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第132話 アホが気付くまで

久しぶりにルイが部屋に来た。  珍しいこともあるな、と適当に片付けてスリッパを出す。  いつもよりも静かで、また体調を崩したのかと、様子を伺う。コーヒーを出して、ソファーの隣に座ると、真顔のルイがこちらを見た。  「昨日、大河となにしてたの?」  「大河?」  「夜遅く。朝に近い夜。」  「は?」  「大河はマコちゃんのでしょ?またマコちゃんに戻ったの?嫌がらせ?」  「お前何言ってんの」  ルイが淡々と質問してくる速度についていけずにきょとんとする。  「見たよ。昨日。大河部屋に入れたの」  「あぁ、見た?」  見られたなら仕方がないと、続きを促す。  「だから、何してたのって。」  「何でもいいだろ、別に」  「楓!」  「何だよ。そんなイラついて。八つ当たりするなら帰れ」  帰ってもらおうと席を立つと、下からギロリと大きな目が睨む。  「っ、なんだよ。ヤっただけだ」  「え」  「抱いたんだよ、大河。」  「だ、だって大河はマコちゃんの」  「そんなの知ってるよ。」  「楓に似合わないし」 「あぁ!?似合う似合わないは関係ないだろお前に!なんだよさっきから!何が言いたいんだよ!」  変に干渉してきてイライラする。 「だって…嫌だったから…」  「別にお前に関係ないだろ!!なんだよ、俺が男抱くことを軽蔑してんだろ?安心しろよお前には関係のない話だ」  「ちがう!そんなんじゃない!でも」  「何だよ、何が言いたいんだよ。はっきり言え」  ルイはため息を吐いて、立ち上がった。 「大河は…似合わない」  「またそれか。俺が誰抱こうか勝手だろ。」  「なんで、大河なの?」  「発展場にいたからだよ。」  「発展場?」  「あぁ。お前には縁のない話だ。女好きのお前には分からないだろうな」  「楓は誰でもいいの?」  「あ?」  「発展場って何!?楓意味分かんない!!」  大声で怒鳴って出て行ったルイを唖然と見送って、ドカっと腰掛ける。  「なんだよ…意味分かんないは、こっちのセリフだろ…」  勘違いしそうになる。  自分の都合いい解釈をしそうで、ルイと同じ圧で向き合った。  「意味…わかんねぇ…」  頭を抱えて笑う。  正直大河とのを見られているのは痛かった。彼女ができたときは全く干渉してこないのに珍しかった。  (人の気も知らねーで…) ルイのスリッパを元に戻す。  やっぱりコーヒーも手付かずだろうと、片付けようとすると、少しこぼしていた。  (あれ、飲もうと、した?)  珍しさに驚いて、思わずそのコーヒーを飲み干した。  ルイはものをよく壊したり溢したりするが、潔癖で自分のものを貸すことはないし、人の家でも「スリッパは?」と聞いてくる。掃除が苦手なルイの部屋は物が少ない。必要なものは全てブランド物で、棚にはブルーウェーブのCDやライブ映像。スニーカーも綺麗に飾られている。  「何で俺、喜んでんの?…あいつ怒ってんのに」  やっぱり都合の良い勘違いをしている自分に呆れて、頭を冷やそうと風呂に入った。  ヴーヴー ヴーヴー  風呂上りにストレッチをしているとケータイが震え、大地からのメッセージだった。 大地:楓さん、ルイさんいじめないでくださいよ。うちに来てだんまりです。回収お願いします。  (ルイ?大地の部屋に行ったのか)  舌打ちして回収に向かうと、嫌がるルイに苛立つ。大地の彼氏も気まずそうに見ているのが申し訳なくて、手を掴むと思いっきり振り払われた。 「触るな!汚いからっ!」  (マジで嫌そうな顔しやがって)  とにかくこの場をおさめるため、嫌がるルイの手を引いて部屋を出た。  「離せ!!」  ドアを閉めた瞬間に暴れるルイを強く抱きしめた。  「ルイ」  「……」  「俺の部屋行こう。話そう」  「うん、話そう」  ハグしたら落ち着いたのか、素直に頷いてついてきた。 「あ、待って、はい。」  「ありがとう」  スリッパを履いてくれてホッとしてリビングに向かう。  「っ!?」  後ろからルイがハグしてきて驚く。  「ルイ?」  「意味分かんない。もう、意味分かんない」  「うん、俺も分かんねーよ」  「俺は…マリンが好きなんだ」  「そんなの、知ってるよ」  分かっていても、グサリと刺さる。告白もしてないのにフラれて、鼻がツンと痛む。  「マリンが大人になるまで、俺はダンスと…78だけに賭けるんだって」  「うん、そう言ってたよな」  「今日…マリンを振った。」  「え!!?」  驚いて向き合うと、号泣するルイが辛くて抱きしめた。  「マリン、っ、泣いてた、俺が、泣かした」  「……」  「大人に、なりたいって、泣いてた」  「……」  「ルイさん、に、愛される人に、なりたいって」  「…愛してただろ、ちゃんと。お前は、マリンのために、夢のために選んだんだろ。…なら、自信持って進めばいい。マリンもきっと、お前を見ているさ。大人になったら迎えに行けばいい。」  不安定だった理由はこれか、と苦笑いする。あんなに夢中だったのだ、仕方ない。マリンからの突然の告白にも戸惑っただろう。  「うん、ありがとう。」  ゴシゴシと涙を拭いて、ニカッと笑うルイに、理性がとんだ。  「んっ!!?」  ビックリした様子のルイを押さえつけて唇を奪う。無理矢理舌を絡めて、タバコの匂いに驚いて唇を離す。  「ルイ…お前、タバコ…」  パシン!!  「っ!」  「俺は!大河じゃない!!!!」  「違う…大河の」  「本当に誰でもいいのかよ!!」  「違う!!お前がいいんだよ!!!」  勢いで言ったあとに、しまった、と後悔した。目の前のルイは目を見開いたまま固まっている。  (終わった…)  78を辞めようかまで思考がよぎったところで、ルイの顔が真っ赤になる。  (あれ?怒らない?)  「へっ?え?なん、なんて?」  「何でもない」  「楓?もう一回!もう一回言って?」  「何も言ってねーし。忘れろ。」  「楓!ねぇ!お願い!」  お願い、お願いといつもみたいに絡んでくる。  (あぁもう!!)  「…お前は今日2回も振るんだな…とんだ災難だな。……ルイを、恋愛感情として…好きだ」  苦笑いして、居た堪れなくて後ろを向いた。  (さすがに、受け止めるには時間がほしい)  キッチンの洗い物をしようと電気をつけた。  「俺も、楓がすき」  「ははっ、ありがとう」  「違う!楓?ちゃんと、聞いて」  濡れた両手をそのまま握られ、ルイの袖が濡れるのが気になる。  「楓、マリンを振ったのは…俺、もうマリンが後輩としての好きに、変わっちゃったんだ」  「そうか」  「それは、楓が好きだから。楓は俺を選んでほしい」  (え…?)  「何で、大河なのって、考えてたら辛かった。眠れなくて、イライラして、タバコもまたはじめちゃった…。やっと、分かった。俺、楓が好きだから、楓は俺を見てほしいって思ったんだ」  「待って。都合の良い夢だ。これ以上残酷なことはない。」  「楓!なんで…」  「だって、お前は女好きで有名だろうが」  「うん!女の子は大好きだよ?それが何?」  「俺、男だよ」  「うん!俺もだよ!」  言いたいことが伝わらなくて、強く抱きしめてお尻を撫でる。  「男はここでヤんだぞ」  「うわあ、痛そう」  「おっぱいもないぞ」  「うー…そっかぁ…」  真剣に考えるルイに笑って身体を離す。  「いいよ、ゆっくり考えな。無理だったとしても、さっきの言葉は嬉しかったよ、ありがとうな。」  笑って言うと、やっぱりルイの顔は赤くなる。  「楓、こんなかっこよかった?ドキドキする」  「雰囲気に呑まれてるだけだろ。安心しろ。もう大河に手は出さない。お前にも迷惑かけないから。」  「え?」  「言ったろ?お前は女とが似合うよ。無理して合わせなくていいから。」  「楓!!俺は本気で…」  「やめろよ、惨めになるだろ。ヤるときに勃たないのが想像つくよ。」  「やってみないと分からないだろ!?」  ルイの言葉に、2人で固まる。  「「え?」」  「や、やるの?ルイ」  「え、あ、えっと、」  「…、とりあえず、脱いでみる?」  「うん、分かった」  マゴマゴしながら2人で全裸になるのはなかなかシュールだった。恥ずかしさもなく生まれたての姿で向かい合う。  「楓…勃ってる…」  「そりゃあ、好きな人が裸でいたらそうなるだろ。」  「楓、触ってみてもいい?」  「えっ!?…あ、も、もう、いいや。着よう」 恥ずかしくなって下着を取ると、その手を取られて熱いものに触れた。  「えへへっ、見て、俺も勃った」  「ルイっ」  「楓、大丈夫みたい」  笑顔に嬉しくなって笑うと、ルイからキスされ、舌が絡む。それに答えながらソファーに行くと、ルイに押し倒される。  「はっ!?ちょっ、待っ」  「はっ、楓、っ、楓」  「嘘だろ、お前がそっちなの?」  「え?俺抱かれる方だった?」  「そうだろ?俺はお前を抱きたくて…」  「俺は楓を抱きたい」  首筋にルイの舌が通って、鼻息荒く、胸を弄る。  (だから女じゃねーって)  呆れたようにされるがままになっていると、突然熱が掴まれ、息を詰めた。  「っ!!」  「楓の大きいー」  「はっ、っぁ、っ、ぁ、ルイっ、」 「気持ちいい?楓…。」  「っふぅ、っぅ、ぁっ、っ!」  「楓…エッチな顔してる」  イくのを堪えて歯を食いしばる。だんだん力を入れられ、スピードが上がる動きにたまらずに目を閉じる。  「ぅっ…ぁ!!」  ルイの手に吐き出して、呼吸を調える。ゆっくり目を開けると、固まるルイに目を見開く。  「ごめん!ほら、ティッシュ!」  手に付いたものが嫌だったんだと焦るも、ルイは楓を見たままだ。そして、ルイの熱からは雫が溢れる。  (ルイ?)  受け取ってもらえないティッシュをどうしようか迷ってルイの手を触ると、ビクッと跳ねた。  「どうした?ルイ」  「あたま、おかしく、なりそう」  泣きそうな顔でキスしてくるルイを受け止めて、足に触れるルイの熱を触ると、背中が反って見たことない顔に変わった。  (うわっ、エロっ!永遠の少年なんかじゃない…。今までの女たちはこのギャップにやられたんだろうな)  だんだんルイは腰を振って、必死になる。楓の手で自慰をしているように見えて、楓も攻める。  「ルイのもデカイな?お前こんなもん隠し持ってたの」  「っ!っぅ、っぁ、っぁ、」  「女じゃ分かんねーよな?ここの良さとか?」  「くっぅ!っぁ!」  「ここも触ってほしいけど、忘れがちだよな」  「はっ、はっ、はっ、楓、楓」  「どうした?」  「イ…っ!っぅああ!」  どさりとルイが降ってきて、ビクビクと震えながら欲を吐き出す。  「ルイ、こっち見て」  「ん」  「っ!?おま、なんつー顔してんの」  「え…?」  「なぁ?やっぱ抱きたい」  「いやだ。俺が抱きたい」  この日は平行線のままだったが、風呂に行く時にルイは裸足のまま歩いてくれた。  風呂上りにお酒を出すと、それも普通に飲んでくれた。 「楓がイった時、あーこの世界入っちゃったーって思った。楓がすぐ出来るなら入れたかったなぁ」  「ソッチ専門じゃねーんだよ。」  「いひひ!楓?俺さ?最近楓に冷たくされてたでしょ?不安だった。篤といても気になって…でも体調も悪くなって辛かった。」  「ごめん。嫉妬してた。…お前に嫌われたくなくて、隠し通すつもりだった。だから…」  ルイは甘えるように抱きついてきて、首筋にキスを落とす。  「楓、綺麗だよ。汚いって言ってごめんなさい。大河にも知らない人にも嫉妬しちゃった。」  「ううん。嬉しかったよ」  「楓、大好き」  いつもの笑顔がたまらなくて唇を重ねた。  「楓、どうしよ、また勃っちゃった」  「はは!俺も。またヌく?」  「うん、はぁ、入れたい」  「ダメ。」  「うー。女の子ならヤれるのに」  「チッ!」  嫌なセリフに舌打ちして、ルイの下着を脱がして、雫も零す熱を頬張る。  「ッッァアア!!」  (これは上手いって評判だからな、って言ったら怒るのかな)  「っぁうっ!んぅ!っぁあ!!」  ビクビクと跳ねながら先ほどは聞けなかった嬌声が楓の興奮を煽る。細い足が震えて、髪を掴む手に力が入る。  「やっばあ、楓!ヤバ!すごっい!っぁあ!あっ!すごい!!」  褒められて一気に吸い上げると、背中が反って、ビクビクと大きく跳ねた。  「どーよ?悪くないだろ?」  「はー、はー、はぁっ、やば、っ、すごかった、エッチ、したみたい」  「ルイ、一度ここもやってみる?気持ち悪かったらやめるから」  「うん」  へろへろのルイに言うと、理解してないまま頷いた。ルイをうつ伏せにし、昨日大河に使ったローションを使い、後ろを解す。  「んー…気持ち、悪、い」  「最初はな」  「やめるって、っ、言った、くせに」  全身鳥肌が立ったルイに同情して、前立腺を探す。いやだ、いやだと首を振るルイに焦って、仕方ない、とAVを流す。  「これでも見とけ」  「わぁ!おっぱい大きいー可愛い子」  「クソが」  「横向きなりたい。よく見えない」  「チッ!」  ルイの興味がAVに移って、自分で見せたのに泣きそうになった。釘付けのルイに苛つきながら黙々とならす。  (あ、見つけたかも。ルイの反応は?)  ゴリッ  「ッァアァア!?へ?っへ?」  驚いたようにこちらを見た。楓はニヤリと笑って何度も前立腺を攻める。  「ッァア!やだ!やだ!っぁあ!かえ、楓!」  もうルイの目にAVは映っていない。未知の快感に必死に楓を呼ぶ。  「っぁあ、っああ、なに、これ、なに?」  「男が気持ちよくなる場所。」  「だめっ、なんか、へん!へん、おれっ、いやだ!これ、いや!」  今にも爆発しそうに震える欲と、涙を溜めて、声が止まらないルイがヤバい。  (あと1本いけるか…?)  「ぅっぅっぅー!はっ、はっ、いっぱ、い、もう、終わりたい」  「お願いルイ、受け入れて」  「楓…?」  「お前だけだから、お前が俺を見てくれるなら、俺はお前だけしか抱かないから。」  ルイは顔を真っ赤にしてこちらを見た。  「今日は楓のばん。次は俺って約束して?そしたら俺も女の子じゃなくて楓抱く」 甘ったるい喘ぎ声をルイが消して、必死に舌を絡めてくる。  「約束するよ」  「ぅぅあ、痛い!痛いよぉ!」  「もう、少し、だから」  ゴムをつけた熱を入れるとミチミチと締め付けられる。お互い汗をかきながら、なんとか全てを入れた。  「ルイ、大丈夫か?」  「〜〜〜」  「ごめんな、すぐヨくしてやるから」  眉間に皺を寄せて必死に違和感と闘うルイに謝って前立腺を探すと、ルイの体が震え始めた。  「ーっ、っ、」  「ルイ声出していいよ」  「っぁああ!あっぁ!っぁ、っ、ぅあ、」  顔が見たくて、振り向かせると、下がった眉に濡れたまつ毛と唇。飲み込みきれなかった唾液と、真っ赤な舌。ドキッとするほどエロい顔だった。 「ルイ、っ、好きだっ、ルイ」  「んぅっあ!!っぁっあ、あっ!」  「ルイ、イっていいから…」  体力的に辛いだろうと、ルイの熱も扱くと目を見開いて、首を振り異常なほど跳ねた。  「ァアァアーーーッ!かえでっ、か、っ、んぅ!!イっ…っぁああ!」  「くぅ…ぅ、はっ、はっ」  ズルリと抜いて、ゴムをみると大量の白濁に苦笑いした。ルイは放心状態のまま目を閉じる。  「ルイ、大丈夫か」  「気持ちよかった…」  素直な感想が嬉しくて後処理をすると甘えてきた。  「今日はここに泊まる」  「え?いいのか?ルイ自分のベッドじゃないと…」  「抱いたくせにそんなこと言うのさいてい」  「ちが!俺はお前を…」  「もう眠たい。ぎゅってして。俺が寝るまでキスいっぱいして。」  「分かったよ」  頬や首筋にキスをすると、嬉しそうに笑うからたまらなくなる。  (やっぱルイのそばが居心地いいな)  睡魔に襲われて目を閉じた。  「楓…寝ちゃった…。可愛い寝顔。好きな人が隣にいるのにぐーすか寝ちゃうの?俺っちはドキドキして眠れないのに」  ルイは楓の前髪をかきあげておでこにキスをした。 

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