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第124話 恋愛マスター
久しぶりに飲みに誘われた青木はルンルンと準備をした。新しく買った服を着て、髪型を整える。
「よし!正樹ー!いってきまーす!」
「あーい。遅くなんなよー」
正樹は見たかった映画の準備をして笑顔で手を振った。
(久しぶりに先輩たちと飲むなぁ〜嬉しいー!)
バーに入るとすぐにVIPルームに通された。
「お疲れ様です!」
「大地!お疲れー!」
「お疲れー!久しぶりだな!」
78の龍之介と潤に迎えられ、ハグして挨拶をする。そして奥に座る楓は右手を上げて挨拶をしてくれた。
「あれっ?今日ルイさんいないんですか?」
「大地!お前さすがだなぁー!あのアホは風邪で入院だよ」
「入院!!?え、大丈夫ですか?」
「大丈夫大丈夫!リクさん曰く、大丈夫と嘘ついて練習に来たから無理矢理入院させたみたい!」
潤がさすがアホだと笑う。青木は無事ならよかったとホッとした。
「だから、ルイがいなくて寂しそうな楓を励まそうっていう会!」
「え!?」
「うるせーな。別に寂しくないし。静かでいいし」
「やぁだぁ〜!楓ったらツンデレ??…お、うそうそ、ごめん」
龍之介が茶化した瞬間鋭い目つきになり、慌てて謝っている。青木は楓の前に腰掛け、様子を見た。なんだかぼんやりして、考えごとをしているようだった。
「大地!知ってたか?!ユウちゃんのお姉さんと、うちのムッツリスケベの篤が付き合ったらしいぞ!」
「ぅえぇ!?マジっすか!!ユウも知らないかも!」
「いやぁ〜あのベッピン巨乳ちゃんを落とせるとは…我らがリーダーやりますな!」
青木は少し羨ましく思ってビールを流し込む。真面目そうな篤さんでよかったと内心ほっとした。
「は?そうなのか?」
突然、楓が顔を上げ驚いた様子で潤を見た。すると、潤と龍之介は顔を合わせてニヤリとした。
「そうだよー?だから、ルイは取られなくて大丈夫!」
青木はきょとんとして見ていると、楓は苛立ったように日本酒を飲んだ。その後少しホッとしたような顔をした楓に驚く。
龍之介と潤もクスクス笑って楓を見ている。
「なんだよ。こっち見るな気持ち悪いな」
「楓ー?認めちゃいなよー?俺たちは偏見ないよー?」
「いやぁ、ついに78もグループ内恋愛!キャー!わくわくしちゃう!」
「そんなんじゃねーよ。勘違いすんな。気持ち悪いな。」
「まぁまぁ!でもルイは無類の女好きだからなぁー!楓!応援してるぞ!」
「なんの応援だよ!ふざけんな!」
なんとなく話がわかって、青木もニヤついてしまう。相棒に近い2人がなぜそうなったのかは分からないが、楓の新しい恋にドキドキした。
「楓は分かりやすいよなー?マコちゃんの時は、ずっとマコちゃんのことばっかり。サナちゃんの時も!そして…」
バン!!
「お前らいい加減にしろよ!!」
「…まぁったく、頑固ちゃんだなぁ」
「大地ー?どうよ、この純情の先輩になんか言ってやってよ」
突然話を振られ、迷いながらおしぼりで少しこぼれたお酒を軽く拭きながら、過去の自分を思い出す。
「えっと…恋愛の好きでも、友情としての好きでも、その人に当たることはしちゃダメだなって思います。…俺は、最初、自分の気持ちに気付かなくて、勝手に嫉妬して、本人に当たって傷付けました。頼ってほしいのに、頼ってもらえなくて、なんで!って一方的に怒って責めたりしました。でも、本当は必要としてくれてたのを、当たり前すぎて気付かなくて…。」
3人が静かに聞いていることに驚いて、話をやめると、楓は優しい顔で、続けて?と笑った。
「気付いた時には、奪われてました。言葉って怖くて、ずっと残るんです。傷付けた後に何を言ってもどんなに謝っても傷は治らないんです。…だから、シンプルでいいと思います。助けたいなら助ける、話したいなら話す、誰が、とか、自分の方がとかを考えずに、自分がしたいものをストレートに表現したらいいと思います。」
「「「おおー!」」」
拍手されて、恥ずかしくて酒を飲んだ。
「若いのに恋愛マスターだな」
「恋愛マスターなんかじゃないです!」
「まぁ…。まだ、わかんねぇけど…とりあえず気にせずに過ごすわ」
楓がグラスを傾けて、それに合わせた。綺麗な音が鳴って、楓がやっといつも通りになった。
しばらく飲んでいると、楓がトイレから戻って来なくて心配になった。潤と龍之介は彼女の話で盛り上がっているので青木も席を立った。
(酔い潰れたのかな?)
トイレに向かう途中で、喫煙所で電話する楓を見つけた。
「かえ…」
「ルイが俺を頼らないとか、調子狂う」
(え?!)
楓はこちらに背を向けていて気付いていない。タバコをゆっくり吐き出して、話す内容はもうルイが好きだと言っているような雰囲気だ。
青木はドキドキしながら席に戻った。
しばらくしてすぐ戻ってきた楓は、帰る、と言い、全額支払って帰っていった。
ーー
「ただいまぁ」
「ぅーっ、ぅ、っ、おか、えりっ」
「あはは!感動するよねー?」
帰るとボロボロ感動している正樹。可愛すぎて後ろから抱きしめる。ノンタンが、正樹の足の中で気持ち良さそうに丸くなっている。
鼻水が止まらない正樹はエンドロールに釘付けだ。
(可愛いなぁ…好きだなぁ…)
後ろから頬にキスすると、感動モードの正樹は素直に体を預けてきた。
「ん…酒臭い」
「ごめーん」
「大地…」
正樹がぎゅっと抱きついてきて、そのままゆっくり押し倒す。
「ノンタン〜少し向こうで寝んねして」
ノンタンをソファーのクッションに置いて、正樹の体を撫でる。舌を絡めながら服を剥ぎ取り、潤んだ目が可愛くてたまらなくなる。
「ん…っ」
膝が正樹の熱に触れると、たまらなさそうに声を上げた。
(可愛い、可愛い)
幸せを感じて、これでもかと痕をつける。2人はだんだん興奮して激しく互いを愛撫する。
「はっ…なん…か、今日、もえるな…」
「わかる…俺も…」
「欲しくて…たまんないんだけど…」
「だけど…?」
「分かんない…なんか…めっちゃ好き…」
胸に顔を埋めて恥ずかしそうに言う正樹は、感動した映画のモードになっているようだ。クスクス笑って、そのモードにこたえてあげる。
「正樹…好きだよ」
「ん…ッ、囁くな…ゾクゾクするから…」
「お前が1番だよ…」
「嘘つくな…」
「なんでそんなこと言うの」
「…うそ、嬉しい」
潤む瞳が少し笑って、ぎゅっと抱きついてきた。テレビの方を見ると恋愛もののDVDが2つ乱雑に置かれていた。
「キュンキュンしたの?」
「うん、した。」
舌を絡めながら話してお互いフフッと笑う。いつものように愛撫すると、甘い声が漏れて、青木も呼吸が荒くなる。
「正樹っ、入れるよ?」
「うんっ…」
「こら…力抜いて…」
「抜いてるよっ…」
「きついねー…ンッ…」
興奮している正樹に力が入る、熱を擦り付けるも中々入らない。
「正樹…っ、」
「あ、ごめ、分かんない…っ」
どっちも早く欲しくて焦って、ぐだぐだになる。青木は荒い呼吸を抑えながら、正樹の熱を扱いた。
「っぅあ!?ーッ!ッァアア!!」
「へ?」
少し扱いただけで白濁が飛び散った。顔を真っ赤にして震える正樹に愛しさが溢れて、力が抜け余韻にひたる正樹を容赦なく貫いた。
「っくぅ…っはぁ!!」
「ッぁあああ!!やっ!っんーッ!!」
「ごめんっ、我慢できないっ」
奥まで入れることができれば、散々焦らされた青木は激しく腰を振って奥を穿つ。泣きながら首を振り、爪を立てる正樹には申し訳ないがコントロールできないほど気持ちがいい。汗が正樹の体に落ちて、正樹の汗と混ざる。
「っはぁっ!はぁっ!はぁっ」
「ああっ!あっ!あっ!」
だんだん正樹の熱も硬くなり、絶頂が近いのか快感に身を任せる。トロンとした目はぼんやりと見つめてきて、舌を伸ばす。真っ赤なそれに噛み付いて、苦しそうな正樹を無視して口内を堪能した。
(タバコの味なのに…すっごく甘く感じる)
逃げ始めた舌を追いかけて、呼吸ができないほど絡める。すると、下の体がググッと反り、肩に爪が立てられた。その痛みで口を解放すると、目の前の表情が変わった。
「ッーー!ッぁあああーー!」
こんな近くでイく顔見たのが初めてだった。
脱力した正樹は目を閉じて必死に呼吸しているが、濡れた長い睫毛と、少し腫れた唇から流れる唾液、そして熱った顔にゾクゾクする。
(あっ!どうしよう…イっちゃいそ)
「ごめんね…正樹、ごめん」
「っ!?いやっだ!待って!待って!」
「分かってる、だから、ごめんって」
「っぁああ!やだぁ!もぅやだ!!」
「あと…少しだからっ…俺も、イきたいっ」
「っぁぅっ!も、早くっ!イけよぉ!」
子供みたいにイヤイヤと泣きそうな正樹。2回もイって疲れてるのも分かるが青木もなるべく負担にならないようにと動く。
「っぁああ!やだ!もぅやだ!」
「あと少しだから…っ、っはぁ、はぁ!」
「んっ、ちゅっぱ、ちゅ、」
「あぁ!」
正樹が体を少し起こして、胸を吸い始めた。開発された青木はすぐに腰にきて一度動きが止まる。
「正樹っ…」
「んちゅっ、ちゅっ」
夢中で粒を吸われて、気持ち良くて震えた。カリカリと歯で噛んできて、たまらず激しく律動を再開した。
(もう、出るっ!)
「ッぁあああ!!」
中に思いっきり吐き出して、正樹に覆いかぶさった。
「っ!!」
正樹はまだちゅっちゅっと刺激して、反対側に爪を立てる。
「正樹…っ、もイったから」
「んー?…ちゅぅっ…んっ」
「ーーっ!」
正樹の顔はニヤリと笑っていて、止めようとしない。
「正樹っ、勃っちゃうから…」
「勃たせろよ…どう?イったあと嫌だろ?仕返し」
「っぅ!」
満足したのか、ニヤリと笑って、ご馳走様と言った正樹はズルリと青木を抜いた。正樹からポタポタと滴れる青木の欲に、正樹は満足そうに笑った。
「わー、いっぱい出したな」
「気持ちよかった…ほら、掻き出すよ、四つ這いなって」
「はぁい、お願いします。」
形のいい薄いお尻がこっちを向いた瞬間、乳首攻撃と可愛いお尻でで勃った熱を入れた。
「あぁっ!?お前!!うっ…そだろ!っぁああ!!」
「はっはっはっ」
「大地!落ち着けって!…っ!!ちょっと!!っぁあああ!っああ!」
「はぁ、はぁ、はぁ」
「聞いて、ないし、っ、もう、この絶倫めっ!っぁああ!っああ!」
止まらなくて必死に腰を振った。
「いってきます…」
腰を摩りながら出勤した正樹を、苦笑いで見送って少し後悔した。
(昨日は止まんなかったな…ごめん正樹)
正樹の意識が飛ぶまでシてしまった。
怒られるかと思ったら怠いだけ、と微笑まれた。
ピリリリリ ピリリリリ
「はぁい!もしもし!」
『よぉ!恋愛マスター』
「えー?楓さん何ですか?鼻血野朗の次は恋愛マスター?」
『昨日呼んだのに、先帰って悪かったな』
「いいえー?ルイさん大丈夫でしたか?」
あの後ルイの家に行ったのかと思っていた青木が問いかけると、楓が無言になった。
『…やっぱ聞いてた?』
「あ、頼らないと調子狂うとか…聞いちゃいました」
『それだけ?』
「覚えてるのは…」
『…気ぃ遣うなよ。まぁ、酔ってただけだから。何を聞いたとしてもノリだからさ。勘違いすんなよーって電話』
「楓さん…酔ってたら、本音も出やすくなります」
『だーかーらー。本音じゃねーし。あいつはマジで女好きだし、前シュウトさんにキスされて凹むくらい、だから、そんなんじゃねーの』
「楓さん…」
『頼むよ恋愛マスター様よぉ。気付かせないでくれ。俺はこのままがいい。だから、もう、この件は、もう忘れて欲しい。』
思い詰めたような声音に、息を飲んだ。楓は気付いた上で気持ちに蓋をするつもりだったようだ。
「楓さんが…決めたなら、そうします。でも!」
『ルイは相棒だ。それ以上でもそれ以下でもない。信頼を…俺が壊すわけにはいかない。』
「楓さん…」
『ふはっ!ごめんな!お前に言ってるふりして…自分に言い聞かせないとさ…勝手に大きくなるのよ。どうしたんだろうな、俺』
じゃあな、と一方的に切られた。
ルイの女好きは業界でも有名で、マリンにどハマりしてるのも、親しい人たちは全員分かる。迂闊に期待させることも、応援することもできない。
(俺は…恋愛マスターなんかじゃない。不器用で大きな失敗をしただけ…。傷つけたくない、傷つきたくない、それだけの、臆病な後輩なんだよ楓さん)
楓のように割り切る努力も何度もして、何度も失敗した。勝手に大きくなる気持ちも痛いほど分かる。ダメだと思えば思うほど、抱えきれないものは相手へと矛先をかえる。
(楓さんが苦しそうなら、俺の出番だ!)
楓からもらった恋愛マスターの称号は、楓にだけ活かそうと気合いを入れた。
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