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第116話 お薬2

「ん?何だこれ」  Altairの振り付けのフォーメーションが浮かんだリクはペンを探して、家の引き出しを開けまくっていた。すると、コロンと小瓶だけが転がってきた。  (あれ、この間の薬だよな?レイにあげるって言ってたのに…)  もしかして愁が気に入ったのかとニンマリ笑う。隣の引き出しからペンを見つけてサラサラとフォーメーション案を書いた後、躊躇なく、その液体を飲み込んだ。  (さぁて、愁は10時まで翔の収録だったからもうすぐかな) 今の時刻は10時50分。  到着と同時にできたらいいな、なんて思っていた。  「はぁー…っ、はぁ、んで、電話とらねぇんだよ!!」  頭がグラグラする中、必死にケータイを握って愁からの応答を待つが、コール音のあとの機械的なアナウンスが続く。  「は…ぁ、もっ、きっつ…い……」  ヤバイ薬だったのかと、不安になって這いつくばって寝室に行くも、動くだけで腰が抜けそうな快感に襲われ、急な絶頂を迎えた。  「はっ、はっ、はっ、はっ、はっ」  目の前がチカチカして、パタパタと涙が溢れる。  (どうしようっ、どうしようっ)  昔から勝手なことをして怒られてきた記憶が蘇る。自分じゃ解放できない熱に、欲を吐き出しては怖くて泣いた。  「っぁあああーーーッ!!」  異常なほど跳ねて、やっと服を脱ぐことに成功した。  「しゅ…しゅう、しゅう、…助けてぇっ」  どんなに呼んでも来てくれなくて、ヒックヒックと泣きながらシーツを握りしめる。  ドクドクッ  (また…きたぁっ…頭おかしくなりそっ…)  いっそ失神してしまいたいほどの熱はリクをどろどろに溶かしていく。ぼんやりと暗闇を見つめて後悔が押し寄せる。  ーーーー  「愁〜!2組のリョーコちゃんが中庭に来てってよー!」  「はぁ?またかよリク。こんなの伝言してくるなよ」  「リョーコちゃんどーよ?おっぱい大きいし、可愛いし!アリじゃね?」  「……。」  「早く愁も彼女つくれよなー!」  学校1といっても過言ではないほどモテモテの愁をアシストしようと、何度も女の子の告白を手伝っていたがほとんどが玉砕していた。理由が分からないまま、難しい奴だと当時の彼女と馬鹿にしていた。  恒例となっていた告白アシストが、リクには学校生活の楽しみになっていた。また他の女の子の恋愛相談を聞いて、日程を調整していた時だった。  「リク!!」  「え?」  「キャーー!愁先輩!!」  女子たちがキャーキャーうるさい中、腕を引かれて生徒会室に行くと、下を向いたリクの彼女がいた。  「あれ、どした?」  「お前さ、僕のことだけやりすぎ。リクが他の女の話ばっかり聞くから、この子、僕に乗り換えようとしてきたけど?」  「え?」  「あの、そうじゃなくて、その…」  「なぁに今更純情の振りしてんの?僕の上に跨ってきたくせに。リク、こんな下品な女がいいの?誰にでも足開くような」  「ひどい!何その言い方!」  「リクは好きかもしれないけど、残念。僕は君に全く興味がないよ。」  ゆっくり生徒会長席に座って頬杖をついて笑う愁にぞくっとした。 「リクさ、僕のアシストしてるつもりかも知れないけどさ、リクの趣味悪いよね」  彼女が怒って出て行ったのを唖然として見送る。 「リク、追いかけたら?」  「…愁?何のつもりで…」  「リクにお仕置き。頼んでないのに勝手なことして。彼女が欲しかったら自分で作る。今は僕のタイプの子がいないだけ。…あと、誰彼構わずチャンス作るのやめてよ。期待させるのも意地悪だよ。」  「そっか…ごめん。愁のためにって思ったけど…そうだな。間違ってた」  「いい?リク。本当に幸せになってほしいならさ、僕みたいな行動が普通じゃない?」  「え?」  「リクに相応しくない女だよって教えてあげるの」  この時の目は忘れられない。目が逸らせないほど、澄んだ真っ直ぐな目立った。  (愁を怒らせた…)  「愁、ありがとう」  「うん。どういたしまして。」  とりあえずお礼を言うといつもの笑顔になってホッとした。彼女には振られて、アシスト業をやめ、勝手なことをしない、と学んだ。  ーーーー 一瞬とんでいた間に過去が流れた。  面白そうとか、楽しそう、ということだけで何も考えずに思いつきで行動することを何度も注意されてきたのに、またやってしまった。  さっきから何度も鳴り響くケータイが、取れなくて涙が止まらない。  「ふっぅ、しゅう、しゅう…っぁあ、ん、もう、っ、っ、」  ガチャ  「はぁ、はぁ、リク!リク!?いるの!?」  玄関から愁の声がしてホッとする。ドタドタと慌てたように足音がして、寝室に影が浮かぶ。  「ッ!?…はぁーー…嘘でしょ?飲んだ?」  「お…そいよ…っ、はぁ、死にそう…っ」  状態をみて呆れたように大きなため息を吐かれるも、欲しくて欲しくてたまらない。最後の理性は愁を見て一気に切れた。 「リク…んぅっ、っ!ん!」  「は、は、は、っ、はぁ、しゅう、しゅう」  「すっごい匂い。何回イったの。もう…。」  「しゅ、しゅう、すき、すき」  「全く…はいはい。とりあえず楽になろうね」  愁が熱を咥えた瞬間、何も考えられないほどの快感に襲われる。  「ぃっやぁああああああーーーッ!」  「んくっ…んっ」  「ァアァア!!っぁあああー!!」  頭を振って腰を跳ねさせて一瞬とんだ。 「ぅぅっ、怖いっ、怖いよっ」  「そりぁ全部飲んだらこうなるでしょ。相変わらずだね…ほら、ベッドにおいで」  「ぃやぁあああ!ん、ん、出ちゃ、出ちゃう」  「大丈夫大丈夫。ほらゆっくり。」  「ん、っ、はぁ、はぁ、」  ふわりとベッドに横たわり、温かさと柔らかさにホッと息を吐いた。 「大丈夫だったでしょ?落ち着いた?」  「ううん、しゅう、なかがね、なかっ」  「あはは!可愛い!舌ったらずになっちゃって」  「なか、なががぁ」  「うんうん、中辛いの?触ってあげよっか?」  「うん、さわって、しゅう、さわって?」  「うわー。別人かな?」  「しゅう、しゅうってば」  完全に快楽に飲まれれば、後は解放するだけ。目の前の恋人に縋って必死に求める。愛おしそうに笑ってくれる愁がたまらなく好きで、必死に指や腕を舐める。  「こんなに濡らして…」  「んぅ、ンッ、」  「息吐いててね」  「ッッァアアーーーー!」  「え?イった?」  ガクガクと震えて、絶頂を迎える。指だけでとんでもない快感に逃げるように腰を引いた。  「も、っ、やだ、っ、やだぁ」  「自分で飲んだんでしょ?ほら頑張って。指増やすからね。」  「んぅぅーーーー…っあぁあ!っあああ!」  「熱いね、あぁ、前立腺すっごいね」  「きゃぁあああうっ!!!」  「あはは、すごいな。リク僕の入れたら失神するかもね。あまり強いのじゃなくてよかったね。」  「助けてっぇ、っああ、助けて、しゅう、しゅう!!」  愁の腕に爪を立てて泣きながら懇願する。この衝動を終わらせたくて足を開いて誘った。  「入れて、しゅう、ここ、ね、まだ?」  「僕のが欲しいの?」  「ん、ほしい、いっぱい出して、なか、あついから、しゅうの、ほしい」  「へぇ…イイね」  愁は舌舐めずりした後、裸になってベッドに上がってきた。ようやく解放されると、必死で手を伸ばして愁にしがみついた。  「きて、しゅう」  「リク、愛してる」  耳元で低い声で囁かれ、ゾクゾクして甘い吐息を吐き出した。  (気持ちいい、気持ちいい)  熱が穴の近くを擦るだけでたまらない。入れてもらえるようにひたすら合わせる。  「ん!はやくぅ!!」  「はは、ごめんごめん」  焦れて叫ぶと、おでこにキスされた後、足を持ち上げられた。  「リク、いってらっしゃい」  「へ?ーーッ!?ッァアアーーッ!!」  「はぁ、っ、あっつ!」  「あぁァアァアーー!!ァアァア!ンッ!はぁああん!ァアァア!」  「くぅ…は、すごいな…ッ、は、は、は、」  「あぁ!あぁ!!ーーッ!!ーーッ!」  ーーーー  急に脱力したリクを抱いて、ひたすら奥を攻めると、失神しているリクはされるがままだ。中だけは起きているみたいでウネウネと動き愁の熱を搾り取ろうとする。  「はぁ、はぁ、はぁ」  愁も夢中での腰を振って絶頂を目指す。  (こんな…エロいとこ見せられて、我慢できるわけない…)  「ア!!っぁ?!っぁあああーー!!んぅ!!やだぁ!やだぁ!」  「は、は、は、リク、はぁ、おはよ、」  「ッァアア!!あぁあ!助けてっ!助けてしゅう!しゅう!」  「は、は、ここ、に、ッ、いる、だろ」  「ん…はぁ、しゅう、いたぁ、しゅう、すき、すき、っんぅ、しゅう」  突然目を覚ましたリクは、更なる快感に飲まれ、助けて、と愁を探す。手を握ってやるとうれしそうに笑って握った手をペロペロと舐めた。  ブチン!!!  「ごめんな」  「ぃぁあああーーッ!!っあ、あっ!やだ、も!お漏らしっ!しちゃうぅ!」  「はぁ、はぁ、何でもいいよ、リクなら!」  「ん、んぅー!やだぁ!ダメダメ!!!っぁあああーーーッ!」  必死のリクにニヤリとして、体制を背面座位にして鏡に向けると、勢いよく潮を吹いた。  ガクガクと震えるリクを鏡越しにみて、堪らずまた攻める。首を振って嫌がるリクに腰を下から突き上げて、萎えたリクを激しく刺激すると、前屈みになっていく。  「やだやだぁ、しゅう、本当に、もぅ、おしっこ出ちゃう…」  必死な顔で振り向いてきたリクに、噛み付くようなキスをしていると、太ももが温かくなった。勢いのないそれに愁はゾクゾクと興奮が背中を通って行った。  「リク…」  「おれ、やだって言ったのにっ、やめて、くれないからぁっ、っぅ、っ」  泣くというオプション付きで、愁は自然と口角があがるのを自覚した。  (やばいな…なんだこれ…止まらないよ)  子どもみたいにお漏らしして泣くリクが可愛いくて、衝動が止まらない。入ったまま持ち上げて風呂場に向かう。嫌だ嫌だと泣き喚くリクの首をキスマークだらけにして、シャワーをかける。  「も、ぬいてよぉ、しゅう、つかれた」  薬の効果が抜けてきたのか、少しの刺激さえ嫌がり始めた。  「今日は寝かせないよ。お漏らしした悪い子にはお仕置き。」  「だって、お前が…っ、ァアァアー!うそうそ!ごめんなさいっ!ァアァア!!ごめ!」  腰を激しく動かすと、謝ってくるのがサディストの自分にはツボだった。途中で意識のなくなったリクをいつまでも犯し続けた。  風呂場でリクを綺麗に洗ってソファーに寝かす。雑巾と除菌スプレーをもって寝室に行くと、まだ残る情事の後にゾクゾクするのを落ち着かせて、リクのお漏らしや、吐き出した欲を拭いた。  (はぁ…エロかった…たまらないなら…これだからリクは手放せないよね…愛しいおバカさん)  あの薬はリクに1度試して効果がなかったものだった。その時は用量を守って数滴にしていたが、まさか全部飲んでしまうとは思わなかった。  きっとリクは楽しませようとしただけに違いない。レイにあげた時ぐらいの快感を求めていたはずがそれ以上となり、さらに愁も収録が推して帰宅が遅くなったのだ。  (あの着信数に何かあったんだと焦ったけど…もう少し焦らしても良かったかな)  帰ると、リビングに置かれた空の小瓶に、まさか、と探し回った。開いた寝室のドアに全裸で倒れ込む恋人と、廊下に散らばる吐き出した欲と、今日リクが着ていた服たち。  (明日は仕事無理かもなぁ)  リクのパソコンを開いてスケジュールを確認すると、翔と同じテレビ局で入り時間も近かった。  (代行してあげますか)  クスクス笑って掃除を終え、愁も風呂場に向かった。  ーーーー  目を覚ましたリクは怠い体を引きずってトイレに向かう。 「おぇぇえ!!」  副作用なのか、トイレの便器に捕まってひたすら吐き気と闘った。 「ぅぅ、っぅー…きっつ」  仕事も休みをもらい、グロッキーのまま吐き気と闘いながら、もう二度と勝手なことはしないと誓った。 

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