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第127話 世界一の幸せ

「ヒカルがね、ここと、ここをー…」  楽しそうに話すルイを、リクはぼんやりと見つめた。やっと体調が回復したと思ったら一気に歌唱力があがった。  「リクさん?…俺っちの話、おもしろくない?」  「ん?いや?…良かったな…みんなに感謝だな」  「うん!!篤にも、ユウにも、シュウトさんにも、みんなにもありがとーだ!」  ありがとう、と言いながらぎゅっと抱きついてきた。ぽんぽんと頭を撫でてやって、またぼんやりと見つめた。  「ルイ。」  「んー?」  「なんかあった?」  「え!!?」  あからさまにギクリとしたルイにため息を吐く。  「無理矢理笑ってる。」  「そんな…ことないよ。」  「どーした?」  「…リクさん、俺…楓になんかしたかな?」  「なんか、って?」  「楓、今までと違う。なんか、距離がある。」  「距離?」 「楽しくなさそう。辛そうな顔するんだ。だから、嫌だ。」  拗ねたように下を向いて、ルイも辛そうだった。  「楓はきっと、ダンスに集中しない俺が嫌なんだと思う。でも、俺は…今歌も頑張りたいから…欲張りだと思うし、アメリカでの約束も守れてないのは分かってる。でも、そんな顔しないで応援してほしい。」  (アメリカでの…約束?)  リクはきょとんとルイを見る。  「楓は…ダンスしない俺が嫌いなんだと思う」  ルイな暗い顔をした後、ニカッと笑い、どっちも頑張って、楓に褒められたいと意気込んだ。  (楓の方が…いっぱいいっぱいかな)  話を変えたルイに頷きながら、楓の心配をした。  ーーーー  「楓!!」  「っ!はい!」  上の空の楓にリクは怒鳴る。全員が楓を見て静かに息を潜める。  「やる気ねーなら出てけ」  「……あります。」  「こんなセンターに誰がついていくかよ。頭冷やしてこい」  楓を外させて新曲の打ち合わせを進めさせた。リクはそっと部屋を出て、ベンチに座る楓の隣に座った。  「辛気くせーな。」  「すみません」 「ルイは元気になったし、篤もベタベタしなくなった。なにが不満なのよ」  「不満なんて無いっすよ」  「そう?じゃあ…不安?」  「は?」  楓が怪訝そうに顔を上げた。  「不安なんだろ。ルイが変わっていく事。今の状態が変わることも。」  「…不安っちゃ、不安すよ。俺にはダンスしかない。一生…できるかも分かんないし…だから今楽しみたいけど、メンバーが他のことできていくのが…不安かな。」  自分で言いながら首を傾げる楓。リクは、それもあるけど別の問題を予想していた。  「ルイが言ってたぞ。最近の楓は距離がある、楽しそうじゃない、辛そうだから嫌だって。」  「っ!」  「あのアホに見抜かれてるんじゃあまだまだだな」  「ルイの話ばっかりしないで下さいよ。あいつらみたいに揶揄って…」  「お前が目を逸らすからだろ。」 リクがハッキリ言うと、ギロッと目つきが変わった。  (本当分かりやすいやつ)  「何の話ですか?」  「抑え切れないくせに」  「だから、何の話ですか?」  「ルイが欲しくてたまんないんだろ?」  目を見開いて固まる楓。少し苛めすぎたか…とため息を吐くと、楓が目の前の椅子を蹴り上げた。  ガタン!!! 「うるせぇんだよ!!どいつもこいつも!!リクさん達みたいに、誰もがそうなると思うなよ!!!一緒にすんな!!俺は…俺はそんなんじゃない!!そんな目で見るな!」  怒鳴り散らす楓を頬杖をついて見守る。気が済むまで吐き出せばいいと思っていたら、デスクから慌てて愁がやってきた。  「リク、どうした?」  「んー?大丈夫ー。」  愁を見て一瞬落ち着いた楓だったが、さらにヒートアップした。  「マジ見てらんねーっすよ!!リクさん達は普通じゃないんだから押し付けんなよ!!」  「何?何の話?」  「ゲイがきもいって話」  「あぁ。そりゃごめんなさいしなきゃだ。」  愁はクスクス笑ってリクの隣に腰掛け、腰を抱いた。  「ごめんねー。胸糞悪いの見せて。ゲイで、きもいかも知れないけどね、僕、たぶん、世界一幸せだよ」  「っ!」  「楓は今、幸せに見えないけど?おかしいね、普通なのに。」  愁はニヤリと笑って、リクの頭を撫でた後、耳元で、「リクの子に意地悪しちゃった」と囁いて去っていった。痛いとこを突かれた楓は先程の勢いが嘘のように固まった。  「はーい。気が済んだ?片付けろ」  無言のまま、蹴り上げた椅子を素直に直すのが可愛くてクスクス笑った。 落ち着いた楓を連れて会議室に戻ると新曲が決まっていた。  「リクさん聞いてよ!この曲かっこよくない!?」  潤が興奮して候補曲の1つを流す。盛り上がる、というよりは大人っぽい曲だ。リクは目を閉じて曲を聴いた後、振り付けのイメージが沸いて笑った。  「いいじゃん!」  「「「おっしゃあー!!」」」  みんなが喜び、楓も興味深そうに歌詞を見た後、一瞬泣きそうなった。  「この曲のメインは、会議をサボった楓にしまーす!!」  「あと、居眠りした、たつも!」  辰徳はまだ夢の中で、綺麗な顔から涎が垂れる。ミュージックビデオも楓と辰徳がメインと聞いてリクは大きく頷いた。  「2人ともヴィジュアル担当だし、いいんじゃね?龍之介じゃなくてよかったぁ…」  「こら!リクさん失礼だぞ!!」  場が和んでも、楓は歌詞を見つめたままだった。その様子を心配そうに、バレないようにメンバーが見ていた。  歌詞は、気持ちを隠して友達でいることを選んだ男の後悔と、好きな子の幸せを願いながらも苦しさを歌ったもの。好きな人に一喜一憂しても報われない恋の歌。  ルイ以外は察している楓の気持ち。楓のためと言ってもいい選曲で、改めていいチームだと思った。  「楓、この曲いや?」  「ううん。いい曲だな」  ルイが恐る恐る話しかけると、ふわりと笑った楓に、ルイは急にテンションがあがり、いつものようにはしゃいで楓に絡んでいた。  いい雰囲気になって終わった仕事に、ご機嫌で家へ帰る。灯りが付いているのを見て、ニヤけて部屋に向かった。 「ただい…わぁ!…ど、どうした愁?何かあった?」  「リク、大丈夫?」  「へ!?何が?」  ぎゅっと抱きしめられ、きょとんとする。顔色を伺う愁に軽くキスしてスニーカーを脱ぎ捨て上衣をソファーに投げる。  「楓に言われてたのが…心配で…」  「あぁ!あれね。ガキの言うことを真に受けたりしねーよ。それに、本当はさ…楓、男に惚れて悩んでるんだよ。全く…手がかかるよな。」  思い出してクスクス笑う。  愁はほっとしたように笑ってまた抱きしめてくる。  「リク…そばにいてくれてありがとう」  「うははっ!俺こそ!」  愁の肩越しに見える愁の手料理が美味しそうで早く食べたいのに、愁は感情が昂っているようだ。  (お腹すいたけど…まずは満たしてやりますか)  そうと決まれば愁の首筋に吸い付いて、足をかけ、ソファーに押し倒す。愁のベルトを外して、パンツを脱がし、硬く飛び出した熱を頬張る。  「リ…ク…ッ!!」  気持ち良さそうな声にゾクゾクして、夢中で攻める。 「昂ってんな…?愁」  「ちがう…っ、心配したのと…安心っ、したのが…」  「そんな弱くねーよ?…世間体なんか興味ねー…」  「っく…ぅ、っ」  「今更、だろ?もう戻る気もないよ…お前を選んで、後悔したことなんかない」  「ーッ、っ!…っ!」  「後悔もしてねーし…っ、一生、っ離す気もねーから…」  「リクっ…ッ!」  「愛してるよ、お前は俺のものだ」  「ーーッ!ッ!!!」  喉の奥に熱い物がかかって、ゴクリと飲み干す。綺麗に吸い取って、ティッシュで拭いてやる。 「ごちそーさん。ご飯食べよーぜ」  愁の太ももを叩いて合図し、立ち上がる。  (うはー!筑前煮!うまそー!!)  目が料理に釘付けになっていると、思いっきり腕を引かれ、強い力で寝室へと引っ張られる。  (はっ!!?うそだろ)  「おい愁!ヌいてやったんだから我慢しろよ!俺腹減って…」  下半身丸出しの愁は、ギンギンのままで、息を飲む。少しの動揺が隙を与えて、ベッドに投げられた。  「ちょっ!待て!」  お腹の音が盛大に鳴るのも気にせず、愁は理性が飛んでいるようだ。馬乗りになった後、上着を脱いで、綺麗な体が露出する。  (うっ…こいつ、本当エロい体)  真っ白な身体に程よい筋肉。 身体に釘付けになっていると、その目の前が真っ暗になった。  (うわぁー…出たよ、目隠し。これ嫌いなのに…)  顔が見えなくて不安になる。  きっと愁は泣き叫ぶほど求めてほしいんだと、ため息を吐く。  (言葉だけじゃなくて、態度でみせろって?鬼畜すぎ…)  「ンッ!!」  考えごとをしていると、突然はじまる愛撫。見えないからどこを触られるか分からない。欲しいところを触ってもらえず、服越しの愛撫がもどかしい。  「愁っ、触って、っ、ちゃんと、っ」  「触ってるだろ」  「服っ、ぬがせて、俺のも、フェラしてっ」  ハッキリ言わないとしてくれないのを学んでいるリクは、顔を真っ赤にしながら脚を開く。合格だったのか、下着ごと脱がされ、Tシャツも脱がせてくれた。  (あれ…?まだかな?)  モゾモゾしながら刺激を待つが全くこない。ここが不安になるのだ。  「愁…?いるよな?…愁」  音も聞こえなくて、鼻がツンと痛む。  何故こんな不安になるのか、自分でも分からないが、異常に心細くなる。  「しゅう!!おい!返事しろよ!」  不安に叫ぶも部屋に響き渡るだけ。  (もう…だから嫌だってば、これ…)  普段泣かないのに、涙が溢れてくる。歯を食いしばっても、止まらなくてヒック、ヒックと嗚咽が漏れる。  「しゅう…っ、こわい、しゅう…っんぅ」  突然熱い舌が入ってきた瞬間、待てをされた身体が一気に熱を帯びた。ドクドクと心臓が喜び、萎えた熱が痛いほど反応する。  「はぁっ、愁!っ、んぅ、しゅ、んっぁあ」  キスしかしてないのに、先走りがどんどん溢れ、触ろうとすると手が叩かれ、ひたすらキスに没頭する。  (力…抜けそう…)  やっと解放されて、必死に呼吸をする。お尻まで濡らしているが、熱に触ってもらえないまま、後ろを解される。  (うわぁ…っ、温感ジェルかよ…たまんねぇ…っ)  ゾクゾクして腰が浮く。入り口をくすぐるだけで、早く早くと腰が揺れてしまう。  「リク…最高に可愛いよ…愛してる」  やっと聞こえた声に反応して、震えが止まらない。  「あぁ…パクパクしてる…中入れるよ?」  「はぁ!はぁっ!ーーっ!ぁっ!」  指1本でおかしくなりそうなほど、腰が跳ねて、シーツを握る。愁の笑う声もたまらなく切ない。  (欲しい、欲しい)  それしか考えられなくて、腰を振る。  「しゅっ、もぅ、っ、ほし、ぃっ!」  「もうちょっと」  「やだ!もぅ、待てない!」  だいぶ解れてきたのに挿れてもらえずに泣きながらお願いする。すると、横向きに倒され、指が抜かれた。  (はぁ…やっと…辛かった…)  ほっと息を吐いたあと、待ち焦がれたものより小さいものが入ってきた。  「んっ!?ーーっ!ぁっ、ぁ、なに、っ、これぇ!」  「あれ、久しぶりだから忘れちゃった?エネマグラ」  「はぁ!!?うそだろ!お前!!俺、普通にお前の…っくぅ、ぅっ、」  「そうそう。締めたり緩めたりしてごらん」  「あっ、あっ、あぅっ…ぅ」  ゾクゾクと迫り上がってくる快感に、話すことも出来なくなり、涎が垂れてるのを愁が舐めとる。  「はっ、ぁぅっ、んっ、はぁっ、はっ」  (ヤバイ!これ、ヤバイ!!!)  動いてもいないのに、どうすることもできなくて、受け入れるしかない快感。  「あぁああ!ッしゅう!こわい!こわい!」  「あはは、可愛いっ、大丈夫」  「やだって!もぉ!…ッぁああ、っあ」  「イっていいよ?」  「っぁ、っぁ、あ、キた…ッ!しゅ、っあああ!っぁあ!!!っああーーッ!!」  ガクンガクン!!  「ぁ、っ…っ、っ!」  (やっば…これ、気持ち良すぎっ…)  中イきして余韻に浸る。目隠しが取られて眩しさに目を細めたあと、瞬きをすると優しい顔の愁がいた。  「気持ちよかった?」  「最高っ…これは…やばい」  「良かった。ご飯にしようか。」  優しい顔で笑う愁にイラッとして手を引いた。自分でエネマグラを抜いて床に捨て、足を開く。  「冗談だろ?さっさと挿れろ。」  「ふは!リクってばムードないなぁ」  「うるせぇ。どんなに待っても欲しがってもお預けとか許さねーよ。お前もギンギンのままのくせに」  「あはは!もう、リク大好き。可愛いなぁ。」  怒ってるのに、笑う愁は可愛い可愛いと言い、リクはさらに不機嫌になる。  「もう、ヤんねー」  「拗ねないの。欲しいのはこれでしょ?」  「あぁっ…っ、っ熱いっ」  「は…中すっごい…っ、」  「んぅ!は、ぁっ、あっ、あっ」  ギシッギシッ  待ち望んだ熱にたまらなくて愁の首に腕を回してキスをする。腰の動きはそのままに、口内のキスは気持ちよく侵され、最高の快感に満たされていく。  まだ一度も吐き出していないリクは、すぐにきた射精感に腰を震わせて爪を立てる。  「いいよ…リク、イッて」  「ふぅっ…っ、っはぁ、っ、あぁああ!!」  「くぅ…締め付けすごいな…」  「待って!っぁああ!っああ!!」  ーーーー  「うんまぁー!愁!天才!美味しすぎ!」  「本当、作り甲斐があるよな」  「おかわりーっ!」  「はいはい。あ、こら、好き嫌いして」  「いやだ。俺ぜったいレンコンは食べない」  子どもみたいにそっぽを向いてるリクに愁は笑い、おかわりをよそう。  「リク、楓は誰が好きなの?」  「ルイ」  「あー…そういうことね。そりゃ悩むよ」  皿を受け取ってもぐもぐしながら、リクも苦笑いした。  「友情から愛情に変わるのは動揺するよ」  「愁も俺から距離とったしな。寂しかったなぁー」  「いきなりキスするからだろ。」  「それまで気付かなかったくせに。」  「だってお前彼女もいたし…」  愁がだんだん拗ねていくのが面白い。  「ルイの女好きは有名だからなぁ…マリンが大人になるまで待つらしいし。それを知ってる楓は辛いよな。本当あいつ見てられないぐらい悩んでるよ」  「急に好きになったの?」  「そう。だから本人も戸惑ってるし、ルイは関係なく楓に甘えるし。まぁ、なるようにしかならないから。」  ご馳走様!と手を合わせて、食器を流しに持っていく。  「リク、僕やるよ」  「いーよ。ご飯も作ってくれてありがと。お前は風呂行きな。」  愁はふわりと笑ってお言葉に甘えて、と風呂場にいった。  「楓にもこんな幸せ味わってもらいたいけどなぁ…どうしたもんかね…」  リクはまた苦笑いして、食器を洗った。 

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