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第105話 浮気

浮気かどうか、判明する原因は… (携帯電話…だよね)  正樹は爆睡する大地の隣で緊張しながら大地のケータイを握った。 最近なぜだか浮かれているように見えるのだ。ウキウキで仕事に行くのが、良い事ではあるが、それに引っかかる。  (デレデレしてるんだよなぁ…)  鼻の下伸ばして、ニヤついた大地に、今の仕事を聞くも、RINGの仕事しかないようだった。  (ドラマでもないなら…スタッフさんとか?)  そして、ついにロックを解いてしまった。  緊張してメッセージを見るも、特に怪しいものはない。写真があるのかも、と開くと、ノンタンばかりだったが、突然女性が増えた。  (メイド…?こんなんが好きなのか?)  メイド喫茶なのか、付き合いでのキャバクラなのか分からないが、いろんなタイプのメイドさんのそれぞれのショット。  (…女の子が良くなった??)  その中の、金髪美女の写真が多くて、2ショットもたくさんあった。  (何、ロリっぽい子が好きなの?)  自分とは全く真逆の美女に、はっきりと傷ついた自分がいた。2人で映る大地は、正樹が見たあのデレデレした顔だった。  (ムカつく!!芸能人だから、周りに美女がいるのはわかるけど!!)  ムカついて、ザワザワして、隣に寝ずにソファーで眠った。  「正樹!おはよう!そろそろ時間だよ!」  パシン!  「触んな!」  「え…?」  驚いた大地をギロリと睨みつけて、全身がバキバキで余計にイライラする。  「あ…の、正樹?朝だからイライラしてる?」  「は?朝のせいにすんな。大地にイラついてんだけど。」  大地の顔を見ずに吐き捨てて、洗面所に向かう腕を引かれた。  「離せ!時間ないんだよ!」  「何?俺なんかした?」  「分かんないの?」  「え…?何?本当に分かんない」  チッと舌打ちすると、ビクッと怯えて、大地の手から力が抜けたところを振り払った。  「自分の行い考えな。分からないなら別れる」  「待ってよ!!教えてよ!誤解かもしれないじゃん!検討もつかないよ!」  「触んな浮気者!」  「浮気?」  「芸能人は綺麗な人多いもんな??僕は繋ぎか?ふざけんなよ」 きょとんとした大地を無視して準備をし、大地の作ってくれた朝ごはんを食べずに会社に向かった。  (あー腹減った。ムカつく!)  「数字動いてない店舗、支店長は全員報告しろ!」  受話器を叩きつけるように置いて、ドカっと腰掛ける。当たり散らしてイライラを仕事にぶつけ、この日は昨年対比を余裕でクリアした。  ネクタイを緩めて、明日の会議資料を確認すると、コーヒーが置かれた。  「…ありがとう」  「荒れてましたねー。営業可哀想ですよ。」  「何もしないで給料貰おうなんざあり得ない。」  営業事務の牧野莉子は、正樹の1年後輩だ。ロングヘアを揺らして苦笑いをし、隣のデスクに座った。牧野は数字の取りまとめなどでいつも一緒に残ってくれる。  「あんまり怒ると血管切れますよ」  「僕は僕以上に上長に怒鳴られてるよ。こんなの軽い方さ。」  正樹は目を擦った後、コーヒーを飲んでホッと一息ついた。  「最近ずっとイライラしてますね。数字はそんなに悪くないし、着地は問題なさそうですけど。」  「一部支店が調子がいいだけだ。動いていない支店も動かさなきゃいけないからな。」  「何、彼女と喧嘩でもしたんですか?」  「プライベートに入ってこないで」  図星すぎて、牧野をシャットアウトした。仕事中にそんな話はイライラが増長する。  正樹の右側に座る牧野が、マウスを触る正樹の手の甲に、手を重ねた。  「牧野さん…?」 「彼女と別れたと聞きました」  「もう一度言うよ。プライベートに入ってこないでください」  「部長。好きです」  え?と牧野を見ると、唇に柔らかい感触と、シャンプーのいい香りがした。  「私を、彼女にして下さい」  ストレートな告白に思わず唖然とする。  「…仕事しましょう」  「部長。」  握られた手は、牧野の膝に置かれた。 スカートから伸びる、細い脚は黒いストッキングで正樹は目が釘付けになる。  「部長のためなら私、何でもします。」  「牧野さん、仕事して下さい。」  振り払って、パソコンに向かう。 諦めない牧野が後ろから抱きついてきて、長い髪や胸が当たる。  「データまとめて、退勤したら、お時間がほしいです。」  その声を無視してパソコンを見つめ続けた。 突然の告白と猛アプローチに、正樹は動揺していた。  フロアを戸締りした後、牧野と会社を出る前に、また牧野からキスされた。  「牧野さんっ…」  「もう仕事中じゃないですよね?」  「そうですけど…僕、何も答えてないですよね?こういうの、やめて下さい。」  水に流すから、と施錠してエレベーターに乗ると、シャツの裾を掴まれた。  「今夜だけでも、私を見てください。」  身長差からの上目遣い。必死にアプローチしてくれた牧野に、ご飯だけならと少しだけ付き合ってあげることにした。  大地:正樹、残業お疲れ様。今夜話したい。待ってる。 お店を探そうとケータイを開くと、大地からのメッセージにイライラが蘇る。  (そっか。大地も浮気したのに、僕だけ我慢するって変じゃない?)  そう思うと、牧野に対して見る目が変わった。牧野がここどうですか、と見せてくるお店に、笑って頷き、ありがとうと頭を撫でた。  面白いほど真っ赤になる牧野に、ありかな、と肩を抱いた。  お互いほろ酔いになって、終電が近くなるのに、帰ろうとしない牧野を見て察した。  「…牧野さん、今、僕、付き合っている人がいるんだ。」  「そう…ですか。」  「ごめん。今日はありがとう。…もうそろそろ帰ろうか。」  「2番目でもいいです。」  「だーめ。自分を大事にしなさい。」  「部長が彼女いてもいなくても、私は部長が好きなんです。…さっきも言いました。今日はそばにいてほしいんです。日付変わってしまいましたが…今日誕生日でした。だから、絶対、部長と過ごすって決めてたんです」  女の子は、ズルイと思う。こんなの、男が喜ばないわけない。ボディータッチも、いい香りも、小さな手も、今にも泣きそうに涙を溜める目も、小さな唇も全部武器だと思う。  そして、男は女の子の思うまま。簡単に誘惑に負ける。  「最初で最後。…明日から上司と部下に戻れる?」  「はい…。どうしよう…夢にまで見た…部長と…。恥ずかしいっ」  「可愛い。最高に気持ち良くしてあげる。」  ホテルで身体を重ねて、名残惜しそうな牧野をタクシーに乗せて見送って、明け方に家に着いた。  (え…灯りついてる。)  『待ってる』  あのメッセージを思い出して、後ろめたさがあったが、大地も浮気したし、おあいこだろうと開き直ってドアを開けた。  ダイニングテーブルで眠る大地を起こさないようにするも、大地は目を覚ました。  「ん…。まさき、おつかれさま」  寝起きの舌ったらずな声が可愛くてドキッとする。おいでと両手を広げる大地を無視して風呂場に行こうとすると、突然大地が壁に押し付けた。  「痛っ…なんだよ」  「浮気?」  「…」  「どこで風呂入ってきたの。いつもの香水は?どこのシャンプーなの?…なぁ?答えろよ!!!」  「っ!」  正樹に怒るのを初めて見て、思わず固まった。 「キスマークまでつけられて…。最悪。」  吐き捨てるように言った大地に、正樹も怒鳴り散らした。  「お前が浮気したから仕返しだよ!どうだよ、された気分は!」  「誰が浮気なんかするか!!そんなヒマないし!」  「嘘つくなよ!見たんだよ!」  「何を?はっきり言えよ!周りくどいな!」  朝から訳分かんないし、とテーブルを叩く大地に、余計に怒りが増幅した。  「お前のケータイに女との写真があるだろーが!!あんな可愛い系が好きなんだな!?僕みたいな男じゃなくて女と付き合えよ!」  「…え?誰のこと?」  「知るかよ!自分のケータイ見ろ!」  どっちも引き下がれないほど怒鳴り合って、苛立った大地はケータイを開いてもピンときていないようだ。  「貸せ!ほら!この子!!膝の上まで乗って…これは浮気以外のなんでもないだろーが!!だから、僕だって、大地にやり返そうって…」  怒鳴りながら涙が出て、情けなくてゴシゴシとシャツで拭いた。確かに牧野のシャンプーのいい香りがして、余計に悲しくなった。  「正樹…。めちゃくちゃ言いにくいんだけど」  「分かってるよ!お前のタイプなんだろ!?浮気どころか二股か!?」  「二股でもなくて、浮気でもない…。あの、これ…さ、ユウなんだよ。」  「……え?」  瞬きした時に涙が落ちて、視界がクリアになる。  「だから、この女の子…ユウなんだよ」  「嘘つくなよ!そこまでして浮気を隠したいのかよ!ユウさんまで使って!最低だなお前!!」  大地は大きなため息を吐いて、ダイニングテーブルの椅子にドカっと腰掛けた。トントンとテーブルを叩いて、座ってと言われて、大人しく腰掛けた。 「オフレコにしてね?…えっと、ファンイベントの企画で女装することになったの。メイドさん。そしてご主人様役もやる。この写真見て。これが…大河さんで、これがレイさん、マコちゃんに、ユウ。」  「う…そだよな?」  「で、これが一応俺。どう?悪くないでしょ」  「うっわ!美人!」  驚くほど綺麗な女性。三つ編みが緩めで、モデルさんのような大地だった。  「で、この写真で勘違いしちゃったんだよね?…この写真は、メイド役のユウと、ご主人様役の俺のシーンなの。」  「……」  「分かってくれたかな?浮気なんかしてないよ。」  完全に自分の誤解だと知って思わず俯いた。 「で?正樹はガチの浮気をしてきたと…。」  急に立場が変わって、正樹は小さくなった。 「ごめん…。昨日の夜、勝手に大地のケータイ見て…ショックで、朝からイライラしてて…。会社で部下に告られて…誕生日だったみたい。…今日だけはそばにいてって言われて…大地も浮気したならって…付いてっちゃった。」  正直に話すと、大地は頭を抱えたあと、苦笑いしてこちらを見た。  「ね、怒ってたら分かんない。話したら、誤解しなくて済んだでしょ?…っ、ぁ、ごめんっ」  大地は笑いながら、ポタリと涙が溢れた。 「ごめん、大地…っ」  慌てて駆け寄るも、来ないでと言われて席に戻る。  「なんで…話してくれないのっ…。なんで疑うの?…俺、正樹と付き合うって決めた時から、他なんか見てないよ。でも、正樹は自分から告白したくせにさ、よそ見が多すぎるよ。ユリさんも…部下の方にも…正樹の方がフラフラしてんじゃん!!」  「ごめん…」  「……一回は許したよね?ユリさん口説いたこと。許したからいいと思った?」  「ちがう…」  「正樹の悪夢…実践しようか?」  「へ?」  大地が突然席を立って窓に向かった。正樹はあの悪夢を思い出して急いで後ろから抱きしめた。  「嫌だよ!!ごめん!!ごめん!!」  「…冗談だよ。…もうやめてね」  振り向いた顔に色がなくて、キスしようとすると避けられた。  「ごめん。今日は無理。」  明日早いから、とフラフラと寝室へ行った大地を見て、やってしまったと頭を抱えた。急いで風呂に入り、鏡を見ると鎖骨に浮かぶキスマークに後悔しかなかった。 寝室は鍵まで掛かっていて、ため息を吐いた。  コンコン  「大地、開けて」  「頭冷やしたい。正樹を許したいから。」  この言葉に大地がどれほど傷付いたのか分かって、ごめんと言い続けた。  ガチャ  「大地…っ」  「正樹、二度としないか、別れるか、選んで」  30分後にようやく出てきてくれたが、顔は真っ青で、正樹を真顔で見た。  「二度としない」  しっかり目を見て大地に言うが、その目には光がない。  「なんでかな…許したいのに、二度としないって言われて嬉しいはずなのに…」  「大地、ごめん」  「どうしても、許せない」  「大地…」  「正樹がしたように、するから。」  「え?」  「一回は浮気してやる。そうじゃなきゃ気が済まない。」  正樹は自分が浮気した手前、何も言えずに分かったと了承した。  「誰にしようかな…。綺麗な子いっぱいいるし…。でもやっぱりユウにしようかな。俺の人生で1番愛した人だし」  『1番愛した人』に正樹は思いっきり傷付いた。ユウには勝てないからお互い名前を出さない約束だったのに、ユウは、ユウなら、と何度も何度も正樹の前で愛おしそうに言うのが辛かった。  (何も言い返せない)  ただ大地をぼんやりと見て、小さな傷ができていく。ナイフで致命傷にならない程度に、じわじわと刺される。  「ユウなら…っ…っ、ぅ、ぅっ」  突然の声音に、正樹はぼんやり見ていたのをハッと意識を取り戻す。そこには号泣しながら立ち竦む恋人。見ていられなくて、抱きしめる。嫌がって暴れる大地をベッドに押し倒して、馬乗りになってキスをした。  「大地、愛してる。ごめん。大地の1番になれるように努力するから…だから、泣かないで」  「辛いよっ…正樹は、俺のなのに…っ、他の人なんか浮かばないし、正樹しかいないのに」  「ごめん、愛してる。大地が好き。僕は大地に仕返しするつもりだっただけ…。大地が1番には変わりない」  「今更…1人にしないでよっ、俺、っ、正樹しかいないのにっ!」  「僕もだよ」 泣き顔さえも綺麗だと思わせる大地。大地を越える人なんかいない。正樹は披露宴から舞ちゃんのことは一瞬も浮かばず、大地にハマっていた。今回のは、大地が好きすぎて、不安だった。嫉妬していたから思考が悪い方向に行ってしまった。  「大地が好きすぎて…不安になったんだ。大地は芸能人だから…綺麗な人やカッコイイ人たちに囲まれて…。周りが大地をほっとく訳ないって、思って…。それに最近仕事にニヤニヤしなが行くから…職場で…って思ったんだ。」  ベッドに縫い付けながら正直に言うと、大地はきょとんとした後、やっと笑ってくれた。  「嫉妬…してくれてたの?」  「うん。でも、聞けなかった。怖かったから…そしたら、あの綺麗なユウとの写真…勝てないって思ったら悲しくて怒りに変わったんだ。ごめんなさい。」  「じゃあ、俺もごめんなさい。正樹を不安にさせる程ニヤニヤしてたんだね。この仕事の収録が楽しくて…。実は脚本や設定を任されたんだ。だから、妄想してニヤついてたのかも。」  「へー。こんなのも演者がやるのか。」  「そうだよー。昨日の収録はメインのたぁ子とマコちゃんのカップルだったから…。大河さんが照れてNG連発だったよ」  楽しそうに話す大地に、ドキドキして見つめる。  (あぁ…。好きだなぁ…。可愛い。)  話を聞きながら、硬くなった熱を大地の足に擦り付けると、ビックリしたようにこちらを見た。  「ヤってきたくせに足りないの?」  渾身の嫌味さえも可愛くて、上から攻める。  「ンッ!まさきっ、もう遅いから、寝よう?」 「大地…抱いていい?」  「え!!?」  「大地が好きって、身体でも伝えたい。受け取って」  「いや!嘘でしょ!?無理無理!嫌だよ!」  「大地…抱きたい」  「そんなことできないよっ、正樹。もう、伝わったから、離して!!」  必死に抵抗しているが、馬乗りになっているから動かずにいる。服を脱がして、反応していない大地の象徴を口に含んで懸命に愛撫する。  「ぅっ…はぁ!!は、ぁっ、ぁっ」  (硬くなった…可愛い。顔真っ赤。)  「正樹ぃっ、っ、っ」  「でる?」  「あぁっ!そこで喋らないでよっ」  「イク?」  「っっっ!!ーーっぁ!!」  温かいものが放たれ、ゴクゴクと飲み干した。  「はぁ、正樹、これ、苦手なのに…無理しないで。ほら、出して」  あ、と口を開けて飲み込んだことを見せると、大地は恥ずかしそうに目を逸らした。力が抜けた大地にまた馬乗りになり、乳首を強く吸い付くと、正樹が育てた乳首にビクビクと体が跳ねて、大地の眉が下がる。  「乳首、気持ちいい?」  「ん…気持ちいい。」  「もっとヨくしてあげる。」  噛んだり吸ったりすると、髪を握られ、声が漏れてきた。  (大地の声…エロいんだよなぁ…)  抱かれたくなって、もじもじする。今日は大地を抱きたいのに、身体が大地を求めてしまう。  (大地に抱かれたい…)  「大地っ、僕にも、触って」  正直に言うと、大地は嬉しそうに笑って、正樹の服を脱がして愛撫を始めた。  (気持ちいい。気持ちいい。)  理性なんかすぐに飛んでいって、大地に身を委ねる。安心できて居心地がいい大地に包まれて、幸せな気分に浸る。  「後ろがいい?向かい合わせがいい?」  「顔見ながらする」  「ん、分かった。力抜いてね?」  「っっっ!っぁああ!っ大地っ!っぁ!」  慣らされた中は、大地の熱に大歓迎して喜ぶ。どっちも動きが止まるほど気持ち良くて、2人とも必死で呼吸をする。  「はぁっ…あと、半分…いくよ」  「んぅっ!っはぁっ!!ぁんっ!!」  (どっか…いっちゃいそう…これ…たまらないっっ!)  ズンッ!!  「ぁあーーッ!!!」  「くぅっ」  「ーーっ!ーーっ!」  ガクンガクンと震えて、余韻に浸る。その間も待ってくれて、上から愛おしそうに見てくれる。  「正樹、大好き」  「僕もっ、っ、大地が、好きっ、!大地の、1番に、なりたいっ」  「ふふっ、1番なのに」  「今の1番じゃない、人生での、1番に、なるっ、ユウ、さんを、越すから」  腰を振られながら必死に言うと、嬉しそうに破顔した大地にキュンと胸が痛む。  「ありがとう」  「ぁああ!っあ!急にっ!!大地っ!またぁ!!」  「たくさんイって…。可愛い顔見せて」  甘ったるいセックスに、正樹は骨抜きにされた。  ーー  「え?これ…」  「貰って。牽制用。彼女って言って見せていいから。」 仕事に行く前に大地から貰ったのは、三つ編みする前のロングのウィッグを被った大地。メイクもされて本当に女性にしか見えない。  「あ、ありがとう…?」  「女の子が正樹をほっとく訳ないから…。俺より可愛い子以外はこれでなんとかなるでしょ。」  「あははっ!分かった!…大地、ごめんね。愛してる。」  「俺も愛してる!」  ニコリと笑った顔に、またドキドキして会社に向かった。  「部長!おはようございます!」  「おはよう。10時から会議だからデータ出しといて。」  牧野にはいつも通り接すると、やはり不満そうだった。彼女を気取った態度に、期待させてしまったことを反省する。そして、わざと先ほどの写真を落とす。  「部長、落ちました…よ。」  「あぁ、ありがとう。」  あえて何も言わずに受け取ると、牧野は不安そうに質問してきた。  「これが、彼女さんですか?」  「まぁ…。ほら、早くデータ出して」 あからさまに落ち込んでしまったが、これ以上期待させては牧野に申し訳ない。いつもの態度でやり過ごした。会社では正樹の彼女が美人すぎると噂になった。  ーー  「あっはははは!俺が女の子と思って仕返し浮気されたの?!ごめーん!!」  大地は現場に行くと、先に現場入りした優一に抱きついて昨日のことを話した。優一は大爆笑して謝ってきた。  「正樹は本当、フラフラしてるねー。正樹にお仕置きしよ!」  そう言った優一は、セットのベッドに青木を寝かせ、青木の作った台本通りに演じながら、その写真を大河に撮ってと依頼した。  眠る青木に馬乗りになって、耳元でおはようと囁くシーン。優一はあえてカメラ目線で正樹を挑発するような表情にした。  「ユウ…お前なんかエロい」  大河が顔を真っ赤にして目を逸らした。青木の上に座ったまま、見せて見せてとぴょんぴょん跳ねるのが、騎乗位のようで青木は鼻を抑えたが遅かった。  「「あー!鼻血!!」」  大河と優一の声にスタッフが慌ててやってきた。布団の下には、スタッフや優一にバレてはいけないほど熱を持った自身。  (ごめん正樹。浮気疑うよね…。俺の方こそごめん!…だって無理!可愛すぎる!!!はぁ、節操なしだな…。)  大丈夫?と顔を近づけてくるのにも、ドキドキして、布団から出れない青木だった。 

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