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第130話 発情期のネコ

チュンチュン… (朝になっちゃった…)  パソコンを見ていた目を擦って、寝室に行くと気持ち良さそうに丸くなって眠る恋人。  (本当に猫みたい)  誠の場所もあけて、広いベッドの端にいる大河が可愛くてクスクス笑う。カーテンを開けると眩しかったのか、眉を顰めたあとゆっくりとまつ毛があがる。  「ん…まこ…」  「おはよう、大河さん」  「また…寝てないのか…?」  「うん、朝になっちゃっ…わぁ!!?」  「寝ろ。クマやばいぞ」  大河の胸に顔を埋めて、背中をとんとんと叩かれる。  「大河さん」  「マコ、お前がそばにいないと、寒いだろ」  その言葉の後に寝息が聞こえて、また口元が緩む。  (あ…もう行かなきゃなのに…眠い…)  ピリリリリ ピリリリリ  (…電話?)  「はい?」  『マコ!!今どこだ!?』  「え?」  『撮影!!お前待ちだぞ!!』  慌ててケータイの時計を見ると入り時間を大幅に過ぎていた。  「す!すみませんっ!寝坊です!」  それだけ言って車の鍵を取り、車に乗り込んで猛スピードで現場へ行った。  「遅れて申し訳ありません!!!」  寝癖もついたまま登場すると、みんな笑ってくれた。ホッとした瞬間、目の前が真っ暗になった。  「大河、お前は部屋に戻れ。もうアリスの心配もないだろ。」  「でも!体調悪いから1人にするのは…」  「マコには1人の時間が必要だ!どんなに疲れていてもお前を優先しているのが分かる。今日の遅刻も、お前がさっき白状したのがその証拠だ。」  言い合いが聞こえて目を覚ますと、レイが心配そうに覗き込んでいた。  「マコ…分かるか?病院だ」  「病院…」  「ほとんど寝てないんだって?夢中になるのもほどほどにしないと」  レイが頭を撫でて、大きな手が気持ちいい。  「伊藤さんが管理できてないからだろ!」  「あぁ。お前に任せたのが間違いだった。ここからは俺の仕事だ。今日から部屋に戻れ」  「分かったよ!!!」  大河が病室を出て行って、誠は伊藤に苦笑いした。  「伊藤さん、ごめんなさい。大河さんのせいじゃないよ。」  「分かってる。ただ、お前のペースを取り戻すためだ。構成は青木に振ったから今は休むといい。」  「大河さんは…」  「マコといたいだけさ。」  伊藤も心配そうに頬を撫でた。  「クマ。大丈夫か?血色も悪い。ごめんな、配慮が足りなかった」  「そんな!俺が悪いのにみんな謝らないでよ」  点滴を見ながら、申し訳なくなった。誠は、自分が眠らないと2人が帰らないことを察して目を閉じた。  「伊藤さん、大河は…」  「たぶん泣いてるはずだ。そっとしておけ。感情が抑えきれないんだろうな。マコがいない恐怖と、不安。ずっと一緒にいたいタイプだからな。」  「なのに…?」  「マコが休むためだ。だから俺たちも出るぞ。気を遣って寝たフリしてるのは、俺たちを帰して休ませるためだ。」  (お見通しか…まいったな…)  伊藤には敵わない、と目を閉じたまま演技を続けた。  伊藤とレイが出た後、病室が静かに開くのを感じて意識が浮上した。  「マコ…お前と離れるの…いやだ」  可愛いセリフに目を開けようとした時、唇に柔らかい感触と、頬に水滴が落ちる。  「怖いよ、お前がいないの」  冷たい手が手のひらに触れて、握り返すと、今度はふふっと笑う声がした。  「お前の手、落ち着く。…なぁ、帰らなきゃダメかな?」  また寝たフリがバレてるのかと、目を開こうとすると、手のひらが温かいものに触れた。  「は…マコ、マコに触っただけで…」  恐らく大河の熱に触れていることがわかって、どうしようかと焦る。  「っ、なんで、もぅっ、マコ、が大変なときに、俺、変だよ」 泣きそうな声に目を開くと、大河は目を閉じて必死にズボン越しに誠の手を擦り付けていた。  「大河さん、脱いで」  「へ?あ、ごめ、おれっ、」  「いいから。脱いで」  恥ずかしそうに頷いて、下着ごと下ろし、勃ち上がったものに眩暈がしそうだった。  「変なんだ…ここ最近、お前のこと、考えるだけで…治らなくて…」  「そっか。不安にさせたね」  そっと熱に触れるとビクビクと跳ねて前屈みになり、誠のベッドにしがみつく。  「っ、っは、っはぁっ」  足もガクガクと震えて、理性が飛んでいるのか必死に腰を振っている。  「まこっ、名前、呼んで、っ、おれの、」  「大河さん、」  「ちがう、っ、ちがう」  「大河」  「ーーーーッ!!!」  慌てて誠の手を離し、近くのティッシュをとった大河はその手に欲を吐き出した後、カクンと床に落ちた。  「大河さん、大丈夫?」  「も…嫌だ、何でっ、全然、足りない、頭おかしくなりそっ」  急いで身なりを整えて、無理矢理笑顔を作り、苦しそうに病室を去って行った。  (大河さん?様子がおかしい)  心配で電話するも取らず、折り返しが来ることも無かった。  ーーーーーー  「はぁっ、はっ、なんっだよ!本当に」  気を紛らわせようと散歩していると、病院近くの公園に来ていた。まだ治らない自身に苛つきながら、前屈みに歩く。  (ユウに電話しようか…でも、もう遅い時間だし…)  公衆トイレを見つけて、そこで抜いて落ち着こうと考えた。遅い時間なのに疎らに人がいて安心して個室に入ろうとした。  ガタン  「え?」  「綺麗なお兄ちゃん、今夜はボクとどう?」  「へ?」  「ここへ来たんだから意味は分かるよね?」  「ちょっと…すみません、初めてこの辺通ったので…」  「へぇ」  舌舐めずりするお兄さんに、大河はじりじりと後ずさる。  「ここは、発展場だよ。綺麗なお兄ちゃん」  「え?!」  「勃たせてきてたから、そのつもりじゃないの?ヌイてあげるよ?」  痛いことを指摘され、さらに後退るも背中が壁に当たる。  「君はどっち?僕はどっちでもいいよ。突っ込まれてもいいし、突っ込んであげてもいい」  聞いた瞬間、奥が疼いて舌打ちをした。意識が飛ぶまでシたい。満たされたい、と伸ばされた手を取ろうとした。  「先約なんだけど。手ぇ出すな」  聞き覚えのある声にハッと顔を上げると、楓が腕を組んでいた。  「あ、そーなの?先に言ってよ。ごめんね、横取りするつもりはなかったんだ。」  「いいよ。こちらこそ悪かった」  楓に腕を取られて道路脇に駐車された高級車の助手席に乗せられた。  「ゲイの有名な発展場。何してんの?」  「散歩してて…気付いたらあそこに…」  「で?何誘いに乗ろうとしてんの?お前にはマコちゃんがいるだろ。」  とりあえず事務所な、と車が動いた。  「楓さんは…どうしてあそこに?」  「誰か抱こうかなって。言ったろ、あそこはゲイの発展場。その日限りだからな」  普通のことのように言う楓に驚き、また前を見て、服を握る。  「その日限り…なら、俺もありですか?」  「はぁっ!!?」  「あ、いや、その…冗談、です。」  赤信号で顔を覗き込まれる。心配そうな眼差しはドキッとするほど優しかった。  「どうした?」  「いや、本当、冗談です。」  「嘘つくな。」  顎をとられ、グイっと目を合わされる。整った顔を初めて見た気がした。  「…シたくて、頭おかしくなりそうです」  正直に言ったあと、車が急に左折して向かった場所が青木のマンションだった。  「え?ここ…」  「降りろ。」 意味が分からないままついていく。青木の部屋よりも上の階でキョロキョロとしていた。  「楓さん?」  ガチャとドアが開いたと思ったら寝室に投げ飛ばされた。  「今夜限りな」  囁かれた言葉の意味を理解して、顔が真っ赤になる。暗くて良かったと思ってされるがままにベッドに沈んだ。  「っぁ!っああ!っ!ぅ!っぁあーー!」  「早すぎ…お前何回イくの」  「足りないっ!まだ、っ、足りないからっ」  「分かってる」  「ぅっ…っぅあああ!!あーーーっ!!」  「ったく、イきすぎだろ、薬でもやってんのかお前は」  「ダメぇ!ここっ!っ!っぁ!また!イっ…」  「ちょっとは我慢しろ」  「っ!?ーーーーーーッ!!」 ぐっと抑えられて、目の前がチカチカする。ガクガクと腰が跳ねて意識が飛びそうだった。必死にシーツを握って、乱暴に穿つ熱がたまらなくて涙と涎をこぼす。 (最高に…っ、気持ちいいっ!)  「大河!起きろ!」  「へ?…あ…楓さん…?ここ…」  「俺ん家。バレる前に帰れ」  「あ…そっか。すみませんでした…みっともないところ…」  「忘れてやる。…いいか、大地やルイに会ってもこの事は言うなよ」  頷いてまだ朝にならないうちに部屋に戻った。久しぶりの1人部屋でも、満足した身体は一気に睡魔に襲われた。  ーーーー  「ただいまー…って、そっか。大河さんは自分の部屋か。」  久しぶりの帰宅は迎える人がいなかった。アロマを焚いてベッドに座ると急な睡魔に襲われた。  (久しぶりに…こんなに眠い)  オフだったのを思い出し、そのままゆっくりと眠った。  (んー!よく寝た…)  身体が軽くてスッキリと目覚めた。鏡を見ると顔色も良かった。久しぶりに1人分の食事を用意して、ぼんやりと過ごす。  ベースを触ったり雑誌を見たりすると、浮かばなかったアイディアが浮かんだ。  (休まないとダメなタイプだったんだ…)  この年になってやっと自分の特性に気づいて苦笑いした。大河が寝るまでは何かと気になって、寝た後に仕事をしていた。  (大河さんに会いたい…)  体調が良くなると恋人が恋しくなった。  深夜に久しぶりに大河の部屋の合鍵を使う。真っ暗な部屋に、寝ているのかと寝室にいくと思わぬ光景に固まる。  「っんぅ、っ、まこ、まこっ、はっ、まこ」  必死に指を入れ、自分の名前を呼ぶ大河。  「ぁあっ、も、全然、足りないっ、ん、」  泣きそうな声を聞いてふふっと笑う。  「大河」  「っ!!!」  遠くからでも分かるほど跳ねて、ゆっくりと振り返る大河。しばらく見つめ合った後、大河が胸に飛び込んできた。  「マコ!」  上目遣いのその顔に、息が止まりそうになる。  「マコ、おかしいんだ。俺を壊して」  ブチン!!  弄りすぎたのか赤く腫れた穴に、すぐ熱を持った自身を容赦なく突っ込むと、異常なほどガクガク揺れ、吐き出した。 「っや…ばい、こんなの…っ、やばい」  「大河?」  「怖い…っ、っ、は、っ、ビリビリするっ」  顔を隠して必死に呼吸する大河の熱はまだ冷めてなくて不思議に思う。汗で張り付いた髪をサラリと触るだけで声を漏らす。  (どうしたんだろ…)  「まこ、っ、好きすぎて、おれ」  「?」  「お前に、っ、毎日、抱かれてたから、っ、だから、っ、シなくなった、ら、も、ダメで、それが、怖くて」  「…」  「足りないけど、お前に、言えなくて、でも、我慢できなくて、」  聞きたくない、と本能で思った。唇を奪って、何も言わせないまま腰を奥に叩きつけた。分かっていた、大河が優一と寝た事。でも続きがありそうで怖かった。  満たしてあげられないのが悪いと、自分を責めては大河に食らいついた。 「今日、寝かさないから。」  そう言うと、嬉しそうに笑った顔に、苛立ちや不安が一瞬で消えた。その顔は自分のことが好きでたまらないと、真っ直ぐ伝えてくれた。  「んぅーーッ!!っ!まこっ!まこっ!」  「はっ、はっ、大河、大河っ、」  「出して、っ、なかぁ!っ!出して」  「うん、っーーッ!!」  最奥に注ぐと、恍惚の顔で薄くなった欲を飛ばした。しばらくキスをしていると、大河がから力が抜けた。  (満足、したかな?)  意識を失った大河の足を開いて、いつものように穴を眺め、気が済んだら綺麗にして着替えさせ、大河を背負って自室に戻る。  「よいっしょ…また軽くなっちゃって。」  薄くなった体を指でなぞって布団をかける。誠も横になると、すりすりと近寄ってきて、抱きしめると安心したように寝息が聞こえた。  (寂しくさせて、ごめんね)  つむじにキスをして腰が痛くならないようにと願って大河の腰を撫でていた。  「んーー!よく寝た!あれ?マコ」  「朝から元気だね。おはよう」  おはようのキスをすると、真っ赤になって布団に潜ってしまった。  「大河さーん?」  「な、な、なんだよ!お前!」  「へ?」  「無理!なんか、ドキドキするっ」  「なにそれー?あはは、こっちみてよ」  「無理だって!」  よく分からないがまた大河を夢中にさせたらしい。 

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