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第125話 情事のメロディー

大河は優一を探してスタジオの前を通ると、思わぬ組み合わせに立ち止まった。  (ヒカルさんと、ルイさん…)  マスクをしたルイは真剣な顔でヒカルの話を聞き、頷きながらメモを取っていた。  「大河さん!お待たせっ!」  「うわぁ!ゆ、ユウ!驚かすなよ!」  「わぁー…ルイさんとヒカルさんが練習してる!」  優一も目線の先に気づいたのか嬉しそうに笑った。  「ほっとけないタイプなんだなっ」  「どっちが?」  「ヒカルさん。俺らの前ではルイさんのこと無視してるのに。ふふっ可愛い」  「あの二人…練習生の時に大喧嘩してたから…意外すぎる。」  「ルイさんも、けんかしちゃった、って言ってた。…でも、ルイさんまだ不調なのに」  優一が何を思ったのか、スタジオに入っていった。  「おはようございます!ルイさん、大丈夫ですか?」  ルイは泣きそうな顔で首を振った。  「ユウ、今録音してたのに…。ルイのパート歌ってたんだよ。篤のと比べたいって」  ヒカルは面倒くさそうに、やり直し、とため息を吐いたあと、廊下の大河を見て冷めた顔をした。  「なんだ、大河いるじゃん。大河に頼んだら?」  すると、ルイはヒカルの服を強く掴み、両手を合わせて頭を下げた。  「もうっ…お前面倒なんだけど。」  あきれたヒカルは優一を見て、なんか用?と聞いてきた。  「ルイさんが無理してないかなぁって。よかった!ヒカルさん、宜しくお願いしますね!」  「ユウも人任せ上手だよね」  「ありがとうございます!」  「は?褒めてないし」  ルイはサイレントで指をさして笑っていた。優一は満足したのかご機嫌で廊下に出てきた。  「仲良しになったみたい!」  (どこがだよ!)  大河は心の中でツッコミを入れてその場を後にした。  「遂に単独のドーム公演だ。反響次第では追加公演も考えられる。今まで以上にケガや体調に気をつけてほしい」  伊藤から配られた資料ではタイトなスケジュールになった。そして、今回も演出や構成案をグループから出すことになった。  「今回、マコから演出をやりたいと立候補があった。」  全員が誠を見ると、誠は構成案を配り出した。  「今回は初めてのドームなので、全員の魅力を惜しみなく出したいと思います。この数週間、青木とファンの声を確認して、考えました。」  ダンス曲やバラード、そして今回からゲームコーナー、アコースティックも盛り沢山だ。  「コンセプトは、ワンダーランド。いろんなシーンを見せられるかなって。各セクションごとに雰囲気が変わるし、あのメイドのキャラクターも使いたいからね」 「そう!SNSでは生でメイドを見たいっていう声もあるし、ご主人様も見せたいしってさ…マコちゃんと話し合ってこんなセットリストにしてみました!」  青木が1枚目の紙をめくるとオープニング、ダンス、バラード、コミカル、ユニット、アコースティックなどがあった。  「「アコースティック…」」  大河と優一はハモって顔を見合わせた。  「楽器をやってみたい」  「ん!?待て待て!お前らはみんなできるけど、俺は何もしたことないぞ!」  レイが焦って言うと、誠は大丈夫です!と笑った。  「パーカッション…」  「うん!レイさんのリズム感なら大丈夫かなって!青木がキーボード、優くん、大河さんがギター、俺がベース。」  レイは固まっていたが、大河は楽しみだった。優一や誠に楽器を触らせたいと思っていた。提案する誠はいきいきしていて、可愛いな、と頬杖をついて見つめた。  「マコちゃん、そろそろユニットの話に行こう?」  「あ!そうだね!えっと、今回はー!くじ引きでーす!!」  「「おお!」」 伊藤が楽しそうに箱を持つと、撮影スタッフが入ってきて驚く。メイキング用だと言われ、ドキドキしながらくじを引いた。  「さぁ開封しましょう!せーの!」  誠の掛け声で開封すると、ハートのマーク。  「??俺、桃チーム」  隣で優一の呟きに大河は爆笑して肩を組んだ。  「はい!俺らハートチーム!」  「えっ!?これハートなんだ!恥ずかしいっ!」  顔を真っ赤にして髪を見つめる優一。そして、誠とレイと青木はハイタッチしている。  「はい!俺たち3人はスペードチームです!」  「見事に身長で分かれたな」  「「なんだと!?」」  「あっはは!寮を思い出すなぁ…楽しみです!」  カメラに向かってリアクションを取ったあと、どんなものを見せるかお互い話し合った。  「良かったー…。ユウなら1からっつーより、よく一緒にやってるから安心だわ」  「そうだね!お客さんに2人で見せられるのが嬉しいなぁ!」  「可愛いやつ!」  思わず抱きしめると、カメラに撮られていた。  「どうする?あのさ、エッチな歌にする?あれ音源になってないし!」  「あー…それもそうか。2人で分業したのは初めてだしな。」  「何かね、じっくり真剣に歌いたいなぁって。俺さぁ、可愛いばっかりだから、少し色気も見せられたらなって。」  「おお!いいじゃん!」  「大河さんは…ギャップないかも。大丈夫?」  「あ?失礼だな」  「違うよ!いつもエロいから…」  羨ましい…と笑う優一からは、本当に尊敬が見えて、でもエロいって褒め言葉なのか?と苦笑いした。  「前、ライブハウスでやったみたいにマイクだけで、ありのままの俺たちでこの曲をやりたいな!前は…俺の入院前だったから時間なく合わせたけど、この曲好きだから、もっとクオリティをあげたいな」  優一の想いを聞いて頷いた。  すぐに決まったハートチームと比べて、お喋りばっかりしているスペードチームは、楽しそうだ。  「なんか…こう肉体美を見せたいよな!」  「わぁ!レイさん胸筋すごーい!」  「マコちゃんも腹筋すごい!このリングがエロいっ!」  「青木は背中!見せて見せて!」  筋肉アピールが始まって、サービスカットにカメラマンも嬉しそうだ。優一は、メンバーの身体にいちいち照れては、みんなすごい…と呟き、自分のお腹をぷにっと摘んだ。  「俺も筋トレしなきゃ!過去最高に太ってるかも!」  「どれどれ?」  「うわぁ!だ、ダメだよ!」  「あー確かに柔らかいなぁ〜」  「んー!やめてよ!バキバキになるんだから!」  「どうだろなー?」  「そう言う大河さんはどうなのさ!」 大河も最近出来ていないのがバレそうになり、攻防を続けると、脇腹を摘まれた。  「大河さーん?これは何かなー?」  楽しそうに笑う優一にデコピンして逃げようとするも、すぐに捕まれ、どれどれ、とニヤついている。  「ユウ!ごめんって!俺が悪かった!」  「あとはここーはー?」  「ん!」  「え?」  2人はピタリと固まって目を合わせた。だんだん真っ赤になって、優一は気まずそうに腰から手をどけた。  「エッチな声だった…ビックリした…」  「あ、えーっと。はは、腰弱かったっけな…」  まだドキドキしている2人と、相変わらず筋肉自慢している3人だった。  「和風?」  「マコちゃん!いいね!和風良くない!?」  「構成が少し洋風が多いから新鮮かなぁって!」  「いいかも!メンバーカラーが入った衣装にしてさ!少し殺陣も入れてみない?」  「お!いいな!久しぶりだな!」  「たて…?えぇー!!俺ふつうに斬られちゃうー!」  誠は駄々をこね始めたのを大河と優一は爆笑しながら見ていた。  それぞれコンセプトが決まって、会議は終了した。   送迎車の中であの曲を聴き、どうクオリティを上げていくかを考えた。  (…っ!軽い返事したけど、俺こんな歌詞…)  勢いよく書いたのは覚えている。  激しくて切なくて満たされた夜に、倦怠感を余韻にしながら、風呂に行った愛しの人の体温を感じたのを思い出す。  (うっ…この歌なんか…変な気分なるな…)  隣の誠に指が触れてビクッと跳ねた。  「大河さん?………何て顔してるの」  きょとんと名前を呼ばれた後、近づいてきた顔にドキドキしていると、耳元で囁かれた。力が抜けそうで、誠の指を握ると、誠に片方のイヤホンを抜かれた。  「あー…なるほどね」  誠はニヤリと笑ったあと、口パクで「あとで」と言った。  「「お疲れ様でしたー!」」  2人で頭を下げて送迎車を降りた。  無言になる大河を気にもせず、誠が手を引く。  エレベーターが来て、先にと、誠に腰を触られると、また小さく声が漏れた。  (あ…聞こえたかな…)  チラリと誠の様子を伺うと、勢いよくキスされた。  「んっ…っ、んっ、は、んっ」  熱い舌が絡みついて呼吸も出来ず、誠の服を握る。ガクガクと足が震えたところで到着し、今度は乱暴に腕を引かれた。  ガチャン  「はっ、はっ、大河…」  誠も息荒く上着を脱いで、キスしながら脱ぎ捨て寝室へ向かう。  ボフンッ  ベッドの柔らかい感触を感じる前に、激しいキスに応えるのが必死だった。お互い興奮して、大河は誠のベルトを外し、ジーンズのボタンやファスナーを下ろし、熱を撫でる。  「んっ、はっ、はっ、大河…大河」  少し唇をはなすと、誠は焦ったように下着ごと脱いでまた上に乗ってきた。その誠を押して、蜜を溢す熱を口内に迎えた。  「ーーーくぅっ!」  大きく頬張っても大きくて苦しい。ただ今日はこの熱が早く欲しいと、口内で舌をチロチロと動かす。髪の毛が強く握られ、誠を見ると恍惚の表情で、大河は自分の熱を刺激しながら必死に誠を高めた。  「大河っ、大河っ、ん、出そうっ」  「ん…っん、ぢゅるる」  「くぅ!…はっ、はぁ」  誠はイきそうなのか、甘い声が降ってくる。誠の腹筋を少し撫で、その後口では刺激できないところをその手で強く触ると、喉の奥で熱が弾けた。  「はーっ、はーっ、はーっ」  ドサッとベッドに倒れ込んだ誠に乗って、触って欲しくて熱を誠の顔に持っていく。  「大河さん…待って、鼻血出そう」  「マコ、俺のもして?」  「っ!!!」  お願いしてるのに真っ赤になったまま固まる誠に焦れて、顔の前で扱き始めた。見られている、という羞恥が大河を絶頂へ導く。  「あっあっ!っあ!まこっ、まこっ」  「大河…んっむっ」  「アァアア!!気持ちっ、!っ、まこ!」  誠の顔の前で必死に腰を振って恥ずかしさも忘れて快感を追う。  「うわぁ!」  急に腕を引かれて押し倒され、体制が変わる。一瞬きょとんとしていると、膝をたてられ、誠の舌が穴を舐め回し始めた。  「アァアアー!」  ぞわぞわして、やめてほしいのに、大河の両手は自分の太ももを無意識に開くように広げて、腰を浮かしてしまう。  (欲しい、欲しい)  熱への刺激がなくなって、もどかしくて腰を振ると、誠は急に愛撫を止め、サイドテーブルを漁り始めた。  「まこ、まこ」  「うん、これで遊んでて」  ボトルみたいなものを取り出してきた誠は、そのボトルに大河の熱を突っ込んだ。  「アァアアーー!?」  (何…これ、ヤバイ!入れてる、みたい!)  「ぅん!っああ!あ!こ、これ」  「オナホ。解すからオナホで遊んでて」  「これ、っっ!やばいっ!」  少し動かすだけで絡みついてきて、どうする事もできずにひたすら喘ぐ。中も誠の長い指で広げられ、おかしくなりそうだ。  「まこ!まこ!どうしよ!まこ!」  「ほら、こうして、動かしてみて」  手を重ねられ、激しく動かされると入れてる時の本能が目を覚ます。  「はっはっはっ、っ、はっ、はっ」  「そうそう。上手上手」  「っあ!っ、っ、ーーッッ!!っあああ!」  ドクドクと中に吐き出して、たまらない快感に震える。  「あー、もう出しちゃったの?…ここも、OKかな。はい、取るよ」  「はっ…ん…」  久しぶりの入れた感覚に、ビリビリする余韻が止まらない。ぼんやりしていると、膝が大きく広げられ、指とは比べ物にならない熱が一気に貫いた。  「あぁああーーッ!!」  「はっ…きっつい…しめないで…」  「アア!!ンッ!!んっぅ!!アァアア!」  先ほどとは全く異なる凶暴な快感に、頭を振って、必死に快感を逃すも、ズズッと奥を目指す質量に目の前がチカチカしている。  (今日…ヤバイ!俺、おかしい!)  気持ち良すぎて怖くなり、必死にしがみつく。誠の声にもビクビクと跳ね、どこを触れられても敏感に反応する。  「大河…体制変えるよ…」  ググッ  「ッぁあ!?ーーや、ダメダメぇ!出ちゃ…っぁあああーーー!!」  「んっ!」  腰を触られただけで、止まらない絶頂に誠に思いっきりかけてしまった。舌舐めずりした誠は大河から出て、大河をうつ伏せにして腰を舌で愛撫で攻める。  「んっ!あっ!だめ、だめって」  「可愛い」  「可愛くない!」  「お尻にもチュウしてあげる」  「あん!っ!だめ、おしりも、だめ!」  ビクビクと跳ねて、揺れるのが恥ずかしい。  「ごめん、もう限界」  誠の低い声が聞こえて、熱い杭を打たれる。シーツを握りしめて、2人で絶頂を目指した。  「くぅ…くぅ…」  隣で聞こえた寝息に目を覚ます。 気怠い身体でゆっくり寝返りを打つと、先ほどまで激しく求めあった恋人が安心したように眠っている。  (可愛い)  ぎゅっと切なくなるほど好きで、愛おしくて自然と笑ってしまう。雄だった先程とはちがい、幼く見える。  (好きだよ、マコ。俺、本当にお前にハマり過ぎてるよ)  優一の作ったあのメロディーが浮かんで、やっぱり歌詞もあれでしっくりきた。  この幸せを、優一と届けたいなと、誠の胸にかかるリングと、自分の胸にかかるリングでキスをした。 

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