過ぎ!!ユウはマコちゃんに甘すぎ!!2人だけのことをもう少しシェアしてよ。そしたら、こんな風にならないでしょ?大河さんも、2人には入れないって遠慮しなくていいから!!」 青木がバシッというのを、レイがおおー!と拍手して賛同した。大河は苦笑いして、そうだな、と2人を見たあと、2人の頬を思いっきり打った。  「これでチャラな?次はボコボコにするぞ。」  「「ごめんなさいっ!!」」  2人は頭を下げたあと、大河にぎゅうぎゅと抱きついていた。 (「ユウ、マコちゃんどうだった?」)  (「まこちゃん、上手いよ?そうとう大河さん抱いてると思う」)  (「うわぁー、大河さん体力持つかな?マコちゃんしつこそう」)  「ユウー?これ以上喋ったらタカさんに言うぞ」 「え!?やだ!ごめんなさい!言わないで!」  ヒソヒソ話が聞こえていたようで大河に怒られていた。誠は大河の膝の上で爆睡し、優一と青木はさらに後ろのシートで眠りについた。助手席には疲れ切ったレイが大きなイビキをかいている。バックミラー越しで大河を見ると、窓の外を見ていたが、スッと涙が流れ、慌てて拭って、周りを確認したあと、ミラー越しに目があった。  「大河、黙ってるから、我慢しなくていい。」  「っぅ、っぅ、っぅ」  「よく我慢したな。みんなの空気を悪くしたくなかったんだろ?」  コクンと頷いたときにまた涙が落ちる。  「お前が1番不安がってたもんな…ユウとマコのこと。でも、2人は反省してるし…そもそも2人の間に恋愛感情はない。気分が落ちたマコの隣に、たまたま過去を知るユウがいただけ。それだけのことさ。お前は愛されてる。自信もて。」  「っ、…っ、ありがとう…っ…っ」  「許してやれ、とは言わないけど、マコにはお前しかいない。それは揺るがない事実だ。そしてユウにはタカしかいない。それはお前もよく分かってるだろ。」  「でも…っ、それでも…っ、きつい…っ」  抱きしめてやりたいのを我慢して、ポロポロ漏らす弱音を聞くことに専念した。1時間ほどすると大河は泣き疲れ、眠った頃に、途中から起きていたであろう誠に話しかけた。  「全く…恋人を泣かすなよ。精一杯の強がりだぞ」 「うん…。聞いてた…。大反省だよ…」  「逆ならお前はみんなを巻き込んで大騒ぎだろ?大河は本当大人になったよ。…お前も成長しろよ?こんな恋人が不安定なんて、もともと繊細な大河が壊れるのも時間の問題だよ。心配させんな。」  「うん…。ありがとう、伊藤さん、大河さんの話聞いてくれて。」 「どういたしまして。明日大河はオフだから時間かけて安心させてやれ。」  「ありがとう。」  全員を降ろして事務所に戻って作業をしていると、社長と、1人の男性がデスクに来て全員を注目させた。 「あれ!?篠田!!どうして!」  電話を終えた愁がその男性に駆け寄った。社長も知り合いとはやっぱり長谷川か、とにこやかだ。  「みんな、聞いてくれ。来週から入職する篠田樹(いつき)さんだ。長谷川のいた会社からの転職だ。ブラックパールとサナを担当してもらう。」  「海外支社の転勤続きでしたので、語学や海外のことはなんでも聞いてください!ここにいる、長谷川さんから指導されて、先輩を追いかけてここまできました!僕も先輩のように日本でのガールズトップグループにできるよう精進します。どうぞ宜しくお願いします。」 ハキハキとした印象で、明るく、すぐ場に馴染むような雰囲気。スーツを着こなし、甘いマスク。よかったらどうぞと配られたのは海外のお菓子。  「わぁ!美味しい」  「この間までバンクーバーにいまして。」  「篠原、俺がいた時は北京だったよな?」  「愁さんがいなくなってから全部僕に仕事来たんですよ?北京と日本を何度も往復して…その後にグアムでしょ?本当しんどかったぁ」  「あはは!ごめんごめん!篠原を置いて行くから大丈夫かなって。」  「さすがに無理ですよぉ〜」  2人の様子を社長は嬉しそうに見ているが、それを冷めた目で見るのがリクと翔太だった。2人は目で合図して喫煙所に行ったのを見て、伊藤も向かった。  「誰あいつ!愁の何?」  「あはは!リク!転校生を気にする女子みたい!」  「響うるさいよ!」 「可愛い後輩ポジションは俺だけっす」  「お前可愛がられてねーし!」  喧嘩が始まりそうな2人に爆笑してデスクに戻ると、社長と愁、篠原はいなくなっていた。雪乃に聞くと3人で食事に出たらしい。  「私…ほっとした。1人で3グループは荷が重かったの。今日も余裕なくて…リリアを泣かせちゃったわ…。レミがフォローしてくれたけど…。都姫の仕事のサポートで精一杯なのに、サナちゃんも見てあげなきゃだし。」  「雪乃は頑張ってるよ」  「ありがとう。はぁー!リクさんに褒められたら頑張れるのにーっ!」  「なに、リクタイプなの?」  「目の保養。何しててもカッコイイ!わぁ!?」  突然雪乃の頭がクシャクシャになった。 「雪乃ちゃーん、いつも頑張ってんな!お疲れー!!」  リクが頭を撫でてニカっと笑うと、雪乃の顔は真っ赤になって机に伏せた。  「あっははー!可愛いなぁ!」  「ファンサービスですね!リクさん最高です!」  「泣きそう…。よし!頑張るっ!リクさんありがとうございます!」  「ほーい!頑張ってー!」  ニシシと笑っていてご機嫌だ。美女に目の保養と言われ嬉しかったようだ。のちに社長と2人が食事に行ったと知ると苛つき始め78の打ち合わせに行った。  (仲良くなるといいけど)  リクを見送ってケータイを見ると、レイからまだー?というメッセージが来て慌てて帰った。  大河:伊藤さん、マコとしっかり話したよ。聞いてくれてありがとう。 朝に大河からのお礼のメッセージがきてほっとして仕事にむかった。

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