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第129話 飼い主のお仕事中に
優一の首筋に目が行く。
赤いような青いようなそんな歯形が、白く細い首に浮かんでいる。痛々しいその痕からは、衝動的な愛を感じて恥ずかしくなる。
「大河さん?」
「ん?どうした?」
「どうした、はこっちのセリフ!俺になんかついてる?」
一通り愚痴を言った優一は、すっかり忘れているようできょとんとこちらを見ている。ただ、どうしても目が逸らせないその痕。
「ユウ、痛いか?」
「…?あ、これ?少し痛いよ?」
「触りたい」
「え??」
返事も聞かないまま、そっと撫でる。
「ンッ」
「悪い!痛かったか?」
「ううん」
恥ずかしそうに見つめる優一に、驚くほどドキッとして目を見開く。
「ビックリしただけ」
照れたように笑う優一が可愛すぎて会議室のテーブルに押し倒した。
「へ?…大河さ…んぅっ!?んーー!?」
柔らかい唇を堪能して、本能のままに舌を絡める。暴れる優一の前髪を搔き上げて、すべすべの頬を撫でる。唇をはなし、真っ赤になる優一を見つめて笑う。
「〜〜〜ッ!!」
「ユウ?」
「〜〜〜ッ!」
顔を隠してそのままでいるのが可愛いくて、様子を見る。ゆるい大きめのスウェットからでも分かる反応した優一に満足して椅子に腰掛ける。
「反則…っ!こんな…っ、キス」
「はは!ごめんな、なんか今日のユウエロくて」
「〜〜っやば、男の大河さん見ちゃった…かっこよすぎ…」
いつまでもそのままの優一に笑って、少し嬉しくなった。タカにバレたら殺されそうだったが、欲が満たされた大河はご機嫌だった。
「1人だけ満足しないでよ…」
「ん?」
「俺も発散したい…」
優一はゆっくり近づいてきて、大河の右手を取り、優一の熱に持って行く。
「大河さんの、せいだよ」
「ユウっ…」
あざとさにコロッと落ちて、熱に少し力を入れる。
ガチャ
「おはよー!資料間に合ったー!!」
ガタンガタン
「「痛〜…」」
「2人とも!大丈夫!?」
突然の誠の登場に2人で慌てて椅子から落ちる。あまりの驚きに優一も元に戻ってホッとする。
「び、ビックリした…」
「マコ!ノックしろよ!」
「ごめーん!それよりさ、見てよこの衣装!どうかな?」
大河は内心バレていないことに胸を撫で下ろした。忙しい誠となかなか触れ合う時間がなく、可愛い優一に理性がとんだ。
(久しぶりに…抱きたいって思ったな)
聞いてる?と怒る誠に苦笑いして頷いて、見つめてくる恋人じゃない大きな目が気になって仕方なかった。
「大河さん、今日も遅くなりそう。打ち合わせがあって…ごめんね?」
「何謝ってんだよ。仕事だろ?無理すんなよ、応援してるから。」
「うん!ありがとう!愛してるよ」
ぎゅっとハグされて、誠の匂いを胸いっぱいに吸い込んで、服越しのリングを噛む。嬉しそうに笑って、頭を撫でる大きな手が恋しくて、誠を見つめる。
「…。大河さん、今日フェロモン出し過ぎ」
トイレに引きずられて、個室に入る。お互い焦ったようにキスをして、力が抜けたところを下だけ脱がされる。
「は、っ、まこ、っ、こんな、ところで」
「今更、何言ってんの、我慢できないくせに」
「でも、っ、だれか、きたら」
「ごめん、待てない」
先走りが止まらない大河の熱を激しく扱き、大河は手の甲を噛んで声を抑える。立ってられないほどの快感に必死に誠の肩を握る。
「エロ…」
「っふ、っ、んっ、ふっ」
「出そう?出して。」
「ーーッ、っ、ん!!ん、んぅ!ーーッ!!」
ガクガクと震えて欲を発散する。呼吸を整えて、涙でぼやける視界で誠を見つめる。
「は、っ、もう、我慢できない…っ、後ろ」
ゆっくりと後ろを向いてドアに手をつく。そっと入る指が理性をとばす。
「ッァアァア!」
「声っ、抑えて、っ」
「ぁああ!あっ!んぅ!ん!!」
イイところをすぐに当てられて、気持ち良すぎて涙が止まらない。ガタガタ鳴るドアにも、興奮して、早く誠が欲しいと求める。口に手を当てられ、声を抑えてもらう。
「入れるよ」
「ーーーーッ!」
「くぅ…っ、ぁっ、っは、」
「ぁっ、ぁっ、ぁっ、」
ゴリゴリと奥を突かれ、目の前がチカチカと光る。
(もう!ダメだ!イきそうっ!)
ドンドンドン!!
「「!!」」
(ぁ!!ダメダメ!!出るッ!ー!!)
パタパタと吐き出して、息を潜める。
「マコちゃん、大河ー?お前らは事務所のトイレでなーにしてんのかなぁ??」
(リクさん!?)
「おーい?あれ?静かになった!さっきまでガタガタあんあん聞こえてたのに」
「「……」」
「リク、あんまいじめんなよ。全く。可哀想に」
「スリルあっただろー?あはは!響には言っとくから次は気をつけろよ?若いお二人さん」
リクだけでなく、長谷川も一緒だったようだ。足音が遠くなって、必死に呼吸を整える。
ググッ
「あっ!?」
「はっ、ごめ、出そ、っ、っ、」
「んっ、んっ、、っ、」
「っ!っ、出すよ、っ、ーーッ!!」
ズボッと抜かれて、誠は自分の手のひらに出した。狭い空間に熱い呼吸と、雄の匂いが漂う。
「やっば…バレちゃったね…」
「ん。一緒に怒られような。」
「うん!」
また深くキスして、欲求不満を解消した。
(うーん…?火照ってる。何だろう?)
体温を計ると微熱だった。
火照る身体をそのままにぼんやりしていると、優一からメッセージが入った。
優一:タカさんがお仕事だからRINGの家にいたらどうだ?って。大河さんとまこちゃんのところ行っていい?まこちゃんからお返事ないの。
大河:あいつは仕事。いいよ。
それだけ返して、伊藤に連絡し、優一を待つ。微熱をそのままに誠の雑誌をめくる。
(はぁ…カッコイイな、こいつが俺のもの、だなんて信じられない)
カメラを見つめる誠の目が優しくて、トイレでの情事を思い出す。
ゾクゾク…ッ
(あれ…?なんで…)
雑誌を見ただけで熱くなる身体がおかしくて、パーカーのフードを被って、電気カーペットに蹲る。
ピンポーン
「っ!!」
少し忘れていた来客に慌てて応答し、ゴミを少し片付けた。
「お邪魔しまーす!ごめんね、急に。タカさん過保護だから。」
苦笑いしている優一は、伊藤にも心配されていたようだ。
「大人の男が一人で留守番できないはずないのにさー?笑っちゃう」
クスクス笑う優一はソファーに座って、差し入れです、と袋から出す手を取って床に押し倒した。
「ユウ」
「お昼の…続き?…正直期待した、なんて言ったらどうする?」
「お前煽るの上手いな」
「きょーみだよ。まこちゃん仕事なの、知ってた」
「ふはっ!本当魔性だな」
首に細い腕がかかって、真っ赤な舌に誘われるまま唇を重ね、夢中になる。
「はっ、っ、ん、」
「んっ、ん、っ、触るよ」
「ん、触って」
優一の下着を取って、雫をこぼす熱を握る。内腿についた沢山のキスマークに更に興奮する。
「愛されてんな…」
「そんな顔、しないで?…っ、まこちゃんは、大河さんの、ためだよ」
何でも通じ合うのが楽で、握るのを口に変えると蕩けそうな顔になった。
「ぁっあ!気持ちぃっ」
誠に鍛えられた口淫で攻めると、堪らなさそうに乱れていく。大河も全部脱いで優一の上に戻ると、真っ赤な顔で見てくる。
「やっば…かっこいい…」
「そんなことないよ」
胸のリングを優一がゆっくり外したのを合図に、ベタベタの指を優一に突っ込む。自分の良いところと同じかと、中を探ると、ガクンと腰が浮いて、あの4人でヤった日の優一がいた。
「ッァアァア!!待って、っん!!どぉしよ!ッ」
「ここ…だよな、気持ち良すぎて、ヤバイところ…っ、俺も、ここ、とぶ」
「ッァア!!ダメなのっ!そこっ!ーーーッ!!」
内腿を震わせて欲を吐き出した優一を自分につけて、大河は久しぶりに穴に腰をすすめた。
「ーーーーーッ!!!」
「ーーっ、はぁ、っぁ、っは、」
「っぁああ!っあ!きもち!大河さん!!」
「やっ…ばいな、ユウ、の中っ、っ」
「んっ、ん、気持ち?っ、」
「ハマりそっ、」
「ダメ、だよ、まこ、っ、ちゃんは、うしろ、できないっ、から」
「ははっ、っ、らしいな、っん、」
腰を進めると、優一の背中が反って、慌てたように腕を掴み、目を見開いた。
「はっ、っぁ、っぁ、」
「どうした?」
「ぁっ、ぁっ、ぁっ」
構わずに腰を動かしていると、だんだん余裕がなくなる優一に、舌なめしずりした。
「っぁ、ぁっ、ぁっ、っ、っ、」
「ユウ」
「ぁっ、ぁっ、ぁっ」
「イけ」
「ッーーーーッ!!!」
「ッ!!」
きつく締め付けられ、大河は慌てて抜いて優一のお腹に吐き出した。
「んっ、やばい、まだ、ビリビリするっ」
「大丈夫か?ごめんな?久しぶりだから…」
「大河さん上手すぎ…っ、やばい…気持ちよかった」
「ユウ、内緒な?」
「当たり前っ!!もうタカさん怒らせたくないもん!」
「たしかに。ユウ、俺さ、最近変なんだ。」
「変?」
「火照ってるっつーか。今日…マコとトイレでヤッてリクさんにバレたし…制御できなくて」
身体を拭いてあげて、自分も首にリングをかける。服を着ながら相談した。
「何だろ?発情期?」
「誰が発情期だ!この野郎」
頭を軽く叩くと、えへへと笑う優一に呆れる。
(人を動物みたいに…)
「最近まこちゃんが触らないからじゃない?レイさんも一時期あったよね。伊藤さんが忙しい時。」
大河も頷いて首を傾げた。
(溜まってんのか…)
「2人で暮らしてたらシたい時にできるけど、いるのにできないって辛いよねー…だから、よく誘っちゃうよ。我慢できないし。」
「今日みたいに?」
「今日は大河さんに誘われたの〜」
部屋を2人で片付けて、何もなかったように綺麗にした。作曲の話をして、柚子の話や、アカペラの話も聞いた。
ガチャ
「ただいま…あれ、優くん、来てたんだ?」
「まこちゃん、メッセージ見てないの?」
「え!?…あ!ごめん!今みた!」
もー、とケタケタ笑う優一は演技が上手かった。気づかれないままタカが優一を迎えた。
(マコ、ごめんな)
少しの罪悪感のまま、誠の胸にしがみついて眠りに落ちた。
「…全く、ナニしてたんだか、2人で」
誠はわざわざ新しくなったゴミ袋や新しいティッシュを見つめてため息をついた。部屋の香りも誠の好きなアロマが焚かれていた。こんなことは初めてで勘が冴えた。
「大河さん?綺麗すぎたら、バレバレなんだけど?上手いことやってよ…」
泣きそうな顔で大河を抱きしめた。
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